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「今から夕焼け見に行くよ!」
きっかけは、ある夏の日の、マヤちゃんの一言
「いきなり!」
「ふふっ」
マヤちゃんの突然の提案に、チノちゃんがリアクションを取って……。私はのんびりと笑いました。
せっかく千夜さんにツッコミを教えてもらったのに笑っているだけなんて、まだまだ精進しないと駄目みたい。
でも、三人で話すのは楽しすぎて、ツッコミなんて忘れちゃう。
これからも、チマメ隊の三人で楽しいお喋りができたら良いな。そんな事を考えながら、願いながら、想いながら。
窓から射し込む暖かな色の光を背に、私たちは出かける準備を進めます。
「で、夕焼けどこで見る?この街ってどっか見晴らし良いとこあったっけ」
「考えてなかったんかい!夕焼け終わっちゃうよ!?」
今度はツッコミを忘れずにすみました。
「夕焼け見に行くの?それなら私いい場所知ってるよ!そう、あれは"妹がお姉ちゃんの為に"記念日最初の時……」
「ひょっとしてその話長い?」
「聞いていたら本当に夕焼けが終わってしまいます」
「でも、場所が聞けるのはラッキーだね」
三人で悩んでいたら、ココアちゃんが場所を教えてくれました。やっぱりココアちゃんは優しくて頼れるお姉さんです。
お話は長くなりそうだったのでまた今度聞かせてもらうことになりました。
本当はすぐに聞きたかったけど、窓の外のお日様は待ってくれないみたい。
夕焼けは明日でも見れる。わかっているけど、時計の針が進むたび、この時は今しかないって考えてしまって。
「急げ急げ、夏でもちゃんと日は暮れる!」
「すみません、ちょっと取ってくるものがあるので待っててください。すぐ戻ってきます!」
きっと二人も、一緒の気持ち。
「お待たせしました!」
「チノちゃん、何を持ってきたの?」
「カメラです。せっかくの思い出づくりなんですから、心にも形にも残しておこうと思って」
そう言って、チノちゃんはカメラを私たちに見せてくれました。
心にも形にも……。チノちゃんはしっかりしてるなぁ。私は夕焼けを見ることしか考えてなかったよ。
その夕焼けはマヤちゃんがきっかけを作ってくれて。
レンズのように透明できれいなチノちゃんの想いを、夕焼けのようにきらきらしているマヤちゃんの想いを、私の心にしっかり残しておきたいな。
形にも残せたら……。心のカメラがあったら良いのに。なんてことを考えます。
想いだけじゃない。
「なるほど。じゃあ私も携帯のカメラで写真撮ろうかな。特にチノの笑顔はレアだから、形に残しておかないともったいないもんな!」
「私の顔じゃなくて景色を撮りましょうよ!」
「そうだよマヤちゃん。今のチノちゃんは笑顔をたくさん見せてくれるから、写真がなくても大丈夫だよ〜」
「そういう意味じゃないです!」
こんな会話も、全部、ぜんぶ。
鐘の音が、遠く聴こえる
「ぜぇ、ぜぇ……なんとか、間に合ったね……」
「メグが、直前に、あんな事、言いだすからじゃん……」
「でも、急いだ分、じっくり、見れそうです……」
出発直前に私が引き止めたので、ダッシュ、ジャンプの大急ぎでした。
これじゃあ夕焼けどころじゃないかも、ちょっとだけそう思って。
でも
「見て!あれ……」
オレンジ色の階段を一段飛ばしで駆け上がって見た景色は
「……わぁ」
「……すごい」
「……きれい」
どんな絵画よりも鮮やかで、どんな宝石よりも輝いていたのです。
「最高の景色じゃん!これをチマメ隊の三人で見た思い出は、まさに宝物だね!」
「うん!私、今日のこと、絶対に忘れない」
「こんなの忘れたくても忘れられませんよ」
お宝を目の前に大喜びのマヤ船長。私たちも喜びを共有します。
きっとこのお宝は、世界で一番価値がある。
でも、せっかくのお宝なのに持って帰れないよね。そこで活躍するのが……
「パシャリ。いい写真が撮れました」
船員のチノちゃんです。お宝は我々チマメ海賊団が頂いた。
「そうだ、みんなの写真も撮りましょう」
「うーん、脚立がないから三人一緒に撮れないよなぁ。どうせなら、三人一緒の何かも形にしたかったけど……」
マヤ船長が困っています。
今しかない。
考えていた私の想いを、二人に。
「ねぇ、チノちゃん、マヤちゃん。……お手紙、書かない?」
「手紙?」
「ですか?」
「うん。書いた手紙をね、この小箱に入れてタイムカプセルにしようよ!」
これが出発前に二人を引き止めた理由です。
マヤちゃんの想い。チノちゃんの想い。私の想い。何気ない会話から、大事な会話。目の前にある景色。
今日のことを全部形にして、仕舞っておいて、何年経っても読み返せるように。
いつの日か、三人で一緒に。そんな約束をしたくて。
マヤ「それでペンと便箋と、土を掘るこいつってことね。いいじゃんいいじゃん!」
チノ「私も良いと思います。タイムカプセルを取り出すのが楽しみになりますね」
やっぱり私たちは、一緒の気持ちになれるみたい。
「それじゃあさっそくお手紙を書こう!これを見るのは何年後かな〜」
「はいはい!三つ書いて、来年の私たちの誕生日ごとに一枚ずつ確認、それを毎年!」
「良いですね。10年後に、なんてのを想像してましたが、それも面白そうですね」
「じゃあお祝いの手紙を書かなきゃね。誰が誰宛のお手紙を書こう?」
一年に三回のお楽しみができました。
この先ずっと、必ず会える、大切な約束です。
ちなみにこのお手紙は三回目。何故かというと……
「実は誰が誰に書くかも考えてるんだ。そ、れ、は!……自分宛!」
「「……えぇ!?」」
というわけで今、この手紙をあなたに、未来の私に書いていたのでした。
まだ一年と少ししか経っていないけど、懐かしいかもしれません。
私たちの想い、形にできたかな?
来年の11月2日の私、誕生日おめでとう!
来年のあなたは何をしているのかな。どこを歩いているんだろう。
あなたは、私の大切な二人のそばにいますか?
当たり前じゃん!何が起きたって何にもなくたって、ずっとずっと一緒だからな!
来年も、次の年も、何十年後も、私たちはチマメ隊ですよ!
二人が勝手に書いちゃった。そうだよね、絶対にそばにいるよ!
それを、未来で答え合わせしようね。
マヤ「『今も未来も、大好きな二人と一緒にいられますように』。良い手紙じゃん!」
メグ「音読しないで〜!」
チノ「これは答え合わせをしないとですね」
マヤ「果たしてこれは正解なのかなー?教えてよー?」
チノ「赤ペン持ってきました。採点をお願いします」
メグ「からかわないでよー!」
マヤ「えー?私知りたいなー、メグは大好きな二人のそばにいるのー?」
チノ「私も知りたいです。いなかったら大変ですから」
メグ「二人ともわかって言ってるよね!?」
マヤ「全然わからないなー。私出題者じゃないしー」
チノ「早く答え合わせしちゃいましょう」
メグ「もー!……ふふっ、正解かどうかなんて最初から決まってるよ。この答えはね」キュッ
メグ「はなまるだよ!」
おわり
もしこのSSを気に入っていただけたら、ついでにこれも読んでくれると嬉しいです
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=2406
あと先週投下して流れていったやつも(´・ω・`)
チマメ隊は未来でも一緒(友達)、というのがチームのテーマとしてあるように思います
そのためには、こういう日々の積み重ねがあるんですよね
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