マヤ「おっ、宝箱発見!これでクリアだ!」
メグ「せーので開けよっか〜」
「「せーの!」」
マヤ「……宝箱の中に」
メグ「小さな宝箱が入ってる…… しかも空箱だね」
マヤ「マトリョーシカかよ!ていうか1箱しか入ってない!どちらか一人しか宝物交換できないじゃん!」
メグ「もうひとりは魂に刻まれた思い出と絆を宝にしろってことかな?」
マヤ「ココアかよ」
メグ「ねぇマヤちゃん。この宝箱、私がもらっていい?」
マヤ「え、このでっかい空箱持って帰るの?」
メグ「小さい方だよ!?」
マヤ「冗談冗談。でも、この箱使い道ある?」
メグ「えーっと、宝箱っぽく、宝物を入れてみよっかな〜って」
マヤ「なるほどなー。じゃあチノがいたら取り合いになってたかも。同じこと考えてさ」
メグ「そういえば、今日はチノちゃん来れなかったね」
マヤ「バイトとか学校の行事とかで予定合わなかったもんなー。学校が違うから予定が全然違うんだよね」
メグ「……マヤちゃんまで会えなくなったりしないよね?私のこと忘れたりしないよね?」
マヤ「いや、チノに会えなくなったわけじゃなくね?私たちのことを忘れたわけでもないし」
メグ「でも、会える日は減っちゃったよ?高校を卒業したら今度は」
マヤ「大丈夫だって!二年前くらいにリゼが私に話してくれたこと、メグも聞いてたでしょ?」
メグ「……うん、そうだね」
マヤ「ていうか、バラバラの制服でも私たちは一緒だったってメグも言ってたじゃん」
メグ「夢の中のはなしだけどね〜」
マヤ「ふわぁ…… よく寝たー」
マヤ(昨日のシストは楽しかったな。メグと二人だけだったのは久しぶりかも)
マヤ(しかもクリアできるなんて。私は宝物交換できてないけど)
マヤ(それにしても、メグがあんなふうに寂しがるなんて。私のことを寂しがり屋なんて言ってたのに。自分も寂しがり屋じゃん!)
マヤ(でも確かに、チノがいたほうがもっと楽しいよね。今度地図を見つけたら3人で挑戦しよっと)
マヤ(その時は今回みたいに入ってる宝物が一つだけ、なんてことになってませんように)
マヤ(あと、宝箱の中に空の宝箱が入ってるのも反応に困るよなー)
マヤ「……って、ん?なんかあれと似たような宝箱あるじゃん。私こんなの買ってたっけ?」
マヤ「そうそう、あのちっさい宝箱もこんな見た目だったよな。超そっくりー」
マヤ「ってこれどう見てもメグのじゃん」
マヤ(これメグが持って帰ったはずじゃね?なんで私が持ってんの!?)
マヤ(昨日帰る途中どっかで預かったっけ?そんな覚えないんだけど……)
マヤ(まあいいや。とりあえずメグに電話してっと)ピポパポ
マヤ(それにしてもスマホって便利だよな。こうやって離れた場所でも話せるし)
マヤ(暑い中無理して出歩く必要もない!ああ、どこにいても通信できるありがたさ。スマホ様様だね)
マヤ(いや、これは早く届けたほうがメグも喜ぶかな。じゃあ結局暑い中歩かなきゃ駄目かー)
マヤ(あっ、どうせ外に行くならメグを誘ってラビットハウスに遊びに行くのも良いかも)
マヤ(チノに会えるし丁度いいや。メグ、あれだけ会いたがってたもんな)
マヤ(……)
マヤ「全然電話繋がらない!通信できてねぇ!」
マヤ「暑い……」
マヤ(何度かかけ直してもやっぱり繋がらない。メグ、まだ寝てるなー?)
マヤ(仕方がないからこうしてメグの家まで歩くのだ。インターネットの便利な現代から一転して原始時代に逆戻り)
マヤ(ラビットハウスで合流したかったんだけど仕方ないか)
シャロ「マヤちゃんじゃない。おはよう。今日も暑いわね……」
マヤ「シャロ!おはよー。その暑い中でもバイト行くの?」
シャロ「エアコンのない家よりは涼しいのよね……」
マヤ「予想の斜め上の回答!」
シャロ「貧乏生活をなめないでよね。マヤちゃんこそ、こんな暑い日にお出かけ?」
マヤ「何故か私の部屋にメグの宝箱があってさー。仕方ないから直接届けに行
シャロ「メグ、ちゃん……?マヤちゃんのお友達?」
マヤ「……え?」
マヤ「いや、急に何を言い出してるの。メグだよメグ!私の幼馴染!知ってるでしょ?ていうか同じ高校じゃん!」
シャロ「そうなの?うちの高校にマヤちゃんの幼馴染がいたなんて知らなかったわ」
マヤ「まさか暑さで頭が…… シャロ!絶対エアコン買ったほうが良いって!」
シャロ「大丈夫よ。暑さで頭がやられるようじゃ特待生を維持できてないわよ」
マヤ「げっ、やっぱ特待生を続けるのは大変なんだな…… じゃなくって!シャロがメグのこと知らないわけないでしょ!」
シャロ「私、その子と会ったことあるの……?ってもうこんな時間!この話はまた今度!」
マヤ「え、ちょっと!……行っちゃった」
千夜「シャロちゃんまって~!忘れ物~!!」
マヤ「っ千夜だ!ちょっとストップ!千夜はメグって誰かわかるよね!?」
千夜「メグ、ちゃん……?マヤちゃんのお友達?」
マヤ「幼馴染揃って同じ反応!」
千夜「あっ、一度止まると、体力の、限界が……」
マヤ「マラソンの時に体力つけたんじゃねーのかよ」
マヤ(……シャロも千夜も、メグのことを忘れてた)
マヤ(ドッキリという可能性も…… ううん、あの二人がこんなタチ悪いことするわけない)
マヤ(じゃあ本当に忘れて…… 違う。きっとシャロも千夜も暑さで頭がまわらないんだ。熱中症だったらヤバくね?)
マヤ(まあもっとヤバいのはメグの家が何故か留守なことなんだけど)
マヤ(やっと着いたと思ったら電気ついてないし、インターホン押しても誰も出ない)
マヤ(いやいや、家が留守なんて別に大したことないじゃん!そういえば昨日、メグが今日家族で買い物に行くとか言ってたかも)
マヤ(だったらメグが電話に出ないのはおかしいんだよね。買い物行ってるなら起きてるじゃん。じゃあ部屋にいる?)
マヤ「おーい!メグー!開けてよー!」
マヤ(……反応がない。まだ寝てる?それとも倒れてるとか!?)
マヤ「そうだ、スマホ!窓が閉まってても少しくらいなら着信音が聞こえるんじゃ」ピポパポ
マヤ「……聞こえない」
マヤ「これは緊急通報の出番じゃ……?警察とか救急とか」
マヤ(……)
マヤ「まっ、メグのことだから大丈夫だろ!とりあえずラビットハウスに行くか!」
マヤ「『ラビットハウスで待ってるよ』っと、メール送信!」
マヤ「あとは予定通りラビットハウスで合流すれば宝箱を渡せて万事解決だね!」
『『メグ、ちゃん……?マヤちゃんのお友達?』』
マヤ(……本当に?)
マヤ(だからラビットハウスに行くんでしょ。二人がボケてるだけだって確かめるために)
マヤ(もしチノもココアもリゼもメグのことを覚えてなかったら?)
マヤ「……メールはちゃんと送れた。つまりこのメールアドレスは存在してる!なーんだやっぱり大丈夫そうじゃん!」
『高校を卒業したら今度は』
『大丈夫だって!』
マヤ(大丈夫って、昨日も言ったな……)
マヤ「おっはよー!」
ココア「おはようマヤちゃん。いらっしゃいませ!」
チノ「おはようございます、マヤさん。……あれ?」
リゼ「おはようマヤ。今日は早いな」
マヤ「いやーメグが起きてないから、ここで待とうかなって思ってさ」
リゼ「メグってのはマヤの友達か?」
マヤ「ていうか幼馴染なんだよね」
ココア「マヤちゃんの幼馴染!?私も会ってみたいな!」
マヤ「あはは!何度も会ってるけどなー」
ココア「へ?」
マヤ「あ、今日の用事終わったから帰るね!ごちそうさま!!」
チノ「あっ、待って……」
リゼ「まだ何も注文受けてないぞ!?」
マヤ(一瞬で確認できて笑っちゃうよなー。まさか本当に誰も覚えていないなんて)
マヤ(いや全然笑えねぇ!思わず家に帰ってきちゃったよ。これメグに返せないじゃん)
マヤ「何故か今日メグの宝箱が私の部屋にあって、何故か今日みんなからメグの記憶が消えてる。なんでだろー不思議だなー」
マヤ「……どう考えてもこの宝箱怪しすぎじゃね?」
マヤ(まあいいやで済ませてたけど、よくよく考えればこの宝箱は私の部屋にワープしてきたも同然だった!)
マヤ(そのタイミングでメグに会えなくなって、みんなの記憶からも消えた)
マヤ(明らかに原因これじゃん。オカルトの発生源これ以外ないじゃん)
マヤ(……宝箱って宝物をしまう箱だよね)
マヤ(メグは大切な幼馴染で、親友。私にとって大切な宝物。ちょっと恥ずかしいけど)
マヤ(この事実から導かれる結論は)
マヤ「……えっ、まさかこの中にメグいるの?マジで?嘘でしょ??流石にこの箱じゃ狭すぎない???」
マヤ(この箱はわざわざ私の元にワープしてきた。きっと、私にとっての宝物が入ってるんだ)
マヤ(なのでメグが入っています。なんだそういうことかー)
マヤ(ってどうしてそうなった!宝箱に入れる宝物ってそういうのじゃなくね!?)
マヤ(なんかこう、もっと気の利いた物あるでしょ!ていうか箱の中に入ったままじゃ会えないじゃん!)
マヤ(ていうかなんでみんなの記憶までぶっ飛ぶのさ!)
マヤ(とりあえず箱開けるしかないよね。……開かない!鍵なんてついてないのに!)
マヤ(じゃあハサミで箱の隙間から…… 無理!刺さらない!傷もつかない!!)
マヤ(なんだこれ!?マジでオカルトの塊じゃん!)
マヤ(……やっと、メグが見つかると思ったのに)
マヤ(はは、空元気もそろそろ限界かも。疲れたから私は眠る……)
マヤ「……会いたいよ、メグ」
「マヤちゃん、起きて!」ピョン
マヤ(……あれ、私どれくらい寝てたっけ)
「今日はいい天気だし、冒険日和だよ~」ピョン
マヤ(この声、メグ?なんで私の部屋にいるんだろ。……それよりまだ眠い)
マヤ「あと5分だけ寝かせ…… ってメグ!?」
メグ「うわぁ!どうしたのマヤちゃん?悪い夢でも見たの?」ピョンピョン
マヤ「本当にメグだ!なんか頭にぴょんぴょんしたの生えてるけどメグだ!そっか、悪い夢か。そうだよね、メグがいなくなるなんてただの悪い夢!」
メグ「私はいなくなったりしないよ?マヤちゃんのそばにいるよ?」ピョン
マヤ「だよな!……ところでその格好何?ウサ耳生えてるんだけど。ていうかどっかで見たような」
メグ「何って言われても…… ただのバーサーカーだよ?」ピョン
マヤ「そっかー、バーサーカーか。これどう考えてもこっちが夢だ!じゃあメグがいなくなったのは夢じゃない!」
マヤ「メグ、なんでいなくなっちゃったんだよ!本当に宝箱の中にいるの?あの箱はどうやったら開けられる?」
メグ「……そんなことより、冒険に行こうよ!宝探しだよ~」
マヤ「宝探し?」
メグ「うん!この世界にはね、お宝がいっぱい眠ってるんだよ!」
マヤ「それは夢のある話だけどさ、そんなお宝よりも私は」
メグ「マヤちゃん、ここは夢の中なんでしょ?息抜きに楽しい冒険をしても良いんじゃないかな?」
マヤ「……メグ、なんか隠してる?」
メグ「かっ、隠してないよ?」
マヤ「その反応怪しいよね。現実のメグがいなくなったこと、みんながメグを忘れてること。なにか知ってるんじゃね?」
メグ「……私が知ってて周りに隠してるのは、マヤちゃんの恥ずかしいことくらいだよ~。例えば、昔叱られて」
マヤ「わー!ストップストップ!わかった、冒険に行くからさ!」
メグ「空飛ぶ船に乗ってレッツゴーだね~!」
マヤ「凄いなこれ。ゲームの世界かよ!」
メグ「魔法で飛ぶ船なんだよ!ほらマヤちゃん、操縦してみて!」
マヤ「よーし、出発進行!おお、マジで動く!」
メグ「見てマヤちゃん!お魚の群れだよ。光ってる!」
マヤ「鳥じゃなくて?……本当に魚が飛んでる!」
メグ「あのお魚もお宝のひとつなんだよ。この世界には他にもまだまだお宝があるんだよ?」
マヤ「……なんか暗い気持ち吹っ飛んだかも!お宝見つけるのが楽しみになってきた!」
メグ「私ね、すっごいお宝を見つけたら、サプライズとしてマヤちゃんへの誕生日プレゼントにしようと思ってるの」
マヤ「サプライズなら私に言って良いの?」
メグ「あっ!」
マヤ「夢の中でこんな大冒険ができるなんて。起きたら向こうのメグに話して……」
メグ「……」
マヤ「……なあ、メグ。私はどうしたら、メグに会えるんだろ?」
メグ「私ならここに」
マヤ「そうじゃなくてさ。やっぱり夢の外でもメグに会いたいよ。メグは私にとって大切な友達。大切な宝物なんだ。この世界のどんなお宝よりもさ」
メグ「……大切な宝物なら、宝箱にしまったままで良いよね?」
マヤ「え?」
メグ「私、ずっとマヤちゃんのそばにいたいよ。私のことを覚えていて欲しい、なくさないで欲しい」
マヤ「私がメグのことを忘れるわけ無いじゃん!」
メグ「それでもずっと一緒にはいられないよね。いつかきっと離れ離れ」
マヤ「だからメグを宝箱にしまっちゃえってこと?そんなことできるわけないじゃん!」
メグ「うん、私もマヤちゃんを宝箱に閉じ込めるなんてできないよ」
マヤ「だったら」
メグ「だから、私が宝箱の中に入っちゃった。これでずっとマヤちゃんのそばにいられるよ~」
マヤ「どうしてそうなった!論理の飛躍!テストだと減点!」
メグ「この世界の私にテストはないよ~」
マヤ「あ、ズルい!私現実でテストあるのに!ていうか欠席になるだけで、メグにも現実でテストがあるだろ!」
メグ「先生も私のこと忘れてるから大丈夫!」
マヤ「大丈夫じゃねぇ!メグがみんなに忘れられたままじゃん!」
メグ「マヤちゃん、私嬉しいよ。マヤちゃんだけは私のことを忘れないでいてくれたんだね」
マヤ「……大丈夫って、言ったからね。言ったことは守るよ」
メグ「他のみんなは私のことを忘れたあと、いつも通りだったよね。それが怖いの」
マヤ「怖いって、なにが「マヤちゃんもそうなってしまうのが」」
メグ「高校を卒業して、離れ離れになって」
メグ「全然会えなくなっちゃうの」
メグ「それでもきっとマヤちゃんはいつも通り元気」
メグ「他の友達と仲良くして、その間は私のことなんて忘れちゃう」
メグ「チノちゃんだって、高校でココアちゃんや千夜さんに新しい友達と楽しくしてる」
メグ「私も違う友達で満足しちゃうのかな」
メグ「そんなの悲しいよ。怖いよ」
メグ「私たちは大切な宝物なのに」
メグ「なくならないようにしきゃ」
メグ「だからずっとずっと一緒にいよ?」
メグ「マヤちゃんは自由なままだし平気でしょ?」
メグ「こうしていれば、私の不安は全部なくなるの~」
メグ「大丈夫。現実では宝箱の中でも、夢の中ならこうして会えるから。ね?」
マヤ「今一番怖いのはヤンデレみたいになってるメグだからな!?」
メグ「ごめんねマヤちゃん。こんな暗い話のあとじゃ冒険も楽しくないよね」
マヤ「さっきそんなことよりって冒険に連れ出されたんだけど」
メグ「それでもさっきはマヤちゃんが楽しめるはずって思ったから」
マヤ「うん、楽しめたよ。だけど」
メグ「でも今は、私が楽しめないみたい。この世界、私の気持ちで天気が変わるみたいなの」
マヤ「えっ。じゃあメグがヤンデレになった今だと……」
メグ「うん、大荒れだと思う。冒険どころじゃないよね。あ、雨雲だ~」
マヤ「マジで天気悪くなってきた!てかなんか竜巻がこっちに来てるんだけど!」
メグ「天気が落ち着いたらまた会おうね、マヤちゃん」
マヤ「これ巻き込まれたらどうなんの?……ってうわああああぁぁぁああ!?」
マヤ「うわああああぁぁぁああ……ってあれ?無事?」
マヤ(そうだ、メールは…… 返事がない。)
マヤ「……さっきのって、夢だけど、夢じゃない、よね」
マヤ(メグが消えたと思ってたら、実は盛大な引きこもりだった)
マヤ(このままだと、メグはずっと宝箱の中……)
マヤ(……メグのアホ!夢の中だけなんて寂しいじゃん!悲しいじゃん!)
マヤ(でも、どうすれば出てきてくれるんだろ?)
マヤ(メグの言いたいこともわかる。昨日だってチノに会えなかったけど、シストは楽しかったもんな)
マヤ(けど、別にチノのことを忘れたわけじゃないのに。そもそもラビットハウスに行けば会えるじゃん)
マヤ(わかってる。それじゃ解決になってない。メグは不安なままだ。宝箱からは出てきてくれない)
マヤ「……閃いた。リゼならこの箱叩き割れるんじゃね?」
(それは駄目だよマヤちゃん!?)
マヤ(メグの声が聞こえた気がしたけど、多分気のせい!ラビットハウスへレッツゴー!善は急げだよ!)
シャロ「あら、マヤちゃん?また会ったわね」
マヤ「シャロ。バイトはもう終わったの?」
シャロ「1つ目はね」
マヤ「別のバイトもあるんだ…… なんて夢のない休日」
シャロ「ふふん、今は夢がなくとも可能性は無限大なのよ」
マヤ「そういえば夢のないコンビだったっけ。シャロとメグで」
シャロ「そうね。私たちは…… あれ?私と、あの子で……」
マヤ「っ!……メグといえば、去年の職場体験でメグがフルールに行ったんだよね?」
シャロ「そんな事もあったわね。あの子スピンが上手で……?」
マヤ(これは、ひょっとして……)
マヤ「ちょっと用事思い出した!またね、シャロ!」
マヤ「頼もー!いざ尋常に勝負!」
千夜「いらっしゃいマヤちゃん。さあ、戦いを始めましょう?」
マヤ「ボケ役しかいないじゃん!やっぱツッコミがいないとなー。千夜はメグにツッコミ仕込んでたよね?」
千夜「ええ。あの子、どんどん上達して今やマイハリセンも…… あら?」
マヤ「私、メグのハリセンでペチペチ叩かれたなー。そういえば、メグとチノは千夜に国語とか教えてもらってたんだよね」
千夜「そうなの。みんな合格して本当に嬉しかったのよ?チノちゃんも、えっと……」
マヤ「メグでしょ?合格発表の時、メグは千夜にドッキリ仕掛けたよね?私はリゼとシャロ」
千夜「あれは本当にびっくりしたわ。思わずハリセンでツッコんじゃったもの」
マヤ「よし、確認完了!ごめん、用事があるから注文はまた今度ね」
千夜「戦いはまだ終わってないわよ?」
マヤ「それまだ続いてたんだ!?」
マヤ「リゼー!」
リゼ「うおっ!?どうしたマヤ。帰ったんじゃなかったのか?」
マヤ「ねぇ、チノと私。私たちって、何隊?」
リゼ「チマメ隊だろ?」
マヤ「メはどこから来たんだよ」
リゼ「そりゃ……」
マヤ「メグのメ、だよね。チマメ隊って名前をもらった日にさ、メグがリゼのこと『せんせ~』って呼んじゃったの覚えてる?」
リゼ「ああ。小学校の先生になりたいと思ったのもあの日のことが…… そうだ、あの日……」
マヤ「あと去年、リゼが私たち三人に向かって『来年は中学生だろ!?』って……んん?」
チノ(気が付いたんですね、マヤさん。リゼさんが私たちのことをどう思っていたかということを)
マヤ「ココア!」
ココア「なあに、マヤちゃん?」
マヤ「ココアはメグのこと、本当に覚えてないの?失望しちゃうなー、妹のことを覚えてない姉なんて」
ココア「私にはメグちゃんという妹がいるよ!間違いなく!!!」
マヤ「これでよしっと」
チノ「よくないです!あれは間違いなく適当に言ってます!」
ココア「妹にはバレちゃうか」
チノ「誰でもわかりますよ」
ココア「でもね、メグちゃんって子と一緒に過ごした時間のことは思い出せるよ。私に憧れてるって、言ってくれたんだよね」
マヤ「メグも変わってるよな。ココアを目標にするなんて」
ココア「変わってる!?」
マヤ「さーて、あとはチノだけ……」
チノ「マヤさん。私、大切な友達を忘れてしまってるんですよね」
マヤ「……そうだよ。メグは、私たちの大切な友達」
チノ「今日の朝からずっと、誰かが足りないって思ってたんです。だけど、どれだけ考えても思い出せなくて」
チノ「中学校ではずっと一緒にいたはずなんです。一緒にシストもしたはずで。受験だって一緒に頑張ったはずなのに」
チノ「彼女は一体誰なんでしょう?どうして私は大切な友達のことを思い出せないんですか。このまま、忘れたままなんて嫌です!」
チノ「こんなの、悲しいです。怖いです」
マヤ「……そうだよね、チノ。まったく、メグはみんなのこと甘く見すぎ。チノなんて泣きそうじゃん」
チノ「泣かないですよっ!」
マヤ「安心して。メグのことは、すぐに連れて帰ってくるからさ。今度会うときはメグも一緒だよ。じゃ、行ってくる」
チノ「待ってください!私も一緒についていけませんか……?」
マヤ「どうだろ?この宝箱、私以外入れるのかな?でも、メグもチノに会いたがってるだろうし入れそうだよね」
チノ「本当ですか?」
マヤ「わかんない。メグが会いたがってるのだけは本当だけど。けど大丈夫でしょ。一緒に行こう、チノ!」
チノ「はい、マヤさん!」
ココア「私もついていきたい!メグちゃんのこと、すぐにでも思い出したいよ」
リゼ「待てココア、店はどうするつもりだ。チノ、ラビットハウスは私たちに任せておけ。メグのことは二人に任せる」
チノ「わかりました。お店のことはお願いします、リゼさん、ココアさん」
リゼ「ああ、この任務は必ず達成してみせる!」
ココア「そういうことなら、ココアお姉ちゃんとリゼ先生に任せなさーい!」
マヤ「おお、なんか盛り上がってるじゃん!じゃあ私たちは昼寝するか」
「「「えっ」」」
リゼ「ちょっと待て、昼寝ってどういうことだ」
ココア「これから頑張るぞって時におサボりさん!?」
チノ「マヤさん、今は冗談言ってる場合じゃないです」
マヤ「冗談じゃないって。さっきも触れたけど、メグはこの宝箱にいる。でも、この中には夢を経由しないと入れないんだよ」
チノ「そういうことは先に言ってください!」
マヤ「あはは、ごめんごめん。緊張をほぐしたくってさ。三人とも気合い入れすぎ」
リゼ「入れるなという方が無理だろ」
マヤ「私とチノはちょっとメグを迎えに行くだけじゃん。リゼとココアはいつも通り働くだけ。どんな時も自然体が一番!」
ココア「でも朝のマヤちゃんはすぐに飛び出しちゃったよね」
チノ「慌ててるのがマヤさん自然体ですか?」
マヤ「あー、もう!さっさと宝箱の中へ行くよ!おやすみなさい!!」
マヤ(……着いた?周りは……明らかにチノの部屋じゃない。だけど)
チノ「おはようございます、なのでしょうか。これは……無事に入れたんですか?」
マヤ「そうだと思う。けどすっごい暴風雨だな!最初に来たときは青空が広がってたと思うんだけど!」
チノ「なにか心当たりは?」
マヤ「メグの心が雨模様」
チノ「なるほどです」
マヤ「でも、メグが見当たらないんだよなー。どうやってメグを落ち着ければ良いんだ?」
チノ「なにか連絡手段があれば……」
マヤ『そうだ、スマホ!窓が閉まってても少しくらいなら着信音が聞こえるんじゃ』ピポパポ
マヤ『……聞こえない』
マヤ「それだ!」
マヤ「手元にスマホはないけど、夢の中ならなんとかなるでしょ。出てこいマイスマホ!」ポンッ
チノ「何故スマホを?」
マヤ「メグの家に行った時、電話をかけてもスマホの着信音が聞こえなかった。だからひょっとすると、こっちの世界にあるんじゃないかって思ってさ」ピポパポ
マヤ「頼む、出てよメグ!」
メグ [もしもし、マヤちゃん……?]
マヤ「メグ!」
チノ「繋がったんですね!」
メグ [今の声、もしかしてチノちゃん?]
マヤ「うん、チノもいるよ。……私たち、メグに会いたいんだ。雨を止めて欲しい。お願い!」
メグ [そっか、チノちゃんも来てくれたんだ]
チノ「っ!マヤさん見てください、雨雲が去っていきます!」
マヤ「えー、今ので止むんだ?私が来ただけじゃメグの涙は止まらないってこと?」
メグ [マヤちゃん、帰ってくるの早すぎだよ~!心の整理ができてなかったんだから!]
マヤ「でもすぐに会いたかったし」
メグ [それは嬉しいけど、天気が落ち着いたらって言ったよね?]
マヤ「ごめんごめん。でも、善は急げって言うでしょ」
チノ「電話の内容は聞こえてないんですけど、ひょっとしてここへ訪れるの早すぎましたか?」
マヤ「晴れたし結果オーライじゃね?」
メグ [むぅ~]
チノ「でも早く来ることになったのってきっと」
マヤ「私がすぐ会いたかっただけだって。ところで、メグ今どこ?」
メグ [……私メグさん。今あなたの後ろにいるの」
マヤ「うわぁ!」
チノ「メグ……さん?いつからそこに?」
メグ「雨が止んでからこっそり近づいたの。二人とも全然気づいてなかったね」
マヤ「おどかさないでよメグ!ていうか結構近くにいたの?」
メグ「ううん。この格好だと速く動けるみたい。おどかしたのは、ちゃんと謝ってくれないマヤちゃんが悪い!」
マヤ「いいや。こんな箱に引きこもってるメグが悪い!」
メグ「引きこもりじゃないよ!箱の中は開放的なのに!」
チノ「メグさん、マヤさんは悪くないんです。マヤさんはきっと私のことを心配して」
メグ「わかってるよ。マヤちゃんは繊細な気遣い屋さんだもんね~」
チノ「そういうことです。私たち想いの寂しがり屋さんですし」
メグ「ね~」
マヤ「ちょっと二人とも!好き放題言わないでよ!」
メグ「チノちゃんがここに来たってことは、私のこと覚えてたの?」
チノ「ごめんなさい。どれだけ思い出そうとしても上手くいかないんです」
メグ「そっか。でも、こうして会えるだけでも嬉しいな。私のことはこれから覚えてね~」
マヤ「……チノ。初めて3人でシストをしたときのこと、覚えてる?私は今でも覚えてるよ」
チノ「もちろん覚えてます。マヤさんがすぐ寄り道して。……メグさんが違う遊びを提案して脱線しました」
マヤ「チノがもう疲れたって言ったことが抜けてるじゃん!」
チノ「そこだけ覚えてません」
マヤ「その記憶都合良すぎだろ!……一緒にスコーン作ったときのことは?」
チノ「メグさんが紅茶を混ぜた美味しいスコーンを、マヤさんがスパイスのたくさん入った地雷スコーンを作ったんですよね」
マヤ「チノは妹の愛情たっぷりのシスタースコーンを作ったんだよな」
チノ「そんなの作ってません!」
メグ「……どうして」
マヤ「じゃあさ、卒業式の日のことは?」
チノ「マヤさんがいきなり解散なんて言い始めてびっくりでした。シストでは三人の解答がバラバラ!」
マヤ「あったなー、そんなこと。シストはちゃんとクリアしたけどな。宝箱の中は高校生組からのサプライズ。楽しかったよね」
チノ「でも、最後はどうしても泣いてしまいましたね。メグさんも、マヤさんも、私も」
メグ「どうして、チノちゃんがそのことを覚えてるの?私のことは忘れちゃったんじゃ」
マヤ「チノだけじゃない、みんな覚えてたよ。メグとの思い出を、さ」
マヤ「……大切な日々って、ずっと忘れないみたいだよ?」
メグ「でも、みんな私のことを知らないって言ってたんじゃ。どうして思い出だけ」
マヤ「私も、みんな全部忘れちゃってるんじゃないかって思ってたんだ。でも本当は、メグとの思い出だけは消えてなかったんだ」
マヤ「何でだろうって思ったよ。でも、それはきっとさ、メグと一緒に作った思い出が」
マヤ「私たちの、大切な宝物だからだよ」
マヤ「要するに、魂に刻まれた思い出と絆は宝ってこと!ココア理論だね」
チノ「メグさん。私、まだメグさんと一緒に思い出を、宝物をもっと増やしたいです」
マヤ「ここから出よう、メグ!宝物は私たちの世界にたくさんある!」
メグ「……でも、ここにいても、二人に会えるよ。ずっと一緒にいられるよ。私は、この中にしまわれたままでいい」
ゴゴゴゴゴゴゴ
マヤ「また竜巻!?だけど今度は!」ガシッ
チノ「ここでメグさんから離れるわけには行きません!」ガシッ
メグ「二人とも離して!」
マヤ「嫌だ!メグには悪いけど、私はメグをしまっちゃう気はないよ。絶対にこの手を離さない!ずっとずっと、ギュッと抱えてるから!」
チノ「私も離しません!宝箱にしまわなくたって、私たちは、何十年後も友達です!そんなの言わなくたって決まってます!」
メグ「マヤちゃん、チノちゃん……」
マヤ「宝箱の中にしまう宝物は、これから私たち三人で見つけるんだ。そうでしょ、メグ!……だから」
マヤ「宝物、探そうよ!」
マヤ「────っ!ここは!?」
チノ「私の部屋です。メグさんは!?」
メグ「……おはよ~」
マヤ「おそようだろ!時計見てよ、もう夕方じゃん!」
チノ「メグ、さん。やっと、やっと思い出せた。私たちの、大切な友達」
メグ「……ただいま。マヤちゃん、チノちゃん!」
チノ「おかえりなさい、メグさん」
マヤ「何言ってるの二人とも、これから出かけるよ。さぁ、冒険に出よう!」
「「え?」」
マヤ「宝物探そうって言ったじゃん。今から夕焼け見に行くよ!」
チノ「いきなり!」
メグ「ふふっ!宝物、どこかな?」
チノ「……きっと、私たちならすぐに見つけられますよ」
マヤ「だな!なんたって、私たち三人は……もちろん覚えてるよね?」
チノ「当たり前です」
メグ「バッチリだよ~」
マヤ「よし!それじゃあ、せーの!」
「「「チマメ隊!」」」
おわり
マヤさんハッピーバースデイですよ
余談だけどいくつか雑にキャラソン要素突っ込んだ気がするので暇な人は探してみてください
〜は波ダッシュ?全角チルダ?でした
読ませていただきました!
ごちうさの様々な要素が散りばめられつつ、完全なオリジナルストーリー…本編ではなかなかなさそうな展開なのに、全く違和感なく最後まで読めました!
チマメ隊は不滅…!
- WEB PATIO -