初投稿です。よろしくお願いします。
アニメは視聴しましたが、原作が未読なので設定におかしなところありましたらご指摘お願いします。
完結まで書き溜めてあるので未完にはなりません。
少しずつ小出しにしていきます。
――駅
花名「え…………」
栄依子「早かったわね、花名」
花名「ハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッ」
栄依子「走ってきてくれたのね、ありがとう、花名」
花名「ハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッハァーッ」
栄依子「……とりあえず何か飲み物買ってくるわね」
花名「ありがとう栄依子ちゃん。生き返ったよ……」
栄依子「ううん、気にしないで。今日は私が花名にたくさんお世話になるんだから」
花名「う……、うん……。頑張ってみるね……」
花名(光希ちゃんが私と同じように受験に失敗したと分かって)
花名(力になりたくて思わず電話しちゃったけど)
花名(私なんかが力になれることなんて本当にあるのかなあ……?)
――栄依子の地元
栄依子「はい、我が地元に到着〜。まあここからもう少し歩くんだけどね」
花名「うん、大丈夫だよ」
栄依子「でも驚いたわ」
栄依子「まさか花名が浪人してたなんてね」
花名「うん、ごめんね……。今まで秘密にしてて……」
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花名「私、実はね……」
花名「実は……、浪人してるの……」
栄依子『えっ?浪人って……、志温さんのことでしょ?』
栄依子『前に就職浪人って言ってたけど……』
花名「違うの。私もなの……。私も浪人してるの……」
花名「受験の時におたふく風邪にかかっちゃって……」
花名「どこも入試を受けれずに浪人生になって……」
花名「だから……、もう私、十八歳なの……」
栄依子『……………………』
花名「……………………」
栄依子『花名』
花名「ひゃいっ!!」
栄依子『明日、ミッキと会ってくれる?』
花名「……うん!!」
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花名「言わなくちゃいけないとは思ってたんだけど……」
栄依子「聞く方からしてみればそんなに気になるようなことじゃないけど」
栄依子「やっぱり言いづらいものなのかしら?」
花名「うん……。言いづらかった……」
花名「私も大丈夫だとは思ってたんだけどね……」
花名「でも、もし万が一にもみんなとの関係が変わってしまったらと思うと……」
花名「どうしても言い出せなくて……」
栄依子「そっか……」
栄依子「でも、言わなきゃいけないと思ってるなら」
栄依子「冠とたまにも早く教えてあげないとね」
栄依子「特にたまなんか拗ねちゃうかも」
花名「うん……。でも、今は光希ちゃんをなんとか元気づけてあげないと」
栄依子「そうね……」
栄依子「きっと一番つらいのはあの娘なのよね……」
栄依子「花名」
花名「はっ、ひゃい!!」
栄依子「私、実はね、花名に物凄く期待してるの」
栄依子「なんとかミッキを元気にしてあげて」
花名「栄依子ちゃん……」
花名(そうだった)
花名(昨日の夜、どうして私が栄依子ちゃんに電話したのか)
花名(光希ちゃんが私と同じように受験に失敗したと分かった時に)
花名(私なら光希ちゃんに寄り添ってあげられると思ったからだ)
花名「うん。任せて、栄依子ちゃん」
――十倉家
栄依子「着いたわよ。ようこそ我が家へ」
花名「お、おじゃましま〜す……」
栄依子「どうぞどうぞ」
花名「……光希ちゃんは部屋にいるのかな……?」
栄依子「そうね……」
栄依子「リビングにも……」ガチャ
栄依子「お風呂にも……」ガチャ
栄依子「トイレにもいないところを見ると……」ガチャ
栄依子「今日も部屋にいるみたいね……」
――光希の部屋の前
栄依子「ここがミッキの部屋よ」
花名(なんとなく空気が重く感じる……)
花名(……どうしよう……、まずは……)
栄依子「花名、お願いね」
花名「う……、うん……」スゥ……
花名「光希ちゃん!!」
花名「私、栄依子ちゃんの友達の一之瀬花名です!!」
花名「何回か会ったことあるけど、覚えてるかな!?」
花名「光希ちゃんの身に何があったのか栄依子ちゃんから聞きました!!」
花名「凄く辛かったと思いますし、今も苦しいと思います!!」
「……………………」
花名「その……、私も!!私も同じでした!!」
花名「私も……、実は!!高校受験の時に病気で受験できなかったんです!!」
花名「だから……、その……」
花名「高校には皆よりも一年遅れで入学しました!!」
花名「だから私、本当は栄依子ちゃんよりも一つ年上なんです……」
花名「私も中学卒業直後は本当に辛かったです」
花名「どうして私ばっかりこんな目に合うんだろうって」
花名「私なんかもう生きててもしょうがないんじゃないかって」
花名「家の隅っこでずっとそんなことを考えていました」
花名「そんな時にお母さんが環境を変えるために」
花名「従姉の管理するアパートで一人暮らしを進めてくれて」
花名「環境が変わって新しい生活が始まったの」
花名「でも、やっぱり楽しいと思えることなんて何一つなくて……」
花名「浪人中だったからってこともあったけど、毎日毎日勉強して……」
花名「そうしてないと辛くて仕方がなかったから……」
花名「そうしているうちにまた受験の時期になって」
花名「今度は何事もなく受験を終えて無事に志望校の星尾に合格できたの」
花名「それでも入学式の日までずっと不安だった……」
花名「周りの子たちよりも一つ年上の私がちゃんと周りと馴染めるのかなって思うと」
花名「恐くて仕方がなかったの……」
花名「でも入学式の日に栄依子ちゃん達が声をかけてきてくれて」
花名「そこからみんなと仲良くなることができたの」
花名「それからは毎日が楽しくて」
花名「やっと苦労が報われたのかなって思ったかな……」
花名「それに、浪人している時は気づけなかったことにも気づけるようになったの」
花名「あの辛い浪人生活はずっと一人で戦っていた気でいたんだけど」
花名「本当はお父さんやお母さんに志温ちゃん」
花名「たくさんの人が私を支えてくれていたんだって」
花名「助けてくれていたんだって気づくことができたの」
花名「ねえ光希ちゃん!!」
花名「光希ちゃんにもそんな人がいるよね!!」
花名「その人たちはきっと光希ちゃんのことを助けてくれるはずだよ!!」
花名「もちろん私も光希ちゃんの力になりたいって思ってる!!」
花名「だからもう一度頑張ってみよう!!」
花名「今は本当に辛いと思う!!苦しいと思う!!」
花名「でもね、ずっとじゃないよ!!」
花名「また一年間頑張って、高校生になれたら」
花名「きっとまた楽しいことが待ってるから!!」
「……………………」
花名「だからね、光希ちゃん……」
栄依子「……………………」
花名「お願いだよ……」
栄依子「……………………」
花名「光希ちゃん…………」
栄依子「花名……、ありがとう」
栄依子「もう十分だから……」
ギッ
光希「……………………」ソロ-リ
花名「あっ……、光希ちゃん……」
栄依子「ミッキ…………」
光希「……………………」
花名「あっと……、その……、えっと……」
光希「……………………」
栄依子「……………………」
花名・栄依子・光希「……………………」
光希「」ビクッ
花名「」ビクッ
栄依子「……………………」
花名・光希「……………………」ドキドキ
栄依子「フゥ」
栄依子「積もる話もあるんだけどね」
栄依子「まずはお風呂に入ってきなさい」
栄依子「全然お風呂に入ってないでしょ」
栄依子「髪がボサボサのガビガビよ」
栄依子「あと何というか臭うのよ」
光希「……そうですか?」クンクン
光希「自分ではわからないのですが」
栄依子「ええぇえ!?わからないの!?」
栄依子「ちょっと花名からも言ってあげてよ。臭うわよね?」
花名「う、うん……。ちょっと、いや、かなり……。うん……」
光希「あの……、でも……、その……」
栄依子「花名にはもう少し待っててもらうから」
栄依子「というわけで、いいかしら、花名?」
花名「うん、大丈夫だよ」
栄依子「さあ、早くさっぱりしてらっしゃい」
光希「はい…………」
――リビング
花名「光希ちゃんの様子はどう?栄依子ちゃん」
栄依子「うん、多分もう大丈夫だと思う」
花名「そっか……、良かった……」
栄依子「ええ……、本当に……」
栄依子「……………………」
花名「…………?」
花名「栄依子ちゃん……?」
栄依子「なあに?花名?」
花名「なんだかあまり元気がないみたいだけど……」
栄依子「…………別に、大したことじゃないのよ」
花名「……………………」
栄依子「……………………」
栄依子「ただね、ただ…………」
栄依子「私ね、お姉ちゃんなのよ」
花名「うん」
栄依子「もう十五年あの娘のお姉ちゃんやってきてるの」
花名「うん」
栄依子「あの娘がつらい時や苦しい時に一番力になってあげられるのは」
栄依子「お母さんでもお父さんでもなくて」
栄依子「私だと思ってたの」
栄依子「だから今回のことも光希を元気づけてあげられるのは」
栄依子「私しかいないって思ってたの」
栄依子「でも、いくら呼びかけても光希は部屋から出てきてくれなくて」
栄依子「でも、花名が呼びかけたらすんなり出てきて」
栄依子「それが悔しいというか」
栄依子「光希にとって私は取るに足らない存在だったのかなとか」
栄依子「私があの娘にしてきたことって何だったのかなって」
栄依子「よく分からなくなってきちゃったのよね」
花名「栄依子ちゃん……」
花名「え……?」
栄依子「ああ、嘘じゃないのよ。今言ったことは全部本心よ」
栄依子「でも一番じゃないの」
栄依子「一番嫌なことはね」
栄依子「光希が部屋から出てきたことを嫌だと思ってしまったことなの」
花名「栄依子ちゃん……?」
栄依子「花名に期待していたのは本当よ」
栄依子「同じ境遇の花名が呼びかければ部屋から出てきてくれるかもしれない」
栄依子「でも、心のどこかでやっぱり無理なんじゃないかって」
栄依子「私が光希にしてあげられないことを花名にできるはずがないって」
栄依子「……無理であってほしいって」
栄依子「多分だけど……、心のどこかでそんな風に考えてたの」
栄依子「でも、あの娘は自分の手で部屋のドアを開けた」
栄依子「その時に私に湧いた感情は喜びや安心なんかじゃないの」
栄依子「何で出てきたの?」
栄依子「私が呼びかけても出てきてくれなかったのに」
栄依子「ほとんど面識のない人間の呼びかけになんて……、応じてほしくなかった……」
花名「……………………」
栄依子「ひどいお姉ちゃんよね……」
栄依子「妹に元気になってほしくないなんて考えるなんて」
栄依子「お姉ちゃん失格よ……」
栄依子「だからそんな考えを抱いてしまった自分が」
栄依子「嫌で嫌で仕方がないの…………」
栄依子「ごめんね、花名」
栄依子「こんな話聞かされても困っちゃうよね」
花名「……………………」
花名「栄依子ちゃん」
栄依子「……何?」
花名「もし栄依子ちゃんが光希ちゃんに対して」
花名「本当に悪いことをしていると思っているのなら」
花名「謝ればいいんだよ」
花名「それで済む話だよ」
栄依子「……………………」
栄依子「そっかぁ……」
栄依子「そうよね……」
花名「うん、そうだよ」
栄依子「うん……、そうしようかな」
栄依子「なんだか花名にアドバイスされるのって不思議な感じね」
花名「うん、私もそう思う」
栄依子「それに、一つ年上だってことが判明したのも相まって」
栄依子「花名が急にお姉さんになったみたい」
花名「そんなことないよ!同級生だよ!!」
栄依子「これからは花名さんって呼ばないといけないかしらね」
花名「やめて」
栄依子「……………………」
光希「上がりました」
花名「あ、うん」
光希「……どうかしましたか?」
花名「何でもないよ」
栄依子「そうよ、何でもないのよ……」メソラシ
光希「そうですか」
栄依子「そうだ、あのね、光希」
光希「あっ、はい……」ビクッ
栄依子「ごめんね、ダメなお姉ちゃんで」ギュッ
光希「あの、姉さん?姉さんは何も……」
栄依子「本当にごめんね……」
光希「はい……」
花名(謝るということは時にただの自己満足でしかないと思う時がある)
花名(でもそれで心が楽になるのなら、今の栄依子ちゃんには必要なんだと思う)
花名(栄依子ちゃんが本当に光希ちゃんに元気になってほしくないと思ってしまったのかは)
花名(私にはわからないけれど)
花名(そのことを今後引きずらないように)
花名(一度リセットするべきだ)
花名(ひいてはそれが光希ちゃんのためにもなるはずだから……)
栄依子「そうだ、花名」
栄依子「花名の浪人時代の話、聞かせてくれないかな?」
花名「……うん、少し話しておこうかな」
栄依子「ほら、ミッキも聞きたいでしょ?」
栄依子「一緒に聞きましょ?」
光希「あっ、はい!!」
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栄依子「ああ〜、それで花名って全然体力が無いのね」
光希「私は二の舞にならないようにしないといけないですね」
花名「う〜〜ん、でも人によるっていうか……」
花名「万年さんは全然運動できるみたいだし……」
ガチャッ
栄依子「あら?お母さん帰ってきたみたい」
光希「!?」
栄依子「ミッキ、ちゃんとお母さんに……」
栄依子「どうしたの?服掴んだりして」
花名(あっ……)
栄依子「ダメよ?けじめはつけないと」
ガチャッ
紗枝子(十倉母)「ただいま〜」
栄依子「おかえり、お母さん」
花名「お、お邪魔してます」
紗枝子「あらあら、いらっしゃい。あなたが花名ちゃんね」チラッ
紗枝子「栄依子から話は聞いてます。娘が本当にお世話になりました」
花名「い、いえ、それほどでも……」
紗枝子「いえいえ、本当にありがとうございました」
光希「……………………」
紗枝子「光希!!」
光希「」ビクッ
花名「」ビクッ
栄依子「……………………」
栄依子「ほら、ミッキ。隠れてないで」
光希「……………………」
紗枝子「……………………」
紗枝子「今日、夕飯にあなたの好きなもの作るからね」
光希「あの……、はい……」
紗枝子「それと、嫌いなものも作るから」
光希「ハイ…………」
栄依子「ふふっ」
花名(よかった……)
花名「それじゃあ、私はそろそろお邪魔しますね」
光希「あっ、あの……」
紗枝子「あら〜、せっかくだから花名ちゃんもおあがりになって」
花名「あっ、でも私はそろそろ……」
栄依子「あら〜、いいじゃない。志温さんには私が連絡しておくから」
花名「えっ、あの〜〜……」
紗枝子「すぐ準備するから、ちょっと待っててね」
栄依子「さあさあ、座った座った」
花名「ッア〜〜〜〜〜〜〜〜」
区切ります。
途中コメントいただきありがとうございます。
うれしい
ここまでで半分くらいなのですが、見直しも兼ねながらだと思ったよりも時間がかかるなあと
あと思ったよりも長い話作ったのかなあと
続きはまた明日
ご興味がある方は覗いてみてください
花名ちゃんの運命やいかに!?
個人的には
出てきたばかりのミッキに「臭い」は可哀想かなと感じたのと母親の「嫌いな物も作る」がちょっと引っかかったけど原作・アニメで花名の母の言動で引っかかってたくらいの私なので別に気にするところではないかなとも思います
出て来たことを嫌だと思ってしまったことが嫌というのがリアルな感情を表現できていたと思います。
みんな優しいです。
やっぱり栄依子ちゃんも人間なんだな…って感じるシーンですね。
「それと、嫌いな物も作るから。」が栄依子のお母さんぽくていいなと思いました。
花名のやめてが真に迫っててやっぱり浪人してたことで関係が少しでも変わるのが嫌な感じが出てて良いです…
謝ることは時に自己満足でしかない…か。確かにそう思うときもあります。しかし、それでも栄依子や光希に必要だと言う>>99の花名の心の声が浪人経験者故に重みがあります。
これでまだ半分か…続きが気になります
花名と栄依子の、一見対称的な二人が秘密共有するっていう関係が超好きなのでめちゃくちゃ楽しませてもらってます。応援してます。
ミッキが部屋から出てくる場面、現実でも難しいところなんだよなぁ...こういう場面では変に優しくするよりは自然体のほうがいいって言われることが多いし、個人的には臭いって正直に言うのは良いんじゃないかと思うんだけど。人それぞれなとこあるから答えなんてないんだろうけど、ミッキは立ち直れそうで良かった。
コメントいただけてうれしいです。
この設定考えてから書き出してみて、なんというか花名と栄依子の普段は見せない姿を書きたくなってきてしまいまして。
花名はなんか頼れるというか達観しているというか
栄依子は普段余裕がありそうな感じなのでちょっと弱らせてみました
原作未読なので栄依子母がどんな感じなのかは試し読みで一回見かけただけなので勘でした。
ただやはり栄依子より強くて光希のようなユーモア(?)な面の両方を兼ね備えていそうかなあと
謝るということは時にただの自己満足でしかないの所はプロでもない人間がこういうことを書くのは寒いかなとも思ったのでやめようかとも思いましたが、寒くてもいいやと思って乗せちゃいました。
それに花名らしくなさも醸し出したかったので
嫌いなものも作るの所は説教一時間コースを嫌いなものを食べるだけで許してもらえるという優しさあふれるシーンのつもりでしたが伝えるというのは難しいものです。
あと引きこもりが部屋から出てきた時に臭いと言ってやるのは礼儀というかお約束というか様式美のようなものだと思っております。
咲SSの末原引きこもりの話で覚えました
そして花名と栄依子の秘密の共有は(浪人に関することは)二人の秘密じゃなくなってしまうのは申し訳ないのですが…………
とりあえず続き載せます。
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花名「ご、御馳走様です……」
紗枝子「お粗末様です」
花名「う〜〜……」
栄依子「お母さん、作り過ぎよ」
光希「」マッサオ
栄依子「ミッキも大丈夫?」
栄依子「じゃあ花名」
栄依子「引き止めといてなんだけど、これ以上遅くなるとそろそろ志温さんが心配するかも」
花名「そ、そうだ、帰らないと」
栄依子「駅まで送るわ」
花名「ありがとう、栄依子ちゃん」
光希「あの、私も……」
紗枝子「あなたは止めときなさい」
光希「あ……」
光希「……………………」
花名「……………………」
花名「光希ちゃん、また来るね」
花名「そしたら、またお話ししよう?」
光希「……はい」
――駅への帰り道
栄依子「花名、今日は本当にありがとね」
栄依子「ミッキはきっと大丈夫。これからの困難にも立ち向かえると思う」
花名「うん、本当に良かったよ」
栄依子「次は花名の番ね」
花名「え……、私?」
栄依子「たまと冠に浪人のこと話さないと」
花名「あ〜〜…………、うん、そうだね…………」
花名「そのうち、話せるといいんだけれど」
花名「まあ、焦ることでもないし。機会があれば話すことにするね」
栄依子「機会っていつよ?」
花名「次の夏休み……、いや、文化祭……」
花名「もういっそ卒業の時とか……」メソラシ
栄依子「明日にしましょうか」
花名「早いよ!?」
花名「心の準備が全くできてないよ、栄依子ちゃん!!」
栄依子「でも、日時を指定しないといつまでもズルズルと先延ばしになるわよ?」
栄依子「そうしているうちに二年生になっちゃったんでしょ?」
花名「で、でも明日はあまりに急な気が……」
栄依子「私には言えたのに」
花名「それとこれとは話が別で……」
栄依子「ごめん、やっぱやめとこうか」
栄依子「確かに急ぐことでもないし、そんなに辛いなら……」
花名「えと……、あの……」
花名(恐い……、恐いけど……)
花名(このままじゃ本当にいつまでも浪人のこと言えないままだよ……)
花名(でもやっぱりもう少し後でも……、急に話したくなる日が来るかもしれないし……)
栄依子(ものすごく葛藤してるわ)
栄依子「それじゃあ、明日の放課後、寄り道がてら決行ね」
栄依子「覚悟を決めなさい、花名」
花名「ふえぇぇぇ…………」
――翌日 学校
栄依子「たま、おはよ〜」
たまて「おはようございます、栄依子ちゃん」
たまて「なんだか一段と晴れやかな笑顔ですなあ」
たまて「もしや妹さんの件で進展があったのでは?」
栄依子「そうなのよ!!昨日話した人に家に来てもらってミッキのこと説得してもらったの」
栄依子「そしたらものの数分でミッキが部屋から出てきたの!!」
たまて「マジですか!!想像以上のプロフェッショナルじゃないですか!!」
たまて「これは百地も人生に行き詰まったら相談させていただくほかありませんね!!」
栄依子「そうねえ〜。私もちょっと愚痴聞いてもらっちゃったし」
たまて「おやまあ……。いやはやとにかく妹さんが元気になったわけですよね!!」
たまて「良かった!!本当に良かったです!!」
たまて「良かったついでに放課後どこかに遊びに行きませんか!?」
たまて「百地はもう四人で遊びに行きたくて仕方がないのですよ!!」
栄依子「ああ、それなら私も調度……」
花名「おはよ〜」
冠「おは」
たまて「おはようございます!!花名ちゃん、冠ちゃん!!」
栄依子「二人ともおはよ〜」
たまて「お二人とも朗報ですよ!!」
たまて「なんと栄依子ちゃんの妹汁さんが復活しました!!」
たまて「復活ッッ!!」
たまて「妹汁復活ッッ!!妹汁復活ッッ!!」
冠「良かった」
花名「うん。でもたまちゃん、凄いテンションだね……」
たまて「いやあ、すみません」
たまて「ついつい興奮してしまいました」
栄依子(復活……、十倉……、グラップラー……、光希……)
栄依子「プッ」
花名「?」
栄依子「フフッ、まあこれからが大変だと思うんだけどね」
栄依子「あの子ならきっと何とか乗り越えられるわ」
花名「良かったよ……、本当に……」
たまて「それでですねえ。十倉家の問題も一段落着いたことですし」
たまて「みんなで遊びに行きたいなあなんて」
たまて「思ってるわけなのですよ」
たまて「どうです?放課後に一つクレープでも食べに……」
栄依子「賛成〜。花名も冠も行くわよね?」
花名「ええ?ええと……」
冠「合点」
たまて「いやはや四人でお出かけもなんだか久しぶりですねえ。楽しみです」
栄依子「私もほとんど家にいたから放課後が待ち遠しいわ」
冠「クレープ✨」
花名(どうしよう……。断れない……)
――放課後
たまて「さあさあ放課後ですよ!!待ちに待った放課後ですよ!!」
たまて「クレープが!!クレープが私達を!!待っているんです!!」
たまて「クレープ……ハァハァ、クレーーープ〜〜〜…………ハァハァ」
たまて「クレープを……早く、速く、疾く…………ハァハァ」
栄依子「禁断症状ですよ、百地さん」
冠「ヤベェ」
たまて「それはそうと、花名ちゃんはなんだか浮かない顔をしていますねえ」
たまて「この先の人生をあきらめたような表情ですよ」
たまて「連帯保証人にでも逃げられたのでしょうか?」
栄依子「さすがにもう少し女子高生らしい悩みなんじゃないかしら」
冠「顔が青い」
花名(どうしようどうしようなんて言おう嫌われないかな変に思われないかなもしこれがきっかけでみんなに嫌われたらせっかく仲良くなれたのに一人ぼっちになっちゃってそれどころかクラス中の噂になって最悪イジメられたりなんてこともそしたらもう学校に通えなくて本格的に引きこもりにそしたらもう一生経済面でお父さんとお母さんに頼らないといけなくなっていやそんなことできないからもう首を吊るか手首を切るか線路に飛び込んで)
たまて「花名ちゃ〜ん、戻ってきてくださ〜い」
――公園
たまて「皆さん、思い思いのクレープを手にしましたでしょうか!?」
栄依子「うん、OKよ」
冠「バッチリ」
花名「大丈夫……」
たまて「青い空の下で気心の知れた友人たちとクレープを食べる……」
たまて「これ以上の贅沢って存在するのでしょうか……」
栄依子「いやあ……、さすがに…………」
栄依子「まあでも……、結局のところ贅沢ってこういうことなのかもね……」
冠「おいしい」モグモグ
たまて「そんでもって花名ちゃんの顔の青さは継続中ですか」モグモグ
たまて「クレープを食べても元気にならないとは」モグモグ
たまて「いったい何が花名ちゃんをそんなに苦しめてるんでしょうか」モグモグ
たまて「まるで締め切り直前にバグが見つかったプログラマーのような顔ですねえ」モグモグ
栄依子「故郷から姉が訪ねてくる喫茶店店員のような顔でもあるわね」モグモグ
冠「マイノリティ殺しに合った女子高生キャンパーのような顔」モグモグ
たまて「ライブの途中で転んで下着を披露する羽目になった女子高生ベーシストのような」ムグムグ
栄依子「ホームステイしている金髪美少女に帰省された大和撫子風女子高生のような?」ムグムグ
冠「高級肉を炭化させた没落お嬢様のような」ムグムグ
たまて「宝くじが当たる確率を検索する女子高生ギタリストのような」ハグハグ
栄依子「青春コンプレックスを発動させた超絶根暗女子高生のような?」ハグハグ
冠「肝臓を売ることを決意したジャージスト女子高生のような」ハグハグ
たまて「最後の御三方は同一人物という認識でお間違え無く?」
栄依子「さあ〜、どうかしらねえ〜」
たまて「花名ちゃん!!」
花名「はっ!!ひゃいっ!!」
たまて「そんな青い顔してどうしたんですか!!」
たまて「こっちがボケ倒してるのになんのリアクションもないのはちょっと寂しいですよ!!」
たまて「悩みがあったら相談してください!!力になれるかはわかりませんが!!」
栄依子「ボケ?連想ゲームかと思ってたわ」
冠「ちゃうねん」アグアグ
花名「えっと……、その……、あのね」
たまて「うんうん」
花名「私、たまちゃんと冠ちゃんに、その……、話とかないといけないことが……」
たまて「ええ、何でもおっしゃってください」
たまて「なんかナチュラルに栄依子ちゃんがハブられてますが」
たまて「気にしない方がいいんでしょうか?」
栄依子「私はもう聞いてるからいいのよ」
たまて「な!?」
冠「!?」ウグウグ
たまて「なんですと〜!?」
たまて「どういうことですか花名ちゃん!?」
たまて「栄依子ちゃんには悩みを打ち明けるのに私と冠ちゃんには頼ってくれないんですか!?」
たまて「そりゃねぇですよですよ!!そりゃねぇですよですよ!!」
花名「ええ〜!?」
冠「ごちそうさま」
栄依子「ほおら、たま、落ち着きなさい」
栄依子「あと別に花名は悩み事があるわけじゃないからね」
たまて「でも今から花名ちゃんが話すことは栄依子ちゃんだけが知ってることなんですよね!?」
たまて「それってどうなんですか?抜け駆けじゃないんですか?」
栄依子「抜け駆けとは……。あと私が聞いたのだって二日前よ?」
たまて「プキー!!そういう問題ではないのですよー!!」
たまて「栄依子ちゃんだけが知ってるというこの状況がもうアウツ!!」
たまて「アウトなのですよ〜!!」
栄依子「困ったなあ」
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