このスレッドでは、2つのSSを上げていきたいと思います。ランプが聖典の仕事を紹介するSSと、クロと死神坊ちゃんたちが交流するSSです。
まずは『続・ランプがおすすめする、超スーパーお仕事対戦!!きららver』です。
・このssは、ランプがきららにクリエメイトの部活や仕事を紹介していくというss続編です。https://kirarabbs.com/index.cgi?read=2306&ukey=0&log=past
・参戦済み作品の部活・仕事などを全部紹介します。
・場合によって、各作品のネタバレが入るかも知れません。
・このssは「仮面ライダーゼロワン」のお仕事紹介から着想を得ました。
ランプ「猫のように美しいお方!」
ペットショップ(pet shop)『あっちこっち』
ランプ「可愛い動物を売買する仕事です!」
きらら「なんでつみきさんらの聖典でペットの話に?」
ランプ「それはもちろん! つみき様が猫のように愛くるしいし、音無様が動物によく好かれるからです!」
マッチ「確かに……なのか? ランプの発想は柔らかいね」
ランプ「ああ……私もつみきさんをたくさん愛でたい……」
マッチ「目が蕩けているよ〜」
きらら「あはははは……」
ランプ「以外にも少数派なフルーツ!」
アイドル(idol)『おちこぼれフルーツタルト』
ランプ「歌と踊りで人々を魅了します!」
きらら「芸能活動って大変そうだよね」
マッチ「イノたちのは若干毛色が違う気がするけど……」
きらら「でも、地道に頑張っていく姿は見習う所ばかりだよ」
ランプ「はい! そこが素敵なんです!」
マッチ「彼女らはちょっと危ない所があるけれどね……」
マッチ(よくあれだけいろいろな性癖を浮かべるものだ)
ランプ「心を燃やして炎を消す!」
消防士(firefighter)「ぱわーおぶすまいる。」
ランプ「宗馬様のお父上の職業でした」
マッチ「エトワリアでは魔法の水で消すんだよね」
きらら「命をかけて命を救う……」
ランプ「宗馬様のお父上は、本当に御立派でした……」
きらら「私もみんなのために、一生懸命に頑張りたいと思う」
マッチ「おやおや、きらら自身のことも考えないといけないよ?」
ランプ「その通りです! 私にとって大切な人なのですから!」
ランプ「静寂の世界へようこそ……」
茶道(sadou)「こはる日和」
ランプ「ワビサビが重要なんですよ!」
きらら「みなさんが住んでいる日本って、良い国だよね」
ランプ「その通りです!」
マッチ「ああ。ぼくらもいつか訪れてみたいな」
ランプ「それはそれは夢の話のよう……」
きらら「ツンツーンもあるからね!」
マッチ「他にないのかい!?」
ランプ「獲物を狙え!」
フィッシング(fishing)『スローループ』
ランプ「魚を釣って大量丸です!」
きらら「エトワリアでもあるよね」
マッチ「ああ。ひよりたちの世界を参照にしている釣り人も多い」
ランプ「聖典の世界がエトワリアに影響を与える……最高です!」
きらら「釣りがあんなに奥深いものだとは思わなかった」
マッチ「ああ。聖典を読むといろいろなことがより楽しくなる」
ランプ「その通り!」
ランプ「居場所を売るファンタジー!」
不動産屋(real estate)『RPG不動産』
ランプ「人や魔物が住みやすい場所を提供します!」
マッチ「衣食住の内の一つを司る……責任も大きそう」
きらら「そんな仕事を引き受ける琴音さんはすごいね!」
ランプ「私も依頼してみたい……」
マッチ「お金あるの?」
ランプ「金塊を掘り当てます!」
マッチ「夢見過ぎでしょ」
「このバンドは永久に……」
ギタリスト(guitarist)『ぼっち・ざ・ろっく』
ランプ「ぼっちだったぼっち様が結束していくのは熱かったです!」
マッチ「確かに。彼女の努力も大きいだろうね」
きらら「唯さんたちに負けないぐらい、素晴らしかったよね」
ランプ「私たちもずっと、バンドのように結束していきましょう」
きらら「そうだね!」
マッチ「嬉しいことを言うね……」
ランプ「さあ! あの夕陽に向かって走りましょう!」
ランプ「家を支配する女王!」
大家(landlord)『大家さんは思春期!』
ランプ「住民のみなさまの世話をします」
きらら「チエさん。中学生なのにすごいよねー」
マッチ「素直でとても良い子だ」
ランプ「ある意味きららさんも大家みたいな気がします」
きらら「え? そうかな」
マッチ「確かに面倒見のよい所が似ているかも」
きらら「照れるちゃう……」
ランプ「学校を支配する女王!」
生徒会(student council)『恋愛ラボ』
ランプ「お嬢様学校を取り仕切る……さすがです!」
マッチ「女王って呼び方好きだね」
ランプ「だってその通りだから!」
きらら「恋愛しながら学校の仕事……大変そう」
マッチ「勝気な莉子もやっているのだから驚くよ」
ランプ「そのギャップがいいの!」
きらら「ギャップ萌えって言うんだよね?」
ランプ「花を愛でる女王!」
花屋(flower shop)「小森さんは断れない!」
ランプ「花は繊細ですので、細かい仕事が求められます!」
きらら「クレアもお花が好きで、花の育て方に詳しいよね」
マッチ「ああ。九郎の家は花屋で生計を立てているのがすごいよね」
ランプ「九郎様の花をいつか買ってみたい……!」
きらら「うん。私の九郎さんの花、とても素敵だと思う」
ランプ「その通りです! 芸術品のような……」
マッチ「ランプはバラのように情熱的だよね」
きらら「そんな私の今の仕事は……」
召喚士(summoner)『きららファンタジア』
きらら「これまで、いろんな人と出会ったよ。私はとりあえず、今の仕事を頑張りたい」
ランプ「その通りですよね」
マッチ「まずは目の前の目標! だね」
きらら「そうすれば、いつかエトワリアを守れる仕事ができると思うし」
ランプ「その通りですね!」
マッチ「僕たちと一緒に頑張っていこうか!」
きらら「うん!」
このSSは以上です。『棺担ぎのクロ。』と『死神坊ちゃんと黒メイド』のクロスSSも近いうちに書きます。
ss以外のスレで見かけることはありましたけど、ssで見かけるのはすごく久しぶりですね。前回のssの時の未参戦作品だけでなくまんがタイムコラボ勢もあって驚きました。次のssも楽しみにしています。
次に投稿する作品は『死神坊ちゃんとクロ』です。『棺担ぎのクロ。』と『死神坊ちゃんと黒メイド』のクロスSSです。両作品に共通点が多いと思ったので、執筆させていただきました。
時系列
クロ:6巻の最後の話と7巻1話の間。
死神坊ちゃん:54話「クリスマス5」と55話「黒メイドの1日」の間。
両作品のネタバレ注意です。
「ここが……魔女に呪いをかけられた青年が住んでいる館か」棺を担ぐ旅人、クロは荘厳な館の前にいた。黒い手袋をつけた右手で、帽子を少しあげて館を見上げた。
「おっきいねー」「ねー」
白い双子、ニジュクとサンジュは目の前の城に興味津々である。
「今までは娘ばっかりだったが、野郎とは珍しいな。あの女、男にも興味があったのか」喋るコウモリ、センが不可思議そうな顔をしていた。
「ヒフミの仕業かどうかは分からないよ。とにかくあって話をしてみよう」クロは帽子を脱ぎ、呼び鈴を鳴らした。
「はい、どちら様でしょうか」透き通るような若い女性の声が聞こえてきたので、センが反応した。
「お嬢さんを迎えにきた白馬の王子……いだだだだ!」例によってセンがナンパしようとしたので、クロが羽を引っ張った。
「私の名はクロ。ある魔女を探しています。この館に魔女に呪いをかけられた者がいることを知って話を聞きにきました」女性はしばらく黙っていたが、ドアを開けてくれた。迎え出たのは、真っ白な肌とは対照的に真っ黒な服を着ており、黒頭巾を被った女性だった。
「クロちゃとおなじ、まっくろいひとの」「くろいひとさんだー」
「ニジュク、サンジュ、人に指をさしてはいけないよ」クロは2人を諌めた。
「おお! まさに白雪のような美しさ……」センは見惚れていた。
「私の名前はアリス・レンドロットと申します」自分の名を告げて、アリスは丁寧にお辞儀をした。
「アリス? お客さんかい?」奥から帽子を被り、黒いスーツを着た青年が現れた。
「はい。坊ちゃんと同じような格好の人たちです」
「ああ! またまっくろいひとさんだ!」「ここはクロちゃんのおともだちたくさんいるの?」
「ええ?」双子に変な呼ばれ方をして、青年は困惑した。
月光が窓から差し込み、美しい雰囲気を醸し出しているリビングで、クロと坊ちゃんは会話をすることにした。
「君も魔女に呪いをかけられたんだね……」青年はクロから事情を聞かされた。
「だが、どうやら私が探している魔女とは全然違うらしい。私がかけられた呪いと、君がかけられた呪いとでは性質が異なっている。なによりも君の体に黒い染みがないことがその証左さ。そもそも魔女の名前と姿が一致していない。彼女に妹がいるとは思えないし」
「はい。坊ちゃんの肌のことは、私が隅々まで熟知しておりますので。坊ちゃんの黒い所は、右足の付け根のホクロぐらいです」このアリスの発言は、坊ちゃんにいつもしている逆セクハラだ。
「え?」しかしそんなことを知らないクロは当惑した。いつもは冷静な彼女も、坊ちゃんとアリスの関係を想像して汗を少しかいてしまった。
「お客様の前で誤解を招く発言をしないで! それとなんでホクロの位置知っているの!」坊ちゃんは顔を赤くして慌てて否定した。クロは思わず安堵してしまう。
「逆セクか……お嬢さんでありながら、俺よりもなかなかのテクニックだな」
「セン!」クロはまたもやセンの羽を引っ張った。
「坊ちゃん、クロ様、セン様。コーヒーをお召し上がりください。ニジュク様とサンジュ様にはクッキーとミルクを」アリスは手際よく盆からカップと菓子をテーブルに置いた。背筋を伸ばして姿勢を1ミリも崩さず、テキパキとメイドとしての仕事をする彼女に、クロは感心した。
「ありがとー! おねえちゃ!」「とってもおいしいよ!」双子はすぐさまクッキーを食べ始めた。
「アリス、どうもありがとう」クロはブラックコーヒーを飲み、苦みで舌を満たしてから言った。
「いやはや……完全に魔女違いだったね。急に上がり込んでしまってすまなかった。こんなに美味しいものまで頂いて」クロは坊ちゃんに頭を下げた。
「いやいや。この館に客人が来てとても嬉しいよ。こんなに大きな棺を抱えてやってきたから疲れているよね? よかったらここでしばらく休むといいよ。可愛らしい旅人さんたちも……うおわ!」
「たいあたりー」「とつげきー」双子が後ろから坊ちゃんに抱きつこうとした。坊ちゃんは体をゴムのようしならせて避けた。
「君たち僕に触ったら危ないよ! 死んじゃうよ!」
「こら! ニジュク、サンジュ。大人しくしているように言っただろ」クロは慌てて双子を止めた。クロに捕まった双子は魚みたいにジタバタしている。
「すまないね……私と似た容姿だからか気になっているみたいだ」
「黒僕危機一髪とでも言うべきか……」坊ちゃんは、双子になにごともなかったことに安心した。自分にも弟と妹がいるのでなおさらである。
「坊ちゃんとの話が終わるまで、私が別室で面倒を見ておきます」
「すみません……」クロはこの館の執事である老人、ロブに2人を預けることにした。
「ははは……とても元気の良い子たちだね。子供は元気が一番だよ」
「元気良すぎだ」
坊ちゃんは微笑んだ。クロは坊ちゃんの表情を見て訝しんだ。形は違うといえども、なぜ彼は明るく振舞うことができるのかと不思議に思った。いや、くよくよしているけれど心の奥底では笑っている、そんな矛盾した性格のような気がした。
「ぜんまいのネジを巻き過ぎているような気がするよ」
突然なにかが折れた音が聞こえた。クロが見てみると、ロブが腰に手を当てながら膝をついている。彼の腰が折れてしまったのだ。
「いたたたたた」
「ロブ大丈夫かい?」
「おいおっさん! 大丈夫か?」センと坊ちゃんがロブを気にかけた。
「お子様方を運ぼうとしたら、腰を痛めてしまいました……」そう言いながらも、呆然としている双子にロブは笑顔を向けた。
「おじちゃへいき―?」「むりしないで―」
「私がニジュク様とサンジュ様を連れて行ってあげます」アリスは双子の手を繋いで、別室へと案内した。その姿を見て、坊ちゃんの瞳は釘付けになる。母性溢れる彼女も可愛いと。坊ちゃんは毎日のようにアリスの良さを見つけている。
クロは最近双子と手を繋いでいなかったので、羨ましさを感じた。
「やれやれ……ところで君は魔女の友達がいるっていったね」
「うん。そうだよ。その内の1人は、センさんと同じで女の子が大好きなんだ。あと、コウモリの姿になれる子もいるよ」クロはどこの世界にも、女たらしがいるものだと感じた。
「魔女なのに同性が好きなのか? 確かに世の中にはそういう奴もいるが……」
「違います。男であっても魔女って呼ばれているんです」そのことを知って、クロは興味を持った。
「私も魔女と呼ばれた女性にあったことがあるよ。君が言っている魔女とは、多分定義が違うだろうけど。彼女曰く、魔女は自分から名乗るものではなく、人から呼ばれるものらしい。君の友達もそういうことなんだろう」
「そうなんだね……! やはりその人も親切な人だったかい?」シャーデーに酷い呪いをかけられたにも関わらず、魔女を良い人だと言い切る坊ちゃんに、クロは彼の人柄の良さを感じ取った。クロは少しだけ笑みを浮かべる。
「ああ。とっても親切な方だったよ。ぜんまいの丘に住む、自然に関することに詳しい女性なんだ。私が呪いで倒れたときも、彼女の薬草がとても役に立った。彼女にはとても感謝している」クロは満月を見ながら、ぜんまい丘の魔女のことを思い出していた。
「僕も同じさ。こんな僕でも、ザインたちは友達になってくれた」むしろ友達になるのは当然だろうとクロは思った。触るだけで対象の命を奪う力を悪用しないから、なおさらそう感じる。そのためかクロはつい自分の身の内を詳細に話してしまう。
「僕もこの呪いのせいで、アリスに触ることができないから、君のことも他人事ではないよ」
「私の場合は期限付きだ。君は焦らずに落ち着いて探すことができるから、大分マシさ」
「いやいや! この呪いのせいでアリスに触ることができないんだよ! 僕にとっては無茶苦茶辛いよ」坊ちゃんが余りにも恥ずかし気もなく、黒いメイドに対しての好意を口に述べるので、クロは目が点になった。恋愛とは無縁な生き方をしてきた彼女にとっては、少々新鮮な世界だ。
「ああ……子供をあやすアリスも可愛いんだろうな……」坊ちゃんは別室にいるアリスに思いを馳せた。
「……こうして人間に戻ったカエルの王子さまは、お姫様と一生幸せに暮らしました」アリスはロッキングチェアに座りながら、双子に絵本の読み聞かせをしていた。坊ちゃんがこの場にいれば「鳥がさえずるような朗読」とか言い出すだろう。
「めでたし?」「めでたしなのー?」
「はい。めでたいことです。好きな人と添い遂げることは、とても素晴らしいことなのですよ」アリスは坊ちゃんの顔を思い浮かべながら、双子に微笑んだ。
「そいとげるってなあに?」幼いが故に、アリスの言葉の意味が分からなかったサンジュがアリスに訊いた。
「よい質問です。おじいさん、おばあさんになるまで、一緒にいることです」
「あたしたちがすきなのはクロちゃ」「たしかにクロちゃんとずっといたい!」2人の笑顔は太陽のように屈託がなかった。
「おふたりの言う好きはアリス殿とは少々意味が違っているようですね」ロブはベッドで横になり、腰に湿布を貼った状態で微笑ましく感じた。しかし、母と離れ離れになったアリスからすれば、親同然のクロとずっといたいと思う子供たちの気持ちがよく分かった。
「さて。次は東国の話をしましょう。『さるかに合戦』という題です」しかし、双子はずっと座っていることに飽きてきた。
「ねえアリスちゃ、あたしたち、とってもおもしろいことができるよ」
「え?」
「ちいさくなりまーす」そう言うや否や、突然煙が出てきた。煙が晴れると、双子はこの部屋から姿を消していた。アリスとロブは狐につままれたような気分になった。
「ニジュク様……サンジュ様……? 一体どちらへ?」アリスは屈みながら2人がどこにいったのかを探した。
「アリスちゃー」「ここなのー」アリスのすぐ下から声が聞こえてきたので、彼女は床の下のなにかいるのかと錯覚した。しかし、小さくなった双子が彼女に話しかけたのだ。耳と尻尾がネズミのようになっている。
「あらら……小さい方々がさらに小さくなってしまわれましたね」いつも不思議な現象に見舞われているので、アリスはこれぐらいのことでは驚かなかった。
「ねえねえ、はくしゅちょうだい」「ちょうだいー。クロちゃんはいっつもしてくれるよ?」ニジュクとサンジュにせがまれて、アリスは素直に拍手をした。
「はい。小さくなるなんて私には到底できないことです」アリスはこの愛おしい2人といつも旅しているクロのことを思った。子供の相手をするのは大変そうではあるけれども、それ以上の楽しさがありそうだ。
「あ、あれみてー」「あしがたくさんあるー」双子が指を指したのはクモだった。
「ジョロウグモですね。危ないので元に戻っ……」アリスが言いきらない内に、双子はクモを追いかけてしまった。
「大変なことになってしまいました」
「という訳なんです……。ちょっとした隙に離れ離れになってしまって、申し訳ございません」
坊ちゃんはミスを正直に打ち明けるアリスも尊いと思った。普段は完璧に仕事をこなしているからなおさらだった。
「いや。2人の性質をちゃんと話さなかった私に非がある。彼女たちは、他にも影を操ったり、壁を擦り抜けたりすることができる。私も彼女たちの能力を完全に把握した訳ではない。見つけ出すのは難しそうだ」
「大勢で手分けして2匹を見つけるしかねえな。全く、あいつら手こずらせやがって」
「彼女らが僕に触ったら大変だから、僕は甲冑を纏っておくよ」余りにも唐突だったので、センは飲んでいたコーヒーを噴いた。
「お前……飾りを本当に着るタイプなのか?」
「ある程度の厚みがあれば、呪いは効かないんです」鉄が軋む音が聞こえてくる。こんなものに長時間入っていたら暑苦しいだろう。
「ナイト姿の坊ちゃんも素敵です。勇ましいです」アリスに褒められて、甲冑が赤色に染まった。
「なんで照れて甲冑まで赤くなるんだよ! 血なんて通ってねえだろ!」センは非科学的な現象に突っ込まざるを得なかった。
「君のためにも早くあの2人を見つけないとね。この館は結構大きくて立派だから」
アリス、セン、ロブ、クロで双子を捜索するのが始まった。
数分が経過したが、クロはニジュクとサンジュを見つけ出すことができなかった。
「どうだい? あの2人の気配はしないかい?」
「2人の跡らしきものを発見しました」アリスが指をさした所は、クッキーの欠片が落ちていた。どんな所でも元気いっぱいだから困ってしまう。
「じゃあここを辿っていこうか。すまないね」
「いえいえ。とんでもありません」クロとアリスは行動を共にすることになった。
「ねえアリス」
「はい、なんでしょうか?」ふとクロは、彼女に質問したくなった。こんなことを訊くのは、坊ちゃんと自分を重ね合わせているからだった。
「どうして君は……彼にあそこまで献身的なんだい?」坊ちゃんがあのような性格になっているのは、アリスの影響も大きいことをクロは感じていた。
「それはもう、坊ちゃんは素敵な殿方でございますから」アリスは当然という顔で答えた。
「それにしても君の仕事っぷりはすごいね。神業とでも言うべきだよ」アリスの手際の良さに、クロは思わず見とれてしまうほどだった。
「そうですか? ありがとうございます。私と坊ちゃんは、幼馴染なんです。母が住み込みで本館のメイド長として働いておりまして。坊ちゃんはその頃からとてもお優しい性格でした。メイドの娘であっても、私を差別することはありませんでした。一度は離れ離れになりましたが、坊ちゃんのことを忘れたことは一度もありません」
物静かであるのに熱弁しているような感じを覚えた。アリスは小さな跡を見てから言った。
「クロ様がニジュク様、サンジュ様のことを愛しているのと同じことです。恋人への愛と、子供への愛は若干性質が違うものですが、大切な人がいると、心が温かくなるという点では同じです」クロは若干不本意な顔をした。クロは、自分が双子に愛情をかけることができているとは思っていなかったからだ。
「私はあの2人の保護者になったつもりはないが」クロは双子といずれ別れなければならないという気持ちを持っていた。
「謙遜なさらないでください。クロ様は立派なお方です」
クロは頭をかいた。早く双子を見つけたいと思い目をキョロキョロさせる。このメイドはクロみたいな異邦人であっても、分け隔てなく接してくれる。
「いやいや、買い被り過ぎだよ」
「先ほども御二人が坊ちゃんに触ろうとしたときにしっかり叱りましたし、御二人が被っているフードの猫耳も、クロ様が縫ったものですよね?」確かにあれはクロが双子の耳が入るようにクロが作ったものだ。慣れない作業だったので指にしょっちゅう針を刺したのを思い出した。
「うん。そうだよ。ニジュクとサンジュのお陰で、子守りに関係したことが得意になったよ……」クロは今まで2人に振り回されたことを頭に浮かべていた。大変だったけど大切な思い出だ。
やがて2人は、天井の隅でクモの巣に引っかかっている双子を発見した。
「クロちゃー」「たすけてー」彼女らは泣きべそをかいている。クモの糸がベトベトしていて気持ち悪がっていた。
「おやおや。危ない生き物もいるから無暗に小さくなってはいけないよ。それに大きくなれば良いじゃないか」クロはそう言いながらも優しく双子を摘まんだ。ニジュクとサンジュは元の大きさに戻りクロに抱き着いた。クロの姿を見てすっかり安心したようだ。
「ほら。お姉さんにも勝手にどっかに行ったことを謝って」
「アリスちゃー」「ごめんなさいー」小さな頭をペコリと下げる双子が愛くるしく、アリスは微笑んだ。
「いえいえ。気になさらないでください」
翌日、クロたちは館を出ることになった。坊ちゃんたちが笑顔で4人を見送りしてくれた。
「泊まりまでさせていただいて、本当に申し訳なかったね」
「全然気にしないでよ。クロさん。もし、君が探している魔女、ヒフミに関してなにか手がかりを掴んだら、絶対に教えにいくから! ザインたちもなにか知っているかもしれないし」坊ちゃんの親切さはきっと忘れることはないだろう。クロはそう感じた。
「ありがとう。誰でもこの青空の元にいるんだ。きっといつかまた、出会えるときが来るだろう」
「ああ……アリスちゃんととうとうお別れか」センは未練たらたらで、やる気なさげに浮いていた。
「それじゃあねー」「またねー」センとは対照的に、双子は元気よく坊ちゃんらに手を振っている。
「ニジュク様、サンジュ様。私と坊ちゃんの似顔絵をプレゼントしてくれてありがとうございました」アリスの手にはクレヨンで描かれた絵があった。アリスと坊ちゃんが仲良く手を繋いでいる絵だ。ニジュクとサンジュは子供ながらに、早く2人がこうなって欲しいと思っていた。最近クロと余り手を繋いでいなかったので、思う所があった。
クロは館の前で手を振る坊ちゃんらを見ながら、去っていった。今回の出来事は、魔女が複数存在するから起きたものだと感じていた。
「さて。なんだか今日は少しいい気分になった」
「そうか。次の目的地は船に乗らなければいけねえが、船酔いもなんとかなるか?」クロは少し迷ってしまった。
「……気分が良くても、体質的なものはそうそう変わらないものだよ……ま、今回は我慢してみようかな。数日かけて次の場所に行くのは大変だし。また水の泡になるかもしれないから」そう言ってクロはニジュクとサンジュの頭を撫でた。
拝読しました! 貴重なクロちゃSSだと!?
実は前作も読んできました。2020年って書かれてて懐かしくなっちゃった。
前作投稿時点では未登場だった作品のアツい解説、まさか『まんがタイム』連載作品やきらファンそのものまであるとは思わなんだ。聖典をこよなく愛するランプさんの熱量が感じられる作品でした!
そして勿論もう一作! ニジュクとサンジュがいてくれるだけで私はもう感激です。
クロちゃの話って童話みたいなテイストのものが多いと感じていますが、本作もその例に漏れず少しミステリアスな雰囲気で個人的に好きです。
本文中でも言及されていましたが、 (完全ではないとはいえ) クロちゃとニジュク・サンジュの関係性がアリスさんと坊ちゃんの関係性と重なる描写でぐっと来ました。クロちゃは自分が思っているより双子の保護者していますよね... 優しさという意味でも、厳しさという意味でも。
評論家気取りで恐縮ですが、クロちゃ特有の独特な雰囲気と、丁寧なクロスオーバーで紡がれた一作だと感じました!
>>33
今更ながら、熱い感想を語ってくれてありがとうございます。この2作を大変気に入ってくれて大変嬉しいです。
坊っちゃんらの旅(アニメ)も佳境なのでこのssを久々に見に行きました。『クロ』も『死神坊っちゃんと黒メイド』も大好きだったのでクロスさせてみましたが、見事にマッチしたものが出来上がったようでなによりです。
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