お久しぶりです。そうでない人は初めまして。
以前このBBSで、以下のSSを投稿させてもらった者です。
【SS】ハッピーシュガーライフ×きららファンタジア
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=775&ukey=0&log=past
【SS】小鳥と不死鳥と(機動戦士ガンダムNT×アニマエール)
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=1471&ukey=0&log=past
最初に投稿したSSを基に、ハピシュガの人というコテハンを使いたいと思います。
今回は、昨年アニメが放送され、現在アプリゲームが配信中のアサルトリリィときらファンのクロスSSを書きました。
今回は10万3千字ほどの文章を、何回かに分けて投稿したいと思います。
全15章分、お付き合いのほどよろしくお願いします。
今回はさっそく、第1章と2章を投稿します。
それを聞いたリリスがふぅとため息をつく。
リリス「おまえ達がそこまで言うなら、信じて待つかの」
うつつ「・・・よくそこまで、離れた仲間を信じられるね」
二水「ふふ、まだ会って間もないですけど、皆さんもそうなんじゃないですか?」
きらら「はい!だから今もこうして戦えるんです!」
そこにまた、敵の一群が押し寄せてくる。
夢結の攻撃を辛うじて逃れたものが集まってきたのだ。
だが、状況に反して二水は笑顔だった
二水「私が・・・、いいえ、私たちが任されたのは救護所の防衛です!皆さん、改めて力を貸してください!」
フェンネル「言われなくても!」
桃「邪魔する敵は拳一つで・・・、とは行かないけどダウンさせるよ」
ミカン「魔法少女のすることは、どの世界だって変わらないわ!」
シャミ子「まぞくも力を貸します!」
かおす「まんが家もです!」
きらら「援護は任せてください!」
二水「・・・皆さん、ありがとうございます!!」
二水を中心に敵へ立ち向かう一同。
戦闘の終わりも近い。
その頃、梅たちはギガント級を相手に粘っていた。
だが二人はともかく、鶴紗は既に限界を超えていた。
鶴紗「はあ、はあ・・・」
梅「くそっ!やっぱりバリアは健在か!」
以前の傷がまだ癒えていないのだろう。敵のバリアは以前よりも弱まっているようだ。
それでも、決定打に欠ける状況は変わらない。
アルシーヴ「私が持ちうる力を全てヤツにぶつける。だがその間は動けない、すまないが・・・」
梅「分かっているさ、とことん引きつけてやる!」
鶴紗「攻撃を防ぐぐらいなら、まだ出来る・・・!」
梅が縮地を用い、敵の視界を釘付けにする。
敵の攻撃は苛烈さを増すが、それを彼女は紙一重でかわしていく。
アルシーヴへ逸れてきた瓦礫や破片は、鶴紗が防いでいった。
アルシーヴ「・・・今だ!!」
アルシーヴの背後に、巨大な魔方陣が展開される。
火、土、風、水・・・。それら四元素を、月と太陽の力でまとめ上げる。
そうして出来上がった魔法球は、まるで惑星とその周囲を回る衛星のようにも見えた。
アルシーヴ「これで・・・沈めぇぇ!!!」
巨大な魔法球を放つアルシーヴ。直後に彼女は膝をついた。
これを脅威だと判断したのだろう。敵はすかさずバリアを展開する。
やはりそれは緑、赤、青、茶からなる、四枚の板で構成されていた。
やがて力と力がぶつかり合い、辺り一面を閃光が包む。
梅「くぅ・・・!」
鶴紗「眩しい・・・」
やがて光が収まると、そこにはギガント級が佇んでいた。
アルシーヴ「これでも届かないのか・・・!」
鶴紗「いや、よく見て」
見ると、四枚のうち赤と青のバリアが完全に破壊されている。残る緑と茶に関しても、破壊こそされていないがヒビが入っていた。
すなわち、壊れたバリアを縫って、アルシーヴの一撃は敵に届いていたのだ。
マギではなくクリエによるものとはいえ、それは敵を悶えさせるには十分だった。
梅「ノインヴェルトでも届かなかった一撃を・・・」
鶴紗「決めたんだよ、あなたが」
アルシーヴ「そうか・・・。そうなのだな」
やがて残ったバリアも明滅し、消えていく。
それを保てるだけのマギは、もうギガント級には残されていなかった。
苦し紛れに、三人へ突貫するギガント級。だがそこに一斉射撃が加わる。
梨璃「鶴紗ちゃん!梅様!」
梅「梨璃!それにみんなも!」
鶴紗「夢結様は・・・?」
楓「夢結様なら今ごろレアスキルで大暴れしてますわ。まったく、あちらももこちらも無茶する方ばかりなんですから」
神琳「あなたがアルシーヴさんですね?」
雨嘉「二人とも、肩を貸すよ」
肩につかまり、後方へ運ばれる鶴紗とアルシーヴ。
その目には、ある種の安堵が浮かんでいた。
やがて、残ったメンバーが敵の方へ向き直る。
ミリアム「よおし、それではさっそく・・・わわ!?」
そこに突如、弓矢の雨が降り注ぐ。
見ると、そこには幼げな少女が佇んでいた。
ヒナゲシ「まさか、あんなにいたヒュージとウツカイをほとんど倒すなんて・・・!」
楓「その口ぶり、ご自分が黒幕だと言っているようなものですわ」
ヒナゲシ「見くびってた。まさかリリィがここまでの強さだなんて、そんなこと知らなかったの。もう少しでみんな踏みにじって、消すことができたのに!!」
梨璃「あなた、自分が何を言っているのか分かっているんですか」
梅「故郷を踏みにじられ、大切な誰かと離ればなれにされる・・・」
神琳「そんなことをしようなどと、よくもまあ私たちの前で言えましたわね」
誰も目が笑っていなかった。
大切な誰かと生き別れた者。
故郷を奪われた者。
目の前で親しい人間を喪った者。
時代の裏で翻弄され、尊厳を踏みにじられた者。
リリィとは大なり小なり、そうした者たちの集まりである。
ヒナゲシはそうした者たちの前で、言葉にしてはいけないことを口にし、してはいけないことをしたのだ。
アルシーヴ「貴様が真実の手か・・・!」
雨嘉「許さない・・・!」
ミリアム「とっ捕まえて洗いざらい吐かせてやるわい!」
鶴紗「お前みたいなやつ、反吐が出る・・・!」
ヒナゲシ「何よ、自分たちばかり不幸ぶって!!私だって、あの方たちに・・・、お姉様に見捨てられないためにはこうするしかないの!私の希望は絶対に消させない!!」
楓「はん!こんな化け物があなたの希望ですって?ちゃんちゃらおかしいですわ!!」
その時である、余力を僅かばかり取り戻したギガント級が動き出したのだ。
ミリアム「いかん!このままだと逃げられるぞ!」
神琳「させません!」
ヒナゲシ「それはこっちの台詞なの!!」
再び、弓矢の雨が降り注ぐ。
防ぐだけならどうと言うことはないが、動けない二人を庇いつつ、ギガント級を追うとなると話は別だった。
楓「ええい忌々しい!!」
雨嘉「このままじゃ・・・!」
ヒナゲシ「あはは、いい気味なの・・・、ふぇ?」
その時、ヒナゲシは悪寒を感じた。
何かが背後に迫っている。
振り向くとそこには、白い髪と紅い瞳をした少女が、武器を引きずり佇んでいた。
どれだけの敵を屠ってきたのだろう。全身が、チャームが敵の体液で染まっていた。
ヒナゲシ「ひ・・・!」
本能的に駆けだした彼女を、夢結はうなり声を上げながら追う。
苦し紛れにウツカイを呼び寄せるが、時間稼ぎができるかも怪しい。
ミリアム「状況は好転したが、このままだとあやつ殺されかねんぞ!?」
梅「色々聞き出したいことがある。それは駄目だ!」
梨璃「それに、お姉様を人殺しになんてさせません!」
雨嘉「なら、速やかに作戦を・・・!」
楓「ええ、元よりそのつもりでしてよ!」
神琳「では、手筈どおりわたくしが・・・。テスタメント、参ります!」
神琳のレアスキル、テスタメント。
これは任意の術式やレアスキルの効果範囲を拡大させる力を持つ。
彼女が指定した先にいたのは・・・。
神琳「梨璃さん、お願いします!」
梨璃「神琳さん、ありがとう!みんな、いくよ!」
梨璃の周囲を暖かな光と空気が包む。
ヒュージの放った負のマギを正のものへ転換し、味方へ分け与えているのだ。
仲間に力がみなぎる一方で、正のマギに当てられたギガント級が苦しみ出す。
ミリアム「来たわい来たわい!」
アルシーヴ「これは、あれほど濃かった瘴気が晴れて・・・。頭痛も治まったようだ」
楓「梨璃さんのレアスキル、“カリスマ”の力ですわ!」
雨嘉「邪悪なマギを浄化して、みんなに分け与えるの」
梅「今回はテスタメントで範囲を広げたのか。これなら夢結にも届く!」
鶴紗「この暖かさ、梨璃そのものだな」
仲間に力を分けたところで、梨璃が一同の方を見やる。
梨璃「皆さん・・・!」
梅「何も言わなくていい、迎えに行ってやれ!」
雨嘉「梨璃は立派に役目を果たした」
楓「後はお任せあれ!」
梨璃「ありがとう!」
そう言うと彼女は、夢結のいる方へ跳んでいった。
その傍ら、必死に逃げようとするギガント級を、梅と雨嘉が食い止める。
梅「逃がすもんか!」
雨嘉「これが私の役割!」
高速の一撃と正確無比な射撃に、敵が釘付けになる。
楓「受け止めなさい、ちびっこ!!」
ミリアム「ええいちびっこいうな!・・・こい、楓・J・ヌーベル!!」
互いにチャームをぶつけ合う二人。
楓のレアスキルは“レジスタ”といい、味方のマギ純度を上げ、その身体能力とチャーム、すなわち武器のスペックを向上させる力を持つ。
カリスマとレジスタを重ね、それをミリアムが束ねる。そして必殺の一撃を放つのが今回の作戦である。
ミリアム「いけるぞ、フェイズトランセンデンス!!」
そう叫んだ彼女のチャームに、巨大な光刃が形成されていく。
それをミリアムは軽々と持ち上げ、敵の遥か上空まで跳んだ。
ミリアム「食らうがいい!!」
巨大な光の斧が、敵の喉元に深々と食い込む。
あらん限りの悲鳴を上げ、体液をまき散らすギガント級。
背中から種の爆弾を滅茶苦茶に放ち、全身からもうもうと霧を噴出させる。
爆発と霧が収まると敵の姿はなく、代わりに巨大な穴が開いていた。
雨嘉「逃げられた!」
楓「ですが、あれだけの深手を負ったんです。当分の間は安静が必要でしょうね」
ミリアム「何もかもが唐突じゃったしのう、一度腰を落ち着けて布陣を整え・・・」
そう言ってその場に倒れ込むミリアム。
それを梅が支えた。
梅「カッコよかったゾ、ミリりん」
ミリアム「わしゃあミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウスじゃ、変なあだ名で呼ぶでない・・・。はあ、もう口を動かすのも面倒だわい」
ミリアムのレアスキル、フェイズトランセンデンス。
一時的に膨大な力を得る反面、時間が過ぎると枯渇を起こし、身動きがとれなくなるハイリスク・ハイリターンな能力である。応用の幅は広いが、活かすには仲間との連携が必須だ。
神琳「素直には喜べませんが、一段落は着いたようですね」
見れば、あれだけ大量にいた敵も、その全てが片付いていた。
あちこちに残骸が散らばり、砂埃が舞っている。
アルシーヴ「我々だけではこうはいかなかっただろう。なんと礼をすれば・・・」
楓「はいはい!そういう湿っぽいのはナシですわよ!」
鶴紗「共に戦った仲間なんだ。何も気にする必要は無いよ」
アルシーヴ「そうか・・・、そうだな」
梅「梨璃と夢結、早く戻ってこないかなあ」
雨嘉「疲れた・・・」
その頃、夢結はヒナゲシを地面に叩きつけ、チャームを構えていた。
ヒナゲシ「ああ・・・、ああ・・・」
夢結「・・・」
しかし、夢結は僅かに残った理性で、その刃を振り下ろさずにいた。
その刃は人を救うためのものであって、殺すためのものではないのだから。
梨璃のカリスマの光は、確かに夢結にも届いていた。そのおかげで理性を留めることが出来たのだ。
だが、このままではいつ理性が弾け飛ぶかも分からない、ギリギリの状態でもあった。
そんな彼女の耳に、少女の声が届く。
自分より他人の心配ばかりする、危なげで、だからこそ愛おしい者の声が・・・。
梨璃「お姉様、そこまでです!」
夢結「り・・・り・・・」
ふらりと梨璃の下へ向かう夢結。
そして二人はそれが当然のように、互いのチャームをぶつけ合う。
やがて淡い光が夢結を包むと、そこにはいつもの彼女がいた。
夢結「見苦しい姿は晒さないと言ったのに、結局このザマね・・・」
梨璃「いいえ、お姉様が戦ってくれたからこそ、みんな無事でいられたんです。その覚悟を、誰が無様だなんて言うんですか」
夢結「・・・ありがとう」
互いを抱きしめ合う二人。
その隙間を縫って、ヒナゲシは這いつくばるように逃げ出す。
だがそれを一発の銃声が妨げた。
夢結「・・・私と梨璃がこうしているのと、あなたの処遇は別問題よ」
梨璃「全てを話してもらいます!」
ヒナゲシ「あ、う・・・、あぁ・・・」
言葉を失い、今にも泣きだしそうな彼女の元に、虫型のウツカイが大急ぎで飛んでくる。
ヒナゲシを回収したウツカイは、迅速に飛び去っていった。
夢結「待ちなさい!」
ヒナゲシ「・・・許さない、絶対に許さない!!この屈辱は晴らしてやるの!!女神は必ず飲み込んでやる・・・。みんな消えちゃえば良いんだ!」
そう捨て台詞を残し、彼女の姿は消えた。
夢結「雨嘉さんならともかく、私たちでは弾が届かないわね・・・」
梨璃「戻りましょうお姉様、みんなが待っています」
夢結「そうね」
茜色の空はすっかり暗くなり、星が輝き始めていた。
今回の投稿はここまでです。
深夜帯に第8章を投稿したいと思います。
8章に連なる内容のため、その際にもしかすると幕間2も投稿するかもしれません。
とっても面白いです!!
リリスさん、確か150無い(シャミ子と同じくらい)なのに梨璃ちゃんをちみっ子って……彼女156cmできららキャラなら標準サイズなのにw
自分がちみっちゃいことは無視してますね(とてもリリスさんらしい)
>>441
作者です。リリスさんもだいぶちっさいですが、年齢的に梨璃ぐらいならちみっこ(ひよっこ)扱いしそうだなあと
王雨嘉(声・演:遠野ひかるさん)
中華系スイスランド人。
控え目な性格で、可愛いものやネコのグッズ、テラリウムが好きな少女。
姉や妹があまりにも優秀なリリィのため、本人は自分は駄目だと自嘲しがちですが、雨嘉自身も相当優秀なリリィです(例えるなら、姉は模試全国一位で、妹は関東圏一位だけど、自分は都内一位だから駄目なんだ・・・、と言っているようなもの)
ちなみに、ゲーム公式の一柳隊人気投票で、輝かしい一位を獲得しています。
郭神琳(声・演 星守紗凪さん)
台湾の台北出身のリリィ。
自身は日本で長く育っていますが、生まれ故郷の台北をヒュージに侵略されており、その奪還を一つの悲願としています。
お淑やかさと、間違ったことや気に入らないことには毅然と立ち向かう激情を合わせ持つ人物であり、それは正義感や、好意を向けた相手への情熱として表れます。
ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス(声・演 高橋花林さん)
ドイツの貴族の血統を引く少女。
古風な話し方は、祖父の話しぶりを引き継いだもの。
アニメ(ゲーム)とそれ以外の媒体とで、かなりキャラ造形が異なっており、アニメ(ゲーム)では幼い印象と裏腹に、知的な言動や面倒見の良さが目立つキャラクターとなっていました。
工廠科に属し、チャームの修理はお手の物。自分が持つチャームも自作のものです。
第8章 ユウガオ(夜)
二水「あれからマギ残滓を調べましたが、これといった反応は見られませんでした」
梅「あの平原の生物がヒュージに変化する、といったことは無いはずだ」
神琳「ギガント級ですが、あそこまで深手を負えば、少なくとも五日は出てこられないかと」
アルシーヴ「そうか、礼を言う」
ソラ「あなた達の帰還に関しては、こちらで何とかなると思うわ」
アルシーヴ「ソラ様の力があれば、おまえ達を元の世界へ帰すことも出来る」
梨璃「本当ですか!?良かった・・・」
夢結「ええ、でもその前に・・・」
梨璃「はい、ギガント級を打倒しましょう!」
きらら「ヒナゲシの野望も暴かないといけませんね」
戦い終わり、皆は里の広場へ引き返していた。
安否の確認、今後の方針の相談、そして戦った者たちへのねぎらいのため、ライネを中心に炊き出しが行われている。
万が一のため里や神殿に待機していた者もまた、この場を訪れていた。
美姫「お姉ちゃん!!」
琉姫「美姫!ごめんね、心配かけて・・・」
美姫「ううん、いいの。お姉ちゃんたちが無事で本当に良かった・・・」
梅「・・・ああいうの、ホッとするよな」
鶴紗「梅様?」
梅「ああいや、やっぱりさ、兄弟姉妹が離ればなれになるだなんて、そんなことはあっちゃいけないんだ」
鶴紗「・・・そっか、そうですね」
梅「ほーら!鶴紗は寝てなきゃダメだろ。あれだけ無茶してたんだから」
鶴紗「それじゃあ、お言葉に甘えて、少し休んできます」
見れば、色川姉妹が梅たちの方を向き、深く礼をしている。
二人はそれに微笑んで、手をそっと振り替えした。
その様子を、また別の方向から見る者達がいる。
セサミ「あの方たちがリリィ・・・」
ジンジャー「どいつもこいつも腕の立つ戦士だ」
ポルカ「あの武器、どんな構造してるんだ?銃にも剣にもなるなんてよ」
興味を示すポルカの下を、ミリアムが訪れる。
ミリアム「お主が武器職人かの?」
ポルカ「ああ、ポルカってんだ。ええとそっちは・・・」
ミリアム「ミリアム・ヒルデガルド・V・グロピウス。長いから皆好き好きに呼んどる」
ポルカ「じゃあミリアムで良いか?」
ミリアム「勿論じゃ。早速ですまんが相談があってな」
ポルカ「武器のメンテナンスか?」
ミリアム「それもある。頑丈なチャームとて細かな調整は必要じゃし、鉛玉を撃つ以上、その補充も必要でな」
ポルカ「そりゃあ異世界の武器を触れんなら願ってもないことだし、弾丸もうみこに頼まれてよく作っているから、何とかなるとは思うぞ。でもそれだけじゃなさそうだな」
ミリアム「これから皆が、打倒ギガント級のための作戦を打ち立てる。じゃがのう、イレギュラーというものは常に発生しうる。わしらがここに来たのもそうじゃしな」
ポルカ「・・・つまり、ミリアムとおれで保険を作っておくんだな?」
ミリアム「話が早くて助かるわい。互いの世界の技術を組み合わせて、怪物殺しの弾丸を作りたくての。贅沢は言わん、一発で十分じゃ」
それを聞いたポルカは、満面の笑みで承諾した。
ポルカ「面白そうじゃねえか!互いに未知の技術に触れながら、秘密兵器を作るんだろ?こんなにワクワクすることねえよ!!」
ミリアム「じゃろう?お主とは同じ技術屋として、似た匂いを感じたんでのう」
ポルカ「でも、おれたちだけじゃきっと無理だ。だから助っ人を呼んでも良いか?」
ミリアム「モチのロンじゃ。良いものを作るため、互いに出し惜しみ無しで行こうぞい」
ポルカ「ああ!」
そういうとポルカはカンナとメリー、エンギを呼び寄せる。
メリー「ねえ、カンナはともかくアタシと茄子女は畑違いじゃない?」
エンギ「申し訳ないが、私も同感だ」
ポルカ「ああいや、二人には言伝を頼みたいヤツがいてな」
メリー「・・・分かったわ!そういうことね!」
最高の武器を作るための打ち合わせが、今始まった。
梅「ミリアムも始めたみたいだな」
夢結「梅、鶴紗の様子は?」
梅「酷く疲れていること以外は、なんともなさそうだ。今はライネさんの所で休ませてる」
夢結「そう、では私たちも今後の方針を固めましょう」
きらら「あの、さっそく良いでしょうか?」
火を囲みながら、まずきららが話を切り出す。
それは自らが感じた疑問について、確認を行うためであった。
きらら「私たちは以前、あのヒナゲシと戦ったことがあるんです」
楓「ウツカイを使ってテロ行為を働いたのでしょう?まったく、ロクでもない輩ですわね」
マッチ「テ、テロかあ・・・。確かにそう言えばそうなんだけど」
ランプ「まさかそんな物騒な単語を聞くとは思いませんでした・・・」
きらら「その際、ヒナゲシは綿密に作戦を立てていました。ウツカイに何枚も指令書を持たせていたんです」
うつつ「あれ・・・?でも今回は二枚しか指令書が・・・」
きらら「そこなんです。何だかそれが不自然に思えて・・・」
きらら達は戦いの最中、そして一段落ついた後に、新たな指令書がないかを注意深く探していた。
だが結局、最初に見つけた二枚を除き、指令書を発見することは出来なかったのである。
アルシーヴ「確か内容は・・・」
うつつ「一枚目は『クリエを、そして女神を食らえ』で、二枚目は『壊せ』『殺せ』ってしか書いてなかったわよお・・・」
マッチ「改めて見ると、えらく大雑把じゃないか?」
きらら「そうなんですよ。以前はもっと具体的に、何をどうしろと書いてあったんです。それが今回に限ってこんな・・・」
夢結「・・・あの時言いかけたことを、今話しても大丈夫かしら?」
夢結は最初に指令書を見たとき、その内容に既視感を覚えていた。
だがそれを話そうとした矢先、アルシーヴからの通信が入り、なし崩し的に戦闘に入っていたのだ。
きらら「そういえば、何かおっしゃろうとしてましたね」
夢結「恐らくそれは作戦ではなく、ギガント級の意思なのではないかと」
雨嘉「ヒュージの意思・・・?」
夢結「私のレアスキルは、ヒュージと同じ力を宿す物。発動すれば、何もかも壊して、殺したくなってしまう・・・。つまりヒュージとは、常にそういう意思を持つ存在だと考えられます」
梨璃「・・・」
神琳「すなわち、ギガント級の意思がウツカイを通じ、指令書の形になったと?」
夢結「突拍子もない話なのは分かります。それでも、私にはそうとしか思えなかったの」
アルシーヴ「それが本当ならば、真実の手にとっても今回の事態はイレギュラーなのだろう。恐らく便乗して、状況を利用しているに過ぎん」
ソラ「この世界は聖典と呼ばれる数多くの世界と繋がっているの。でも稀に、そうでない世界にも繋がってしまうことがある・・・」
二水「それが今回は私たちの世界と繋がって、偶然にもエトワリウム・・・でしたっけ?その鉱石が落ちてしまったと?」
梅「ヒュージに関しては未だ分からないことだらけだ。ヒュージが利用するケイブ・・・、ワームホールについても同じことが言える」
楓「まるで混線したラジオみたいですわね」
アルシーヴ「だが、この仮定が最も状況を説明しやすくはある」
ふうと息を吐いて、アルシーヴが話を続ける。
アルシーヴ「本来エトワリウムとは、強い癒やしの力・・・、クリエを含む鉱石のことだ。だが、敵から生えていたそれは強い負の力、すなわち絶望のクリエを感じた」
神琳「クリエとマギ・・・、似て非なるものではありますが、どちらも正負が存在することは確かです」
二水「ヒュージは負のマギの固まりみたいなものです。それにゲヘナがエトワリウムを組み込んだ結果・・・」
夢結「クリエが汚染されて、絶望のクリエになった・・・」
きらら「絶望のクリエが体内に溢れているから、ウツカイを自分で生み出せるんですね」
アルシーヴ「ぞっとしない話だな」
マッチ「で、ヒュージは取りあえず誘導して好き勝手にさせて、ウツカイは何だかんだ言うことは聞くから、これ見よがしに利用すると・・・」
梨璃「火事場泥棒みたいですね・・・」
梅「みたいじゃなくて、そう言うんだゾ」
夢結「最初に私たちと戦った際、ギガント級は大量のマギ、およびクリエを消費したようでした。エトワリアにはその補充をしに来たとしか考えられません」
アルシーヴ「だとすれば、ソラ様を狙うのも道理か」
きらら「全てのクリエを司る存在ですからね。それを食べることで、今までにない力を得ようと・・・」
ソラ「・・・」
二水「ヒュージは基本的に物を食べませんが、攻撃とマギの補給のために口腔を使用することはあります」
ランプ「衣乃様、盾を食べられたとおっしゃってました・・・」
楓「エトワリウム製の特注品だったのでしょう?向こうからすれば、マギ補給のおやつといったところでしょうね」
雨嘉「ヒュージの体内は負のマギで満ちている。飲み込まれたらまず助からない・・・」
きらら「そうして、ソラ様を負のマギ、もとい絶望のクリエで侵して、聖典をそこから汚染する・・・」
アルシーヴ「敵の目的が見えてきたな」
ソラ「・・・もしそうなれば、全ての聖典が、あの怪物に侵されてしまうわ」
きらら「そんな!」
うつつ「はぁ!?あれが関係ない世界にもぞろぞろ出るの!?無理ゲーじゃん!!」
梅「・・・梅たちの世界が、ヒュージとまともに戦えるようになるまで、半世紀はかかったんだ」
神琳「それでも、あの半世紀で支払った代償はあまりにも大きいものでした」
夢結「世界のあり方も、倫理観も、全てが大きく変わってしまった」
雨嘉「何より、多くの人命と故郷が奪われた・・・」
一同「・・・」
ランプは想像してしまった。
ひだまり荘が、桜が丘高校が、木組みの街が、蹂躙され、炎に包まれる様子を。
リンたちがキャンプをし、みらたちが星を見上げるような自然に、怪物が跋扈する様を。
“かれら”の厄災から立ち直りつつある由紀たちの世界が、新たな脅威にすり潰される様子を。
テレビに映し出されるのが、フルーツタルトの活躍ではなく、ヒュージの侵攻を伝える報道である様を。
多魔市で傷ついてもなお、ヒュージに立ち向かうであろう桃やミカンの姿を。
クリエメイトたちの通う学び舎が、リリィの最前線基地たるガーデンに作り替えられる様子を・・・。
ランプ「う゛ぇぇぇん!!!!!」
雨嘉「ご、ごめんなさい!泣かせるつもりはなかったの・・・」
梨璃「大丈夫、大丈夫だからね。私たちが絶対そんなことはさせないから・・・!」
思わずランプを抱きしめる梨璃。
梨璃「ごめんね、辛いこと想像させちゃったね」
ランプ「うぅ・・・、ぐす・・・」
二水「ランプさん、私ずっと考えていたんです。もしこの世界に来た意味があるとすれば、それは何なんだろうって。結局、何度考えても答えは変わらなくて・・・」
ランプ「・・・」
二水「ありきたりですが、きっと私は、いいえ、私たちはそれを止めるためにエトワリアへ来たんです」
神琳「言うなれば、これは半世紀前のリベンジです」
夢結「エトワリアが、聖典の世界が、私たちの世界と同じ運命を辿るかどうかの分水嶺・・・」
雨嘉「半世紀前とは違う。ここにはみんながいて、敵が何者か分かっていて、何をすれば良いのか分かりきっている」
梅「だったら止められるさ。だってそうだろ?ゼロからのスタートじゃないんだから!」
楓「わたくしたちを誰だと思っていますの?最高のリーダーが率いる一柳隊でしてよ!」
梨璃「は、恥ずかしいよ楓さん・・・」
ランプ「すみません、取り乱しました・・・」
夢結「良いのよ、それはあなたが世界を愛している証拠なのだから」
ランプ「・・・私、もう泣きません。愛する世界や皆さんのため、やれることを全力でやります」
アルシーヴ「それで良い。ランプ、お前たちはそうして世界を一度救ったじゃないか」
ソラ「その想いが、純粋さがあなたの強さよ」
きらら「だから、また今度も・・・!」
ランプ「はい!」
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