初投稿です。よろしくお願いします。
アニメは視聴しましたが、原作が未読なので設定におかしなところありましたらご指摘お願いします。
完結まで書き溜めてあるので未完にはなりません。
少しずつ小出しにしていきます。
――学校
たまて「いつもやかましいくらいに元気な栄依子ちゃんが、ため息などつくとは」
たまて「進級してピカピカの二年生になったばかりだというのに」
たまて「何かあったんでしょうか?」
冠「心配」
花名「どうしたんだろう……」
栄依子「あれ?やかましいくらい元気なポジションって私が就任しちゃっていいの?」
たまて「どうしたんですか?悩みがあるのでしたら微力ながら私達が相談に乗りますよ?」
栄依子「ごめんごめん、別に何でもないのよ」
冠「本当に?」
栄依子「本当よ、大したことじゃないから」
冠「…………」
栄依子「さっ、次は体育だから、早く準備しましょう」
花名「そうだね……」
たまて「大したことじゃないってことは、何かあったってことですよね?平たく言うと」
冠「栄依子、何か隠してる」
たまて「そういえば私、春休みに栄依子ちゃんと一度も会ってません」
たまて「冠ちゃんと花名ちゃんはどうですか?」
冠「私も会ってない」
花名「私も……。何かあったのかな……?」
――翌日
栄依子「フゥ……」
たまて「ため息が若干マイルドになってますが、栄依子ちゃん、やっぱり何かあったんですよ」ゴニョゴニョ
冠「栄依子、らしくない」ゴニョゴニョ
花名「何とか力になってあげられないかなあ?」ゴニョゴニョ
たまて「ここはストレートに聞くほかありませんね!!」
たまて「栄依子ちゃん、昨日からため息ばかりですよ!!」
たまて「一体何があったというんですか!?」
栄依子「あら、たまったら、今日は一段とテンション高いのねえ」
たまて「栄依子ちゃんが悩みなんかないとか言っておきながらため息ばっかりついてるからですよ!!」
たまて「悩みがあるなら話してみてくださいよ!!」
たまて「あなたの友人たちはそんなに頼りになりませんか!?」
栄依子「いやあ……、そんな話すほどのことでもないからねえ……」
花名「栄依子ちゃん、私達じゃ大して力になれないかもしれないけど」
花名「話せば多少は気が紛れるかもしれないから、だから話してみて」
花名「それに、栄依子ちゃんが落ち込んでるのをただ見てるだけなんてできないよ……」
栄依子「花名……」
冠「えーこ……」
栄依子「…………」
たまて「それに、なんかそんなにため息つくほどの悩み、気になるじゃないですか!!」
栄依子「ああ……、せっかくいい感じの空気だったのに……」
栄依子「じゃあ……、悪いけど……、話聞いてもらっちゃおうかなあ」
たまて「おお〜、そうこなくっちゃ」
たまて「ささっ、話してください」
たまて「どんな悩みもたまちゃんがサクッと解決ですよ」
たまて「でも、お胸の悩みはたまちゃん専門外です」
たまて「って!!誰が貧乳ですかー!!」
冠「私は身長が専門外。あと早食い」
花名「ええっ、私は、えっと……、専門外がいっぱいあって……、ごめんなさい……」
栄依子「花名〜、無理に乗っからなくていいのよ〜」
たまて「脱線してしまい申し訳ありません」
たまて「それでは栄依子ちゃん、悩みを聞かせてください」
栄依子「うん、まあ、私のことじゃなくてね、実はミッキのことなんだけど……」
栄依子「……………………」
花名・たまて・冠「……………………?」
栄依子「……ここじゃ何だし、帰りながらでいいかな?」
たまて「ええ、まあ、いいですよ?」
――放課後 帰り道
たまて「はいっと!!あっという間に放課後なわけです!!」
たまて「さあさあ栄依子ちゃん!!悩みを打ち明けちゃってください!!」
栄依子「……楽しんでないかい?百地さん?」
たまて「ええ、なんというか、ルックス、スタイル、家柄、学力、体力等々」
たまて「あらゆる点で平均を上回るぱーふぇくとがーるの栄依子ちゃんが」
たまて「等身大の人間と同じように悩みを抱いていると知って」
たまて「なんか嬉しくなってしまっているのは確かです」
栄依子「あれ?私嫌われてる?」
たまて「違います違います。そういうんじゃないですって」
たまて「栄依子ちゃんをより身近に感じれてなんか安心したって感じでしょうか?」
たまて「よくは分からないのですが」
花名「……少しだけ共感できるような……」
たまて「分かっていただけますか!?この気持ち!!」
栄依子「まあ……、いっか……」
たまて「さて、栄依子ちゃんのお悩み……」
たまて「先程、妹さんがどうとかおっしゃってましたが」
たまて「妹汁さんとの間に何かあったのですか?」
花名「そういえば光希ちゃん、受験生だったよね?」
冠「星尾に受かったの?」
栄依子「受かってない……、というか受けれなかったのよ……」
花名「ええ〜〜っっ!!??」
たまて「うわぉ、花名ちゃんナイスリアクションです」
たまて「いや、そんなことになっていたとは……」
冠「どうして受験できなかったの?」
栄依子「ちょっとめんどうな病気になっちゃってね……」
栄依子「病気自体はもうとっくに治ってるんだけどね」
栄依子「その頃にはもう入試の日程が過ぎちゃってたのよ……」
たまて「……それは不幸な出来事ですねえ」
たまて「でも栄依子ちゃん、周りの人間がそんなに落ち込んでたら本人さんもかわいそうですよ」
たまて「たとえ志望校に入れなかったとしても」
たまて「それで人生が決まるわけじゃないんですから」
花名「そうだよ、栄依子ちゃん!!志望校に落ちたくらいなんてことないよ!!」
花名「世の中にはもっと大変な思いをしている人がたくさんいるんだよ!!」
たまて「……なんだか今日の花名ちゃん、やたらと真に迫ってますねえ」
冠「さすが身近に浪人生がいる人は違う」
栄依子「私もたまや花名の意見には同感なんだけどね」
栄依子「ミッキは今、高校生ですらないのよ……」
栄依子「もっと言えば……、その……」
たまて「その?」
栄依子「部屋から出てこないの……。そろそろ一ヶ月になるかしら……」
たまて「oh……」
栄依子「第一志望が無理でも、二次募集とか、他にもいろいろ手段はあったんだけどね?」
栄依子「ミッキったら、星尾を受けることすらできなかったのが」
栄依子「よっぽどショックだったみたいで……」
栄依子「このまま引きこもりになっちゃったらと思うと……」
たまて「ああ〜、それは〜〜」
たまて「我々の手に負える案件ではありませんね……」
たまて「栄依子ちゃん、そこまで重い内容とは知らずに軽はずみにはしゃいだりしてしまって申し訳ありません」
たまて「それと生意気なことを言っておきながら、私では力になれそうにありません」
冠「栄依子、ごめん」
栄依子「いいのよ、気にしないで。身内にすらどうにもできないことだもの」
栄依子「簡単に解決できることではないと思ってるし」
栄依子「まあでも、たまのはしゃぎっぷりにはちょっとイラッとしたけどね」
たまて「言い訳のしようもありません……」
栄依子「それでも、少し気が楽になった気がする。聞いてくれてありがとね、みんな」
たまて「そんなぁ……、妹さんが元気になったら知らせてくださいね……」
冠「待ってる」
栄依子「うん、わかった」
花名「……………………」
――夜 十倉家 光希の部屋の前
栄依子「ミッキ、お風呂あがったからね」
栄依子「いつでも入っていいからね」
「……………………」
栄依子「……………………」
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栄依子『ミッキ、受験できなかったのは残念だけど』
栄依子『いつまでも落ち込んでてもしょうがないからさ』
栄依子『そろそろ切り替えていきましょ』
栄依子『とりあえず夕飯食べよ』
栄依子『ミッキ、聞いてる?』
『……………………』
栄依子『ねえミッキ、本当にそろそろ考えないと』
栄依子『どこも行く所無くなっちゃうわよ』
栄依子『とりあえず部屋から出てきてさ』
栄依子『一緒にこれからのこと考えましょう?』
『……………………』
栄依子『ミッキ、あなた、いつまでそうしてるつもりなの?』
栄依子『時間が経てば経つほど出づらくなるのよ?』
栄依子『引きこもってても何にも解決しないでしょ?』
栄依子『だから、お願いだからさ……』
栄依子『出てきてよ……』
『……………………』
栄依子『ミッキ、今日はあなたの友達が心配して来てくれてるんだけど……』
栄依子『会ってみる気はない?』
栄依子『ミッキがどうしたいのか解らないから家の前で待っててもらってるんだけど』
『……………………』
栄依子『やっぱり…………、帰ってもらうことにするわね…………』
栄依子『ミッキ、今日、あなたの卒業式よ』
栄依子『今日学校に行かないともう会わなくなる人とかいるかもしれないのよ』
栄依子『お世話になった先生とかもいるでしょう?』
栄依子『あなたはこれでいいの?ミッキ……』
『……………………』
栄依子『ねえミッキ、ちょっと一緒に出掛けない?』
栄依子『今日はいい天気だし、少しずつ暖かくなってきたしさ』
栄依子『しばらくあなたの声も聞いてないし…………』
栄依子『ねえ……、返事してよ……』
『……………………』
栄依子『ねえミッキ、私、どうすればいいのかなあ』
栄依子『あなたに何をしてあげられるのかなあ』
栄依子『あなたを励ますことが私にできることだと思ってたけど』
栄依子『ただプレッシャーを与えてるだけなのかなあ』
栄依子『ねえ…………、ミッキ…………』
『……………………』
栄依子『ミッキ、今日から私また学校に行くから』
栄依子『……………………』
栄依子『行ってきます……』
『……………………』
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栄依子「……………………」バフッ
栄依子「寝よ……」
この街には、花名や万年さんがいるから…(震
>>20〜28のだんだん時が過ぎて行って、ことが悪化していく所を細かく描けてます
読ませていただきました!
花名にとってもきついですね…
そしてたまてやっぱりいいこです
続きがとても気になります…!
これは…どうなってしまうのでしょうか……たまてちゃんはいい子。
なかなかシリアスですね…続きが気になります!
コメントいただけてるのは本当にありがたいです。
たまていい子という声がありますが、この辺気を使いました。
最初書いてる時は栄依子に対する謝罪とかもなかったのですが、
やるデースのまとめだか作者インタビューだかを読んで、
「そうだった!!たまちゃんっていい子だったんだ!!あずまんがの智ちゃん想像しながら書いてたわ!!」
ってなっていい子に軌道修正しました。
あとたまちゃんだけじゃなくみんないい子です。念のため
それと20からの過去の回想も最初はありませんでした。
ただぞれだと栄依子がどれだけストレスを受けているのか読んでくれている人に伝わりづらいと思い、追加しました。
今後の栄依子の行動に説得力を持たせたかったのです。
それでは再開します。読んでくれる人はいるでしょうか
――同刻 花名の部屋
花名「……………………」
花名(よし……)
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
プルルルルル
栄依子『……どうしたの、花名?』
花名「あっ、ごめん栄依子ちゃん、こんな夜中に……」
栄依子『まだ9時よ?それで、どうしたの?』
花名「あっ、えっとね、栄依子ちゃん。今日話した妹さんの話なんだけどね」
花名「やっぱり何か力になれないかなって思って……」
栄依子『……………………』
花名「……………………」
花名「な、何か、私にできることってないかなあ……」
花名「うわっ?」
花名「栄依子ちゃん!?何かすごい音がしたけど!」
花名「あの……」
花名「……………………」
花名「……………………」
栄依子『ごめん、花名』
栄依子『スマホ落としちゃった』
栄依子『あ、あとミッキのこと?』
栄依子『気持ちはありがたいんだけどね?』
栄依子『別に花名がそこまで気にすることじゃないのよ?』
栄依子『だからそんなに心配しないで』
栄依子『きっと大丈夫だから』
花名「……ごめんね、栄依子ちゃん……」
花名「余計なおせっかいかなとは思ったの……」
栄依子『……………………』
花名「でも栄依子ちゃん、聞いてほしいことがあるの」
花名「私、実はね……」
――翌日 学校
たまて「おはようございます、栄依子ちゃん」
冠「おはよう、栄依子」
栄依子「おはよう、たま、冠」
たまて「おや?昨日と比べて少し元気になったように見受けられますねぇ」
たまて「何か妹さん絡みで進展がありましたか?」
栄依子「……まあ進展ってほどじゃないかもだけどね」
栄依子「今回の件で力になってもらえそうな人が見つかったのよ」
たまて「おお〜!!流石栄依子ちゃんです!!」
たまて「まさか心理カウンセラーのお知り合いまでいたとは!!」
たまて「栄依子ちゃんの人脈には私たまちゃんも脱帽です!!」
栄依子「そんな大それた人じゃないんだけどね」
冠「どんな人?」
栄依子「普通の人よ。昔浪人した経験があるんだって」
花名「おはよう」
たまて「おはようございます花名ちゃん!!」
たまて「花名ちゃん、朗報ですよ!!栄依子ちゃんの妹さんに心強い味方が現れました!!」
花名「えっ?えっ?あの……、えっと……」
栄依子「ほぉら、たま、花名が困ってるわよ」
たまて「これはこれは失礼しました」
栄依子「まあそういうわけで、今日の放課後はその心強い方と待ち合わせてるから」
栄依子「今日は先に帰るからね」
冠「わかった」
たまて「分かりました!!」
花名「……………………」
花名(び……、びっくりした……)
――放課後
栄依子「じゃあ、また明日ね、みんな」
冠「また」
たまて「いい報告待ってますよ!!」
花名「またね……、栄依子ちゃん」
たまて「さてさて、栄依子ちゃんは帰ってしまいましたが」
たまて「なんだか最近放課後になったら真っ直ぐ帰る日が続いているとは思いませんか?」
たまて「栄依子ちゃんには申し訳ないですがちょっとだけ」
たまて「ちょぴ〜っとだけでもいいのでどこかに寄って行きませんか?」
花名「あっ、ごめんたまちゃん」
花名「私も今日はその……、予定があって……」
たまて「なはぁぁぁぁ!!」
花名「ごめんね……、その……、また明日ね……」
たまて「うぇぇぇぇん、また明日〜〜〜!!」
たまて「元気な花名ちゃんにお目にかかれる日を楽しみにしてます〜〜〜!!」
冠「また」
たまて「あっという間に二人になっちゃいましたね……、冠ちゃん……」
冠「うん」
たまて「アイス……」
冠「…………」
たまて「せめて帰る前にアイスでも食べていきませんか……?」
冠「合点」
花名(放課後に駅前に集合、放課後に駅前に集合……)
花名(急がないと……、栄依子ちゃんが待ってる……)
花名(急いで……、早く……、早く……)
花名(…………駅、…………遠い…………)
――駅
花名「え…………」
栄依子「早かったわね、花名」
花名「ハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッ」
栄依子「走ってきてくれたのね、ありがとう、花名」
花名「ハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッ」
栄依子「……とりあえず何か飲み物買ってくるわね」
花名「ありがとう栄依子ちゃん。生き返ったよ……」
栄依子「ううん、気にしないで。今日は私が花名にたくさんお世話になるんだから」
花名「う……、うん……。頑張ってみるね……」
花名(光希ちゃんが私と同じように受験に失敗したと分かって)
花名(力になりたくて思わず電話しちゃったけど)
花名(私なんかが力になれることなんて本当にあるのかなあ……?)
――栄依子の地元
栄依子「はい、我が地元に到着〜。まあここからもう少し歩くんだけどね」
花名「うん、大丈夫だよ」
栄依子「でも驚いたわ」
栄依子「まさか花名が浪人してたなんてね」
花名「うん、ごめんね……。今まで秘密にしてて……」
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花名「私、実はね……」
花名「実は……、浪人してるの……」
栄依子『えっ?浪人って……、志温さんのことでしょ?』
栄依子『前に就職浪人って言ってたけど……』
花名「違うの。私もなの……。私も浪人してるの……」
花名「受験の時におたふく風邪にかかっちゃって……」
花名「どこも入試を受けれずに浪人生になって……」
花名「だから……、もう私、十八歳なの……」
栄依子『……………………』
花名「……………………」
栄依子『花名』
花名「ひゃいっ!!」
栄依子『明日、ミッキと会ってくれる?』
花名「……うん!!」
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花名「言わなくちゃいけないとは思ってたんだけど……」
栄依子「聞く方からしてみればそんなに気になるようなことじゃないけど」
栄依子「やっぱり言いづらいものなのかしら?」
花名「うん……。言いづらかった……」
花名「私も大丈夫だとは思ってたんだけどね……」
花名「でも、もし万が一にもみんなとの関係が変わってしまったらと思うと……」
花名「どうしても言い出せなくて……」
栄依子「そっか……」
栄依子「でも、言わなきゃいけないと思ってるなら」
栄依子「冠とたまにも早く教えてあげないとね」
栄依子「特にたまなんか拗ねちゃうかも」
花名「うん……。でも、今は光希ちゃんをなんとか元気づけてあげないと」
栄依子「そうね……」
栄依子「きっと一番つらいのはあの娘なのよね……」
栄依子「花名」
花名「はっ、ひゃい!!」
栄依子「私、実はね、花名に物凄く期待してるの」
栄依子「なんとかミッキを元気にしてあげて」
花名「栄依子ちゃん……」
花名(そうだった)
花名(昨日の夜、どうして私が栄依子ちゃんに電話したのか)
花名(光希ちゃんが私と同じように受験に失敗したと分かった時に)
花名(私なら光希ちゃんに寄り添ってあげられると思ったからだ)
花名「うん。任せて、栄依子ちゃん」
――十倉家
栄依子「着いたわよ。ようこそ我が家へ」
花名「お、おじゃましま〜す……」
栄依子「どうぞどうぞ」
花名「……光希ちゃんは部屋にいるのかな……?」
栄依子「そうね……」
栄依子「リビングにも……」ガチャ
栄依子「お風呂にも……」ガチャ
栄依子「トイレにもいないところを見ると……」ガチャ
栄依子「今日も部屋にいるみたいね……」
――光希の部屋の前
栄依子「ここがミッキの部屋よ」
花名(なんとなく空気が重く感じる……)
花名(……どうしよう……、まずは……)
栄依子「花名、お願いね」
花名「う……、うん……」スゥ……
花名「光希ちゃん!!」
花名「私、栄依子ちゃんの友達の一之瀬花名です!!」
花名「何回か会ったことあるけど、覚えてるかな!?」
花名「光希ちゃんの身に何があったのか栄依子ちゃんから聞きました!!」
花名「凄く辛かったと思いますし、今も苦しいと思います!!」
「……………………」
花名「その……、私も!!私も同じでした!!」
花名「私も……、実は!!高校受験の時に病気で受験できなかったんです!!」
花名「だから……、その……」
花名「高校には皆よりも一年遅れで入学しました!!」
花名「だから私、本当は栄依子ちゃんよりも一つ年上なんです……」
花名「私も中学卒業直後は本当に辛かったです」
花名「どうして私ばっかりこんな目に合うんだろうって」
花名「私なんかもう生きててもしょうがないんじゃないかって」
花名「家の隅っこでずっとそんなことを考えていました」
花名「そんな時にお母さんが環境を変えるために」
花名「従姉の管理するアパートで一人暮らしを進めてくれて」
花名「環境が変わって新しい生活が始まったの」
花名「でも、やっぱり楽しいと思えることなんて何一つなくて……」
花名「浪人中だったからってこともあったけど、毎日毎日勉強して……」
花名「そうしてないと辛くて仕方がなかったから……」
花名「そうしているうちにまた受験の時期になって」
花名「今度は何事もなく受験を終えて無事に志望校の星尾に合格できたの」
花名「それでも入学式の日までずっと不安だった……」
花名「周りの子たちよりも一つ年上の私がちゃんと周りと馴染めるのかなって思うと」
花名「恐くて仕方がなかったの……」
花名「でも入学式の日に栄依子ちゃん達が声をかけてきてくれて」
花名「そこからみんなと仲良くなることができたの」
花名「それからは毎日が楽しくて」
花名「やっと苦労が報われたのかなって思ったかな……」
花名「それに、浪人している時は気づけなかったことにも気づけるようになったの」
花名「あの辛い浪人生活はずっと一人で戦っていた気でいたんだけど」
花名「本当はお父さんやお母さんに志温ちゃん」
花名「たくさんの人が私を支えてくれていたんだって」
花名「助けてくれていたんだって気づくことができたの」
花名「ねえ光希ちゃん!!」
花名「光希ちゃんにもそんな人がいるよね!!」
花名「その人たちはきっと光希ちゃんのことを助けてくれるはずだよ!!」
花名「もちろん私も光希ちゃんの力になりたいって思ってる!!」
花名「だからもう一度頑張ってみよう!!」
花名「今は本当に辛いと思う!!苦しいと思う!!」
花名「でもね、ずっとじゃないよ!!」
花名「また一年間頑張って、高校生になれたら」
花名「きっとまた楽しいことが待ってるから!!」
「……………………」
花名「だからね、光希ちゃん……」
栄依子「……………………」
花名「お願いだよ……」
栄依子「……………………」
花名「光希ちゃん…………」
栄依子「花名……、ありがとう」
栄依子「もう十分だから……」
ギッ
光希「……………………」ソロ-リ
花名「あっ……、光希ちゃん……」
栄依子「ミッキ…………」
光希「……………………」
花名「あっと……、その……、えっと……」
光希「……………………」
栄依子「……………………」
花名・栄依子・光希「……………………」
光希「」ビクッ
花名「」ビクッ
栄依子「……………………」
花名・光希「……………………」ドキドキ
栄依子「フゥ」
栄依子「積もる話もあるんだけどね」
栄依子「まずはお風呂に入ってきなさい」
栄依子「全然お風呂に入ってないでしょ」
栄依子「髪がボサボサのガビガビよ」
栄依子「あと何というか臭うのよ」
光希「……そうですか?」クンクン
光希「自分ではわからないのですが」
栄依子「ええぇえ!?わからないの!?」
栄依子「ちょっと花名からも言ってあげてよ。臭うわよね?」
花名「う、うん……。ちょっと、いや、かなり……。うん……」
光希「あの……、でも……、その……」
栄依子「花名にはもう少し待っててもらうから」
栄依子「というわけで、いいかしら、花名?」
花名「うん、大丈夫だよ」
栄依子「さあ、早くさっぱりしてらっしゃい」
光希「はい…………」
――リビング
花名「光希ちゃんの様子はどう?栄依子ちゃん」
栄依子「うん、多分もう大丈夫だと思う」
花名「そっか……、良かった……」
栄依子「ええ……、本当に……」
栄依子「……………………」
花名「…………?」
花名「栄依子ちゃん……?」
栄依子「なあに?花名?」
花名「なんだかあまり元気がないみたいだけど……」
栄依子「…………別に、大したことじゃないのよ」
花名「……………………」
栄依子「……………………」
栄依子「ただね、ただ…………」
栄依子「私ね、お姉ちゃんなのよ」
花名「うん」
栄依子「もう十五年あの娘のお姉ちゃんやってきてるの」
花名「うん」
栄依子「あの娘がつらい時や苦しい時に一番力になってあげられるのは」
栄依子「お母さんでもお父さんでもなくて」
栄依子「私だと思ってたの」
栄依子「だから今回のことも光希を元気づけてあげられるのは」
栄依子「私しかいないって思ってたの」
栄依子「でも、いくら呼びかけても光希は部屋から出てきてくれなくて」
栄依子「でも、花名が呼びかけたらすんなり出てきて」
栄依子「それが悔しいというか」
栄依子「光希にとって私は取るに足らない存在だったのかなとか」
栄依子「私があの娘にしてきたことって何だったのかなって」
栄依子「よく分からなくなってきちゃったのよね」
花名「栄依子ちゃん……」
花名「え……?」
栄依子「ああ、嘘じゃないのよ。今言ったことは全部本心よ」
栄依子「でも一番じゃないの」
栄依子「一番嫌なことはね」
栄依子「光希が部屋から出てきたことを嫌だと思ってしまったことなの」
花名「栄依子ちゃん……?」
栄依子「花名に期待していたのは本当よ」
栄依子「同じ境遇の花名が呼びかければ部屋から出てきてくれるかもしれない」
栄依子「でも、心のどこかでやっぱり無理なんじゃないかって」
栄依子「私が光希にしてあげられないことを花名にできるはずがないって」
栄依子「……無理であってほしいって」
栄依子「多分だけど……、心のどこかでそんな風に考えてたの」
栄依子「でも、あの娘は自分の手で部屋のドアを開けた」
栄依子「その時に私に湧いた感情は喜びや安心なんかじゃないの」
栄依子「何で出てきたの?」
栄依子「私が呼びかけても出てきてくれなかったのに」
栄依子「ほとんど面識のない人間の呼びかけになんて……、応じてほしくなかった……」
花名「……………………」
栄依子「ひどいお姉ちゃんよね……」
栄依子「妹に元気になってほしくないなんて考えるなんて」
栄依子「お姉ちゃん失格よ……」
栄依子「だからそんな考えを抱いてしまった自分が」
栄依子「嫌で嫌で仕方がないの…………」
栄依子「ごめんね、花名」
栄依子「こんな話聞かされても困っちゃうよね」
花名「……………………」
花名「栄依子ちゃん」
栄依子「……何?」
花名「もし栄依子ちゃんが光希ちゃんに対して」
花名「本当に悪いことをしていると思っているのなら」
花名「謝ればいいんだよ」
花名「それで済む話だよ」
栄依子「……………………」
栄依子「そっかぁ……」
栄依子「そうよね……」
花名「うん、そうだよ」
栄依子「うん……、そうしようかな」
栄依子「なんだか花名にアドバイスされるのって不思議な感じね」
花名「うん、私もそう思う」
栄依子「それに、一つ年上だってことが判明したのも相まって」
栄依子「花名が急にお姉さんになったみたい」
花名「そんなことないよ!同級生だよ!!」
栄依子「これからは花名さんって呼ばないといけないかしらね」
花名「やめて」
栄依子「……………………」
光希「上がりました」
花名「あ、うん」
光希「……どうかしましたか?」
花名「何でもないよ」
栄依子「そうよ、何でもないのよ……」メソラシ
光希「そうですか」
栄依子「そうだ、あのね、光希」
光希「あっ、はい……」ビクッ
栄依子「ごめんね、ダメなお姉ちゃんで」ギュッ
光希「あの、姉さん?姉さんは何も……」
栄依子「本当にごめんね……」
光希「はい……」
花名(謝るということは時にただの自己満足でしかないと思う時がある)
花名(でもそれで心が楽になるのなら、今の栄依子ちゃんには必要なんだと思う)
花名(栄依子ちゃんが本当に光希ちゃんに元気になってほしくないと思ってしまったのかは)
花名(私にはわからないけれど)
花名(そのことを今後引きずらないように)
花名(一度リセットするべきだ)
花名(ひいてはそれが光希ちゃんのためにもなるはずだから……)
栄依子「そうだ、花名」
栄依子「花名の浪人時代の話、聞かせてくれないかな?」
花名「……うん、少し話しておこうかな」
栄依子「ほら、ミッキも聞きたいでしょ?」
栄依子「一緒に聞きましょ?」
光希「あっ、はい!!」
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栄依子「ああ〜、それで花名って全然体力が無いのね」
光希「私は二の舞にならないようにしないといけないですね」
花名「う〜〜ん、でも人によるっていうか……」
花名「万年さんは全然運動できるみたいだし……」
ガチャッ
栄依子「あら?お母さん帰ってきたみたい」
光希「!?」
栄依子「ミッキ、ちゃんとお母さんに……」
栄依子「どうしたの?服掴んだりして」
花名(あっ……)
栄依子「ダメよ?けじめはつけないと」
ガチャッ
紗枝子(十倉母)「ただいま〜」
栄依子「おかえり、お母さん」
花名「お、お邪魔してます」
紗枝子「あらあら、いらっしゃい。あなたが花名ちゃんね」チラッ
紗枝子「栄依子から話は聞いてます。娘が本当にお世話になりました」
花名「い、いえ、それほどでも……」
紗枝子「いえいえ、本当にありがとうございました」
光希「……………………」
紗枝子「光希!!」
光希「」ビクッ
花名「」ビクッ
栄依子「……………………」
栄依子「ほら、ミッキ。隠れてないで」
光希「……………………」
紗枝子「……………………」
紗枝子「今日、夕飯にあなたの好きなもの作るからね」
光希「あの……、はい……」
紗枝子「それと、嫌いなものも作るから」
光希「ハイ…………」
栄依子「ふふっ」
花名(よかった……)
花名「それじゃあ、私はそろそろお邪魔しますね」
光希「あっ、あの……」
紗枝子「あら〜、せっかくだから花名ちゃんもおあがりになって」
花名「あっ、でも私はそろそろ……」
栄依子「あら〜、いいじゃない。志温さんには私が連絡しておくから」
花名「えっ、あの〜〜……」
紗枝子「すぐ準備するから、ちょっと待っててね」
栄依子「さあさあ、座った座った」
花名「ッア〜〜〜〜〜〜〜〜」
区切ります。
途中コメントいただきありがとうございます。
うれしい
ここまでで半分くらいなのですが、見直しも兼ねながらだと思ったよりも時間がかかるなあと
あと思ったよりも長い話作ったのかなあと
続きはまた明日
ご興味がある方は覗いてみてください
花名ちゃんの運命やいかに!?
個人的には
出てきたばかりのミッキに「臭い」は可哀想かなと感じたのと母親の「嫌いな物も作る」がちょっと引っかかったけど原作・アニメで花名の母の言動で引っかかってたくらいの私なので別に気にするところではないかなとも思います
出て来たことを嫌だと思ってしまったことが嫌というのがリアルな感情を表現できていたと思います。
みんな優しいです。
やっぱり栄依子ちゃんも人間なんだな…って感じるシーンですね。
「それと、嫌いな物も作るから。」が栄依子のお母さんぽくていいなと思いました。
花名のやめてが真に迫っててやっぱり浪人してたことで関係が少しでも変わるのが嫌な感じが出てて良いです…
謝ることは時に自己満足でしかない…か。確かにそう思うときもあります。しかし、それでも栄依子や光希に必要だと言う>>99の花名の心の声が浪人経験者故に重みがあります。
これでまだ半分か…続きが気になります
花名と栄依子の、一見対称的な二人が秘密共有するっていう関係が超好きなのでめちゃくちゃ楽しませてもらってます。応援してます。
ミッキが部屋から出てくる場面、現実でも難しいところなんだよなぁ...こういう場面では変に優しくするよりは自然体のほうがいいって言われることが多いし、個人的には臭いって正直に言うのは良いんじゃないかと思うんだけど。人それぞれなとこあるから答えなんてないんだろうけど、ミッキは立ち直れそうで良かった。
コメントいただけてうれしいです。
この設定考えてから書き出してみて、なんというか花名と栄依子の普段は見せない姿を書きたくなってきてしまいまして。
花名はなんか頼れるというか達観しているというか
栄依子は普段余裕がありそうな感じなのでちょっと弱らせてみました
原作未読なので栄依子母がどんな感じなのかは試し読みで一回見かけただけなので勘でした。
ただやはり栄依子より強くて光希のようなユーモア(?)な面の両方を兼ね備えていそうかなあと
謝るということは時にただの自己満足でしかないの所はプロでもない人間がこういうことを書くのは寒いかなとも思ったのでやめようかとも思いましたが、寒くてもいいやと思って乗せちゃいました。
それに花名らしくなさも醸し出したかったので
嫌いなものも作るの所は説教一時間コースを嫌いなものを食べるだけで許してもらえるという優しさあふれるシーンのつもりでしたが伝えるというのは難しいものです。
あと引きこもりが部屋から出てきた時に臭いと言ってやるのは礼儀というかお約束というか様式美のようなものだと思っております。
咲SSの末原引きこもりの話で覚えました
そして花名と栄依子の秘密の共有は(浪人に関することは)二人の秘密じゃなくなってしまうのは申し訳ないのですが…………
とりあえず続き載せます。
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花名「ご、御馳走様です……」
紗枝子「お粗末様です」
花名「う〜〜……」
栄依子「お母さん、作り過ぎよ」
光希「」マッサオ
栄依子「ミッキも大丈夫?」
栄依子「じゃあ花名」
栄依子「引き止めといてなんだけど、これ以上遅くなるとそろそろ志温さんが心配するかも」
花名「そ、そうだ、帰らないと」
栄依子「駅まで送るわ」
花名「ありがとう、栄依子ちゃん」
光希「あの、私も……」
紗枝子「あなたは止めときなさい」
光希「あ……」
光希「……………………」
花名「……………………」
花名「光希ちゃん、また来るね」
花名「そしたら、またお話ししよう?」
光希「……はい」
――駅への帰り道
栄依子「花名、今日は本当にありがとね」
栄依子「ミッキはきっと大丈夫。これからの困難にも立ち向かえると思う」
花名「うん、本当に良かったよ」
栄依子「次は花名の番ね」
花名「え……、私?」
栄依子「たまと冠に浪人のこと話さないと」
花名「あ〜〜…………、うん、そうだね…………」
花名「そのうち、話せるといいんだけれど」
花名「まあ、焦ることでもないし。機会があれば話すことにするね」
栄依子「機会っていつよ?」
花名「次の夏休み……、いや、文化祭……」
花名「もういっそ卒業の時とか……」メソラシ
栄依子「明日にしましょうか」
花名「早いよ!?」
花名「心の準備が全くできてないよ、栄依子ちゃん!!」
栄依子「でも、日時を指定しないといつまでもズルズルと先延ばしになるわよ?」
栄依子「そうしているうちに二年生になっちゃったんでしょ?」
花名「で、でも明日はあまりに急な気が……」
栄依子「私には言えたのに」
花名「それとこれとは話が別で……」
栄依子「ごめん、やっぱやめとこうか」
栄依子「確かに急ぐことでもないし、そんなに辛いなら……」
花名「えと……、あの……」
花名(恐い……、恐いけど……)
花名(このままじゃ本当にいつまでも浪人のこと言えないままだよ……)
花名(でもやっぱりもう少し後でも……、急に話したくなる日が来るかもしれないし……)
栄依子(ものすごく葛藤してるわ)
栄依子「それじゃあ、明日の放課後、寄り道がてら決行ね」
栄依子「覚悟を決めなさい、花名」
花名「ふえぇぇぇ…………」
――翌日 学校
栄依子「たま、おはよ〜」
たまて「おはようございます、栄依子ちゃん」
たまて「なんだか一段と晴れやかな笑顔ですなあ」
たまて「もしや妹さんの件で進展があったのでは?」
栄依子「そうなのよ!!昨日話した人に家に来てもらってミッキのこと説得してもらったの」
栄依子「そしたらものの数分でミッキが部屋から出てきたの!!」
たまて「マジですか!!想像以上のプロフェッショナルじゃないですか!!」
たまて「これは百地も人生に行き詰まったら相談させていただくほかありませんね!!」
栄依子「そうねえ〜。私もちょっと愚痴聞いてもらっちゃったし」
たまて「おやまあ……。いやはやとにかく妹さんが元気になったわけですよね!!」
たまて「良かった!!本当に良かったです!!」
たまて「良かったついでに放課後どこかに遊びに行きませんか!?」
たまて「百地はもう四人で遊びに行きたくて仕方がないのですよ!!」
栄依子「ああ、それなら私も調度……」
花名「おはよ〜」
冠「おは」
たまて「おはようございます!!花名ちゃん、冠ちゃん!!」
栄依子「二人ともおはよ〜」
たまて「お二人とも朗報ですよ!!」
たまて「なんと栄依子ちゃんの妹汁さんが復活しました!!」
たまて「復活ッッ!!」
たまて「妹汁復活ッッ!!妹汁復活ッッ!!」
冠「良かった」
花名「うん。でもたまちゃん、凄いテンションだね……」
たまて「いやあ、すみません」
たまて「ついつい興奮してしまいました」
栄依子(復活……、十倉……、グラップラー……、光希……)
栄依子「プッ」
花名「?」
栄依子「フフッ、まあこれからが大変だと思うんだけどね」
栄依子「あの子ならきっと何とか乗り越えられるわ」
花名「良かったよ……、本当に……」
たまて「それでですねえ。十倉家の問題も一段落着いたことですし」
たまて「みんなで遊びに行きたいなあなんて」
たまて「思ってるわけなのですよ」
たまて「どうです?放課後に一つクレープでも食べに……」
栄依子「賛成〜。花名も冠も行くわよね?」
花名「ええ?ええと……」
冠「合点」
たまて「いやはや四人でお出かけもなんだか久しぶりですねえ。楽しみです」
栄依子「私もほとんど家にいたから放課後が待ち遠しいわ」
冠「クレープ✨」
花名(どうしよう……。断れない……)
――放課後
たまて「さあさあ放課後ですよ!!待ちに待った放課後ですよ!!」
たまて「クレープが!!クレープが私達を!!待っているんです!!」
たまて「クレープ……ハァハァ、クレーーープ〜〜〜…………ハァハァ」
たまて「クレープを……早く、速く、疾く…………ハァハァ」
栄依子「禁断症状ですよ、百地さん」
冠「ヤベェ」
たまて「それはそうと、花名ちゃんはなんだか浮かない顔をしていますねえ」
たまて「この先の人生をあきらめたような表情ですよ」
たまて「連帯保証人にでも逃げられたのでしょうか?」
栄依子「さすがにもう少し女子高生らしい悩みなんじゃないかしら」
冠「顔が青い」
花名(どうしようどうしようなんて言おう嫌われないかな変に思われないかなもしこれがきっかけでみんなに嫌われたらせっかく仲良くなれたのに一人ぼっちになっちゃってそれどころかクラス中の噂になって最悪イジメられたりなんてこともそしたらもう学校に通えなくて本格的に引きこもりにそしたらもう一生経済面でお父さんとお母さんに頼らないといけなくなっていやそんなことできないからもう首を吊るか手首を切るか線路に飛び込んで)
たまて「花名ちゃ〜ん、戻ってきてくださ〜い」
――公園
たまて「皆さん、思い思いのクレープを手にしましたでしょうか!?」
栄依子「うん、OKよ」
冠「バッチリ」
花名「大丈夫……」
たまて「青い空の下で気心の知れた友人たちとクレープを食べる……」
たまて「これ以上の贅沢って存在するのでしょうか……」
栄依子「いやあ……、さすがに…………」
栄依子「まあでも……、結局のところ贅沢ってこういうことなのかもね……」
冠「おいしい」モグモグ
たまて「そんでもって花名ちゃんの顔の青さは継続中ですか」モグモグ
たまて「クレープを食べても元気にならないとは」モグモグ
たまて「いったい何が花名ちゃんをそんなに苦しめてるんでしょうか」モグモグ
たまて「まるで締め切り直前にバグが見つかったプログラマーのような顔ですねえ」モグモグ
栄依子「故郷から姉が訪ねてくる喫茶店店員のような顔でもあるわね」モグモグ
冠「マイノリティ殺しに合った女子高生キャンパーのような顔」モグモグ
たまて「ライブの途中で転んで下着を披露する羽目になった女子高生ベーシストのような」ムグムグ
栄依子「ホームステイしている金髪美少女に帰省された大和撫子風女子高生のような?」ムグムグ
冠「高級肉を炭化させた没落お嬢様のような」ムグムグ
たまて「宝くじが当たる確率を検索する女子高生ギタリストのような」ハグハグ
栄依子「青春コンプレックスを発動させた超絶根暗女子高生のような?」ハグハグ
冠「肝臓を売ることを決意したジャージスト女子高生のような」ハグハグ
たまて「最後の御三方は同一人物という認識でお間違え無く?」
栄依子「さあ〜、どうかしらねえ〜」
たまて「花名ちゃん!!」
花名「はっ!!ひゃいっ!!」
たまて「そんな青い顔してどうしたんですか!!」
たまて「こっちがボケ倒してるのになんのリアクションもないのはちょっと寂しいですよ!!」
たまて「悩みがあったら相談してください!!力になれるかはわかりませんが!!」
栄依子「ボケ?連想ゲームかと思ってたわ」
冠「ちゃうねん」アグアグ
花名「えっと……、その……、あのね」
たまて「うんうん」
花名「私、たまちゃんと冠ちゃんに、その……、話とかないといけないことが……」
たまて「ええ、何でもおっしゃってください」
たまて「なんかナチュラルに栄依子ちゃんがハブられてますが」
たまて「気にしない方がいいんでしょうか?」
栄依子「私はもう聞いてるからいいのよ」
たまて「な!?」
冠「!?」ウグウグ
たまて「なんですと〜!?」
たまて「どういうことですか花名ちゃん!?」
たまて「栄依子ちゃんには悩みを打ち明けるのに私と冠ちゃんには頼ってくれないんですか!?」
たまて「そりゃねぇですよですよ!!そりゃねぇですよですよ!!」
花名「ええ〜!?」
冠「ごちそうさま」
栄依子「ほおら、たま、落ち着きなさい」
栄依子「あと別に花名は悩み事があるわけじゃないからね」
たまて「でも今から花名ちゃんが話すことは栄依子ちゃんだけが知ってることなんですよね!?」
たまて「それってどうなんですか?抜け駆けじゃないんですか?」
栄依子「抜け駆けとは……。あと私が聞いたのだって二日前よ?」
たまて「プキー!!そういう問題ではないのですよー!!」
たまて「栄依子ちゃんだけが知ってるというこの状況がもうアウツ!!」
たまて「アウトなのですよ〜!!」
栄依子「困ったなあ」
たまて「ともあれ花名ちゃん!!」
花名「はっ!!ひゃいっ!!」
たまて「栄依子ちゃんにしか打ち明けてないことを私達にも話してくれるというのは」
たまて「いささかうれしいものがあります!!」
たまて「さあ話してください!!私と冠ちゃんにも打ち明けてください!!」
冠「どんと来い」
花名「え、えっとぉ……」
たまて「さあさあ!!」
冠「ウズウズ」
花名「その……、私ね……」
花名「実は……、その……」
冠「な、なんだってー」
花名「まだ何も言ってないよ!?」
栄依子「ほおら、冠、話の腰を折らないの」
冠「ムフー」
たまて「」プルプルプルプル
花名「えっと……、たまちゃん?どうしたの?」
たまて「……私も……、同じボケを思い浮かべてました……」
たまて「早々に……、かますべきでした……」
たまて「冠ちゃんに……、先んじて……」
冠「ムフー」
花名「……………………」
栄依子「……………………」
花名「えっとね、私、浪人してるの」
たまて「浪人?」
冠「浪人……」
花名「えっと……、うん……、そうなの……。ごめんね、今まで黙ってて……」
たまて「アハハハハハハ」
たまて「花名ちゃん。まだ二年生になったばかりですよ」
たまて「受験の心配をするのはまだ少し早いのではないですか?」
花名「あ、あれ?」
たまて「しかも花名ちゃんの頭脳で進学できなかったら我々はどうなってしまうのですか?」
たまて「心配する必要なんて無いです。大丈夫ですよ」
花名「えっとね、たまちゃん?」
花名「大学受験の話じゃないの」
花名「高校受験の話なの」
たまて「高校受験は一年ほど前に終わりましたよ?」
花名「その高校受験で浪人していて……」
たまて「え〜〜〜〜っと〜〜〜〜」
たまて「……………………」
たまて「マジです?」
花名「う、うん……。マジだよ……」
たまて「あれえ?花名ちゃんって今「よわい」はおいくつですか?」
花名「十八歳なの……」
たまて「う〜んとお、つまりですよ」
たまて「私達が中学二年生の時に花名ちゃんは中学三年生」
たまて「その年の受験に無残にも散ってしまったと」
たまて「そして私達が中学三年生になって受験に立ち向かった年に」
たまて「浪人生として蘇り受験に再び挑んだ」
たまて「そして我々と同じ年に星尾に受かったと」
たまて「その結果一つ年上の花名ちゃんが我々と同級生になったと」
たまて「この解釈でお間違いありませんか?」
花名「う、うん。おおむねあってるよ……」
たまて「ふんふむなるほどなるほどお〜〜」
たまて「……………………」
たまて「どおうえええええええええええ!!!!!!!!!!」
たまて「花名ちゃんが十八歳って、どおうえええええええ!!!!!!!!」
たまて「いやいや全然知りませんでしたよ!!!!!」
たまて「いやいやちょっとおかしいでしょ!!!!
たまて「花名ちゃんがもうエッチな雑誌を買うことができる年齢だったなんて!!」
栄依子「いやいや驚き過ぎじゃないかい?百地さん」
栄依子「あとエッチな雑誌は十八歳でも高校生は買っちゃいけないんじゃないの?」
たまて「いやいや驚くでしょう!!」
たまて「あとエッチな雑誌は高校生って買っちゃいけないんですか!?」
栄依子「いや、よく知らないけど」
栄依子「あと驚きはしたけどそんな感嘆符が乱立するほどは驚かなかったかしら」
たまて「そうですか?冠ちゃんも驚きましたよね?」
冠「アンビリーバブルや」
たまて「ほらね、冠ちゃんも思わず彦一ですよ」
栄依子「あらほんとね」
花名「ごめんね……、今まで黙ってて……」
たまて「いやホントですよ!!」
たまて「たまちゃんちょっと怒ってます!!」プンスコプンスコ
たまて「」プンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコプンスコ
花名「ごごごごごごめんたまちゃん」
栄依子「あらやだ、無言なのにうるさいわ」
冠「擬態語の暴力」
たまて「花名ちゃんのことだから浪人していることを話すと」
たまて「もし嫌われたらどうしようとか」
たまて「距離を置かれたらどうしようとか」
たまて「そういうことを考えていたんでしょうけど」
たまて「そんな程度のことで花名ちゃんを嫌ったりするわけないじゃないですか!!」
花名「たまちゃん……」
たまて「まあもっと地上波ではお見せできないことをしていたとかなら話は別ですけど」
栄依子「あら花名ったらいつの間にそんなことを」
冠「失望した」
花名「何もしてないよ!!」
冠「!!」
冠「栄依子の相談相手って」
栄依子「そう。花名のことなの」
栄依子「ミッキが落ち込んでいることをみんなに話した日の夜に」
栄依子「花名が自分が浪人だってことを打ち明けてくれたの」
たまて「ああ〜、そんな背景だったのですねえ」
たまて「聞きましたよ、花名ちゃん」
たまて「ものの数分で妹汁さんを元気づけたと」
たまて「すごいですねえ、花名ちゃん。私達にはできないことを平然とやってのけます」
花名「い、いや、そんな大したことじゃ……」
たまて「……………………」ニコニコ
冠「……………………」
栄依子「……………………」
花名「……………………?」
たまて「……………………」ニヤニヤ
冠「……………………」
栄依子「……………………」
花名「あ、あのー……?」
栄依子「ああ、言わないというボケね」
たまて「お分かりいただけましたでしょうか」
冠「分かりづらい」
花名「わけが分からないよ……」
たまて「それはさておきそんなプロフェッショナルな花名ちゃんに」
たまて「悩めるたまちゃんもぜひ相談したいことが」
花名「な……、何かな……」
たまて「おっぱい……」
花名・栄依子・冠「……………………」
たまて「志温ちゃんさんとまでは言いません」
たまて「でもせめて栄依子ちゃんくらいのグラマラスぼでいを」
たまて「いや、花名ちゃんくらいか……、冠ちゃんくらいでもいいので……」
たまて「お恵みを……」グスッ
花名「あっ、あの……、栄依子ちゃんならきっと何とか……」
栄依子「イヤイヤイヤイヤ」
冠「たま」
たまて「冠ちゃん……」
冠「競うな。持ち味をイカせ」
たまて「!!」
栄依子「!?」
たまて「うえ〜〜ん、冠ちゃん〜〜」ダキッ
たまて「そのセリフはそんなプリティフェイスで発するものではないのですよ〜〜」
冠「ムフー」
花名「相手の得意分野で張り合おうとせず、自分の得意分野で勝負をする……」
花名「深いね、冠ちゃん」
栄依子「ああ〜、花名。あの子たぶんそんなに深く考えてないと思う」
たまて「まあ驚きはしましたけど花名ちゃんが少しお姉さんになってしまったこと以外は」
たまて「私達はいつも通りの私達ですね」
花名「たまちゃん……」
冠「友達」
花名「冠ちゃん……」
栄依子「ね?大丈夫だったでしょ?」
花名「栄依子ちゃん……。うん!!」
たまて「いやあ、これからは花名ちゃんのことを花名さんと
花名「やめて」
たまて「……………………」
花名「やめて」
たまて「ごめんなさい……」
区切ります。
ごめんなさい、作風(?)変わるの先に言うの忘れてしまってました。
続きは次の週末に
もうそろそろ終わりかなあ?
あと一回か二回の投稿で終わると思います。
シリアスが解決して日常に戻っていく感じが良かったと思います。
この3人、きらら作品を熟知している・・・!?
仲良くなったまぞくの父親を封印したのが姉と知った魔法少女、までは深刻になってなくてよかったw(ごく最近アニメ化された作品を追加しました)
まあこの連中なら浪人の事を知っても花名との付き合い方が壊れたり変わったりはしないと思ってはいました
榎並先生が「ほらみろ 別に気にするところじゃなかっただろ?」とでも言いそうな気がします
原作だと恐らくこの状態になったら連載終了も近いのかなと思いますが(最大のテーマだし)二次創作ならではの展開だと思います
>>120
115ですが、二人が秘密共有し続ける展開を望んでいたわけではないので大丈夫ですよ。
花名と栄依子は、一見真逆の性格だけど悩みとかを抱え込むタイプなところが似てると思っていて、その表れが原作の秘密共有だと、115はそういう話だったんです。全然そんな文章じゃなくて申し訳ない。
でもそれって皆に打ち明けるまでの支えみたいなもので、やっぱり最終的には打ち明けてこそだと思いますし、SSでその一種の帰結が見られるのはすごく楽しいです。
秘密を打ち明けて、どんな結末になるか楽しみです。いつも通りの私達というセリフがよかったです。
感嘆符…文字ならではなネタですね!
シリアスが一気に日常に戻るあたりたまてちゃんすごいです…!
大和撫子風女子高生…?風だからいいのでしょうか…?
コメありがとうです。
風だからいいのです。多分
なぜきららを彼女らが熟知しているか、私の中では芳文社があり、スロスタ以外の作品が全部存在している世界だと思って書きました。
日常に戻る過程はそういうふうになるように意識して書いたわけではないのですが、たまてが係わるとなんか自然にそういうふうになってしまいました。
冠と二人で漫才ばっかりしてしまってこれでいいのやら
皆に打ち明けるまでの支えみたいなものというのはとても面白いと思いました。今回は流れ上栄依子が一足先に花名の浪人の秘密を知ることになりましたが、たまてと冠が先だとどういう話ができるのか……、はたまた原作ではどういう話になるのか……。
自分はこの話しか思いつきませんが、いろんな形の話を読んでみたいですね。
結末を気にしてくださる方がいらっしゃるみたいで本当にありがたいです。
温かいコメばかりで本当にこの作品を書いて、そして世に出して良かったと思います。
ですが、平日は仕事しんどいので続きはやっぱり次の週末で。
よろしくお願いします。
というかちよももに姉いたんかい。仕事のせいでまだ5話しか見てないのだ
(ネタバレ気にしないタイプなんで大丈夫です)
再開します
しますが
この先の展開で直したいところができてしまったので、今日は少しだけになります。
あとすこしなのでこの連休で終わらせたかったのですが上手くいかない……
ちなみに前の話読んだけどもう覚えてねえよって人がいましたら
一日目(月):栄依子が落ち込んでいるのを三人が気付く
二日目(火):栄依子が光希の事情を打ち明ける、花名が栄依子に浪人のことを打ち明ける
三日目(水):花名、十倉家に突、十倉光希復活
四日目(木):花名、たまてと冠に浪人のことを打ち明ける
〜〜〜〜今ココ〜〜〜〜
五日目(金):これから
っていう具合です。
――翌日 放課後 学校 職員室
清瀬「ほう、話したのか。浪人のこと」
花名「はい、話しました」
清瀬「大丈夫だっただろ」
花名「はい、大体は……」
清瀬「大体?」
花名「花名さんってからかわれたりもしまして……」
清瀬「ああ……、まあ諦めろ」
清瀬「それだけ距離が近くなったからともとれるしな」
花名「ええ……、まあ……」
清瀬「さらに言ってしまえば、それだけ仲良くなるほどお前が言い出せずにいたからともいえる」
花名「ええ〜〜……」
清瀬「そんなに嫌なら私から一言注意しておいてもいいが?」
花名「あっ、あの……、大丈夫です……。はい……」
清瀬「まあ、これで一歩前進できたってことで良かったんじゃないのか?」
花名「はい。本当に良かったと思います」
清瀬「うん、報告ご苦労」
花名「はい、ありがとうございました」
清瀬「ああそうだ、一之瀬」
花名「はい、なんでしょう?」クルッ
清瀬「十倉が何か悩んでたのってもう解決したってことでいいんだよな?」
花名「あっ……、えっと……」
花名「御存じなんですね……」
清瀬「私は教師だからな。当然だ」
花名「さすがですね……」
清瀬「それで?どうなんだ?」
花名「あっ、はい……。もう大丈夫だと思います……」
清瀬「そうか」
花名「……………………」
清瀬「なんだ、違ったか?」
花名「ええっと……、その……」
花名「はい……、ありがとうございます」
清瀬「ああ」
区切ります。
さて、続きを直してきますかと
大筋は変わらないのですがどうも凝り性のようでして
続きはまた来週末
もしよろしければ最後までお付き合いいただけましたら幸いです
エナセン出てくるのうれしい...
エナセンってトクラァとの百合ばっか注目されがちだけど、花名と話してるときとかめっちゃいい先生してるよね
ss作家は大変なんですね…。頑張ってください!
ちゃんと報告にいく花名ちゃんが律儀!
エナセンのいい先生っぷりはすごい
コメントありがとうです
清瀬さんはコッチの顔推しです。
SS作家と呼ばれるほどの人間ではないですが……、頑張ります!!
ラストの更新になるはず……。よろしければ
――教室
たまて「おかえりなさい、花名ちゃん!!」
冠「おかえり」
花名「あっ、うん。ただいま〜」
栄依子「用事は済んだの?」
花名「うん。待たせてごめんね」
栄依子「いえいえ、じゃあ帰りましょうか」
たまて「ただ帰るだけですか?」
たまて「何かエンジョイしていきましょうよう」
たまて「今日は金曜日、花金ですよ花金」
栄依子「何年生まれなのかね君は」
冠「新橋の企業戦士かね君は」
たまて「でも意味は御存じでしょう?」
栄依子「まあ一応は」
冠「金色の花名」
花名「そんな大層なものじゃないよ、冠ちゃん……」
栄依子「そういえば今女子高生が居酒屋に行くのが流行ってるらしいわよ」
たまて「うえっ!?何でですか!?」
栄依子「何でも騒いでも怒られないからとかなんとか」
花名「なるほど……」
たまて「いやあ、でもどうなんでしょうね」
たまて「私だったら周りの成人した方々の楽しそうな雰囲気にのまれて」
たまて「お酒飲んでみたいな〜、なんて考えてしまいそうです」
冠「分からんでもない」
たまて「でも、実際のところ入店はできてもお酒は二十歳になってからなわけですよね?」
たまて「飲んでみたくても飲めない。生ず殺さずは勘弁です」
たまて「私は三年後で十分ですよ」
栄依子「そうねえ」
たまて「…………ハッ!!」
花名「?」
冠「どした」
たまて「いっ、いやぁ〜〜…………」ダラダラ
たまて「はっ、早く行きましょう。とりあえずどこか遠いところへ」アセアセ
栄依子「ああ〜、そういうことね」
冠「理解した」
花名「?」
花名「それじゃあ、行こっか」
たまて「ええ、行きましょうそうしましょう」ハキハキ
花名「……………………」
花名「もしかして私、気を使われてる?」
たまて「ヴッ!!」ダラダラ
花名「私だけあと二年で二十歳になるから?」
たまて「いっ、いやあそんなことは……」ダラダラ
花名「もう〜!!そんなに過敏にならなくてもいいのに!!」
たまて「ごめんなさい花名ちゃん!!ごめんなさごめんなさいごめんなさい!!!!」
花名「別にいいってば!!何でそんなタブーに触れたみたいになってるの!?」
たまて「それは……、昨日の花名ちゃんが恐かったから……」
花名「どう考えても大げさだと思う……」
栄依子(それが大げさじゃないんだなあ)
冠(違いない)
花名「とにかく!!からかうつもりじゃないなら話題にしてもらっても大丈夫だからね!!」
たまて「はっ、はい!!分かりました!!すっ!!すみっ!!すみませんでした!!」
たまて「お詫びといっては何ですが、私が自宅で漬けてる梅干しはいかがでしょうか!?」カパッ
栄依子「どこから出したのよ?」
たまて「いずれは百地家の秘伝となる予定です!!」
花名「わあ……、おいしそう。また今度お昼時に貰っていいかな?」
たまて「ええ、ぜひ食べてみてください!!」
たまて「特大タッパのおじやとバナナに添えると栄養バランスもいいんですよ?」
花名「普通のお弁当に添えることにするから……」
栄依子「アレって本当に栄養バランスいいのかしら?」
冠「肉と野菜も欲しい」
栄依子「あとたま、なんか汗凄いわよ。これ使う?」つハンカチ
たまて「ありがとうございます、栄依子ちゃん。でも持参しているので大丈夫ですよ」フキフキ
たまて「この私としたことが、ちょっと動揺しすぎてしまったようですねえ」
たまて「落ち着くために素数を数えることにしますね」
たまて「1……、3……、5……、7……」
栄依子「たま、1は素数じゃないのよ」
花名「あと2も抜けてるよ」
冠「落ち着けてない」
花名(………………………)
たまて「あれえ?素数ってなんでしたっけ?」
栄依子「孤独な数字よ」
冠「勇気を与えてくれる数字」
花名(………………………)
花名(ああ……、楽しいなあ……)
たまて「あーんもう!!後で復習しておきます!!」
たまて「今は遊びに行きましょう!!」
冠「うん」
栄依子「ふふっ。じゃ、行きましょっか」
花名「うん!!」
――またある日 学校
たまて「はい、え〜、ではですね」
たまて「私の思う日常作品における適切なツッコミ講座を開きたいと思います」
たまて「少しの間お付き合いいただければ幸いと思います」
栄依子「遠くを見てどうしたの?」
たまて「日常生活におけるツッコミには」
たまて「良いツッコミと悪いツッコミがありますよね」
栄依子「まあねえ」
たまて「その中でも悪いツッコミの頂点は」
たまて「落ち着け!!」
たまて「だと思うのですよ」
栄依子「そうなの?」
たまて「だって考えてみても下さいよ」
たまて「落ち着け!!って、ボケた側が興奮状態だった場合は」
たまて「ボケの内容に限らず100%成立してしまうじゃないですか」
たまて「それはもう一つ一つのボケに対する適切なツッコミを考える作業を」
たまて「全て省いてしまっているのです」
たまて「手抜き同然です。プロにはなれませんよ」
栄依子「プロとは……」
たまて「さらにこのツッコミが良くない理由がもう一つあります」
たまて「ボケた側とツッコミ側はほぼ例外なく友人関係なわけです」
たまて「一年以上の友人関係である場合も少なくありません」
たまて「中には中学からの関係というのも存在します」
たまて「それだけ親交があるのですから」
たまて「ツッコむ側の友人はボケた側が割と変なことで興奮してしまうことを」
たまて「理解していて当たり前のはずなのですよ」
花名「ええっと……。何の話してたの?」
たまて「あくまで個人の意見であり真偽の程は定かではないという話です」
冠「分からん」
栄依子「お帰り〜。あれ?いつの間に戻ってきてたの?」
花名「桃の天然水のあたりかな……」
栄依子「割と聞いてたのね」
栄依子「ああそうそう。次の連休はよろしくね、花名」
花名「あれ?何か約束してたっけ?」
栄依子「あれ?志温さんから聞いてないの?」
花名「えっ、何も……。何かあるの?」
栄依子「次の連休にミッキがてまりハイツに入居するから」
栄依子「いろいろと手伝ってくれると助かるなあって……」
花名「えっ?」
栄依子「ああごめん、手伝ってもらう気でいたからちゃんと頼んでなかったわよね……」
栄依子「花名に手伝ってもらえるとすごく助かるんだけど……、いいかしら?」
花名「ええ〜〜〜〜!?」
たまて「おやあ、妹汁さん、引っ越すんですねえ」
冠「アンビリーバブルや」
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光希『折り入って相談が……』
紗枝子『どうしたのよ?改まって』
光希『あの……、一人暮らしをしたくて……』
紗枝子『……………………』
光希『その……、一之瀬さんは浪人生活を始めた年から』
光希『一人暮らしを始めたって話してて……』
光希『私も……、その……、一之瀬さんと同じ環境に自分を置いたら』
光希『また頑張れる気がするんです……』
光希『……駄目でしょうか……?』
紗枝子『いいわよ?』
光希『えっ!?』
紗枝子『栄依子、聞いてた?』
栄依子『うん、ちょっとてまりハイツの管理人さんに部屋空いてないか聞いてみるね』
栄依子『あ、てまりハイツってゆうのは花名の住んでるアパートの名前ね』
紗枝子『ええ、お願いね』
光希『えっ!?』
――二分後
栄依子『はい、ありがとうございます。これからよろしくお願いします』プツッ
栄依子『空いてるって』
紗枝子『じゃあ次の連休までに荷物をまとめないとね』
光希『早い……』
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栄依子「以上が十倉家の休日の一コマでした」
花名「ええ〜〜?」
たまて「いやあ、電光石火の早業ですなあ」
冠「謎の行動力」
栄依子(……………………)
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光希『あの、姉さん』
栄依子『な〜に〜?』
光希『その……、バキバキのスマホは何があったんですか?』
栄依子『ああ、これ……。悲しい出来事があってね』
光希『……買い替えないんですか?』
栄依子『まだ動くし』
光希『そうですか……』
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栄依子(余計なことまで思い出しちゃった)
栄依子(これはしばらく手放せそうにないかな……)
栄依子(手放すということはそれはつまり)
栄依子(あの時花名に抱いた感情を許してしまうようなものだから……)
――てまりハイツ
花名「志温ちゃん!!」
志温「おかえり花名ちゃん。どうしたの?」
花名「光希ちゃん……、栄依子ちゃんの妹さんがてまりハイツに引っ越してくるって本当!?」
志温「ああ、そうそう、そうなのよ」
志温「あら?言ってなかったかしら?」
花名「言ってないよ!!あとこのくだり三回目だよ!?」
志温「そう……、もうそんなになるのね……」シミジミ
花名「何で故人を偲ぶテンションなの……」
志温「ともあれ、また浪人生が増えてしまうわね」
志温「花名ちゃんも浪人の先輩としていろいろと教えてあげなくちゃいけないわね」
花名「教えるようなことなんて何もないんだけどなあ……」
花名「ただ、一日部屋にこもって勉強するだけだし……」
志温「そんなことないわよ」
志温「聞いてるわよ。花名ちゃん、勉強教えるの上手なんでしょう?」
志温「ちゃんと力になってあげられると思うわ」
志温「それに、光希ちゃんは花名ちゃんを慕ってウチに引っ越してくるんだから」
志温「花名ちゃんが近くにいるだけで心強いと思うの」
花名「勉強は教えるけど……」
花名(光希ちゃんは一人暮らしがしたいって言っただけで)
花名(引っ越し先を決めたのは栄依子ちゃんみたいなんだけど……)
――週末
花名「うう〜……、まだかなあ」ソワソワ
たまて「花名ちゃん、別にそんなにそわそわする必要はないのでは?」
たまて「あと外で待つ必要もないかと」
冠「疲れるだけ」
花名「うう〜、でも〜、じっとしてると落ち着かないよ〜」ウロウロ
たまて「じっとしてなくても落ち着いてないじゃないですか」
冠「来た。車」
花名「ひぃぃ〜〜!!」
たまて「花名ちゃんは十倉一族を何だと思っとるのですか?」
栄依子「おはよう花名。冠とたまも来てくれてありがとう。外で待ってたの?」
たまて「おはようございます。花名ちゃんたっての希望でして」
花名「おはよう、栄依子ちゃん」
冠「おは」
光希「おはようございます」
たまて「おお〜〜!!妹汁さんのごこうりんですね〜!!」
冠「久しぶり」
光希「あの……、はい……、おはようございます」
紗枝子「花名ちゃん、おはよう」
花名「おはようございます」
紗枝子「さっそくで悪いのだけど」
紗枝子「従姉の管理人さんに挨拶したいから案内してもらえるかしら」
花名「あっ、はい。今呼んできますね」
ガチャッ
志温「花名ちゃん、光希ちゃんいらっしゃったのかしら?」
紗枝子「あっ、初めまして。栄依子と光希の母です」
志温「あっ、こんにちは。てまりハイツの管理人の京塚志温と申します」
コレカラムスメガオセワニナリマス
イエイエコチラコソ
花名「…………」チラッ
マウゴツメンコイデスネエ
メンコイメンコイ
アノ……
栄依子「花名」
花名「何?栄依子ちゃん」クルッ
栄依子「これからミッキのことよろしくね」
栄依子「ミッキったら花名に本当に勇気づけられたみたいなの」
栄依子「一秒でも早く花名に会いたくて仕方がないって感じだったんだから」
花名「うん。光希ちゃんの力になれるように頑張るね」
花名「でも、栄依子ちゃんも」
栄依子「私?」
花名「私が栄依子ちゃんの家に行って栄依子ちゃんと光希ちゃんと話してた時に」
花名「栄依子ちゃんのお母さんが帰ってきたでしょ?」
花名「その時に光希ちゃんがお母さんに怒られるんじゃないかって怖がってた時に」
花名「栄依子ちゃんの服を掴んで離さなかったよね?」
花名「栄依子ちゃんは自分のことをひどいお姉ちゃんなんて言ってたけど」
花名「本当にひどいなら光希ちゃんはそんなことしないし」
花名「むしろ姉として頼りにしているようにしか見えなかったよ」
栄依子「……そうかな?」
花名「うん、そうだよ」
栄依子「私って、ちゃんと良いお姉ちゃんできてるかな……?」
花名「光希ちゃんに聞いてみたら?」ニコッ
栄依子「それは無理!!」
光希「何が無理なんですか?」ヒョッコリ
栄依子「っひゃあ!!」
花名「ふふっ、何が無理なんだろうね」
栄依子「……ンンッッ///。何でもないのよ」
光希「一之瀬さん、これからよろしくお願いします」
花名「うん、よろしくね。光希ちゃん」
たまて「おやおや、もっと妹汁さんを独り占めしたかったのですが」
冠「ドンマイ」
栄依子「まあ、とにかく、もう少しで引っ越しのトラックが到着するから」
栄依子「その前に荷物を部屋に運んじゃいましょ」
光希「分かりました」
たまて「ハイッスー」
冠「おけ」
花名「うん、そうしようか」
花名「……………………」
花名(浪人生活は辛いし楽しいことなんて何もない)
花名(でも光希ちゃんならきっと大丈夫)
花名(乗り越えたら、きっと楽しい高校生活が待ってるから……)
少々長いような気もしましたが、以上で終わりです。
「せやっ、スロスタの浪人成分を増し増しにしたろ!!」
「やっぱ花名ちゃんが浪人要素で誰かの助けになる話がいいなあ」
「そうすると誰か中学生を浪人に……。誰かいたっけなあ」
「いた、一人だけ」
っていう経緯で光希を浪人生にしてしまいました。
十倉光希さん、申し訳ありませんでした。
スロウスタートという作品にいろいろ足したり引いたりして好き勝手に自分好みに改造してこの話ができたわけですが、とりあえず私はとても楽しかったです。
あと大事なことを一つ
十倉光希参戦しろ
お疲れ様でした!
オリジナルの展開で読みごたえありました。
楽しい高校生活、送れるようになるといいですね。
ミッキちゃんも、いい先輩や姉を持ってよかったですね!
とても面白かったです!
P.S.ミッキ参戦私も待ってます
コメントありがてぇ……
読んでくれてありがとうございます。
そんでもってこんな風に視覚的に見えるというのも幸せです。
書いてて光希めっちゃ好きになったんですよ
完結おつかれさまでした。なんだかすごく勝手な話だけど、内容から合間のコメントまで、個人的に作者様とめっちゃ趣味合いそうだなとか思いながら楽しく読ませていただきました。
私は正直アニメ見てて光希のイメージってめっちゃ薄かったんで、光希の設定活かして話作ったのはすごいなと思います。そういや唯一の後輩キャラなんだよな...
私もこのSSのおかげで光希好きになりました。参戦はよ!
様なんてつけていただける立場ではないのですよ、決して
合間のコメントまで読んでいただけるとは嬉しい限りです。
(何書きましたっけ……?)
このSSのおかげとはこれもまたうれしいですね。本当に
でも、最初は上に書いた通り「浪人増し増し」が当初の目的だったので、光希の出番を増やそうとかは全く考えていなかったんですよね。本当勝手に浪人生にして十倉光希さん申し訳でしたとしか……。
それと私の趣味嗜好については言えませんね。この話を読んでくださった方には特に……
――五月某日
大会「花名ちゃん、助けてくれ……」
大会「せっかく長い浪人生活を抜け出して」
大会「花の大学生活をスタートさせたというのに……」
大会「友達が……、一人の友達もできないんだ……」
大会「大学が恐い!!世間が恐い!!」
花名「あの……、えっと……、サークルとかに入ってみるのはどうでしょうか……?」
大会「サークルも恐い!!」
花名「ええ〜〜……」
光希「こんな美人さんですら友達を作れないなんて……」
光希「私はどうすれば……」
花名「大丈夫だよ!!大丈夫だからね!?」
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