タイトルからは分からないとは思いますが、このSSは棺担ぎのクロととある非きらら作品のクロスSSとなっております。
以下注意書き
・ちょい長
・その割に盛り上がるのは中盤以降
・ちょい長なので分割で週一くらいのペースで投稿しようかと思案中
・完成させたものの投稿なので投げ出したりはしない(はず)
・キャラ崩壊はしないように頑張ったつもり
・二つの作品の設定を都合よく解釈したご都合主義とも取れる展開あり
・全くグロくないとは言い難い
・きらファン成分は二摘み
こんな感じですがそれでよければ読んでみてほしいです。
ちなみに何となくですがこの段階ではクロス先作品のタイトルは伏せておこうかなと思います。すぐに分かるようにはなっているんですが。有名な作品ですよ。
――数分後
ニジュク「クロちゃ……」
クロ「どうしたんだい?」
ニジュク「なんだかきもちわるいの……」
サンジュ「くらくらするの……」
クロ「大丈夫かい?」
ニジュク「だいじょぶじゃない……」
サンジュ「あるきたくない……」
クロ(もう症状が出てるのか……)
クロ「じゃあ、少し休憩しようか」
ニジュク・サンジュ「うう〜……」
セン「項垂れてやがる」
クロ「ところでセンはどうだい?体調に変化はあるかい?」
セン「まあ、少し吐き気がするような気もしたが、もう何ともねえよ」
セン「お前はどうなんだ?」
クロ「私も大体同じ感じさ」
クロ「ただ、ニジュクとサンジュにはより色濃く呪いの影響が出ているようだね」
セン「まあ多分まだ子供だからだろうな」
セン「で、どう思ったよ。アビスの呪いとやらを初体験した感想は?」
クロ「センの言葉を疑っていたわけじゃないけど、こうして体感するまでは正直あまり深くは考えていなかったんだ」
クロ「でも、実際に体験してみてわかったよ。ここはとても恐ろしい所だね」
クロ「まだ、入り口付近だからこの程度の症状で済んでいるんだろうけど」
クロ「聞いた話だと、より深く潜るほど帰路の呪いは重くなってしまうんだろう?」
セン「そう言ってたな」
クロ「まるでこの大穴自体が内部の情報を漏らさないように作り上げた防犯装置だね」
セン「俺には捕食機能に思えてならねえよ。真偽のほどは定かじゃねえがな」
クロ「本当にどういう原理何だろうね」
――数分後
クロ「さて……、そろそろ行くか。二人とも、もう大丈夫かい?」
ニジュク「さっきよりはだいじょぶだけど……」
サンジュ「まだうごきたくない……」
クロ「ゆっくりでいいから進もう」
クロ「ただでさえこの場所は未知の生物がたくさんいて危険なんだ。あまり長居はしたくない」
ニジュク・サンジュ「……………………」
クロ「……………………」
クロ「仕方ない。もう少しだけ休んでいこうか」
セン「甘いな、お前」
クロ「だから仕方がないと言っただろう」
――数時間後
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
セン「チビ達が御就寝だ」
クロ「休みを挟みながらとはいえ、呪いの影響を受けながらそれなりの距離を歩いてきたからね」
セン「とはいえ、ただ起きるのを待つのも退屈だな」
セン「もうお前がおぶっていくしかねえだろ」
クロ「仕方ないか。まあ、こうなることは織り込み済みだよ」
クロ「よいしょっと。さあ、行こうか」
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
セン「お前さ、まだこの穴に潜るつもりでいるのか?」
クロ「当然さ。まだこの場所について何も解ってないからね」
クロ「魔女との係わりがあるかどうか確かめないと」
クロ「そのために今日はこの二人を連れてきたんだ」
セン「やっぱりそういうことか」
セン「お前はこの場所が恐いところだということを教え込むためにニジュクとサンジュを連れてきたわけだ」
クロ「これ以上深い場所に潜るのに二人を連れていくことはできない」
クロ「でも二人には口で説明しても分かってもらえないからね」
クロ「こうするしか方法が無かったのさ」
セン「やれやれ。これじゃあ心置きなく奈落に挑めるじゃねえか」
クロ「頼りにしてるよ、相棒」
セン「まあ、身の危険を感じる程度には付き合ってやるよ」
セン「それと、お前もあんまり無理すんな」
セン「この場所はお前にとっても危険な場所だってことを忘れるなよ」
クロ「重々承知してるさ」
セン「ならもう少しゆっくり登れ。気持ち悪くなってきた」
セン「お前もきてるだろ」
セン「多少戻るのが遅くなっても、日暮れまでに戻れればいいからよ」
クロ「……そうさせてもらおうかな」
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
――大穴の街 オース
クロ「やれやれ、何とか帰ってこれたね……」
セン「これで吐き気ともおさらばだぜ……」
門番「おい!!お前ら探窟家じゃないな!?何処から侵入したんだ!?」
クロ「南区のスラムを歩いていたら、床が抜け落ちました」スタスタ
セン「ここを管理してるんだったらそういうところきちんとしといた方がいいぜ」パタパタ
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
門番「え?ああ……」
門番「……………………」
門番(いや、あいつら盗掘者だよな?)
セン「やれやれ、娘が息をするように嘘を吐けるようになって悲しいぜ」
クロ「育ちが悪いんだから仕方がないさ」
セン「嫌味か貴様」
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
――夜 宿屋
ニジュク「ふぁぁ〜〜〜」
サンジュ「んん〜〜」
クロ「やあ、起きたかい?」
ニジュク「ここはどこ?」
サンジュ「わたしたち、ぼうけんしてたのに」
セン「クロがおぶってここまで運んだんだよ」
サンジュ「おもいだした。わたしたち、とちゅうできもちわるくなって……」
ニジュク「あるけなくなって……」
ニジュク・サンジュ「……………………」
ニジュク・サンジュ「ごめんなさい……」
クロ「君達が謝ることじゃないよ」
クロ「それより、お腹は空いてないかい?一緒にご飯を食べよう」
ニジュク・サンジュ「食べる!!」
――数時間後
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
セン「昼間あれだけ寝たのに夜もちゃんと眠れるなんて羨ましいな」
クロ「まあ、まだ小さいからね」
セン「で?これからどうするよ?」
クロ「私達も寝ようか」
セン「違う、そうじゃない。これからまた奈落に挑むとして、どういう準備をするかってことだよ」
クロ「……まずは情報だね」
クロ「呪いに関する情報もだけど、奈落に住む原生生物も相当危険なはずだ」
クロ「そのあたりのことが纏められた書物を用意できればいいんだけど……」
セン「あとは探窟家とかいう連中の技術と知識をありったけ身につける必要もあるな」
セン「それに、奈落には店なんて気の利いたものは無えからな」
セン「今日は日帰りで帰ってきたが、今度は長丁場になる可能性が高い」
セン「自給自足のために食べられる動植物の知識も必要だな」
クロ「ふう……。それだけ準備をして危険を冒して何も収穫が無かったら、少しばかり気が滅入ってしまいそうだよ」
セン「心配すんな。そうだったとしてもいつも通りだ」
ニジュク・サンジュ「クークーzzz」
――数週間後
クロ「ああ、いい天気だね……」
セン「天も俺達の旅の出立を祝ってるってか?」
クロ「さあ、どうだろう。天候は生きとし生けるものに平等だからね」
ニジュク「クロちゃ……」
サンジュ「いっちゃうの……?」
クロ「ああ。少しの間お別れだ」
サンジュ「いつごろかえってくるの……?」
クロ「分からない。数日後かもしれないし、数年後かもしれない」
ニジュク「クロちゃ……」ジワ……
サンジュ「……………………」ジワ……
クロ「……………………」
クロ「……………………」ギュ……
クロ「いつ帰ってこれるかは分からない」
クロ「でもね」
クロ「約束するよ」
クロ「どれだけ時間が掛かっても」
クロ「必ず帰ってくるよ」
クロ「必ずね」
セン「それじゃあ店主。こいつらのこと、頼むわ」
宿屋の店主「ああ、任せときな」
セン「おい、ニジュク、サンジュ。摘まみ出されねえように出来る範囲の手伝いくらいしろよ」
ニジュク「うん……」
サンジュ「わかった……」
宿屋の店主「安心しな。あんまり手が掛かるようなら孤児院に放り込んでやる」カッカッカ
クロ「それじゃあ、行ってくるよ」
ニジュク「きをつけてね……」
サンジュ「わたしたち、まってるから……」
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セン「やれやれ。お前ももう少し悲しそうな顔をしても罰当んねぇぞ?」
クロ「そういうわけにはいかないよ」
クロ「なんたって私には人間らしい感情は毒になってしまうんだからね」
セン「まあ、そうだよな」
セン「しかしこの数週間の間、アビスのことを調べまくったが、知れば知るほど常識が通用しない場所だったな」
クロ「ああ、そうだね」
クロ「呪いの症状の他にも、生息する動植物のこととか、遺物のこととか」
クロ「興味深いことばかりだったね」
セン「使うかわからんが、ロープやら閃光弾やら出費もかさんじまったな」
クロ「まあ、仕方がないよ。それに、探窟家からしてみれば物足りないくらいだろうし」
クロ「もっとお金があれば色々揃えておくべきなんだろうけど」
セン「違えねえ」
セン「そういえば、地上と奈落の中じゃ時間の流れも違うらしいな」
クロ「奈落の方が時間の流れが遅いんだっけ」
セン「ああ。それと深ければ深いほど差も大きくなる」
セン「それが本当なら、俺達が奈落に潜っている間に地上ではどんどん時間が進んでいくわけだから」
セン「帰ってくるのに数年掛かるってのもあり得ない話じゃないかもな」
クロ「やめてくれよ。気が重くなる」
クロ「そういえばセン」
セン「なんだ?クロ」
クロ「あの日ってもうすぐじゃないかな?」
セン「あの日……。ああ、あの日な。そうだな。少し先だが、もうすぐだな」
クロ「あの日を迎えたら奈落の底では何が起きるのかな?」
セン「さあな。まあ、行ってみれば分かるんじゃねえか?」
キリがいいのでこの辺りで中断。
ニジュクとサンジュはしばらく退場。
次回には恐らく……
ということで続きはまた来週。
――南区 岸壁街
クロ「さて、またここに戻ってきたね」
セン「どうする?戻るなら今のうちだぜ?」
クロ「愚問だね」ヒョイ
セン「うわ!?こら、待ちやがれ!!」バサバサバサバサ
セン「飛び降りるなら一言言えよ!!俺がいなきゃ死んじまうだろうが!!」バサバサ
クロ「大丈夫だよ。信じてるから」バサバサ
セン「ったく……。気球に乗った時もそうだったが、本当にどうなっても知らねえからな……」バサバサ
闇すらも及ばぬ深淵へと
その身を捧げ、挑む者達に
アビスは全てを与えるという
生きて死ぬ、呪いと祝福のその全てを
旅路の果てに何を選び取り、終わるのか
決められるのは奈落の意思か、それに挑む者だけである
セン「また冊子に書いてあるのか?」
クロ「いや、今度は古本市で仕入れた探窟家向けの図録にね」
セン「同じ出版社だろ、絶対」
――深界一層 アビスの淵
クロ「よし。前回と同じ場所だね」
セン「さて、ちゃっちゃと進んじまおうぜ」
セン「こんな序盤の序盤でもたもたしてたら先が思いやられるしな」
クロ「そうだね。行こう」スタスタ
セン「おいクロ。そっちは崖……」
セン「まさか……」
クロ「そのまさかさ」ピョイッ
セン「だあああ!!てめえ!!」バサバサバサバサ
セン「やるなら先に言えって言っただろうが!!」バサバサ
クロ「センのおかげで切り立つ崖も迂回する必要もなく安全に降りられる」バサバサ
クロ「こんなに有り難いことはないね」バサバサ
セン「いや、疲れるから程々にしてくれ。マジで」バサバサ
クロ「了解」バサバサ
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セン「なんて言ってるうちに意味ありげな場所に来たな」
クロ「ここはもしかして一層と二層の境目じゃないかな?」
セン「なんだ、もうか?こんなにあっさり着くものなのか?」
クロ「何というか、降りるだけだったからね」
セン「まあ、他の探窟家共には真似できない方法使ったからな」
クロ「それに、今降りてきた道を登らなければいけないんだったら、こんなに簡単にはいかないだろうね」
クロ「きっと何倍も時間が掛かってしまうよ」
セン「ああ、そのうち戻んなきゃいけねえんだよなあ……。考えたくねえ……」
クロ「そういうわけにもいかないけどね。でもまあ、今はとにかく降りてしまおう」
セン「ったく……。そうするか……」
――深界二層 誘いの森
クロ「ここは……」
セン「……一気に人間の生活圏から逸脱した空間になったな」
クロ「より一層自然の深い場所だね、ここは……」
ギャースギャース
セン「ああ、いきなり遠くに変な鳥が飛んでやがる……」
クロ「まあ、最初に入った時に出くわした鳥に比べれば小さいけどね」
クロ「ともあれ、身を隠しておいた方がよさそうだね。急ごう」
セン「おう」
覚悟しなければならない
日常を踏み越えたこの地では
自分達こそが異物であり、敵であり、餌であり、脅威なのだ
クロ「と、探窟家向けの図録に書いてある」
セン「文才があるのは結構だが、いい加減くどいな」
セン「だがまあ、今までは笑いごとで済んでいたが、ここから先は洒落にならなそうだな」
クロ「そうだね。ここは人間が生活する環境からあまりに掛け離れすぎている」
セン「まあ、お前を餌に出来る生物がいるのなら拝んでみたいもんだが」
クロ「自分が餌になる心配をした方がいいんじゃないかな?」
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セン「この辺りの植物は形だけ見れば樹木には見えねえが、随分と背が高いな」
クロ「これのことも確か本に載ってたね。……あったよ」
クロ「アマギリの木……、この一本の太い枝は必ずアビスの中心方向を向いている……」
セン「ほう……、迷った時に助かるな」
セン「それにしても、便利な本だな」
クロ「今まで奈落に挑んできた先達の叡智だね」
クロ「この本を手に入れられなかったら、正直奈落に挑むことは断念していたかもね」
セン「ああ、全くだな」
セン「しかし、一層だとほとんど降りるだけだったのに、ここだといきなり歩かされるな」
クロ「穴が部分的に窄まっているのかな?」
セン「ん……?待て」
クロ「……あの生き物は何だ?」
「ヘムー」
セン「あんな生き物は本にも載ってなかったはずだぜ。新種か?」
クロ「どうだろうね」
「ヘムー」
セン「だが、どうも害はなさそうだな」
クロ「ずっとこっちを見ているけど、どうしたんだろう?」
「ヘムー」
セン「うお!?」バタッ
クロ「ん?どうしたんだい、セン。急に落下して」ヒョイッ
セン「急に……、体が……、痺れて……」プラーン
クロ「急に?まさかアイツが何かしたのか?」
「ヘムー……」プルプル
クロ「……アイツも何だか様子が変しいな」
セン「ほっとけ……。ちくしょう……、動けねえ……」プラーン
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セン「おっ、身体が元に戻った」パタパタ
クロ「何だったんだろうね」
セン「さあな」
セン「だが、今の奴は見た目に反して危険な生き物だったぜ」
セン「今のに複数囲まれたり、身体が痺れた時に別の凶暴な生き物に出くわしたら」
セン「絶体絶命だったかもしれん」
クロ「確かに……。思ったよりも危険な奴だったのかもね」
セン「ああ、それと、二層では寄るところがあったな」
クロ「そう、監視基地だね」
クロ「その名の通り、奈落の監視をしているみたいだけど」
クロ「探窟家達の休憩地点も兼ねているらしい」
セン「地上よりも生の情報が集まってそうだな」
クロ「それと監視基地の防人は、探窟家として最高峰の実績と位を有しているらしい」
クロ「きっとこの奈落の限りなく深い場所のことまで知っているだろうね」
セン「逆にいえば、そいつから情報が得られなければ、この場所はほぼ白だな」
クロ「そのようだね」
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セン「すげえ。本当に木が逆さに生えてるぜ」
ヒュオオオオバサバサバサバサ
クロ「センがいればなんてことない場所だと思っていたけど、風が強いな……」
クロ「それに少し寒くなってきたね。光が届かないからかな?」
セン「意外と厄介だな。この逆さ森ってやつは」
セン「ていうか他の探窟家共はこんな所どうやって移動してんだ?ロープか?」
クロ「まあ、ロープだろうね」
――監視基地
セン「やっと着いたぜ……」ゼエゼエ……
クロ「なんだか思ったより高い位置にあるね」
セン「あのゴンドラ降ろしてくれねえかな……」
クロ「私達が探窟家じゃないから警戒されているのかもね」
セン「それに加えてお前の風貌が怪しすぎるからな」
「お師さま。基地の前に見るからに怪しい人物が現れました」
「全身黒装束で、棺を担いでいて、蝙蝠を連れています」
「……連れの蝙蝠と喧嘩を始めました。一体何なんでしょうか……」
「蝙蝠が……、横に伸ばされています……」イタイイタイイタイ
「うわっ!!?棺の中から蝙蝠が……」
「ああっ!?飛んで!?お師さま!!怪しい人が飛んで基地に入ろうとしてます!!」
クロ「ううっ……。頭が痛い……。気持ち悪い……」
クロ「これが、深界二層の呪いか……」
セン「一層とは強度が違うぜ……」
セン「それにこの基地の構造、嫌がらせとしか思えねえ……」
「おい」
クロ「ダメだ……。少し横になろう……」
セン「つーか……、ただでさえ人間持ち上げて飛ぶのは息が切れるってのによお……」
「おい、お前」
クロ「あ……」
セン「…………」
「…………」
クロ「このような礼を欠いた態度での挨拶をお許しいただきたい」グッタリ
セン「ここの構造、見直した方がいいぜ」グッタリ
「お前達、最初から図々しいね」
クロ「ふう……、治った」スクッ
クロ「どうも、初めまして。通りすがりの旅人です」
「……ここの管理をしているものだ」
クロ「というと……、白笛の……」
「オーゼンというものだ」
クロ(この人がオーゼン……、女性だったのか……)
クロ(思っていたよりも若いし、それにとても背が高い……)
オーゼン「お前らには色々と聞きたいことがあるんだが」
クロ「何でしょうか?」
オーゼン「お前達、探窟家じゃないだろう。アビスに入っちゃダメじゃないか」
クロ「言い訳の仕様もありません」
セン「見なかったことにしてほしい」
オーゼン「この糞餓鬼共……。まあ、いいか」
不動卿 動かざるオーゼン
無双の怪力を持つ白笛
その目に宿る光は
旅人達にとって希望の光か
それとも
不吉の前兆か
オーゼン「急にどうした?」
クロ「ここに潜る前に調達した図録に記述されていました」
セン「白笛って探窟家達の頂点だよな?」
セン「結構古い物だったんだが、その頃から白笛だったんだな」
オーゼン「ふう……、名前を載せる許可を出した覚えはないんだがねえ……」
オーゼン「それで?こんな所まで何しに来たんだい?宝探しかい?」
クロ「魔女の手がかりを得るためにここまで来ました」
オーゼン「魔女?」
ここまでとします。
やっとメイドインアビスの登場人物が出て来てくれました。
それと世界のどこかにいるかもしれない、このお話をここまで読んでくださった方にお知らせしとこうかと思います。
次の更新から面白くなると思います。多分
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マルルク「お茶をどうぞ……」
クロ「ありがとう」
オーゼン「ふ〜ん……。それで自分の姿を変えた魔女を探して今まで旅をしてきたってことか……」
クロ「はい。それで、この摩訶不思議な地に魔女との関わりを探していました」
オーゼン「確かにここは世間の常識とはかけ離れた世界だよ」
オーゼン「でもね。魔女なんてものは噂でも聞いたことが無いね」
セン「アンタが世間で魔女と噂されている可能性は?」
オーゼン「よーしお前漢方薬にしてやる」
クロ「ちなみに探窟家歴はどのくらいですか?」
オーゼン「百年」
クロ「え!?」
セン「は!?」
オーゼン「嘘だよ」フフン
セン「嘘かよ!!」
オーゼン「五十年から先は数えてないねえ」
クロ「五十年以上……」
セン「アンタ、若くはないとは思っていたが、いったいいくつなんだ?」
オーゼン「女性に年齢を尋ねるとは失礼じゃないか」
クロ「魔女はここにはいない、か……」
オーゼン「まあ、私の知る限りではね」
セン「じゃあ、もうここにいる意味無えな」
オーゼン「だったらさっさと帰りな」
オーゼン「この深部はそもそも、探窟家でも見習いが入れば自殺扱いになるような場所さ」
オーゼン「探窟家でもない奴がウロチョロしていい場所じゃないんだよ」
セン「あ、今日はもう遅いから泊まらせてくれ」
オーゼン「……構わないが、本当に図々しいな」
オーゼン「そうだ。これを渡しておこうか」テェダセ
クロ「笛?」
オーゼン「蒼笛だ。他の蒼笛共が来た時にお前達がいる理由を説明するのが面倒だからね」
オーゼン「いいね。貸すだけだよ。泊まっていく間だけだからね」
クロ「ありがとうございます」
オーゼン「マルルク、部屋に案内してやんな」
マルルク「ハ、ハイ」
セン「まあ、今のお前には黒い笛が一番似合うんだけどな」
クロ「黒笛ってかなりの熟練者じゃないとなれないから無理だよ」
マルルク(この人……、女の人……、だよね?)
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マルルク「こちらが部屋になります……」
クロ「ありがとう」
マルルク「それじゃあ、ボクはこれで……」
クロ「そうだ。あの防人さんってどんな人なのかな?」
マルルク「ええっと……。お師さまですか?」
マルルク「そうですね……、お師さまは凄い人なんです」
マルルク「ボクの師匠でもあるんですけど」
マルルク「もう何十年も白笛として活躍しているんです」
セン「……本当に幾つなんだあの婆さん」
クロ「名実ともに最高位の探窟家なわけだね」
マルルク「はい。なんたって五人しかいない白笛の内の一人ですから!!」
マルルク「それに、お師さまは行き倒れていたボクのことを拾ってくれて……」
マルルク「実はボクは日の光に弱くて、地上では暮らせないんです……」
マルルク「お師さまがこの監視基地の防人を引き受けているのも本当はボクの為なんです……」
マルルク「厳しい人ですけど、本当は優しい人なんですよ?」
クロ「良い師に巡り合えたんだね」
マルルク「あの……、旅人さんのお名前は……?」
クロ「私のは名前はクロ」
クロ「こっちは相棒のセン」
セン「そういえばお前の名前も聞いてなかったな」
マルルク「ボクはマルルクといいます」
クロ「よろしくね、マルルク」
マルルク「は、はい。よろしくお願いします。クロさん、センさん」
セン「ところでマルルク。お前の笛は蒼いんだな」
セン「蒼笛ってお前みたいなチビでもなれるもんなのか?」
マルルク「本当ならなれません。年齢制限があるんです」
マルルク「ただ、ボクの場合は監視基地で生活する必要性と」
マルルク「白笛であるお師さまの弟子ということで特例で認められたんです」
セン「お前、生い立ちに反してついてるな」
マルルク「全部お師さまのおかげですよ」
マルルク「それでは失礼します。何かあったら呼んでください」ペコリ
セン「……いや〜、いろいろと惜しいんだよなあ」
クロ「何がだい?」
セン「あの防人は見た目より歳いってるし」
セン「マルルクはあの形で男なんだよなあ。そもそもまだ餓鬼だが」
クロ「さて、そろそろ……」
クロ「……………………」
クロ「えっ?あの子、男の子なのかい?」
セン「ああ、多分な」
――翌日
クロ「お世話になりました」
オーゼン「ああ、もう来るんじゃないよ」
マルルク「クロさん、センさん。地上までお気をつけて」
セン「ああ、色々と世話になったな」
セン「さて、ちゃっちゃと戻ろうぜ。そううまくいくかは分からんが」
クロ「それなんだけどね、セン」
クロ「やっぱりもう少し潜ってみたいんだ」
オーゼン「……………………」
マルルク「ええ!?」
セン「おいおい、魔女は居無えってわかったろう?」
セン「なんでわざわざこんな危ないところを進まなくちゃなんねえんだ?」
クロ「まあ、魔女は多分本当にいないんだとは私も思う」
マルルク「だったら……」
クロ「でもね、なんかもう少し潜れそうだからさ」
セン「……………………」
オーゼン「……………………」
セン「……しゃあねえなあ」
セン「お前の気の済むまで付き合ってやるよ」
クロ「すまない、セン」
マルルク「クロさん……」
マルルク「ひぃっ……」
クロ「……………………」
オーゼン「私はお前達が地上に戻ると言うから昨日泊めてやったんだ」
オーゼン「探窟家でもないお前達をな」
オーゼン「それがなんだ?もう少し潜るだって?」
オーゼン「秩序を乱すのもいい加減にしな」
セン「……………………」
クロ「申し訳ないとは思います」
クロ「ですが、何を言われようとも考えを変える気はありません」
オーゼン「……私が気付かないとでも思っているのかい?」
オーゼン「お前、ただの人間じゃないだろう」
オーゼン「いや、もはや人間かどうかも怪しいねえ」
マルルク「お師さま……?」
オーゼン「私には感じるんだよ。なんとなくだけどね」
オーゼン「お前の中に黒く渦巻いている何かを」
オーゼン「お前みたいなアビスの化け物よりも化け物している奴に荒らされるのは困るんだよ」
オーゼン「アビスがアビスじゃなくなっちまう」
オーゼン「お前の中にある何かはそれくらい危険なものなんだよ」
クロ「……仰りたいことは分かりました」
クロ「ですが、それでも私はこの先に進みます」
セン「すまんな、婆さん。相棒がこう言ってるんでな」
オーゼン「……仕方がないねえ」グイッ
ガタンッ
クロ「うぐッッ……!!」
セン「クロ!?」
マルルク「お師さま!!駄目です!!」
クロ(なんて力だ……)ギリギリギリ
オーゼン「こんな細い首をへし折るくらい訳無いよ」
オーゼン「どうしてもこの先に進むというのならこうする以外に方法が無いだろう?」
オーゼン「お前をこれ以上先へは行かせない」
セン「おい、婆さん。止めとけ」
セン「これ以上そいつに危害を加えたら穏やかじゃないことになるぜ」
オーゼン「へえ〜〜。一体何が起きるんだい?」
セン「そいつは聞かない方がいい」
セン「まあ、どうしても知りたいならそいつを殺してみな。一思いにな」
オーゼン「……………………」
セン「……………………」
マルルク「お師さま……」
オーゼン「……………………」スッ
クロ「ッハア……、ハア……」
セン「おいクロ。大丈夫か?」
クロ「ハア……、ハア……。これが……大丈夫に見えるかい?」
セン「よし。大丈夫だな」
クロ「ハア……、それじゃあ……、私達は……、ハア……、行きますよ……」
オーゼン「ああ、どこへでも行っちまいな」
マルルク「ああの!!お気をつけて!!」
マルルク「……………………」
マルルク「あの……、お師さま……」
オーゼン「何だい?」
マルルク「クロさんって一体何者なんですか?」
マルルク「ボクにはそんな危険な人物には思えないのですが……」
オーゼン「私に昨日会ったばかりのアイツのことなんて分かるわけがないだろう」
マルルク「はあ……」
オーゼン「ただね」
オーゼン「長生きして色々なものに触れてきたからね」
オーゼン「色々と感じ取れるようになるのさ」
マルルク「……………………」
マルルク「センさんの言ったこと……」
マルルク「穏やかじゃないことになるって……」
マルルク「一体何だったんでしょうか……」
マルルク「ただのハッタリだなんてことは……」
オーゼン「無いだろうね」
オーゼン「アイツ等にはあの場で私が手を引かなくても切り抜けられる何かを持っていた」
オーゼン「でなきゃあんなに冷静でいられるものか」
オーゼン「何の策もない人間はもっと慌てふためいて声を荒げるものさ」
オーゼン「覚えておきな、マルルク」
オーゼン「真の秘密ってものはね、人の奥底にこそ隠れているものなのさ」
オーゼン「まあ、あいつの場合は人の身でありながら人を越えてしまっているのだろうがね」
オーゼン「いや、人でなくなってしまったというべきか……」
オーゼン「まあ、何でもいいか」
マルルク「えぇぇ……」
オーゼン(そういえば、昔アイツにもそんなようなことを教えたっけなあ)
オーゼン(やれやれ。今頃一体どのあたりを這いずり回っているのやら……)
----
--------
クロ「セン、さっきはありがとう。助かったよ」
セン「礼を言われるほどのことはしてねえよ。お前はあのまま放っておいても死ななかっただろう?」
クロ「そうなったらあの人が死んでたよ。だから止めてくれて助かったよ」
セン「まあ、俺としても後腐れのない別れが好ましいからな」
クロ「それにしても……、あの人は一体何者だったんだろう?」
セン「何者ってどういうことだよ?」
クロ「さっき首を絞められた時の力」
クロ「あれは凡そ普通の人間が持てる腕力ではなかったよ」
クロ「今まで遭遇した猛獣の類ですらも比較にはならない」
クロ「おそらく首をへし折るどころか、引き千切るくらいは訳もなかっただろうね」
セン「おいおい、怪物じゃねえか」
セン「まあ……、鍛えたんだろ。物凄くな」
クロ「この上ないくらい単純な理由だね」
セン「つってもなあ……、他に無いだろ……」
クロ「……考えたところで仕方がないか」
クロ「っと、あれかな?」
セン「うおお!!こんなに分かれ目がはっきりしてるのか!!」
クロ「まあ、二層に入る時も随分わかりやすくなってたけどね」
セン「そういやそうだったな」
セン「まあ兎に角、ここからが深界三層の」
クロ「うん。大断層だね」
――大穴の街 オース
サンジュ「クロちゃんたち、いまごろどこにいるのかなあ」
ニジュク「わからない。とってもふかいところにいる」
ニジュク「でもクロちゃ、ぜったいかえってきてくれるってやくそくしてくれた」
ニジュク「だからだいじょぶ」
サンジュ「うん」
宿屋の店主「おうい、二人とも。お使い頼まれてくれ」
ニジュク・サンジュ「はーい」
宿屋の店主「この前教えた店の店主にこのメモを渡して、メモに書いてあるものを買ってきてくれ」
ニジュク「わかった」
宿屋の店主「お代はこれに入れといた。失くすなよ?」
サンジュ「は〜い」
宿屋の店主「もし足りなかったらツケとくように言っといてくれ」
ニジュク・サンジュ「つけ?」
宿屋の店主「どうしようもない人間に備わった処世術のことさ」
ニジュク「いってきま〜す」
サンジュ「ま〜す」
宿屋の店主「おう、気い付けてけ」
宿屋の店主「……………………」
宿屋の店主(……やれやれ。あの旅人は今頃何処をほっつき歩いているのやら)
宿屋の店主(アビスの中でくたばってる可能性もあるし、そもそも二人を置いて逃げた可能性もあるな)
宿屋の店主(……あんな小さい子供を泣かせたら許さねえからな)
――深界四層 巨人の盃
セン「やれやれ……。年頃の娘が半裸で外をうろうろしおってからに……」
クロ「仕方がないだろう。衣服から荷物まで怪物共の涎でベタベタなんだから」ジャブジャブ
セン「いや〜、しっかり食われたもんなあ」
セン「それでも、三層の原生生物ですら誰もお前のことを飲み込んでくれなかったな」
クロ「不味さには人一倍の自信があるからね」ジャブジャブ
セン「もう少し閃光弾とか調達しとくんだったな。全然足りなかった」
クロ「まあ、こればかりは仕方がないね」ジャブジャブ
クロ「あ、これどうしようかな」
セン「なんだその涎でべたべたの何かは」
クロ「なんか怪物の口に引っかかってたんだけど……」
セン「何かの遺物か?そんなの何に使うんだろうな」
クロ「それにしても面白いね。このダイラカズラという植物は」ジャブジャブ
セン「ああ。捕食器から溢れてくる液体って割にはただのお湯だもんな」
セン「それに意味わからんくらいでかいしな」
セン「一体何を捕食してるんだか」
クロ「まあ、そのおかげでこうやって洗濯ができるわけなんだけど」ジャブジャブ
クロ「……多少は匂いも取れたかな」クンクン
セン「いい加減な所でさっさと行こうぜ。少し落ち着けるところで休みたいしな」
セン「この辺は湿気が多すぎる」
クロ「そうだね」バシャッ
深界四層
俗に深層と呼ばれるこの層の帰還率は
三層の比較にならぬほど低い
広がるのは様々な命と想いを湛え零す奈落の盃
手を伸ばすものに与えられるのは
渇き潤す美酒か
それとも身を焼く毒か
セン「おーおー。とうとうそんな所まで来ちまったか」
クロ「現存する探窟家達の中でどのくらいの割合の人がここから帰還した経験があるんだろうね」
セン「さあな。一割にも満たないんじゃねえの?」
セン「まったく、こんな所からどうやって帰ればいいんだか」
クロ「それはあの日を迎えればまあ何とかなるさ」
クロ「多分もうすぐのはずだよ」
セン「いいか?期限はその晩までだからな。その時が来たら即座に帰るぞ」
クロ「分かってるよ」
セン「……おい、アイツはなんだ?」
クロ「ん?あれは……?」
タマウガチ「グルルルル……」
セン「……アイツはヤバいな……」
セン(あんなにでかいくせに、近寄ってくるまで全く気配を感じなかったぜ)
クロ「ああ。逃げた方がよさそうだ」バシャッ
タマウガチ「グルアアア!!」ダンッ
クロ「くっ……」バシャァ
クロ(速い……)
セン「クロ!!早く立て!!もう一回来るぞ!!」
クロ「なっ……!?」
タマウガチ「グルアアア!!」
セン「クロ!!」
グジュア……
ゴシャ……
ボトボト
グシュン……
ズザァゲションボギャンザドンガシュアベキョンバラバラギニョングニアボトンボロボロ
セン「……………………」
クロ「……………………」
セン「クロ。怪我は無いか?」
クロ「ああ。何ともないよ」
セン「しかし運が良かったな」
セン「アイツ、たまたま身体が黒い何かになり果てちまったぜ」
クロ「……………………」
セン「……………………」
クロ「戻ろうか……」
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