お久しぶりです。そうでない人は初めまして。
以前このBBSで、以下のSSを投稿させてもらった者です。
【SS】ハッピーシュガーライフ×きららファンタジア
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=775&ukey=0&log=past
【SS】小鳥と不死鳥と(機動戦士ガンダムNT×アニマエール)
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=1471&ukey=0&log=past
最初に投稿したSSを基に、ハピシュガの人というコテハンを使いたいと思います。
今回は、昨年アニメが放送され、現在アプリゲームが配信中のアサルトリリィときらファンのクロスSSを書きました。
今回は10万3千字ほどの文章を、何回かに分けて投稿したいと思います。
全15章分、お付き合いのほどよろしくお願いします。
今回はさっそく、第1章と2章を投稿します。
カルダモンがそう言い終わらない内に、強い地響きが五人を襲う。
森の上をジャンプしてきたのであろう。無機質な趣のある、球体のような何かが上空から降りてきたのだ。
二体とも青色をしており、目と思わしき部分を通じ、五人の様子を伺っている。
琉姫「なにあれ・・・?」
カルダモン「・・・走れ!!私に付いてくるんだ!!」
カルダモンがそう叫んだ瞬間、怪物は硬質めいた触手を五人に伸ばす。
彼女らが間一髪で避けると、そこにはスッパリと切断された樹木、そして見事に砕かれた岩が転がっていた。
まんが家の四人は、一瞬何が起こったか分からなかったが、すぐに恐怖の叫びを上げると、カルダモンの後を全力で駆け始めた。
それを後ろから追いかけてくる二体。あちこちに触手を伸ばし、無軌道な破壊を繰り返す。それは五人のことを弄んでいるようにも見えた。
小夢「なんなんですかあれえ!!」
カルダモン「分からない。でも私でも勝てなかったんだ」
かおす「・・・」
琉姫「かおすちゃん!しっかり!!」
翼「顔を上げて走るんだ!!」
かおすは下を向いていた。
それは恐怖したことも大きかったが、彼女の中に一つの疑念が湧いていたためでもある。
自分はアレをどこかで見たことがある。
それにアレから逃げている状況、そして立ちこめる白い霧。
これではまるで・・・。
そして五人は開けた場所に出てしまい、新たに加わった怪物と、ウツカイに囲まれて今に至る。
新しく現れたソレは、緑色をしていた。
皆は何とか応戦するが、未知の相手と物量を前に、ジリ貧の状況に追い詰められる。
翼「カルダモンさん。ウツカイの方はともかく、あの怪物に攻撃が通っている様子が・・・」
カルダモン「そうなんだ、私の攻撃もまるで通じなかった」
小夢「あの新しく現れた方には、私と琉姫ちゃんの攻撃が少し通じているみたいだけど・・・」
琉姫「でも、どちらかというと怒らせているだけのような・・・」
五人は薄々と感づいてはいた。
エトワリアの魔物がそうであるように、おそらく怪物の色は属性に対応しているのだろう。
だから水色の怪物には、土の属性が通るのだ。
しかし、それにしては不可解な点もあった。
緑色をした怪物は、おそらくは風の力を有していると思われる。それに関わらず、カルダモンの炎による攻撃がほとんど通じていないのだ。
だが相性に関係なく、怪物が凄まじくタフである以上、倒しきるのは困難だろう。
アルケミスト、ナイト、まほうつかい、そうりょ、せんし・・・。
複数の職業を持つ者は、それを適宜変えながら何とか戦っていくが、有効打を与えられない以上、それも小手先に過ぎない。
加えて、大量のウツカイもまた、彼女たちをジリジリと追い詰める。
平穏な日常にはない、敵を討ち滅ぼすための圧倒的な力。それが今の彼女たちに必要なものだった。
ナイトとなり前線を支えていた琉姫とかおすだが、ついにその盾を弾き飛ばされてしまう。
眼前に迫る怪物と、伸ばされていく触手。
恐怖を前に、足腰の立たない二人。
叫ぶ仲間たち。
ああ、もうおしまいなんだ。
二人がそう考えた瞬間に、その触手は振り下ろされ・・・。
何かがそれを弾き飛ばした。
琉姫「え・・・?」
眼前にいたのは、二人の見慣れぬ・・・否、どこかで見たことのある少女だった。
一人は長く艶やかな黒髪を持つ、毅然とした佇まいの少女。
もう一人はどこかあどけなさが残りつつも、凜とした表情をした、桜色の髪の少女。
さらに向こうを見やると、気品高く振る舞う少女が、ウェーブのかかった茶髪をなびかせながら、敵の群れをなぎ倒していた。
その手には、身の丈ほどもありそうな、それでいて力強い武器を手にして・・・。
夢結「あなた達は下がりなさい!その装備でヒュージの相手は無理よ!!」
琉姫「は、はい!」
楓「まったく、見知らぬ土地に飛ばされたと思えば、まあ特型がこんなにもウジャウジャと!でも、わたくしの敵ではありませんわね!」
梨璃「大丈夫?立てますか?」
そう手を伸ばす少女に対し、かおすは言葉を詰まらせる。
かおす「え、あ、う、うそ・・・」
梨璃「?」
読んでみました。きららキャラたちが敵に対抗できる力をてに入れることができるのか気になります。それからこみが以外のキャラも出るのか気になります。
>>103
作者です。コメントありがとうございます
だいぶ後ですが敵には対抗できるような流れにはなる予定です
こみが勢以外ももちろん出ますよ
コメント書くとスレが汚れちゃう気がしたので我慢してましたが先客が来たのでコメントしますw
アサルトリリィはアニメからで、ゲームも一応初期勢ながらあまりやる時間もなくユーザーランクもまだ68という初心者ですがかなり気に入ってます
今やってるゲームはきらファンとラスバレのみ
その二つがコラボしたSS、めっちゃ気になります!!
この先も楽しみに待たせていただきます
>>105
作者です
コメントありがとうございます。感想などあれば気にせずどんどん送ってください。励みになります
・アサルトリリィとは
ドール製造・販売を行うアゾンインターナショナルが、2005年より展開する作品群の総称です。15年以上展開されていることもあり、かなり世界観が練られているのも特徴
本業のドールだけでなく、小説、舞台、コミカライズ、アニメ、ゲームと、メディアミックスの幅広さも特色です。
なお、舞台とアニメは多くのキャストが同一という、いわゆる2.5次元方式が採られています
・リリィ
人類の敵、ヒュージに立ち向かう少女たちの総称。
彼女らは戦士である一方で、学院にも通う学生である。という体裁を取っています。リリィが通う学院のことをガーデンと呼びます。
・ヒュージ
アサルトリリィの世界における、人類の敵。
目的、正体など一切が不明ですが、人類を強烈に敵視し、殲滅にかかる点はハッキリとしています。
ヒュージ細胞と呼ばれるものが他生物に寄生・増殖・成長を繰り返すことで誕生します。
その大きさや強さに比例して、スモール、ミディアム、ラージ、ギガント、アルトラといった等級で分類されます。
体内にマギ(魔力)を宿しているため、通常兵器は効果がかなり薄いのが特徴。具体的にはリリィなら複数人で倒せるラージ級に対して、リりィ抜きでは戦車を動員しなければならない、というレベル
・チャーム
対ヒュージ用決戦兵器の総称。
武器そのものにマギを宿すことでヒュージ殲滅を可能とします。
銃と剣に変形するのも特徴であります。
チャーム単体であれば男性にも扱えはしますが、10代女子のそれと比べマギを扱える量が圧倒的に少ないため、ヒュージが強力になるにつれて男性のチャーム使いは消失しました。
・シュッツエンゲル制度
主人公の一柳梨璃らが通う「百合ヶ丘女学院」独自の制度。
下級生(シルト)が上級生を守護天使(シュッツエンゲル)に見立て、姉妹の義を結ぶのが特徴です。
シルトとシュッツエンゲルは血の繋がりに関係なく、互いを慈しみ、深い関係を結ぶのが特徴となっています。
梨璃と夢結というシュッツエンゲルを中心に、アサルトリリィの物語は展開されます。
第4章 ツクシ(驚き)
きらら「皆さん、大丈夫ですか!」
ランプ「良かった・・・。無事に皆さまと合流できました」
うつつ「死ぬ〜。これ以上走ったらゲロ吐く・・・」
小夢「きららちゃん!それにランプちゃんも!」
カルダモン「そっちの娘は確か、うつつだっけ?」
翼「でも、どうして皆が?」
マッチ「噂を聞いて心配になってね、迎えに来たのさ」
うつつ「まあ、すれ違いになった挙げ句、探しに行ったらバケモノから歓迎を受けたんだけどさあ・・・」
港町にたどり着いたきらら達だったが、程なくして四人とすれ違ったことを知った。
そこでかおす達の帰路と同じルートを辿ったのだが、霧に巻き込まれ遭難していたのだ。
ランプ「・・・遭難した私たちを、ウツカイや見たこともない怪物が襲ってきたんです」
マッチ「ウツカイはともかく、あの化け物には攻撃が通じなくてね。生きた心地がしなかったよ」
うつつ「ああ本当に死ぬんだなって思ったわよ、うん」
マッチ「死にたくないーって叫んでいたのはうつつじゃないか」
うつつ「うるさい毛玉」
マッチ「毛玉!?」
翼「でも、よく無事でいられたよ」
きらら「それは・・・」
きららが謎の少女たちの方を見やる。
きらら「あの人たちに・・・、“リリィ”の皆さんに助けてもらったんです」
カルダモン「“リリィ”?」
きらら「はい。あの怪物・・・、ヒュージを追ってやってきたんだそうです」
マッチ「みんな凄まじい力の持ち主だよ。ウツカイをなぎ倒すどころか、ヒュージもバッタバッタと切り捨てていくんだから」
ランプ「そして多分、あの方たちは・・・」
小夢「かおすちゃんの見てたアニメの登場人物、だよね?」
きらら「やっぱり!」
翼「私たちもかおすと一緒にアニメは見ていたから、見覚えはあったんだけど、本当にそうなのか・・・」
小夢「しかもかおすちゃんの前にいるのって、憧れの梨璃ちゃんだよね?」
一同はかおすの方を見やる。
文字通り、物語から飛び出してきたその人を前に、かおすは良くも悪くも錯乱していた。
かおす「ひょえ〜!?!?梨璃さん?梨璃さんなんで!?あ、そ、そうかこれはきっと夢なんです。だってそうじゃなきゃアニメの登場人物が目の前に出てくるなんて・・・」
梨璃「あ、あの、大丈夫なのかな・・・?」
そう言ってかおすの手を取る梨璃。
その温もりに、その香りに、その声に、何よりもその眼差しに、かおすの精神はいよいよパンクした。
かおす「・・・ほ」
梨璃「ほ?」
かおす「本物ですぅぅぅぅぅぅ!!!!」
梨璃「ふぇええええ!?!?」
かおす「萌田薫子、思えばこの十五年間、様々な出来事がありました・・・。でも今なら死んでも構わないですぅ〜!!!」
梨璃「し、死んじゃ駄目だよう!!」
互いにわけが分からずにあばあばとする二人、だが、梨璃の方は表情を一瞬で変える。
痺れを切らしたウツカイの攻撃を、一瞬で弾き返したのだ。
梨璃「薫子ちゃん、だっけ」
かおす「は、はい!皆からはかおすと呼ばれています!!」
梨璃「そっか。良い名前だね」
そう笑顔に答える彼女に、かおすの頬が染まる。
梨璃「・・・ここは危ないから、お友達を連れて、きららちゃんのところまで走れる?」
かおす「そ、それはもう!!」
梨璃「良かった・・・。なら、ここは任せて!」
梨璃の声を聞き、琉姫の手を引っ張って走るかおす。
その様子を見た結夢は、梨璃にそっと声をかけた。
結夢「ありがとう梨璃、私だとどうしてもぶっきらぼうになってしまうから・・・」
梨璃「当然のことをしただけです。お姉様」
夢結「あなたのそのまっすぐな眼差しに、私は、いいえ、皆はいつも救われているのよ。あの娘もきっとそう」
梨璃「お姉様・・・」
そんなやり取りを見て、楓が声を上げる。
楓「梨璃さん!結夢様!戦場でイチャイチャしないでくださいまし!!いくら雑兵とはいえ、これだけ多いとちょっとしんどいんですの・・・よっと!!」
結夢「あら、さっきは確か自分の敵ではないと言っていたけれども?」
楓「もう!意地が悪いですわね結夢様は!」
結梨「手伝うよ、楓さん!」
楓「ああ!梨璃さんにそう言ってもらえるだけでこれまでの疲れが、いいえ、元気百倍増しですわ〜!!」
そんな軽口を叩き合いながら敵陣に突っ込む三人。
襲い来るウツカイが次々と細切れにされ、ハチの巣が開けられていく。
琉姫「・・・下がっていろって言われたけど、本当にここで見ているだけで良いのかしら?」
うつつ「いやあの中にどうやって割り込むのよ」
マッチ「さっきから見てて思うけど、みんな凄まじい戦い方してるよね・・・」
楓は華麗にステップを踏み、相手の力を受け流しながら戦っている。その様子はワルツを踊っているようでもある。
結夢は先陣を切り、敵を踏台にして跳び、急所を的確に、そして無慈悲に切り裂いていく。見た目の麗しさが戦い方とのギャップを更に駆り立てている。
梨璃は二人と比べれば動きは控えめだが、的確にそのサポートをこなしている。むしろ、楓と結夢の方が彼女を中心に戦っているようにも見えた。
カルダモン「あの動きは、訓練された上で戦い慣れていないとできないよ」
翼「彼女たちにとって、戦いは本当に日常なんだ・・・」
ランプ「そんな・・・」
敵に臆することなく向かうリリィたち。
それは裏を返すと、そんな命のやり取りが彼女たちの日常であることの証左だ。
何よりそれは、アニメを見てきた翼たちには、更にいえば舞台や小説も追いかけていたかおすにとっては、痛いほどに伝わることだった。
かおす「・・・行きましょう」
うつつ「うええ!?正気なのあんた!?」
小夢「私はかおすちゃんに賛成だな」
きらら「ええ、ヒュージはともかく、ウツカイなら私たちでもどうにかなります!」
カルダモン「借りを作りっぱなしなのは釈然としないからね」
琉姫「サポートぐらいならできるはずよ」
翼「でも無理はしなくて良い。付いていきたい人だけ付いてきて」
うつつ「・・・ああもう!はいはいこの流れにも慣れましたよ!この陽キャ集団!」
ランプ「うつつさん・・・!」
マッチ「よし、みんな準備を整えよう!」
かおすときらら、七夕衣装のランプが、そうりょの力で皆の傷を癒やす。
万全とは行かないが、応急処置にはなるはずだ。
きらら「行くよ!みんな!」
きららの号令に応じ、皆がウツカイの群れに突っ込む。
ヒュージはリリィに任せ、少しでも多くのウツカイを倒す流れだ。
梨結「皆さん!」
夢結「あなた達、下がりなさいと言ったはずよ!」
きらら「でも、皆さん疲れてきているじゃないですか!」
楓「それはまあ、正直そうですわね」
流石のリリィといえど、ここまで戦いづめだったのだ。
呼吸こそ整えているが、流れる汗やその顔色には、確実に疲労が浮かんでいた。
すかさずそうりょ組が三人に回復を施す。
夢結「暖かい・・・」
楓「この感覚、マギが満たされていく・・・」
梨璃「それに擦り傷や切り傷まで・・・」
リリィは各人ごとに一つのレアスキルを持つが、味方を回復させるレアスキルは、種類がそう多くはない。
その内の一つが、梨璃が持つとされる“カリスマ”であるが、これもマギは回復できるものの、肉体の治癒までは難しい。
だからこそ三人にとって、疲労だけでなく体まで癒やすこの力は、クリエメイトたちが考える以上に、特別なものに思えた。
それはまるで、自分たちの世界が失ってしまった平穏と、変わらない日常そのもののようで・・・。
彼女たちの優しい力に、心も体も解きほぐされる。
見れば、クリエメイトたちが必死に敵へ立ち向かっている。
きっと彼女たちも、思いは同じなのだ。
仲間のため、誰かのため、心鋼鉄に変えて・・・。
梨璃「・・・お姉様、楓さん」
夢結「何も言わなくて良いわ。梨璃」
楓「あの方々のこと、どこか見くびっていたのかもしれませんわね」
梨璃がクリエメイトたちの方へ向き直る。
梨璃「皆さん、絶対に無茶はしないでください!」
かおす「梨璃さん!」
夢結「私たちが切り込む、だから援護をお願い!」
楓「ヒュージはわたくし達が必ず討ちます。皆さまはその気味の悪い連中に集中してくださいまし!」
カルダモン「ああ!そっちは専門家に任せるよ!」
小夢「心強い仲間ができて嬉しいよ〜!」
夢結「仲間・・・、悪くない響きね」
“保護対象”が“戦友”に変わった瞬間だった。
きらら「みんなに、もっと力を・・・!」
かおす「私もお手伝いします!」
きららとかおすを中心に、皆に戦うための力を分け与える。
確かな感触が、皆の中に伝わっていく。
翼「斬り込む!」
カルダモン「腕の傷も治ってきてる。これなら!」
小夢「よ〜し、じゃんじゃか打ち込むよ〜!」
その力は、リリィにも勿論及んでいた。
楓「力が溢れていきますわ・・・!」
夢結「まるでレアスキルね」
梨璃「これならいけます!」
可愛らしくも雄叫びをあげ、梨璃が1体のヒュージに突っ込む。
敵は体を変形させ、梨璃を飲み込もうとするが、それに嵌まるような彼女ではなかった。
梨璃「弱い部分ががら空きです!」
マギを込めた弾丸が、その口内へと放たれる。
流石のヒュージも、体内を攻撃されてはひとたまりも無い。
青い体液をまき散らしながら、爆散するのみであった。
琉姫「やった!まずは一体ね!」
ランプ「琉姫先生、こちらも行きましょう!」
琉姫「ええ。倒せないとしても、これならどう!?」
元の衣装に戻ったランプと、白衣姿の琉姫がヒュージにフラスコを投げつける。
勿論、敵とで愚かではない。そのフラスコを触手で叩き割った。
だが・・・。
ヒュージ「!?!?」
琉姫「どう、体に力が入らないでしょ?」
ランプ「かなしばりはサービスですよ!」
仕方のない話だが、フラスコ内のものを浴びればどうなるか、ヒュージは知らなかった。
叩き割るのではなく、避けるべきだったのだ。
夢結「ナイスアシストよ、二人とも!」
そう言って夢結はヒュージに飛び乗ると、その頭頂を深々と突き刺す。
敵もそれを振り払おうとするが、力が抜けた上に全身が痺れ、上手くいかない。
その隙に夢結は、先ほどの傷口に鉛玉を叩き込む。
一瞬の硬直の後、二体目のヒュージも爆散していった。
うつつ「うわあ、えげつな・・・」
楓「流石、夢結様ですわね。対人関係もあれくらい思い切りが良いといいんですけど!」
そう言いながら楓も敵に突貫していく。
敵の攻撃をかわし、時には受け止めながら激しい攻防を繰り広げる。
相手もそれに負けじと、彼女の姿を追いかける。
だが急に、楓の姿が見えなくなった。ヒュージも敵はどこかと辺りを見回す。
刹那、ヒュージは足下に、より正確に言えば、下腹部辺りに違和感を覚えた。
楓「adieu(永遠に、さよならね)」
敵の死角となる足下に、彼女は一瞬で潜り込んでいた。
その上を、弧を描くように深々と切りつける。
素早く離脱した彼女の目には、足下から体液を流し、動かなくなったヒュージが見えた。
三体のヒュージが全て倒され、不利を悟ったウツカイ達は一目散に逃げ始める。
きらら「皆さん!あの虫のような姿をしたウツカイだけは、なんとしても打ち落としてください!」
マッチ「きっと指令書を持っているはずだ!」
その声を聞いた皆が、一斉に上空へと攻撃を放つ。
他のウツカイの抵抗も虚しく、弾幕の前に虫型の敵はあっさり墜ちた。
きららが指令書を手早く回収した頃には、ウツカイの姿は消えていた。
楓「どうにかなりましたわね」
小夢「あ、あの!」
カルダモン「本当に、ありがとう」
ランプ「皆さまがいなかったら、今ごろ私たちは・・・」
梨璃「お礼なんていいですよ。リリィとして当然のことをしただけですから」
夢結「感謝を伝えなければならないのはこちらの方よ。一緒に戦ってくれて、ありがとう」
夢結「・・・あの娘はなぜ物陰にいるのかしら?」
楓「しかも先ほどから、瞬きもせずにこちらを見つめていますわ」
かおす「ひょぇ!?わ、わたくしほどの者がリリィの皆さまの輪に混じるなど畏れ多くて・・・。あ、でもその麗しい姿をこの目に焼き付けたくて・・・」
夢結「何となくだけど、様子は見ていたわ。あなたの言葉が切っ掛けで、皆が加勢してくれたのでしょう?」
かおす「あああのあのあれはですね」
梨璃「そんなところにいないで、私たちとお話ししよう?」
そういってかおすの近くに寄り、その手を差し伸べる二人。
その光景に、かおすは真っ白に燃え尽きた。
かおす「私の人生に、悔いはありませんでした・・・」
梨璃「わわ!?戻ってきて〜!!」
楓「かおすさん、でしたっけ?先ほどからわたくし達のことを知っているような様子でしたが・・・」
夢結「でも、ここはあまりにも特異よ。一部の者を除き、ヒュージやリリィの存在自体が認知されていないようね」
梨璃「そんなこと、まずあり得ないですよね」
夢結「ええ、“私たちの世界”なら、まず考えられないわ」
梨夢「お姉様、その言い方はまるで・・・」
夢結「でも、そうとしか考えられないのよ」
五十年も前から、ヒュージによる大規模な侵攻が世界中で起こり、それに対抗するリリィがいる。
それは自分たちが元いた場所なら、公然の事実だ。水や空気のようにありふれたそれを知らないこと自体が、既に異常といえる。
なら、今自分たちがいる“この場所”は・・・。
夢結「きららさん・・・」
きらら「は、はい!」
夢結「初めて会った時は、互いに余裕がなくて流れたけれど、皆で改めて状況確認をしたいの」
カルダモン「そうだね、こちらとしても色々と聞きたい」
翼「私たちも確認したいことがあるんだ」
夢結「ありがとう。ならまず、教えてほしいことがあるわ」
きらら「ここがどこか、ですよね?」
楓「あら、察しが良いんですのね」
きらら「リリィのこと、そして皆さんのことは、かおすさんから少しだけ聞いたことがあるんです。だからこそ、はっきりと言いますね」
一呼吸置いて、きららは言葉を紡ぐ。
きらら「・・・ここは皆さんのいた世界じゃないんです」
ランプ「ここはエトワリア・・・。女神ソラ様の統べる、クリエの地です」
梨璃「聞いたことのない単語ばかり・・・」
夢結「我々も知りうる限りの情報を全て伝えます。だから・・・」
きらら「ええ、こちらも話せるだけ話しますね」
少女たちは、互いに伝えられることの全てを伝えた。
ヒュージ、そしてリリィのことを。
エトワリア、聖典、クリエメイト、そしてウツカイを率いる敵のことを。
そして、リリィの活躍が、物語として語り継がれる世界のあることを。
夢結「私たちが特型ヒュージと思っていたのは、ウツカイのことだったのね」
マッチ「ああ。強さじゃヒュージの方が上かもしれないけれど、聖典を汚染して、多くの世界を蝕むという意味では、同じぐらいに厄介な存在だよ」
梨夢「人類の敵・・・」
うつつ「まあ、現状そっちの世界の方がよっぽどヤバげだけども・・・」
ランプ「うつつさん、言い方、言い方!」
夢結「良いのよ、全て事実なのだから」
カルダモン「目を見れば分かるよ。あなた達がどんな思いでここまで戦ってきたのか・・・」
それにしても、と楓が話題を切り替える。
楓「わたくし達のあれそれが、物語として伝わっているとは驚きですわね」
翼「まあ、クリエメイトも似たようなものだし」
かおす「そうなんですよ!!だからもう興奮していても立ってもいられなくて!!」
梨璃「あ、復活した」
かおす「今後皆さんとお付き合いするために、いくつか聞いておきたいことがあるんです!」
梨璃「な、なにかな・・・」
かおす「鶴紗さんはネコ好きですか!?」
梨璃「なんだ、そんなことかあ。うん!鶴紗ちゃんはネコが大好きだよ!」
かおす「夢結さんは梨璃さんのために甲州までラムネを買いに行きましたか!?ついでに聞くと、学校のかなり近くにラムネの自販機があってうなだれたことは!?」
夢結「そ、そんなことまで知っているのね・・・」
かおす「最後にお伺いします。楓さんは今まで何回梨璃さんのお尻を触りましたか・・・?」
梨璃「へぇええ!?何でそんなこと聞くのぉ!?」
楓「あなた、中々殊勝なことを聞きますわね。ええそりゃあもう触りたいに決まっていますわ!なんなら揉みしだきたいですわぁ〜!!」
梨璃「楓さんも何を言っているの!?!?」
楓「で・す・が!夢結様が目を四六時中光らせておりますので、中々触れませんの!!もう本当に嫌になりますわぁ〜!」
夢結「当たり前でしょうそんなことさせないわ」
かおすは質問の答えを頭の中で反芻する。
そして大きく頷くと、翼たちに向かって大声であることを伝えた。
かおす「皆さん!多分ここにいらっしゃる皆さまは、アニメの世界線の皆さまです!!」
琉姫「かおすちゃん。そんなすっごく良い笑顔でサムズアップしなくても・・・」
小夢「ど〜ゆこと〜?」
翼「私も聞きかじった程度だけど、何でもアニメと舞台、小説とでは描写や展開が違うらしく・・・」
本当は、聞けばどの世界線か一発で分かる質問事項はあった。
だが、かおすは敢えてそれは聞かなかった。
かおす『だってもしそうなら、それを聞くのは悲しすぎます・・・』
一瞬悲痛なを浮かべるが、それを振り払い、かおすが笑顔でリリィに向き合う。
かおす「あ、あの、ふつつかものですが、リリィの皆さまどうぞよろしくお願いします!」
梨璃「こちらこそ、よろしくお願いしますね。そして・・・」
梨璃もまた、クリエメイトの方を向く。
梨璃「私たちの世界の災いを持ち込んで、本当にごめんなさい・・・」
カルダモン「そんな、何も君たちのせいではないだろうに」
夢結「いいえ、ヒュージを仕留めきれず、皆さんを巻き込んでしまった時点で、私たちにも非があるわ」
楓「この山の噂ですが、怪物はヒュージやウツカイのことでしょう。それに、わたくし達は目くらましのガスを放つヒュージとも交戦したことがあります」
梨璃「この霧は、小型ヒュージ、そして親玉のギガント級によるものだと思います」
夢結「龍のうなり声というのも、この山に潜んでいたギガント級のものでしょうね」
きらら「ギガント級・・・。それを追って、皆さんはここまで飛ばされたんですよね?」
ランプ「でもそれなら、その敵をみんなで討てば良いんですよ!ほら、先ほどだって力を合わせて困難を乗り越えたじゃないですか!」
小夢「・・・そこまで簡単な話じゃないかも」
翼「アニメで見たけど、ギガント級は途轍もなく強いんだ。それこそ、今戦った小型のヒュージなんて比べものにならないほど・・・」
マッチ「嘘だろ・・・。あれだって僕たちだけでは敵わなかったのに」
楓「一体で戦略級の強さを持つ、それがギガント級ですわ」
梨璃「それに早く見つけないと、大変なことになるかもしれません」
夢結「・・・ヒュージは細胞を他の生物に寄生させることで、増殖を際限なく繰り広げるわ。発見が遅れて、あのギガント級が更に上のアルトラ級にでもなれば・・・」
琉姫「エトワリアが、ヒュージの巣窟になる・・・?」
梨璃「そうなれば、私たちの世界と同じ事になります」
楓「・・・であればこそ、ヒュージという災厄を押さえ込めず、他の世界を巻き込んだ時点で、我々の責任は重いんですの」
夢結「だからこそ、私たちは全力で皆さんのサポートをします。例えこの身が朽ち果てようと、それがリリィの使命であり、責任ですから」
使命、責任。
自分たちと同じ年頃の少女が、真剣な眼差しでそんな言葉を使う光景に、一同は軽くめまいを覚える。
やはり、彼女らと自分たちとでは、生きる世界が違うのだ。
だが、それでも・・・。
かおす「・・・そんな顔、しないでください」
夢結「え・・・」
かおす「皆さん、凄く悲しい顔してます・・・」
かおすはポツポツと、けれども、確実に言葉を紡いでいく。
かおす「皆さんの言うことは、とても良く分かります。だって、私も皆さんの活躍を見てたから・・・。その姿にずっと憧れていたから・・・」
梨璃「あはは、そのアニメ?だと情けないところ見せちゃったんじゃないかな」
夢結「色々と恥ずかしい姿も、見せてしまったでしょう?」
かおす「そんなことありません!だって、皆さんはどんな悲しいことも辛いことも、いつだって乗り越えて不可能を可能にしてきたじゃないですか!!」
かおすの目から、涙が零れる。
かおす「私は恥も外聞も無く、皆さんのことを見てただけで、だからこんなことを言う資格はないかもしれません。でも!皆さんが情けなく見えたり、恥ずかしく見えるようなことがあっても、それは真剣に悩んで、足掻いた証だから・・・!!」
ランプ「かおす先生・・・」
かおす「私はいつでも挫けそうになって、殻に閉じこもりそうになって・・・、だから皆さんの姿がとても眩しく見えるんです。だけどその分、皆さんには微笑んで、笑っていてほしいなあとも思うんです。だって、泣いたり怒ったりしてるときの皆さんは本当に辛そうだから・・・。今さっきもそんな顔をしてたから・・・」
楓「・・・」
かおす「この身が朽ち果てても、なんてこと言わないでください。私も悲しいですし、何よりリリィの皆さんが辛そうです。ギガント級を倒すのが簡単じゃないことは分かります。それでも、私は、いいえ、私たちは皆さんの力になりたいんです!」
そんなかおすに、うつつが言い添える。
うつつ「投げ出さないだけ、梨瑠たちは偉いじゃん。私だったらガン逃げしてるよ。だから謝る必要なんて無いんじゃない?それにさ、さっき力を合わせて何とかなったんだし、それだけ真剣なら今度も上手くいくでしょ。ここにいる連中なんてあんた達よりポワポワしてるけど、成り行きでなんとかなってるし」
かおす「だから、だから・・・!」
楓がその言をすっと遮る。
楓「かおすさん、それにうつつさんでしたっけ?おどおどしているように見えて、言うことはきちんと言えるじゃありませんか。そういうの、わたくしは好きですわ」
まあ、梨璃さんほどじゃありませんけどね!と付け加えた上で、彼女はかおすの元に歩み寄る。
楓「だから涙を拭いなさい。可愛らしい顔が台無しですわよ?」
その白くすらりとした指で、かおすの涙を払う楓。
唐突かつ大胆な行動に、かおすの頭は沸騰する。
かおす「は、はえ、あえ、そ、そ、その・・・」
楓「ふふ、からかいがいがあるじゃありませんか」
そういってクスクスと笑う楓、それにつられて、梨璃と夢結もクスリと笑う。
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