お久しぶりです。そうでない人は初めまして。
以前このBBSで、以下のSSを投稿させてもらった者です。
【SS】ハッピーシュガーライフ×きららファンタジア
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=775&ukey=0&log=past
【SS】小鳥と不死鳥と(機動戦士ガンダムNT×アニマエール)
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=1471&ukey=0&log=past
最初に投稿したSSを基に、ハピシュガの人というコテハンを使いたいと思います。
今回は、昨年アニメが放送され、現在アプリゲームが配信中のアサルトリリィときらファンのクロスSSを書きました。
今回は10万3千字ほどの文章を、何回かに分けて投稿したいと思います。
全15章分、お付き合いのほどよろしくお願いします。
今回はさっそく、第1章と2章を投稿します。
しばらく皆が呆然としていると、ポルカがその場にやってくる。
ポルカ「お〜い、もうみんな集まってるぞ?」
ミリアム「は!いかんいかん!詮索はまたの機会に!」
梨璃「わわ!迎えに来たのに遅刻したら話にならないよ〜!」
翼「私たちも急ごう!」
琉姫「さあ走って!」
小夢「ふえええ、そんなあ」
かおす「待ってくださあい・・・」
一同はその場を後にした。
アルシーヴから全員に知らされたのは、ギガント級の足取りを掴んだという情報だった。
あの放送の後、エトワリア全域での捜索が始まったのだが、海をテリトリーとする海賊、そしてリュウグウパレスから、海洋生物の様子がおかしいとの情報が入ったのだ。
曰く、一部海域の生物たちが、酷く何かに怯えていたらしい。
アルシーヴ「そこで彼女らと協力し、ここ数日で海中を捜索したのだが・・・」
セサミ「かなり奥深くに、洞窟への入り口があったのです」
アルシーヴ「そこから異様な絶望のクリエを感じてな。中に入ったところ、一部が空洞・・・、つまり陸上と同じように呼吸できる場所があったのだ」
セサミ「残念ながら既にもぬけの殻でしたが、数々の痕跡、および残留したクリエから考えるに、ギガント級がそこに潜んでいたのは間違いないかと」
アルシーヴ「平原から掘り進んできたのだろう。もっとも、その際に使用した穴は丁寧に埋められていたが」
夢結「足取りを掴ませまいとしたのね」
楓「それで、敵は何処に?」
アルシーヴ「それ以上掘り進んだ痕跡が見当たらない代わりに、異様に壁が削れた箇所があったのだ。まるで空間ごと穴を空けたような・・・」
ミリアム「ケイブを作って逃げんたんじゃな」
セサミ「はい、今はそこに潜伏しているものと考えられます」
それを聞いた一柳隊の面々は、困惑の色を隠せなかった。
神琳「・・・厄介ですね」
雨嘉「うん、これじゃどこから出てくるか分からない・・・」
鶴紗「なんなら、神殿の真横にケイブを張られる可能性もある」
梅「そうしたら防ぎようがないな・・・」
アルシーヴ「ところが、そうでもないのだ」
二水「と、言いますと?」
アルシーヴはソルトを呼び寄せる。
彼女の口から、ギガント級の行方について説明が行われた。
ソルト「まず結論から述べますと、敵は平原に再び出る可能性が高いです」
楓「根拠を挙げて頂けますか?」
ソルト「はい。捜索が始まったタイミングに合わせて、絶望のクリエの観測を私たちは行っていました。あれだけのものを撒き散らす存在です。何か動きがあればすぐに分かります」
アルシーヴ「それまでは海底に潜んでいたため、反応が見当たらなかったのだが・・・」
ソルト「アルシーヴ様が海底調査を行った前後に、平原付近で濃い絶望のクリエが観測され始めたんです。それも日増しに強くなっています」
アルシーヴ「空間も不安定になってきている。ここに再び出るぞと、我々を挑発しているかのようだ」
梨璃「もしかすると、ケイブの向こうで準備を整えているのかもしれません」
ソルト「その可能性は高いでしょうね」
そこに梅が口を挟む。
梅「しかし敵さん、なんでそんな回りくどいことを?」
きらら「・・・リベンジ、なのかもしれません」
夢結「それはどういう?」
きらら「以前、ヒナゲシと私たちが戦った話はしましたよね?」
マッチ「彼女、一柳隊にコテンパンにされたこと込みで、僕らを強く恨んでいるんじゃないかなあ」
うつつ「・・・逆恨み」
ランプ「だからこそ、敗北の地で今度は勝利し、自尊心を満たそうとしているのかと・・・」
神琳「しかし、それは彼女の意思であってギガント級の意思ではないのでは?」
ミリアム「・・・クリエとマギは似ているようで違い、違っているようで似ておる」
翼「案外、心を通わせたのかもしれない」
二水「ええ!?ヒュージとコミュニケーションを!?」
楓「それはいくら何でも飛躍のし過ぎでは?」
ミリアム「じゃがのう、現にリリィと交流の多かったかおすの杖からは、明らかにマギが検出されとる」
梨璃「さっき、私のチャームとかおすちゃんの杖が激しく共鳴したの」
かおす「・・・」
ミリアム「この世界については分からないことだらけじゃ。似たようなことが敵の間で起こったとしても、仮定としてはアリだと思うぞい?」
雨嘉「世界が憎いもの同士が、意気投合したってこと?」
楓「それが本当なら迷惑千万ですわね」
アルシーヴが話を切り替える。
アルシーヴ「平原の反応を見るに、Xデーは明後日の早朝だと思われる」
ソルト「日の出と共にケイブ・・・、すなわちワームホールが開かれて、敵がなだれ込んでくる可能性が高いかと」
小夢「明後日・・・」
琉姫「明日じゃないだけマシね」
夢結「ええ、敵が日数分強くなるのだとしても、私たちも同様に強くなれるわ」
かおす「・・・やりましょう」
翼「かおす・・・」
かおす「この杖に宿った何かが、“頑張れ”って呼びかけてくれている気がするんです。だったら、それに応えてあげたいなって」
ランプ「・・・なんだか、かおす先生が少し強くなられた気がします」
小夢「憧れの梨璃ちゃんの影響かな?」
梨璃「そうなの?」
かおす「あばば!否定はしませんが恥ずかしいです・・・」
場に暖かな笑いが巻き起こる。
かおすはどこかばつが悪そうで、それでいてどこか嬉しそうだった。
ポルカ「さて、一段落したとこで今度はおれたちの番だな」
ミリアム「ああ、わしらの成果を見せてやろうぞい。・・・といっても、“あれ”はもう少し調整が必要じゃがな」
それから、二人のプレゼンが行われたのだった。
話し合いとその日の訓練を終え、一同が帰っていく。
勿論、一柳隊とまんが家も例外ではない。
だが、その日は様子が違っていた。
楓「こ、これが梨璃さんのドール・・・!!」
かおす「えへへ、本物そっくりですよね」
梨璃「何だか恥ずかしいよお・・・」
楓「かおすさん。言い値で買い取らせて頂けませんか?」
かおす「ええ!?か、楓さんのお願いでもそれは駄目ですぅ!」
楓「・・・と、言いたいところですが、梨璃さんを愛する気持ちは痛いほど分かります。ここは手を引きましょう」
かおす「楓さん・・・」
楓「そのドール、大切にするんですのよ」
鶴紗「と言いつつ、手が震えてるぞ」
楓「そこ、お黙りなさい!」
最初は梨璃の一言がきっかけだった。
決戦を迎える前に、互いに親睦を深めたいと。
それがあれよあれよと膨らんで、一柳隊が全員で寮に訪ねることになったのである。
ミリアム「おお!魔法少女ものの漫画ではないか。わしこういうの好きでのう」
美姫「そうなの?なら嬉しいな。それ描いてるの私なの」
ミリアム「なんと!いやこれは素晴らしいぞ。お主がどれだけ魔法少女を愛しているのかが、読めば読むほど伝わってくる」
美姫「でも、皆さんは魔法・・・というより魔力を使って戦う本物の魔法少女ですよね?何だか気が引けちゃうなあ」
ミリアム「なーに言っちょる。魔法少女はもっとこうヒラヒラ〜としてて、可愛い使い魔を連れて、キラキラしたエフェクトに囲まれているもんじゃ。ゴツい武器持って、硝煙と汗にまみれて、お子様が見たら刺激が強い戦いしてるわしらが魔法少女なら、それは外道の類だわい」
美姫「そこまで言わなくても・・・」
ミリアム「いやのう、麻冬という姉さまに面と向かってわし言われたんじゃよ、『申し訳ないけれど、あなた達は何か違うわね』と・・・」
美姫「ああ麻冬さん、魔法少女大好きだからなあ・・・」
ミリアム「つまりはそういうことじゃ」
怖浦「クッキーあるけど良ければどお?」
二水「う゛ええ!?なんですかこれえ!?」
怖浦「自信作なのお〜!」
二水「クッキー見てグロテスクって感想抱いたの初めてです・・・」
梅「見た目はアレだけど、中々イケるゾこれ」
二水「そしてそれをボリボリいってる梅様にも驚きです・・・」
怖浦「・・・」
翼「あ、先輩が案外驚いた顔してる」
琉姫「あんなに物怖じしない人、初めて見たのかもね」
梅「ふーらだっけ?前髪伸ばしたままだと目に悪いゾ?ほら、結んであげるから」
怖浦「あ、いやその・・・」
梅「結構可愛い顔してるじゃないか。隠すだなんてもったいないゾ」
怖浦「ああ、そんなことされたら私成仏して・・・」
梅「ん〜?ちゃんと足ついてるから大丈夫だろ」
怖浦「翼ちゃ〜ん、琉姫ちゃ〜ん、助けて〜!!」
翼「おーこれは中々見られない光景」
琉姫「ふふ、頼りがいがあるわね」
神琳「少年漫画とは、こんなに心躍るものなのですね」
雨嘉「この恋愛ものも良い・・・」
小夢「そう言ってもらえると作家冥利に尽きるよ〜」
翼「私もみんなの戦いを見て、インスピレーションが湧いて来そうなんだ。だから感想があればドンドン言って」
夢結「こちらの漫画は何かしら?」
琉姫「ああそれは駄目ぇ!!!」
夢結「〜〜〜〜っ!?!?!?」
神琳「あらあらこれは・・・」
雨嘉「そんな。大事なところがはだけて・・・」
琉姫「嫌ぁぁぁぁぁ!!!!」
小夢「ありゃー遅かったね」
翼「琉姫はその、ティーンズラブ担当なんだ」
梨璃「お姉様、どうされたんですか?あ、私も一緒に読みたいです!」
夢結「駄目よ梨璃!!梨璃はどうか清らかなままでいて!!」
琉姫「私は不健全・・・、存在そのものが不健全・・・」
梨璃「・・・どうされたんですか皆さん?」
神琳「梨璃さんにはまだ早い世界がある。ということですよ」
梨璃「うーん・・・」
思い思いの時間を過ごす少女たち。
だが、楽しい時間ほど早く過ぎるのは世の道理である。
明日が最後の訓練になると、それぞれの住処に戻る一同。
名残惜しさを感じるかおすに、梨璃が声をかける。
梨璃「ちょっとだけ、付き合ってもらえるかな?」
かおす「・・・もちろんです!」
そうして二人だけ、寮の近くで話をすることになった。
草むらの上に座り込む少女たち。
かおすが先に口を開く。
かおす「良かったんですか?戻らなくて」
梨璃「うん、お姉様にはきちんと話してあるから」
かおす「そっか」
今度は梨璃から話題を振る。
梨璃「その杖のことなんだけど・・・」
かおす「結梨さん・・・ですか?」
梨璃「やっぱり知っていたんだね」
一柳結梨。
天真爛漫で、梨璃の妹や子のようでもあった存在。
梨璃を守るため現実に立ち向かい、帰ることのなかった少女・・・。
かおす「私、内容は朧気なのですが、ここ数日怖い夢を見ていた気がするんです」
梨璃「・・・」
かおす「もう駄目だって、そう思ったときに誰かに助けてもらったような。それはとても暖かくて、良い香りがして、でも悲しくてたまらなくて・・・」
梨璃「・・・結梨ちゃんのことだって、確信に変わったのは?」
かおす「梨璃さんのチャームと杖が反応したとき、私思ったんです。まるで姉妹や親子が呼びあってるみたいだなって」
梨璃「姉妹、か・・・」
かおす「私の杖に、どうして結梨さんのマギが宿ったのかは分かりません。でもきっとそれは、強い意味を持っていると思うんです」
一瞬の沈黙の後、梨璃が口を開く。
梨璃「私はね、あの娘に何もしてあげられなかったの」
かおす「・・・」
梨璃「結梨ちゃんに、世界の美しさや素晴らしさをもっと教えてあげたかった。この星空を見せてあげたかった」
梨璃はさらに言葉を紡いでいく。そこには、言いようのない憂いが含まれていた。
梨璃「そんな私なのに、結梨ちゃんは夢で私を励ましてくれたの。だから悲しんでいる暇なんてないんだって、私はもっと強くならなきゃいけないんだって」
でもね、と彼女は続ける。
梨璃「やっぱり涙があふれて止まらないんだ。今もこうしてかおすちゃんを通じて、あの娘に見守ってもらっているんだと思うと、自分が本当に情けなくて、近くにいるのに言葉を交わせないのがもどかしくて」
泣きじゃくる彼女に、かおすが声をかける。
かおす「今の話を聞いて、少しだけ夢の続きを思い出したんです」
梨璃「続き・・・?」
かおす「やっぱりあれは結梨さんでした。そして太陽みたいな笑顔で私に言ったんです。“梨璃によろしく”って」
梨璃「はは、やっぱり見守ってもらってばかりだ」
かおす「それは違います!」
かおすが語気を荒げて梨璃に迫る。
いつもは大人しい彼女が、そうした姿を見せたことに、梨璃は驚いていた。
かおす「あれは、本当にその人が大好きだって笑顔です。結梨さんは確かに梨璃さんを見守っているんだと思います。でもそれは心配で仕方ないとかじゃなくて、心はいつでも一緒だよって、そう伝えたいだけなんです」
梨璃「心はいつでも一緒・・・」
かおす「だから、そんなに自分を責めないでください。その方がよっぽど結梨さんは悲しみます・・・」
梨璃はかおすの杖を見やる。
相変わらずそれは、薄く紫がかった桜色に光っている。
その光に、彼女の心も少しだけほぐれた。
梨璃「・・・そうだね。昼間にあんなことがあったから、心がざわついていた。ごめんねかおすちゃん、情けないところ見せちゃったね」
かおす「私にとって梨璃さんは憧れです。梨璃さんはヒーローで、ヒロインで、私の目標なんです。その気持ちは近くで姿を見るほどに、どんどん強まっていきました」
梨璃「やだな、恥ずかしいよ・・・」
かおす「だから、できる限り笑っていてください。きっと気持ちは結梨さんも同じです。どうか、私や結梨さんの憧れの人を貶さないでください・・・」
それを聞いた梨璃は涙を拭って、そっと立ち上がる。
梨璃「分かったよかおすちゃん。もう泣かない・・・、とまでは言えないけど、できる限り、笑顔でいられるように頑張ってみるよ」
かおす「えへへ、やっぱり梨璃さんには笑顔が似合います」
梨璃「聖典の世界を、そしてみんなのことを・・・」
かおす「守りましょう。私たちで」
夢結「・・・妬けちゃうわね」
楓「足が震えてましてよ、夢結様」
梅「楓もだゾ」
小夢「物語の憧れの人と一緒に居続けるなんて、どうなるのかなって一時期は思ったけど・・・」
翼「中々どうして、良い方向に転がったじゃないか」
琉姫「私たちも頑張りましょう。全てを守るために」
次の日も、彼女たちは特訓に明け暮れた。
真摯に参加する者、愚痴をこぼしつつも、その手は休めない者。皆を縁の下から支える者。
そこには、これまで以上に笑顔が溢れていた。
そして、一同は運命の日を迎える。
その日は、まるで戦いを案じるかのように、朝日が空を紅に染めていた。
平原近くで、皆が待機をしている。
ポルカ「すまねえな、こいつの調整が終わったらすぐ届けに行く!」
カンナ「それまで、よろしく頼む」
ポルカの手に握られている一つの弾丸。
それは、エトワリウムで出来たノインヴェルト戦術用の弾丸だ。
この日のために、リシュカや発明家の老人の手も借りたとっておきの代物。
だがマギとクリエという、異なる力のすり合わせに難航し、今に至る。
ミリアム「心配するでない、あくまでそれは保険じゃ」
鶴紗「それを使う前に、カタをつければ良い」
きらら「そのために皆さん、作戦を練って、ここまで努力をされてきたんですから」
そう声をかける一同の元に、二水の声が響く。
二水「ケイブ、来ます!!」
それは、予想どおりあの平原へと展開されていく。
ワームホールが開くと、そこからギガント級と、大量のヒュージ並びにウツカイが雪崩れ込んできた。
カルダモン「あの時より多い・・・!」
ランプ「見たことないヒュージもいます!」
二水「落ち着いてください。確かに形態は違いますが、私たちの世界でも普通に確認されるヒュージばかりです!」
アルシーヴ「少しタネを変えたところで、我々のやることは変わらない!」
フェンネル「クロモンから伝令・・・。神殿への結界構築、およびソラ様の避難完了しました!」
その報告を聞き、梨璃ときららが号令をかける。
梨璃「一柳隊、出撃!!」
きらら「クリエメイトの皆さん、これが最後の戦いです!リリィに続いてください!!」
駆けだしていく一同。
今、ここで全てが決まる。
今回の投稿はここまでです。
明日は第12章を投稿します。
物語も佳境ですが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
第12章 アジサイ(冷淡、移り気、冷酷、無情、高慢、辛抱強さ)
犬とトカゲを組み合わせたようなもの、両腕をナタのように振り回すもの、高速で飛び回り熱線を撃つもの、壁のように立ち塞がるもの・・・。
以前はいなかったヒュージがウツカイと共に、荒れ果てた平原へ跋扈する。
だが、皆はそれに怯むことなく応戦していた。
リゼ「押せー!!ナイトが中心になってガップリ組み合うんだ!!」
衣乃「盾も新調してもらったんです!みんなのためにやりますよ!」
やすな「ダテにナイトやってないとこ、見せちゃうよー!」
千矢「お山や自然を荒らすなら許さないんだから!」
守りに特化したナイトが大勢いる。
これはリリィにはないアドバンテージだった。
そこでナイトが中心となって前線を支え、後方に攻撃役と支援役を控えさせる、という戦いの基本を突き詰めたのである。
ナイトが守りを固める隙間から、攻撃に長けたクリエメイトたちが進撃を始める。
胡桃「この野郎、食らいやがれ!!」
宮子「ズバーンといっちゃうよ!!」
カレン「みんなカタナのサビデース!」
ジンジャー「あの時のリベンジだ!」
せんしが斬りかかるのは緑色をしたヒュージだ。
相性込みでもタフなヒュージに対し、一人ではなく複数で斬りかかるのも作戦の内である。
敵は触手を伸ばして応戦するが、それを皆が切り裂いていく。
ヒュージ「!?!?」
胡桃「でやあ!!」
カルダモン「これでトドメ!」
カレン「セイヤー!!」
相手が怯んだ隙に、三人が全力で斬りかかる。
敵は深い傷を負い、そのまま動かなくなった。
ジンジャー「いよっしゃあ!!」
胡桃「しかし、緑色してるのにあたしの攻撃通じるのは変な感覚だな・・・」
カルダモン「まあね、でも以前、同じ色のヒュージに炎で攻撃したら効き目がなかったんだ」
カレン「つまりカタナそのものが効いてるんデース!」
宮子「神琳の読みどおりだねー」
別の箇所では茶色をし、金属光沢をもつヒュージの討伐が行われている。
だが、それは風属性の仕事ではない。
悠里「燃え尽きなさい!」
なでしこ「調理してやるんだから覚悟しなよー!」
こはね「フレフレみんな!っと私も戦わなきゃね」
茶色をしたヒュージに立ち向かうのは、火属性のまほうつかい達だ。
複数の大火力を浴びせられた敵は、溶けるように燃えていく。
かなた「効いてる・・・!」
乃々「あんな地獄の特訓したんだから、これで効かなかったら訴訟ものですよ」
千夜「まあまあ、結果オーライじゃない。クリスマス衣装になったかいがあったわ〜」
コウ「ねえあたし水着なんだけど・・・」
りん「大丈夫よ、怪我を負っても私が回復させてあげるから」
コウ「・・・なんでりんはそうりょなのに攻撃部隊混じってるの」
五行思想。
古代中国から伝わる自然哲学の思想であり、この世界は木、火、土、金属、水から成り立っている、と捉えるのが特徴である。
勿論、五行にも得意不得意が存在する。だがそれはエトワリアのそれや、ヒュージが元来持つものとは異なっていた。
神琳「木は金属、つまり斧や剣で切り倒される。金属は火に溶かされ、火は水に消し止められる。水は土にせき止められ、土は木から養分を吸われる・・・」
ミリアム「件のマッドサイエンティスト、そんな改造を施してたんじゃな」
アルシーヴ「今回の場合、土は金属と統合されているのだな」
神琳「皆さんの話を統合すると、この可能性しか考えられなかったんです」
この場合、木は炎を燃やす燃料とはなるが、それは互いの相性の良さとし、得手不得手とはしないのが五行である。
また、五行において木属性は存在するが、風属性は存在しない。
なまじ土は水に、水は炎に効くことは共通していたので、無用な混乱が生じていたのだ。
神琳「ですが、タネが割れてしまえばどうと言うことはありません。それに従ってフォーメーションを組み直すだけです」
アルシーヴ「するとバリアの残り一枚はやはり・・・」
神琳「ええ、金属でしょうね。戦いを見て予想が確信に変わりました」
今日までの特訓は、これまでに無い相性の敵と戦うためのものだ。
実際それは功を奏し、クリエメイトでもヒュージ相手に戦えるようになっていた。
だがマギではなくクリエによる攻撃な以上、複数人が一斉に攻撃しないと効果は出ない。
実際、あちこちで討ち漏らしが生じると共に、ラージ級といった巨大な体躯をもつ敵には、まるで攻撃が効いていなかった。
ソーニャ「手強い・・・!」
ココア「でも、作戦どおりだよ!」
梅「その通り!」
梨璃「そのための私たちです!!」
残った敵や、巨大な敵をリリィが討っていく。
こうすることで互いの負担を減らし、ギガント級にアタックを仕掛ける下地を作るのだ。
琉姫「攻撃は効かなくたって・・・!」
仁菜「サポートなら出来るんだから!」
冠「ん、食らっとくと良い」
雨嘉「みんなのことは守ってみせる・・・!」
エンギ「ああ、それが私たちの使命だ!」
小夢「私も水着ならナイトだからね!」
リリィや一部のナイトが付き添いながら、アルケミストによる攻撃も行われていた。
属性に寄らない弱体化は、ヒュージに対しても有効である。
夢結「感謝します!」
鶴紗「いつもより戦いやすい!」
普段は討伐に手を焼くラージ級も、こうすることで比較的楽に倒せるのだ。
だが敵とて愚かではない。ナイトが守る後方めがけて、ギガント級が爆弾を放ち、一部のヒュージが熱線を放つ。
それらはたちまち火の雨となって襲いかかる。
二水「上空、二時の方向からです!」
花名「させない!」
きらら「みんなに、守りの力を!!」
由紀「元気のおすそ分けだよ!」
花名が炎から守りを固める術を使い、きららがそれをサポートする。
そこに由紀が癒やしの術を施すことで、被害を最小限に食い止める。
こうした対応が出来るのも、二水のおかげだ。
それでも流れてきた弾は、そうりょの中でも別格の者たちが対応に当たる。
なる「そうりょだからって、戦えないわけじゃない!」
榎並「払いのけてやるさ!」
かおす「みなさんに戦う力を!」
シャミ子「行きますよー!!」
戦闘力が高いそうりょに、他の者が支援を行う。
力を得た二人は、迅速に流れ弾を撃ち落とし、薙ぎ払っていく
きらら「これならいけます!」
ゆの「私たちは、前で戦うみんなに元気を分けなくちゃ!」
春香「優ちゃんだって頑張っているんだもん。私も・・・!」
こうして皆は、戦いを上手く回していた。
神琳「アルシーヴさん、わたくし達も前に出ます!」
アルシーヴ「ああ、準備は任せておけ!」
ミリアム「では行ってくる!ポルカ達がきたらよろしくの!」
そういって前へ跳ぶ二人。着地地点では楓たちが戦っていた。
楓「お二人とも、遅いですわよ!」
神琳「そうは言いつつ、余裕はありそうですね」
桃「みんなが力を合わせてるおかげ」
翼「この調子で、どんどん数を減らそう!」
ミリアム「ああ!!」
それから数時間。
皆の奮闘により、雑兵はかなりの数を減らすことが出来た。
現在リリィは、後方にいた二水を含め全員でギガント級を釘付けにしている。
邪魔立ての入らない今をおいて、作戦の決行タイミングはない。
だが、一部の者は懸念を抱いていた。
ランプ「きららさん、先生、ヒナゲシの姿を見たという者がいません」
きらら「普段から隠れるタイプとはいえ、少し不自然かもしれないね」
うつつ「でもさあ、今を逃したら作戦は決行できないんじゃないの?」
マッチ「ギガント級が兵隊を産み出したらまた逆戻り・・・。いいや、状況は悪化するだろうね」
アルシーヴ「・・・」
クリエメイトたちが優勢に戦っているとはいえ、体力や魔力には限界がある。
もう一度兵を整えられれば、前線は一気に崩壊するだろう。
また、余力に限りがあるのはリリィも同じだ。過度に消耗し、作戦の決行が出来なくなれば本末転倒である。
元から背水の陣である。余裕のある内に本丸を叩けなければゲームオーバーだ。
アルシーヴ「・・・作戦を決行しよう。どちらにせよ、今を逃せばチャンスは二度と無いからな。不服があれば、正直に申立ててくれ」
ランプ「・・・いえ、不安でないと言えば嘘ですが、同意見です」
きらら「私もランプと同じ気持ちです」
アルシーヴ「・・・感謝する。周囲の警戒は最大限に行ってほしい」
ランプ「はい!」
不確定要素に注意は払いつつも、今目の前にある確かなチャンスを見据える。
それがアルシーヴの決断だった。
皆が呼びかけを行い、後方で準備が行われる。
アルシーヴが用意したのは、エトワリウム製のカプセルだ。中には言の葉の樹から採れた若枝、葉、実、樹液を煮詰めたものが、ギッシリと詰まっている。
このカプセルが五行における金属と木の役割を果たすのだ。
バレーボール大のそれを、アルシーヴは上空に浮かべ、あの時のように属性のエネルギーをまとわせていく。
そんな彼女に対し、そうりょ達が力を分け与えていった。
やがて上空には、日、月、炎、風、土、水の他に、金属と木の属性を帯びた球体が出来上がった。仲間のサポートもあり、以前のものと比べても巨大だ。
この球体によって五属性のバリアを破壊し、丸裸になった敵に対して、残り一発のノインヴェルトを仕掛ける。これが作戦の全貌だ。
アルシーヴ「みんな、離れろ!!」
そう叫んでアルシーヴは掲げたそれを打ち出す。
だいぶ力を使ったのだろう、彼女はがくりと膝をついた。
球体は地面を抉り、雑兵を消し飛ばしながら進んでいく。
やがてそれはギガント級の目前まで迫った。
敵の親玉から離れるリリィたち。
直後、球体はギガント級へ直撃する。
敵はバリアを張り応戦するが、音を立ててそれらは割れていった。
表の四枚が消失し、最後の一枚が顔を現す。
やはりそれは金属光沢を持つ、とっておきの一枚だった。
だがそのバリアも、全力の攻撃の前にあっさりと割られていく。
属性の奔流を全身に浴びたギガント級は、文字通り大火傷を負ったのだった。
ギガント級「!!!!」
ギガント級が悲鳴を上げる。今が最後のチャンスだ。
残り一発の特殊弾頭を、梨璃が打ち上げる。
梨璃「二水ちゃん、お願い!」
二水「はい!」
ノインヴェルトによるマギスフィアが、順調にパス回しされていく。
最後にそれを受け取ったのは夢結だった。
楓「夢結様、あとは頼みました!」
夢結「ええ!これで決める!!」
マギスフィアが彼女の元から離れ、敵に打ち出されていく。
防ぐ術が相手にない以上、勝敗は確実なものだ。
だが、現実とはいつも移り気で無情なものだ。
鶴紗のレアスキルが直感と共に、ごく近くの未来を見せる。
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