こんにちは!カレルと申すものです
5作目というキリが良い(わたしの中で)数字なので、いつも以上に気合を入れて書きました
こちらは「サジちゃんの病み日記」というまんがタイムきららMAXで連載されていた作品の二次創作です。
今作は「サジちゃんの病み日記」の後日談として制作しました。そのため原作の壮絶なネタバレがあります。そのため原作を読んでから本作読むことをお勧めします。
シリアスとほのぼのの半分が含まれています。
少し長くなりそうなので、何分割かして投稿しますが、最後までは書いていないので投稿が遅れる可能性がありますので、そこはご容赦ください。
注意事項
*キャラクターの独自解釈
*独自設定
*原作との乖離
*妄想
等が含まれるので苦手な方は注意してください
「メロ大丈夫? 足元に気を付けてね」
自分の心配をよそにして私の心配をしてくれるのはとてもありがたいが、今は自分の心配をしてほしい
「ひかり、血が出てるから止血しないと」
「ううん、大丈夫だよ そんなに痛くないし、時間が経てば血も止まるから」
「そうゆう問題じゃないだろ!! ひかりそこを動くなよ」
ひかりを石畳に強制的に座らせて、脚や腕の血を拭きとって絆創膏を貼った、私の甘い考えも合わせて拭き取ろうと心を込めて。
治療している間ひかりはすごく申し訳なさそうな顔をしていたが、私のわがままなので一切を無視して続けた。
ひかりの綺麗な体に傷がついてしまったことは本当に悲しいことだけど、ひかりの歩みを止めさせることは一切考えていない。
次はひかりのことを守れるように先を見越した行動をしていかないといけないな、さもないとまたひかりが傷ついてしまうことになる。
それは絶対に避けないと
応急処置が終わるとまた歩き始めた、今度は私が先頭に立って玄関を目指すことにした
玄関までの道はかなり整備されているといった印象を持った。ところどころにセンサーライトが設置されていて、外観や雑草が生え放題な場所とは対照的に人が住んでいそうな雰囲気を醸し出している。
ここからは順調に歩いて玄関までたどり着いた。
玄関はサジちゃんの実家のような装飾のないシンプルな白の扉だった。
ただ一つ違うところを挙げるのなら、あの家以上に扉がこの洋館のアンバランスさを際立たせているという点だ。
廃墟のような外観と白い扉それだけで違和感が溢れてくる、中はどのような様子なのか開けて確かめたくなるような魔力を持っている。
私はひかりとアイコンタクトをとって扉のノブに手を伸ばした
「鍵がかかってるかもしれないけど、開けるぞ!」
と息巻いてみたが恐怖で腕が震えてうまく回せない、何回か失敗したのちひかりの手を借りてようやく回すことができた。
「あっ、開いた」鍵はかかっていないようで、扉はあっさりと開いた
「じゃあ、入るよ」
洋館の中は薄暗く、光に慣れた目では全体が把握できない。
しばらくするとだんだん闇に眼が慣れて、洋館の内装が分かるようになってきた。
内装は外の荒れ放題な状況と比べて天と地の差があるほどきれいだった。
電気がついていなくて外が荒れ放題な点を除けば、あの洋館と大差がないほどにそっくりだ。
少し進み食堂のような大きな部屋に着いた。左右に道が分かれ、奥には二つの扉があり、一つは銀の扉で、二つ目はいかにもな装飾の付いた大きな扉で、威圧感を放っている。ただ全く人の気配がしない。
「なぁ、ひかり。手分けして探さないか。人がいる気配もないし」
「そうだね、左右に分かれてるから、終わったらこの食堂で落ち合おう」
「じゃあ、私は左側に行ってくる」いったんひかりと別行動をすることにした。
自分で提案した作戦だがひとりというのはすごく心細い、まだひかりは付近を調べているようで気配は感じるがどんどんと離れていっているのがわかる。
食堂から出てまずは一番近くの部屋を開けてみた、この部屋にサジちゃんがいないことはわかりきっているが手ごろな付近から調べることで、ひかりとの距離を離したくない。
恐る恐る中を覗くと家具も何もない真っ新な部屋だった。
本当に何もない生活感のかけらもなく、ただ存在しているだけの部屋だ
ただ掃除は行き届いているようで、床はおろか窓のサッシにもホコリが一切積もっていない。
何もないのに掃除だけは行き届いている、少し不気味に思いつつ部屋を出て、また別の部屋を目指した。
捜索の途中で中庭が窓から見えたが、陽光が差してここだけ別世界のような印象を受ける、すごく気になるところだが中庭に入るのはひかりと合流した後でいいだろう。
一通り探索を終えたがめぼしい発見が一切なかった、どの部屋も家具の一つもない更地だったので探索な時間が一切かからず食堂に戻る廊下を歩いている。
ひとまず一度探索を終えて食堂に戻ったが、ひかりはまだ食堂には戻っておらず、戻るまで不安な気持ちのまま待った。
「お待たせ」後ろからひかりの声がしたので振り向いた
「どう?収穫あった」
「あったよ」
「え?あったの」
「そうだよ、シャワールームとお風呂があったよ」
「おいおい、私は全く収穫なかったのに 敢えて言うのなら中庭があったくらいだ」
「まあ、それはしょうがないよね 私もそこが気になってるし一緒に行こっか」
「了解、じゃあひかりが見つけたシャワールームとお風呂も見たいし右から行くか」
そうして右側へ歩みを進めた、これまでの坂道で汗をかいている、シャワー室に惹かれるのは乙女なら当然ではないだろうか。
右側の扉を開けると明るい廊下がお出迎えしてくれた、私の左側とは似ても似つかないほど構造が違っている。
渡り廊下には採光用の大きな窓ガラスが張られていて、綺麗度は左側とほぼ同じだが柔らかさというところを見れば一目瞭然だ。
窓から見える景色もとても青々としていて、自然の美しさが堪能できるようになっている、私の方の雑草だらけの場所とはえらい違いだ。
いちいちの違いに目を付けてツッコんでいた私だが、ついに問題のシャワー室の前まで来た。
ここまで案内してくれたが、正直一切ほかの部屋との区別がなく、同じ部屋が5部屋ぐらいあるので迷ってしまいそうになる。
お風呂は暖簾がかかっていてわかりやすかったので、シャワー室も同じくらいわかりやすくしてくれればなと言いそうになったが、口に出すほどの事でもないので飲み込んだ。
「じゃあ、扉開けようか」ひかりは急に真剣な声色になった
あまりの変わりように少し戸惑うが、ひかりのことなので大したことがないことだと思っているが、最悪のケースを想定してシャワー室に入った。
中の様子は特にいうことのないほど普通だ、籠が並んでいて奥はシャワーがある部屋だろうかタイル張りになっているのが見える。
「メロ、これなんだけど…」
そう言いながらひかりは籠を取り出した、その中身を見ると服が入っている
「あれ?なんかうちの制服っぽいけど、まさか!!」
「うん、たぶん沙慈ちゃんの制服だと思う、綺麗に洗濯されてるの!!」
ひかりがいつも以上にテンションが上がっているが無理もない、私も飛び上がりたいほどうれしい。きれいに洗濯されているということは、サジちゃんを世話してくれていることと同義だから安心して探すことができる。
籠の奥にはわが校のネクタイも入っていて、ほぼ確定とみていいだろう。
「マジか、大収穫じゃん」
「ほんと、チラッと見た時私の目を疑ったもん」
「これで後は中庭と食堂の奥の扉だけかな」
「メロ、その前にシャワー浴びてかない」
「あぁそうだな 汗で気持ち悪いし」
ひかりの提案を了承してシャワーを浴びている途中に気づいたが、これ不法侵入をして勝手に水を使っていると思ったが、やってしまったものは仕方ないし、もし家主に出会ったら全力で謝罪することで放免してもらおう。
サジちゃんを世話している人だし大丈夫だと思うが、もし何かあったら莉瑠歌さんを盾にして何とかしよう。
「メロ、冷静になって思ったけど、これってめっちゃヤバいよね」
「そうだな、何かあったら大人を頼りにしよう」
流石のひかりも今の行為を自覚しているようで、脱衣所からでてすぐに中庭へ向かうことにした
「さっさとサジちゃんを見つけたいね」
「そうだね、長居は良くないし早く外に出よう」
ひかりはそう言いながら中庭へ続く扉を開けた
中庭は侵入したときに通った雑草だらけの場所と比べて整備されている、奥には林があり、手前側にはバスケットコート、池と目でも楽しめるようになっている。
一周してみたが、特にめぼしい発見がなかった、ただ良い環境であることはわかった。
林も日光が程よく葉っぱに吸収され涼しく過ごしやすかったし、池の周りには睡蓮が咲いていて癒された。
時間があればここでバスケをしてもいい、そう時間が…
「はっ! 早く食堂に戻ろう」
「え〜 そんなに慌ててどうしたの?」
「もう、ここに不法侵入してるって忘れてるだろ、できるだけ早く見つけて出たいんだ」
「うん、それもそうだね」
ひかりの普段と同じような反応、でもそれが逆に不安になる。
まるで何かおかしなことが起こることを予感させるような嵐の前の静けさだ。
私たちは食堂に戻ってきた、中の様子は外と比べて重苦しい、威圧感のある扉がそうさせるのか、原因は不明だが前に進まないことには何も解決しないので、扉に歩みを進めた。
「どっちにする?」
「まずは銀色の扉からにしようか」
決めるのが早いか、ひかりは迷いなく銀色の扉の中へ入っていった。その後を追いかけて私も入った。
銀の扉の先は厨房で、その一角に調理器具が所狭しと並べてあり威圧感があった。食材をしまう冷蔵庫も巨大で人くらいなら何人も余裕で入るサイズだ。
少し嫌な想像が入ったが、ただの冷蔵庫中を確認することぐらいはしていいだろう。
「なか確認する?」
「鍵がかかってるかもしれないけど開けてみよう」
冷蔵庫の扉に手を伸ばして開けた、開かれた冷蔵庫からは冷気が漏れ出し、周囲の気温を下げている。
中身は一般的な冷蔵庫で空白の場所が目立つが、特に変わったものは入っていないようだ。
「ここには特にないか」
「まぁそうだよね」
私たちは食堂に戻って、本命の扉の前に立った
「じゃあ、開けるぞ」
私はノブに手をかけて回した。ひんやりとした感触がしたが特に抵抗もなく扉は開いた。
扉の先は廊下で、左右に一部屋づつあり、奥には白い扉があった。
「部屋が三つあるけど、右の部屋から調べようか」
「おっけ〜」
ひかりは確認もせず、右の部屋のノブを回した。
「ガチャガチャ」とノブを回すが開かない。どうやら鍵がかかっているようだ。
ひかりはすぐに左のノブに手をかけた。
流石に興奮を抑えられないようで、普段のひかりと比べて1.5倍素早く動いている
「ガチャ…」左の扉は鍵がかかっていないらしく開いたようだ
開いた中の様子を覗くと、寝室のような部屋が見えた。
中央に巨大なベッドがあり、他にも椅子、机など生活感が感じられた。
今まで廃墟の外装や何もない部屋などさんざん見て来たので、ホッとする気持ちになる
「なんか、人がちゃんと住んでるんだよな」
「うん、そうだね」
部屋の中を一通り観察したが、クローゼットに服が大量に入っていること以外、特にめぼしいところがなかったのでこの部屋を出た。
残すは奥の白い扉だけとなった
「ここが最後だな、じゃあ開けるぞ」ノブに手を伸ばして下げた。
あっさりと開き部屋の全容が把握できた。
病院の一室を彷彿とさせるような白い部屋で、内装自体はさっきの部屋と大差なかった。
しかし、机の上には謎の本がおかれていた。
「日記帳かな?」
『Diary』と書かれた表紙を見ながらつぶやいた
その時急に扉が閉まった。
扉を開けようとするが、ノブを下しても扉が開く気配がない。
「ひかり、扉があかない!!」
そのことを聞いたひかりはカーテンを開けて窓を露わにした。
「嘘だろ…」窓には鉄格子がはめられていて出られない。
私たちは完全に閉じ込められてしまった。
.............................
[サジちゃん]
「ふふっ、かかったわね」
「どうした?うさぎ」
「…いいえ、時間がかかったなと思っただけよ」
「ふーん 変なの 10分ぐらいしか移動してないのに」
「でもなかなかいい景色だと思わない」
「ま、まぁ そうだな」
確かにうさぎの言う通り、いい景色だ。川がそばに流れ、周りが森に囲まれて、空気がおいしい
キャンプなんて私には合わないと思っていたが、来てみるといいものだなと思ってしまう。装備はすべてうさぎが用意してくれたし、面倒な作業をすべてやってくれてることも大きいかもしれない。
「サジちゃん、水遊びしない」
「えー、いやだ」
いくら人がほとんどいないとしても、水着を着るのは恥ずかしいから拒否する
「せっかくかわいい水着買ったのに、着てくれないとうさぎ悲しい」
「っ、…まったくしょうがないから着るよ」
どうせ着てくれるまで粘ると思うし、うさぎのガッカリする顔が見たくないので着ることにした。
「はい、これ」
渡された水着は半袖にショートパンツという、水着らしからぬ水着だった。
触り心地は普通の服と違って、何やら不思議な感触だ
「サジちゃんはビキニとか絶対嫌がるでしょ、だから普段着とあまり違いのないこの水着を選んだのよ」
「あ、ありがと」
「私はもう着替えてるから、向こうで着替えていらっしゃい」
うさぎから水着を受け取って、更衣室まで急いだ
川からあまり離れていない場所に更衣室があった、夏休みということで少なからず人がいた。
正直人がいる場所で着替えたくないが、うさぎを待たせるわけにはいかないので我慢して着がえた。
私はプールや海などの水遊びをする場所には行ったことがないので、楽しみ方はわからないが少しワクワクしている自分がいる。
うさぎのもとへ急いだ
「待たせたな」
「わぁ!サジちゃんすごくかわいいわ」
「…ありがと」
「じゃあ遊びましょ」
そういうとうさぎは上着を脱いで私の手をとった
暴力的なまでの情報が入ってきて一瞬たじろぎ、そのすきを突かれ川に誘われた
「つめたっ!?」
川の水、夏だからそんなに冷たくないと思っていたが、予想外に冷たくて驚いてしまった
でも水の冷たさに最初はびっくりしたが、触れているうちにだんだんと慣れていった
今日は気温が高く、この中での水遊びはとても楽しいことが分かった。
鳴いているセミの声も気にならないくらい全力であそんだとはっきり言える。
水鉄砲、浮き輪、ボールといろいろなものをうさぎが持ってきてくれたので、飽きが来なかった。
途中、足を滑らせて全身が濡れてしまったが、それも笑い話となるくらいには楽しんだ。
「そろそろお昼にしましょうか」
「もうそんな時間?」
遊んでいて気づかなかったが太陽が高いところに上っていて、かなり気温が上がっている。
「あと、水分補給を忘れないでね。気付かなくても体の水分が結構抜けてると思うの」
「ああ、わかった」
忠告通り水筒の水を飲んだ
ごくごくと飲めるのは、うさぎの言う通り体の水分が抜けてるからだろう。
「今日はキャンプらしくカレーよ、作るまで少し時間がかかるから遊んでらっしゃい」
うさぎはそう言っていたが、いつもご飯をつくってくれているから、負担を少しでも軽くしてあげたいと思ったので
「ねぇ、うさぎ 私もごはん作るの、手伝ってもいいかな」
「わぁ!ありがとう サジちゃんがこんなに心を開いてくれるなんて嬉しい」
「ちょっ、茶化すな、どっか行くぞ」
「ふふっ、ごめんなさい じゃあこのタンクに水を入れてもらえるかしら? 水は水道水を使ってね」
そう言うと車輪付きのウォータータンクを出してきた。
大きさもそこそこで水を並々といれるとかなり重量になりそうな予感がする
「そうか?川の水を使ったほうが楽だと思うけどな」
「サジちゃん、川の水は食用じゃないのよ。病気になるかもしれないからね」
「うん、わかった」
うさぎの言う通りに水道を探し土手に出た。
坂を上った先に水道があり、タンクに水を入れて戻った。
暑い中、満タンのタンクを運ぶのはかなり重労働だ。いくらタンクに車輪が着いていても重くて思うようには動かない。
やっとの思いで戻ると、うさぎは焚火を作りすでに野菜を煮ていた。
「おつかれさま 重かったでしょう、そこで座って休んでて」
うさぎの料理をしているところは初めてみたが、テキパキとしていて見入るほどのウデだ。
「あっ!そうだわ、サジちゃん。お米を研いでくれるかしら」
「お米を洗うだけだから、簡単にできるわよ」
「それなら私にできそうだな」
正直タンクを運ぶだけで体力が半分奪われたが、弱音は言ってられない
「軽く洗うだけでいいわよ、研いだお米は飯盒に入れたままにしておいて」
うさぎはそう言って、お米と飯盒を取り出した。
「わかった」
私が米を洗おうとしている中、隣ですごい勢いでカレーが形になっていく。
カレールゥを入れたようで、おいしそうな匂いが漂ってくる。
「よそみしないの」
「ごめん…」私も集中してお米を研ぐことにした。
ボウルにお米を入れて水を注いだ
入れた水は透明から瞬く間に白く濁って、お米が見えなくなった
「ふふっ ちゃんとやっているわね、そうなったらお米がこぼれないように水をこぼして、あと2回くらい優しく繰り返してね」
「うん わかった」
2回、3回と浮かぶ白いモヤモヤの量は変わらない。うさぎに洗うだけと言われたので、これ以上やりたいが我慢しておく。
「終わったぞ」研ぎ終わったお米をうさぎに差し出した。
「ありがとう。もうこれでカレーは煮込むだけだから、サジちゃんは完全に暇になっちゃうわね」
「いいや、うさぎの料理は退屈しないからいいよ」
「ふふ、じゃあ存分に楽しませないとね」
うさぎは研ぎ終わったお米が入った飯盒を焚火の上に吊るした。
「あとはお米が炊き上がったら完成よ あとは炊き上がる様子でも眺めてて あっ! でも絶対触っちゃだめよ」
何もやることがないようなので、うさぎの言うように焚火を眺めながら炊き上がるのを待った。
揺らめく炎を見つめているとなんとなく心が休まる気がする。
飯盒から吹きこぼれる水分で、炎の形が不規則に揺れて、バラエティーに富んでいて面白い。
吹きこぼれもなくなって、炎の揺れも安定してきたとき、飯盒を焚火から離した。
どうやら、お米が炊きあがったようだ。
「うん、よくできてるわ サジちゃんのおかげね」
お世辞だろうが、褒められるのは悪い気分ではない。それに炊き立てのご飯の香りと食欲をそそるカレーの匂いが合わさり、期待が止まらない。
「うさぎ!はやく食べよう」
「はーい、今カレーをよそうから待っててね」
私は、はやる気持ちを抑えきれないが、グッと我慢して席に着いた
「はい、お待たせ」
私にはうさぎがカレーを運んでくる天使に見えた。
「いただきます!」
ライスをスプーンで掬いカレーに付けて食べた。
「う、うますぎる!」
これまで私の食べた中で最高の食べ物だと確信した。
空腹感もスパイスとなり、スプーンを動かす手が止まらない。
野菜も柔らかく口の中でほぐれて、肉は牛肉で歯ごたえもしっかりとしていてうまみが溢れている。
「ごちそうさま、今までで一番おいしかったかもしれないよ」
「えっ!? そう!うれしいわ」うさぎは意外そうな顔をしていたが、すぐに歓喜の表情に変わった。
「そんなに喜ぶことか?」私には理解ができなかったが、うさぎにとってはとても重要なことなのかもしれない。
少し雲が出てきた
「午後はトレッキングでもやってみない」
皿洗いを一緒にやっていたときに急に言い出した。
私はなにやら言葉の意味が理解できなかったが、二つ返事で了承した、がその選択は今考えると失敗だ。
「つらい…」
もう二時間も山道を歩いている、うさぎは余裕があるのか鼻唄を歌ってノリノリで歩いている。
途中で気づくべきだった、着替えをしているときにやけにしっかりとした素材の服を着るな、と思ったり、妙に荷物が多いなと思ったり。
最初の一時間はどこかへ行くために移動してるのかと思っていたが、まさかガチで山登りをすることになったのは完全に騙された。
うさぎ曰く「初心者におすすめコース」と言っていたが辛い
「さぁ、もう少しで休憩所に着くから頑張って」
うさぎの励ましの声が聞こえるが、気にする暇がないほどヘトヘトだ。
休憩所に着いたら、1時間くらいは休憩したい。
少し足元がおぼつかなくなってきた、荷物の重さはそんなでもないが、これまで通しで歩いているから足が痛い。
うさぎもそのことに気づいてペースを合わせてくれえているが、辛さが軽減されることはないから、あくまでも気休め程度だ。
水自体はうさぎが飲ませてくれるから脱水症の心配がないことだけが唯一の救いだ。
ここまで歩いていると景色どうこうの問題ではなく、完全に自分との戦いになっている。
頂上に着くのが先か、私の体力が尽きてうさぎに負われて下山するのが先かのチキンレースだ。
いくらうさぎとはいえ勝負に負けるようなのは癪なので、気合でついていく
そのまま歩いていると、急に広場のような場所に出た
「ついたわよ」
「はぁー!!やっとついたー!」あまりの解放感に身をうさぎに預けた
どうやらここが休憩ポイントのようで、トイレや自動販売機などが見える
「おつかれさま」
「うわっ!? すごい安定感」休憩所について安堵の気持ちでうさぎに寄りかかった時、一切動かなかったのでそんな感想がでた。
うさぎは、はるかに私よりも重い荷物を持っても、あまり疲れていないように見える。
きっと体幹が違うのかと思ったら、昨日のお風呂で洗いっこした時のことを思い出した。
.............................
7/28
〜お風呂場にて〜
沙慈「うさぎ、覚悟しろよ」ジリジリ
うさぎ「ひゃあ、サジちゃん大胆」フフッ
沙慈「さっきのお返しだ」モミモミ
うさぎ「はぁ、気持ちいいわ」
沙慈「ぐっ、これならどうだ」モミモミ゙
うさぎ「いいわね、もうちょっと強くやってもいいわよ」
沙慈「ぐっ、これなら ってなんで私が肩もみなんて」スベッ
沙慈「痛あっ!」ゴテン
うさぎ「大丈夫?サジちゃん」ガタッ
沙慈「だいじょうぶ、マットの上に落ちたから怪我はないって…」ジッ
うさぎ「どうしたの?サジちゃん」
沙慈「うさぎ、すごい腹筋だな」ジーッ
うさぎ「サジちゃんのえっち、見すぎよ」///カァァ
沙慈「理不尽」
.............................
そんなことがあったな、思い出してしまった。
腹筋のほかに、おっぱいも大きかったなぁ〜 そんなことを考えてると、うさぎが
「そろそろ行きましょうか」と言ってきた。
「えぇ…」
「そろそろ行かないと雨が降るわ」
「雨…」
私はずぶぬれになることと、山道を歩くことを天秤にかけた。
最悪すぶぬれになりながら山道を歩くことを考えると、まだ山道を歩くことの方がましだと感じたから、うさぎの提案を受け入れた。
「あと一時間で頂上に着きそうかしら」
「この苦労が報われるといいんだけどな」そう言って私たちは頂上を目指して歩き始めた。
厚い雲が空に掛かって今にも雨が降りそうだが、まだ雨は降らないらしい。
もう30分ほど歩いたころだろうか、ぽつりぽつりと雨が降り始めた。
最悪のタイミングだ、傘を持っていないし濡れるのは確定だ
「サジちゃん! 付近に洞窟はないかしら確かあったはずなの、手分けして探しましょう」
「わかった!」
私は雨に濡れるのが本当に嫌なので、うさぎの言葉を聞く前に雨宿りできる場所を探して走り出した。
山道を2,3歩外れたところに洞窟があった
「うさぎ!! あったぞ!洞窟」
幸い近くに雨宿りができるくらいの洞窟が近くにあったのと、雨が降り始めだったのであまり濡れずに避難することができた。
「雨、急にふってきたわね」うさぎは空の様子をうかがいながら言った
洞窟のそとでは滝のような雨が降っている、当分外に出られそうもないので腰を落ち着けた。
「これからどうするんだ?」
「うーん、どうしようかしら」
「でも、雨が上がるまで動けないからな」
「そういえば、その大きい荷物は何が入っているんだ?」うさぎの荷物を指で指しながら言った。
「これね、中身は救急箱と食料とナイフと寝袋よ」うさぎはリュックの中身を出しながら説明してくれた。
「すごいな」
山初心者なので、これが適切なのか過剰なのかの判断が一切できないので、すごい微妙な返しをしてしまった。
「ふふっ、ありがと」
しかし、うさぎは特に気にしていないようで余裕のある返しを受けた
いままで気にしていなかったが、話だしに笑う癖があるのに気付いた。
うさぎが楽しそうにしていると私もつられて、気持ちが上向きになるような気がする。
とうとう雷も降り始めた、空気を裂くような轟音と光が洞窟を照らした。
大きな音に最初はビビったが音にも慣れて、景色を楽しむ余裕もできた。
隣に座っている相方の方に目をやると心なしか体が震えている。
「サジちゃん…」いきなり私の視界がふさがれ、柔らかい感触と甘い匂いが漂った。
「うさぎ、苦しい…」かなり強い力で締め付けられていてもがくことしかできない
「サジちゃんどこにもいかないでよ… 雷こわいよぉ」
「っ!?」
私が聞いた声はいつものうさぎの余裕そうな雰囲気とは違う。
か弱い、守ってあげたくなるような少女の声が聞こえた。
私を抱きしめている腕も小刻みに震えている。
私の頭に一粒の温かいしずくが落ちた。
悪戯なんかじゃ決してない
うさぎのありのままを垣間見たような気がした。
相変わらず拘束する力は落ちないが、声を振り絞って名前を呼んだ
「うさぎ!!」
そう言うと、うさぎの腕の拘束が少し緩まり、更に声をかけた
「どこにも行かないさ、お前を守ってみせる」
しばらくすると、うさぎの声にもならない声が聞こえ、さらに多くの暖かいしずくが私の髪を濡らしていく。
視界が大きな障害物にふさがれてうさぎの顔を確認できないが、きっととびっきりの笑顔になってるのかな。
私も少し息苦しいが、必死に手を伸ばした。
どのくらいの時間が経っただろうか、まだ外は盛んに雨が降っている。
うさぎは泣き疲れたのか穏やかな寝息を立てている。ここから出るのはまだ時間がかかりそうだ。
洞窟内には雨のザーザーという音だけが響き渡っている。
.............................
[ひかり&メロ]
「何時間たったんだ?」
「んん?まったくわからないね」
私たちは白い部屋に閉じ込められてしまった。ここにサジちゃんがいるとの情報だったが、二人とも情けなくこの部屋に釘付けになってしまっている。
幸いこの部屋にはエアコンがあり、熱中症で生命の危機に瀕することがないのが救いだ。
「これ、完全に騙されたんじゃないのか」
「ううん…これが莉瑠歌さんの罠という可能性が高いけど、なんとも言えないね。」
この数時間、脱出の方法を色々試してはいるがどれも失敗に終わっている。
この部屋自体が電波を遮断する素材でできているのか、スマホも圏外になってしまっているので外に連絡も取れない。
「これは柘榴さんが心配して来てくれるまでここで待機するしかないな」
「いいや、明日まで助けが来ないかもしれない…」
「それってどうゆうこと?」
「つまり、お母さんと莉瑠歌さんが裏でつながってるってこと」
「なんでそんなことを」
「わからないけど、私たちが車で待ってるときに話をきいたんだよ 断片しかわからなかったけど」
「ううん…」
「まぁ、そうゆうわけでゆっくり待とうか」
「おい!ひかり 知ってたなら言ってくれればよかっただろ」
「それは、そうだけど ごめ〜ん 確信が持てなかったんだよ」
「はぁ、まあいいや」
ひかりの適当さはわかっているがこの状況では笑えない、脱出の線も薄いとなるとどうしたらいいかわからなくなる。
話をきく限り、莉瑠歌さんがサジちゃんの失踪について詳しいことを知っているのは確かな様だ。
しかし、そうまでして私たちをここに閉じ込めておく理由はないはずだ。
考えれば考えるほど、頭の中がこんがらがって纏まらない。
「はぁ、甘いものが食べたい…」
「メロ、甘いものなら冷蔵庫にあるよ」
急にひかりが変なことを言い始めた、冷蔵庫なんかこの部屋にあるはずがないのに。
半ばあきらめでひかりの声がする方を向いた。
「え?あるじゃん!?」
ひかりの手にはシュークリームが乗っていて、壁からは冷気の白い靄が漏れ出ている。
「壁を調べたら、冷蔵庫があって…シュークリーム食べる?」
そう言ってプラスチックの容器に入ったシュークリームを差し出した
「あぁ、いただくとす…。」
ひかりから渡されたシュークリームは、どう見ても高級、というか最高級品だ。
容器にプリントされたロゴ、甘いもの好きなら一度は憧れる「暗月堂」の大人気商品、開店1時間で売り切れる激レアだ。
なぜそんなものがこの拘束部屋にあるのかは理解に苦しむが、莉瑠歌さんが私たちをここに釘付けすることが目的なら、一応筋は通っている事になる。
と、そんなこと考えても仕方ないのでシュークリームをいただくことにしよう。
せっかくの最高級を腐らせたら、死んでも死にきれない。
前に並んで直前で売り切れて食べられなかった幻のお菓子、それが私のものに。
「もう目的は達成されたんじゃないかな、これだけでまんぞくだよ」
「もう! メロ、元気は出してほしいけど満足しすぎないようにね」
「はいはい いっただきまーす♪」
『ん〜!うまい!』
サクサクの生地にバニラがふんわりと香るカスタードクリーム。
一般的なシュークリームは生地が軽いものが多いが、私の好みはサクサクのビスケット生地。
まさにこれは、私が求めていた完ぺきなシュークリームの一つだ。
「メロが元気になってよかったよ」
「んむ、最高だぞ」
「そういえば、まだ机の上にある日記帳見てないよね?」
「あぁ、そうだったな。色々とごちゃついてわすれてたわ」
「誰の日記帳だろうね?もしかして沙慈ちゃんの物かな?じゃあ読むよ」
.............................
[サジちゃん]
ようやく雨が上がった
そのあとは私も寝てしまって正確な時間が分からない。
太陽の位置がかなり西に寄ってしまっているので、かなり時間が経過してることはわかる。
おそらく長く寝ていたので、体力は完全に回復したが足はまだ痛い、帰ったらうさぎに存分にマッサージしてほしいな、絶対に気持ちいいと思う。
「ん? ふぁ〜〜 おはようサジちゃん」
「おはよう ところでうさぎさん、離してもらっていいですか」
「わぁ、ごめんなさい」
だいたい数時間ぶりに、拘束を脱した。
うさぎの甘美な匂いが鼻の奥をいまだに刺激してくらくらする。
もう少しこの匂いを堪能していたいところだが、暗くなる前に頂上に着かなくてはいけない
「なんで、サジちゃんを抱きしめていたのかしら」
「それは…」
いや、よそう雨が降っていた間のことを覚えていないのなら、こっちにとっても好都合。
わざわざ恥ずかしい記憶を引っ張り出す必要もない。
もし喧嘩をしたときに、こっちが有利になる手札の一つとしてとっておこう。
それに気障な台詞も吐いてしまったし、これは墓場まで持っていこうと思う
「顔が赤いけど何かあったかしら」
「なんだったっけ、覚えてないや それにお前の乳に押しつぶされてたからな」
「それはごめんなさい じゃあ、そろそろ出発しましょうか」
私たちは荷物をまとめて、洞窟をでた
「うっ、まぶし」長い間洞窟にいたので、暗闇に慣れた体に西日が強烈に刺激してくる
とっさに目を逸らすと、別の景色が瞳を輝かせてくれた。
「うわー!虹だ」
「ほんと、きれいね」
山と山の間に架かる大きな虹
雨が空気の汚れをすべて洗い流したのか、どこまでも透き通るような空に、鮮烈な橋が架かっている。
うさぎとみる景色はいつまでたっても飽きることがない、もうずっと見ていられるほどに
「サジちゃん、サングラスよ」
私が景色に見とれている横で、うさぎはすでに出発の準備を整えていた。
「ありがと」
サングラスを受け取り、
私も少ない荷物を背に担いで、頂上に向けてまた歩き始めた。
「滑りやすいから気を付けてね」
「あぁ、わかっている」
「高いな…」
「落ちたら、大怪我じゃすまないわよ」
崖の近くを歩きながら、お互いに声を掛け合っていた。
崖の高さはそこまでではないが、下は川が流れていて、ゴツゴツとした岩肌が露出していている。
『落ちたらおわりだな』
まるで死の淵に…
「サジちゃん!?」
「へ?」
気が付くと私の体の半分宙に浮いている?足を滑らせたのかな
うさぎの焦った表情がとてもゆっくりに見える。
それに景色も、私が落ちるのもゆっくりに見える。
これが走馬灯か、前に飛び降りた時には何も感じなかったのに。
怖い
死ぬのが本当に怖い
無慈悲なほど平等にかかる重力、これほどにまで恨めしいと感じたことはない
生きる希望が芽生えた瞬間に摘み取られる、ただ残っているのは絶望のみ
せっかくうさぎと仲良くなれたのにここで終わりなのか。
何か、なにかないか、嫌だ!もっと生きたい!それなのになんで、これは呪いか
それとも生きようとしたことへの罰か! 畜生!!
『もっと…もっと生きたかった…』
『…サジちゃん』
うさぎの声が聞こえる、幻聴かな?
涙で全く景色が見えないのにうさぎの姿だけははっきりと見ることができる、私の大切な人
「サジちゃん」
とうとう幻まで見えてきたうさぎが近くに見える
『はぁ 最期にうさぎに会えてよかったよ ひかりの見えない日々に希望を与えてくれた恩人 私がいなくなっても問題なく世界が動くんだからいっそこれで 本当に最後に幻でもなんでも…』
「サジちゃん!!もう大丈夫よ!」
「!?」これは現実だ
うさぎの大きな腕が私を優しく包んでくれる、安心する匂い
もう会えないと思っていたのに、これで終わりだと思っていたのに、急に生への未練がこくこくと湧いてきた
絶対に死にたくない、私を助けるためにこんなところへ飛び込んできてくれたうさぎの為にも
「うざぎぃぃ ごわがっだよー」
「サジちゃん、しっかりつかまってね、下手したら一緒にお陀仏よ」
「うん!!」
ふたりは重力に従って落ちている
このままいけば地面にたたきつけられて死んでしまうだろう、最悪の事態を防ぐためうさぎは考えを巡らせた
崖際にはまばらに小さな木が生えている、それを使えば二人とも無事に崖下へ降りられるかもしれない、そう考えたうさぎは沙慈を抱きしめ、張り出した枝に手を伸ばし掴んだ。
が、二人の体重を支え切れずに折れてしまった。
「くっ」
うさぎの掌は木を掴んだ際に擦り切れて出血を伴った激しい痛みが襲っている
もう木を掴むほどの握力も残っていない
「う、うさぎ、だいじょうぶ」
「だ、大丈夫…よ 私を信じて!!」
『とは言ったものの、これは難しいかもしれない… 左手が残っているけど、これがつぶれると本格的にヤバいわね』
「ぐっ!!」
残った左手を木に伸ばしたが、結果は右手の時と同様だった。両手はずたずたに裂かれて出血をしている、握るだけでも激痛が走る
「うさぎ!!」
「はぁはぁ だいじょうぶよ! 絶対に助けるから!!」
『何とかサジちゃんだけでも助けたいけど難しい。私が下になれば衝撃を吸収できるかしら』
「サジちゃん、ごめんね…」
うさぎは沙慈を上にして、抱きかかえるような体制をとった。下は幸運にも枝葉が茂っている木の上だ。
バリバリと木の枝が裂ける音が響いている。
落ちていく間、沙慈を掴む手を一瞬たりと弱めたりしなかった。
「…生きているのか?」
あまりのことに生きた心地がしないが、心臓が脈を打っているのが分かるので死んではいない
「うさぎ!!」
問題なのはうさぎの方だ、私をかばって背中から落下した。状態を確認したいが、どんな状態になっているか確認しなくてもわかる。
「血が…」
うさぎの横腹に、血に濡れ肉がぶら下がった枝が禍々しく突き出ている。
刺さった根元から、だんだんと赤い染みが広がっている。
私を庇って負った傷、早く治療しなきゃうさぎは死んでしまう
携帯電話は持っていないし助けを呼ぶ手段が分からない
「ははっ…しく…じったわ… ほねも…なんぼんか…おれてる…の…かし…ら」
「おい…笑ってる場合じゃ…」
「さ…じちゃん わたし…のはなしを…きいてく…れる」
「なんだ!!わたしにできることなら」
「おちるま…えにか…ばんをなげ…たからとっ…てきて」
「かばん? うん! わかった、鞄だな」
私を抱擁していた優しい腕は力なく下がり、痛々しい掌が露わになり私の心を抉る
「うさぎ こんなことになって…」
浅い呼吸をしているうさぎの元から離れ、件の鞄を捜索することにした。
探している最中、枝が刺さった痛々しい姿のまま横たわっている姿を何度もみた。
うさぎの顔から血の気がどんどん引いていくのが分かる
『時間がない!!』
付近を必死に探して走り回った、うさぎのお陰で怪我らしい怪我をしていないので体力の限界など気にしていられない。
焦燥感が高まり生きた心地がしないが、かばんは幸いにもあまり離れていないところに落ちていた
すぐに戻って鞄をうさぎにみせた
「見つけたぞ」
「そのな…かにおうき…ゅうきっと…とほんが…あるからつか…って」
「わかった、絶対に救ってやるからな」
「たのんだ…わよ」
「ああ!任せろ。二度も救われた命。 たすけてやるよ!」
私は応急処置の本を見ながら始めた、該当のページに付箋が貼ってあったのですぐに見つけることができた。
まずは傷口を見ることが最優先。ハサミで服を裁断して、傷口を露わにした
『…酷いな』私の腕ぐらいの枝が横腹を貫いている。
経験がないので、抜いて良いものかそのままにしておくべきなのか全くわからない。
もし抜いた時に出血がひどかったらうさぎは死んでしまう、そんな恐怖が先行して実行できない
うさぎは苦しそうに呻いている
とりあえず、傷口をペットボトルの水で洗い、うさぎの指示を仰いだ。
「つぎはどうしたら…」
「できる…ならぬい…て…そうしたら… ほんに…かい…てあると…おり…のしょ…ちをし…て…」
「わかった…」
私は覚悟を決めた、刺さったままでは出血し続けるだろうし助けられない、だから最善の方法と信じて
背中に手を回し、上半身をゆっくりと起き上がらせた
「まって… なにか…かま…せて」
「うん! タオルとかどうだ?」
「えぇ…いいわ…」
そう言うとタオルを咥え、痛みに耐える準備をした
「じゃあいくぞ!!」
背中に刺さっている枝を掴み、力を込めて枝を引いた
「うんん、ぐっ!!」悲惨なうめき声がこだまする中、出血を伴って枝が抜けた
「はぁはぁ、取れたぞ。 いま止血してやるからな」
「…」
返り血がぽたぽたと私の腕を零れる
『…まるで私まで怪我をしたみたいだな』
うさぎは痛みで失神したようで、だらりと私に寄りかかっている。
うさぎを鞄の中にあったレジャーシートに寝かせ、本に書いてある通りに傷口周りを消毒し、包帯を傷口に押し込み圧迫した。
うさぎの中は赤みを帯びたピンク色に見え、綺麗だと思ってしまった。
こんな状態なのに変なことを考えてしまったことを悔いる暇もない
雑念を払うように力を込めて押し込む
押し込んだ包帯はすぐに真っ赤に染まり焦りだけが積もる。
レジャーシートに流れた血がたまり小さい池ができている
濃厚な血と肉の匂いが私の鼻腔を刺激し、胃液がせりあがってくるのを感じる
何とか吐瀉を我慢し、傷口の出血が少なくなったので包帯を腹部に一周するように巻いた
「はぁはぁ、なんとか血は止まったな」
「うさぎ、ごめんな でも運が良かった」
もしうさぎの意識があってそのまま止血していたら、地獄の苦しみを与えてしまうところだった、私も叫び声や呻き声を聴きながらやるなんて気が変になってしまう。
だから意識を失ってくれてお互いに幸運だった
でも早く病院に行かないと、うさぎが死んでしまう。
日が落ちてしまう前に屋敷に帰らないと
両方の掌や手足の傷口に包帯を巻き、私はうさぎを担いで川沿いを移動した。
..........
どれくらい歩いただろうか、日がとっくに落ちて、闇が辺りを包んでいる。
時折聞こえる獣の声が私の不安感を増大させる。この状態で動物に襲われたら確実に二人とも死ぬだろう。
私は逃げられずに殺されて、うさぎは動けないまま喰われて死んでしまう
そんな最悪を想像しながら、歩いていた
暗くて足元がおぼつかない、ヘッドライトだけではこれ以上歩くのはリスクが大きすぎる。
もし転んで私までけがをしたら、いよいよもって生還は絶望的になる
うさぎはもう起きているが、体力の消耗を抑えるために寝て貰っている。傷が開いてしまうので動けそうにもない。
だが休憩をするにも何もない野晒しの状態で腰を据えるのも自殺行為。もっと安全な、例えば洞窟などが休憩場所としてはふさわしいだろう。
私は休憩場所候補の洞窟を見つけるために川の道から外れて、危険だが崖側の森に入ることにした
森に入って10分ほど、さ迷い歩いた
うさぎを負ぶっているので体感100メートルも進めていないように感じる、だが確実に進んでいる。
またしばらく進んでいると、ヘッドライトの光が大きな壁にぶつかった。ライトを壁に沿って這わせると、暗黒が口を開けていた
「やった!洞窟だ」
「うさぎ、ここで休憩しないか」洞窟の入り口をライトで照らしながら言った
「わかったわ…」
食料などはバックに入っていたので体力を回復できるが、身の安全が心配だ。
洞窟の中は奥に広く、ライトで照らしても何かがいるような様子もない、入っても背伸びができるくらいの余裕があるように見える
「うん、安全そうだな」中は外の気温と比べて涼しく過ごしやすい。
洞窟の中に身を入れて休息をとることにした
「安静にしていて 私は焚火ができるように薪を探してくる」
うさぎには横になってもらい、焚火用の薪を集めることにした。外は真っ暗だが周りは森、枯れ枝を探すくらいわけないと思っていた。
「くそっ!どれも湿っていて使い物にならない」集めてきた薪に火をつけようとしたが、まったく火が付かない。
さっきの大雨で枯れ木がすべて濡れてしまって、火が付かないらしい。
そんな様子を見かねたようで、「サジちゃん、毛布で…十分よ」と私を気遣ってくれる
うさぎは傍からみても消耗していることが分かる。このままではうさぎは太陽を拝むまえに体力が奪われて死んでしまう。
「ごめんな、うさぎ 大切なおまえの命ひとつ救えないような情けないヤツで 私にはおまえ以外何もない だから安心してくれ、もし…」
「サジちゃん!! 私、名案を思いついたの…」私の言葉を遮るように言った
「貴女一人で助けを呼びに行って…」
「なっ… そ、そんなことできるわけ」
「いいえ、どうせ…このままでは共倒れになってしまう…」
「一番生き残る可能性が高い提案なのよ…」
痛みを堪えながら必死に私を助けようとしている、うさぎを見捨てるのか。
「無理だ、そんなことできない やっぱりここで…」
「沙慈」
うさぎからは聞いたことない、静かで力強い声が聞こえた。
「沙慈ちゃん、こっちに来て」今度は母性に溢れた声が聞こえた
「!?」
私のくちびるに柔らかく熱い感触が伝わってきた
『キスだ』
頭では理解できなくても、瞬時に体が理解する
はじめてを奪われたキスと似て、鉄の味がする強引なくちづけを
でも今は嫌じゃない
体のこわばりも呼吸の乱れもなく自然に、激しく…
うさぎのくらくらするほどの甘い匂いと、汗と血のにおいが混じって私のときめきがもっと
洞窟の熱っぽい空気が記憶をとろけさせ、濃密に絡み合う
お風呂場で感じた微熱
自分でも気づかないうちに大きくなり、貪るようにうさぎを感じていた。
「沙慈、大好きよ」
「はぁはぁ うさぎ…」
この胸のときめきが止まらない、うさぎをすべて自分のものにしたい
果てる最期の時まで
『次は私から…』
「沙慈 これは別れのキスよ」
私の思考を遮るように、信じがたい言葉が飛び込んできた
「えっ? 別れ…そんな…」
急にそんなことを言われて、冷水を頭からかけられたような気分になった。
「安心して、私は死なないわ 約束する」
「うさぎ…」
「大丈夫、無事に生還できたらこの続きをしましょう」
「くっ… くそっ、わかった 死ぬなよ 約束だからな!!」
「電話は沙慈が最初にいた部屋にあるわ」
「わかった 絶対に死ぬなよ!!」
洞窟にうさぎを残して走り出した
雲にかかった月が顔をだし、漆黒の川辺を冷たく照らしている
「私は彼女に何かを与えることはできたのかしら… 空虚な人生だったけど、あの娘と再会して何か変わったような気がするわ はぁ…お別れね」
洞窟の隙間から月の光が冷たく注いでいる、彼女のつぶやきは静かに洞窟内に響いている
情念は昏く奥に吹き溜まり、夜が更けていく
.............................
[ひかり&メロ]
7/30(木)
「もう日付またいだかな?」
「こうもやることないと時間間隔もごっちゃになるね〜」
「日記はサジちゃんの日記だったけど」
「ほんとびっくり〜」
「それにうさぎと一緒だったとは」
「ほんと〜」
「おいひかり、完全にやる気なくなってないか」
「え〜 だってここで気張っててもどうしようもないし」
「まぁ、そうだけど… まって!」
「ん?どしたん」
「なぁ、足音聞こえないか」
「!? 聞こえる」
さっきは微かな足音だったが、だんだんと大きくなって、こちらに向かってくるような気がする。
「おいひかり、誰かが来るみたいだから準備しとけよ」
「了解!」
部屋の電気を消し、私たちは扉の前で待機した。
足音は扉の前で止まり激しい息遣いが聞こえてくる。ガチャと扉の鍵が外れる音がし、扉が開いた。
「覚悟ーっ!」
「えっ?」
暗くて見えないが、ひかりが誰かを捕まえたらしい。
「ちょ、離せ! 誰だ?」
その声、聞き覚えがある
「ひかり!」
「え!なに?」
「多分、捕まえてるのサジちゃんだよ」
「え?」
すぐさま電気をつけて、確認した。
「沙慈ちゃん?」
「えっ?ひかりちゃん」
「って、そんなことしてる場合じゃなかった、助けを呼ばないと」
「誰を?」
「えっと…友達だよ!」
「それで、電話はどこだ」
「えっと、サジちゃん ここには電話はないぞ、別の部屋なら」
「それを早く言え!」
『理不尽』
サジちゃんはすごい勢いで別の部屋に行ってしまった。
「もしもし…」
.............................
7/31(日)
「沙慈ちゃん、誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
ひかりちゃんの家で私の誕生日パーティーをしている。
あの一件から1年、私は日々を忙しく生きている
うさぎとの最後の約束、それを胸に秘めて。
約束を果たすまでは私は死ぬことはできないし、洞窟でうさぎと離れたあと片時も忘れたことはない
『もう1年経ったんだよな なんか変な気持ちだ』
妙な胸騒ぎを覚え、外に出ることにした
「ちょっと外の空気を吸ってくる」
「あぁ、わかった でも早く帰って来いよ ケーキが残ってるんだから」
ひかりちゃんとメロは前と変わらず私に接してくれている。
あんなことをしていっぱい迷惑をかけて、今更合わせる顔がないのに。
「まったく、元気がない顔ね」
「!?」
私の目の前にうさぎが立っていた
「約束したわよね、死なないって」
「うさぎ… 」
「ふふっ、なんて顔してるの、生きてる間くらい笑わないと」
「ほんとにうさぎなのか?」
「お腹の傷跡でも見てみる。こんな体になっちゃったんだから責任取ってもらわないと」
そう言って、うさぎは服を摘まんでお腹を見せるしぐさをした
「泣いているの? 沙慈」
「っ…泣いてない!! いままでなにしてたんだよ!! 寂しかったんだぞ!」
何故だろう、うさぎの姿がにじんで良く見えない、もっと近くで見たいのに足が動かない
何故だろう、涙が止まらない。こぼれた雫は地面を濡らし、潤していく。
何故だろう…
「まるで宝石ね」
「くそっ 心配かけさせやがって…」
私が置いてきた希望の正体がわかったよ
ずっと待っていたものの正体
止まっていた時が動き出すような高揚感
偽物じゃなかった、うさぎとの間にやっと見つけた本物
本当にたくさんの遠回りして大切なことにやっと気づいたんだ
「愛してるよ」
太陽が高く、私たちを照らしている。これから来る真夏を予感させるような光
そう、私たちの物語は今始まったばかりだ
[完]
あとがき
ここまでよんでいただき、誠にありがとうございます
これから二人はどんな物語を紡いでいくのか、そしてひかりとメロの反応とは…
これにて完結です。
「サジちゃんの病み日記」私が本当に好きな作品の一つです
書いているうちに1万,2万と増えていって、最終的に約6万文字の長いお話になりました。
この作品との出会いは確か、やるデース!速報さんにまとめられていた記事を読んだことがきっかけだったと思います。
この頃はきららBBSはおろか速報もたまに見るくらいだったはずで、運命のようなものを感じました。
この作品のタイトルは「さりゆく貴女にくちづけを」ですが最初は「死にゆく貴女にくちづけを」というタイトルにしようとしていました。
けれど前に「きもちわるいから君がすき」の作品スレを建てる時にタイトルが消えてしまってなんのスレかわからなくなってしまった、という苦い過去があり、×××で伏字にしなくてはならなくなったので、表示が消えることを危惧して今のタイトルになりました。
話を戻して、原作は表紙からしてもやべぇオーラが出ていましたが中身を読んでみると、以外ときららっぽい内容と二巻のうさぎの殺人未遂が私の琴線にぶっ刺さりました。
最後のサジちゃんの飛び降りのシーンで終わっているのですが、明確に死亡したというシーンがなくここで誰かがサジちゃんを助けるというIF展開を考えたのが始まりです。
あの状況で助けられるのは、うさぎしかいないので消去法で彼女にしたのですが、書いているうちに愛着が湧いてきて、メロさんに次ぐ好きなキャラですね。
彼女は原作中でサジちゃんに「似たもの同士のクセにッ」と言っていましたが、本当にそっくりなんですよね。本作を作るにあたって4回くらい読み直したのですが、子供っぽいところや、ひとの気持ちを考えない、または聴かない、危害を加える、そして生い立ちなど。
特に生い立ちで、どちらとも幼少期に孤独を経験して、その孤独を埋めるため他者を求めるところも共通しています。
違う点は、人や物を傷つけることにより自分に注目してほしいと考えているか、人を縛り付けて自分に注目してほしいかの違いですかね。攻めと守りのような関係
終盤の雷でうさぎ幼児退行するシーンでも、子供の頃に嵐の日に一人寂しく震えていたのではないかという想像からできたものです。
そして、執筆するうえでこだわったことは、やはり性の表現を抑えることですかね。書いた後、読み返してみてもほとんど隠しきれていませんが「キス」くらいしか直接的な単語は使っていないですしね。まぁ オッケーということで、あとは読者様の解釈にお任せします
メロさん、サジちゃんが主人公として描きましたが、ひかりの扱いが結構困ったんですよ、イマイチ感情が理解できなくて、最初、クール系のキャラになったり次にポンコツ系になったりかなり迷走しました。いまでもキャラが掴めていないと思います(笑)
逆に他3人のキャラはかなり把握している自信があります。
同時に二つの物語を進行させるのはかなり難しかったです。初期の頃の好き勝手やっているところから、中盤のパートから二つの話が絡んでくるということを途中で考えてまとめていきました。
そして終盤へと書いているうちに道筋が明確に見えてきてときには、激しい興奮と高揚感で椅子から立ち上がるくらい喜びました。パズルを組み立てていくような感覚にすごく近いです。
プロットの段階では、始まりのうさぎとの邂逅と終わりのキスしか考えていなかったので、わりとまとまっていて感心したり
せっかくなので、執筆前の初期のプロットをスレの最後に原文ママで貼っておきます
反省としては、作中でうさぎの名前を書きすぎました。調べてみると280回使ったらしいです。自分でかいてアレですが、ちょっと書きすぎですね。
書き出しは日記風に書いてみましたが、行をそろえるのがめんどくさかったので、初期のあたりにしかないんですよね。
スマホでみるとあんまり実感しづらいですし、Pixivに投稿する際には日記に見えるように工夫したいですね。
あと初期は1レスにとんでもないくらい詰め込んでいますね、もうちょっと余裕を持たせてもよかった気もしますが、そうするとレス数が300程度を超えそうな勢いなんですよね。
作中で私が好きな要素をかなり入れました、キスをしてからの別れなど一番好きなシーンです。食べ物やシチュエーションetc…
ほかにもいろいろな作品を参考にしています。
「メタルギアソリッド3」
福井晴敏著の小説「ターンエーガンダム」
そしてペンギノンさんの「【SS】 シャミ子「杏里ちゃん、一緒に帰ろ?」」などを参考にしています。
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3668&ukey=0
とくに最後のキスシーンに衝撃を受けて創作意欲が高まったといっても過言ではないです。
完結しましたが、過程の話はいろいろ書きたいことがあります、うさぎの心情の変化やサジちゃんが洞窟を離れた後など、別のスレで投稿しようと思っているので、投稿したらそちらもよろしくお願いします。
最後にネタの提供お願いします!
唐突に言って意味が分からないと思いますが、提供して頂いたネタはきっちりと有効活用するので、よろしくお願いします。
と、いうわけであとがきが長くなりましたが、また次の作品でお会いしましょう
プロット
【死にゆく貴女にくちづけを】
はじめ
・屋上の描写、黒い影が視界の端に映る・サジちゃんの心情描写・知らない部屋で目が覚める・誰かの応急処置の跡を見る・生を実感し今までやっていたことが馬鹿らしくなる・お腹が減り、部屋から出る・ダイニングには凛道うさぎが寝ている・彼女を起こさないように逃げだそうとするが、起きてしまう・沙慈臨戦態勢・うさぎは語りだす・信じることはできないという・証拠をだす・渋々、臨戦態勢解除・今後のことをうさぎに聞く・「貴女を助けたのは気まぐれだから、恩に着る必要はないし、江戸川さんやメロちゃんのところに戻るといいという」・「いいや、もう橋口メロはともかくとして、ひかりちゃんに合わせる顔がない」・興味なさそうに相づちをうつ・うさぎは逃亡中の身なので逃亡計画・沙慈ちゃんもついていく
中
・海に行く・動物園にいく・温泉・うさぎへの好感度が上がる・山に行く・遭難・沙慈ちゃんが崖から落ちる・うさぎが庇い一緒に落ちる・うさぎの腹に木の枝が刺さり大量出血・うろたえる沙慈ちゃんに、うさぎが瀕死で治療を指示・雨が降ってくる・洞窟に避難・足止め・数時間後・うさぎが提案・沙慈は拒否・うさぎが力ずくで聞かせる・止められる・背負って下山・共倒れ・洞窟再び・先が長くないことを悟ったうさぎはある提案をする・沙慈ちゃんを説得したうさぎは最後にキスをする・うさぎの独り言・助けを呼びに行く・麓まで降りて通報
終わり
・間接的にうさぎの死を告げられる・うさぎの言葉を思い出す・家に帰り、メロと再会
拝読いたしました! かなりの超大作と相成りましたが、完結お疲れ様&おめでとうデース!!
改めて作品を俯瞰して気付くのは、シリアスとほのぼののバランス感覚が本当に巧い。緊迫した状況の中ににやにやしてしまう要素があったり、逆に和やかな雰囲気の陰に身震いを憶える箇所が潜んでいたりと、ある種のリアリティと総合的な意味でのエンターテイメント性が随所に散りばめられていました。
最初の時点では絶望に支配されきった沙慈が文字通り「さりゆく」お話かと思いましたが、物語が進んでいくにつれて沙慈が自分を飛び越えて心から笑えるようになるための「旅立ち」という意味なのかなと考えるようになりました。歪んだところはあれど献身的に沙慈を支え続けてくれたうさぎの、不器用で懸命な優しさがあったからこそ、沙慈は新たな答えを導き、それを手にできたのでしょう。
更に、行方不明になった沙慈を諦めず捜索し続けたひかりとメロ。彼女たちの「優しさ」は、うさぎのそれとは少々違う形をしていますが、沙慈を決して見捨てないという強い意志を胸に行動し続けた点は、紛れもなく彼女に対する「愛」と言ってよいでしょう。沙慈と再会を果たした後も彼女と良好な関係を保っていることがうかがえる描写、個人的にぐっときました。
序盤、意識が朦朧とする中で沙慈が視て、当時は偽物と考えていた「夢」の様子が、終盤で現実のものとなった。そういった描写の対比を通して、沙慈たち四人が彼女たちなりの幸せを確かに手にできたのだと、強く感じました。
本当に読み応えのある、素晴らしい作品でした! カレル様、どうもありがとうございました!!
P.S.
杏里ちゃんSS、読んでくださったのですね...! あの作品は個人的にもかなり思い入れがあるので、非常に感慨深いものがあります。
こちらとしても励みになります、重ねて御礼申し上げます!
P.S. 2
ネタの提供、ですか...。取り敢えず前に書き込んだこれ↓は、よろしければご自由にお使いください。
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3159#res39
あとはそうだなぁ... 『あんハピ♪』のリクエストOKだったら、椿ちゃん主役のお話とか読んでみたいかな。私、以前書いたSSで述べた通りぼくっ娘が大好きで... (笑)
ペンギノンさんいつもありがとうございます
「さりゆく」の意味、鋭い洞察ですね
さらにはもう一つの意味があり、うさぎの視点からみた別れを表しています。そして、うさぎには本編で明かしていない秘密が…
あとの話は別の機会に
つーか今はこれが限界…(ノブナガ感)
P.S
ネタ提供ありがとうございます
「あんハピ♪」の椿ですか、私は彼女について何も知らないので考察を深める時間も含めてかなりかかると思いますが、実現させます。
シリアスになるかコミカルになるかは「Make Your Choice」
原作読まないと…
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