〜エトワリア、ラビットハウスにて〜
ココア「……」
チノ「そろそろ元気出してくださいよ、ココアさん」
ココア「今日は難しいかも〜」
チノ「もうすぐ昼休みも終わっちゃいます」
ココア「チノちゃん。今、私の心の中で、天使と悪魔が戦ってるの」
チノ「天使と悪魔」
ココア「"今日もバイト頑張ろう" VS "今日はしょんぼりココアでも良いかな"の激しい戦いが……」
チノ「想像してたより100倍くらいどうでも良い戦いでした。私、今日の午後は休みなんです。しょんぼりココアさんのカバーはできないですよ」
ココア「今日のチノちゃん、ツンが3割増しだよ!」
チノ「そうは言ってもですね……私だって、ココアさんが真剣に悩んでいたら力になりたいって思いますよ。家族ですから」
ココア「じゃあ」
チノ「真剣な悩みなら、です。ココアさん、今の悩みを言ってみてください」
ココア「昨日、買うのを楽しみにしてた花が、売り切れてて買えなかった!」
チノ「そんなことで、丸一日も、落ち込まないでください!」
ココア「 だ゛っ゛て゛本゛当゛に゛楽゛し゛み゛だ゛っ゛た゛ん゛だ゛も゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」
チノ「 叫 べ る く ら い 元 気 じ ゃ な い で す か ! 」
リゼ「今日も元気だな、お前ら」
このSSには以下のものが含まれます
・独自解釈
・軽度のキャラ崩壊があるかも?
ヤベーと感じたらブラウザバックでお願いしますm(_ _)m
〜1日前〜
チノ(今日はラビハ組でとっておきの特訓です)
リゼ「ココアと同じ名前の花?」
ココア「うん。ランプちゃんから教えてもらったんだけど、エトワリアにはココアって名前の花があるんだって!」
チノ「その花を、特訓のあとに買いに行くと」
ココア「そういうこと! 楽しみだなぁ。やっぱり、雰囲気とか私に似てるのかなぁ。それに何より……」
リゼ「じゃ、今日も特訓は頑張り甲斐があるな?」
ココア「うん! それじゃあ、とっておきの特訓しよっか。今日はマジシャン戦士の姿で!」パッ
リゼ「まさか自由に服を切り替えられるなんてな。テロに巻き込まれた話を聞くまで全く知らなかった訳だが」
ココア「テロだなんてリゼちゃん物騒」
チノ「あれは実際に物騒じゃないですか。怖い話です」
ココア「安心して! 今度何かあったら、お姉ちゃんがチノちゃんを守るから!」パヤポヤァ
チノ「ぱやぽやしながら言われても。また攫われるんじゃ……」
ココア「もう二度と、チノちゃんにあんな怖い思いはさせないよ。絶対に。約束するから」
チノ「っ!? そ、そうですか」
ココア「というわけで、お姉ちゃんに任せなさーい!」テテーン♪
チノ「……」
ココア「あれ!?」
リゼ「頼もしいことで」
チノ「……きっとココアの花の雰囲気もこんな感じなんでしょうね」
ココア「どういう意味!?」
ココア「こほん、気を取り直してとっておきの特訓するよ! 私、今日はツインテ魔法少女なチノちゃんが見たいなー」
チノ「別に良いですけど、何でこれなんです?」パッ
ココア「マジシャン戦士な私とツインテ魔法少女なチノちゃん。エトワリアの私達は、この組み合わせが王道!」
チノ「そんなことで……」ジトー
リゼ「まあ良いんじゃないか? その姿のチノ、なんだかんだで強いんだし」
チノ「それはそうですけど、この姿はとっておきが」
リゼ「とっておきも悪くないはずだろ?」
チノ「毎回ココアさんに頭突かれるのがですね……」
リゼ「あー、そんな仕様だったな……仕様? 何か忘れているような」
チノ「忘れてるって何を……あっ、ココアさんの、とっておきって」
ココア「それじゃあ、私から行くよ!」
リゼ「ん? チノは何か思い出し……あっ」
ココア「度肝抜いちゃうよー!」ダッ
リゼ「待てココア! その姿のココアのとっておきって確か」
チノ「ココアさん、ストップ! ストップです!! ストップストップスt
ココア「チノちゃんは私の妹だよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」ビューン
チノ「ぎゃぁこっち来ないでえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」ガシャーン
リゼ「チノに向かって突っ込んでくる……って、遅かったか」
1時間後
ココア「お疲れ様! 今日も一歩前進だね!」
チノ「酷い目に遭いました」
リゼ「結局、今日のチノは突撃されたり頭突きされたりで大変だったな」
ココア「うっ、ごめんねチノちゃん」
チノ「しょうがないですよ。私たちではどうにもならないですから。それよりも、花屋さんに着きましたよ」
ココア「ほんとだ! ココアの花、ココアの花♪」
チノ「ほっ……」
リゼ「……落ち込んでる姉を見てるのは落ち着かない、って顔してたな」
チノ「違います。笑ってないココアさんなんて、ココアさんらしくないと思っただけです」
リゼ「ははっ、そうだな!」
チノ「むぅ……」
ココア「……( ゚д゚)ポカーン」
チノ「あれ、ココアさん?」
リゼ「どうしたんだ一体。えーっと、何々? 『ココアの花は在庫切れです 再入荷をお待ち下さい』?」
チノ「えっ」
ココア「( ゚д゚)」
チノ「……どどどどどどどうしましょうせっかくココアさんがががががががががが」
リゼ「チノ、落ち着け」
ココア「( ゚д゚)」
〜現在〜
チノ「まったく、花くらいで大げさです」
リゼ「チノはココアのこと言えないぞ」
チノ「うぐっ」
リゼ「それはそれとして、そろそろシャキっとしろココア」ホッペニギー
ココア「りしぇひゃんふぁひふふほ〜?」ホッペムニー
リゼ「今日の午後は仕事を私とココアの二人で回すんだ。働いてもらわないと困る」
ココア「ぷはぁ! そうだった! 午後はチノちゃんお休みだもんね」
チノ「あの、やっぱり私も一緒に」
ココア「大丈夫! チノちゃんの声を聞いてたら元気になれたから!」
チノ「本当に大丈夫ですか?」
ココア「うん! チノちゃんが安心して休めるように、たくさん頑張るよ! だから、チノちゃんは思いっきりお休みを楽しんできて!」
チノ「そう、ですか。ありがとうございます。ココアさん」
リゼ「……」ホッペニギー
ココア「ふぇ!? ふぁんで〜?」ホッペムニー
リゼ「二人で回すんだから、私のためにも頑張ってくれて良いんじゃないか?」
ココア「ぷはぁ! そっか、リゼちゃんもお姉ちゃんに頼りたいんだね! 任せなさーい!!!」
リゼ「とまあこんな感じで、見ての通りココアは元気だから安心して行ってこい」
チノ「元気すぎて逆に不安になってきました」
〜里〜
チノ(せっかくお休みをもらったんだし、目的を果たさなきゃ)
チノ「……次が最後のお店。あったら良いな」
チノ(今日の午後は元々休みだったわけじゃない。だけど昨日、二人に相談してお休みにしてもらった)
チノ(その目的は……)
チノ「着いた。昨日の花屋さん、ここだよね?」
チノ(ココアの花を探すこと)
チノ(さっきはああ言ったけど、ココアさんが喜ぶなら花があるに越したことはないよね)
チノ(それにしても、まさか丸一日落ち込んでたなんて。花ですよ花。それも、そのうち再入荷するって分かってて)
チノ(……知らない間にテロに巻き込まれてたらしかったり、この世界のサービス?が終了したり)
チノ(元の世界でも、進路のこととか、悩ましいことは色々とあるでしょうに)
チノ(なのに、今のココアさんの悩みは花だなんて、なんともココアさんらしい。ふふっ)
チノ(さて、ココアの花は……在庫切れ。やっぱり、昨日の今日じゃ入荷されてないよね)
チノ(これで全滅。このお店は昨日在庫切れだったからそれほど期待はしてなかったけど……)
チノ「はぁ……こんなに探しても見つからないなんて……」ショボン
チノ(……あ、これじゃあまるで。いやいやいやいやいや)
「チノ様もココアの花を探してるんですか? どこも在庫ないですよねー」
チノ「わ、私は花くらいで落ち込みませんよ! ココアさんじゃないんですから……ってあれ? ランプさん?」
ランプ「はい、ランプです! こんにちは、チノ様!」
チノ「今のは見なかったことにしてください……」
ランプ「?」
チノ「ところで、ランプさんはどうしてココアの花を?」
ランプ「ああ、それはですね、きららさんに日頃の感謝を込めてプレゼントしようと思いまして」
チノ「ココアの花ってそういう使い方をする花なんですか?」
ランプ「はい! ココアの花は『心に愛を届ける花』と言われているので、こういう時にぴったりです!」
チノ「心に愛を届ける花……まるで本当に」
ランプ「ココア様みたいな花、ですよね!」
チノ「えっ!? えっと、ランプさんはそう思いますか?」
ランプ「もちろんです! 皆さんの心に愛を届け、笑顔にするスマイルメーカー。それがココア様ですからね! ココアの花はぴったりです!」
チノ「スマイルメーカーってなんですか……そういえば、名前も同じココアですよね」
ランプ「なんてったって、ココア様の名前が由来ですから!」
チノ「え」
ランプ「その花に名前が付いたのは結構最近でして。有名な魔術師が見つけた新種だったんですよ」
ランプ「なんでも、その魔術師が愛する人に想いを伝えるために贈った花だそうで」
ランプ「心に愛を届けるための花、そこからココア様の「心愛」にあやかってココアと名付けられたんです!」
チノ(ココアさんの名前がそのまま付いている花……)
チノ「……その花、愛と一緒にハプニングも届いたりしませんよね?」
ランプ「何故ですか!?」
ランプ「それよりも、チノ様!」
チノ「な、なんですか?」
ランプ「チノ様は、ココアの花でココア様に愛を届けるのですか!?」
チノ「何故!?」
ランプ「だってココアの花ですよ!? チノ様がココア様に想いを告げるところを想像するだけで……ああ、尊い……」
チノ「待ってください、話が飛んでます! 確かにココアさんに渡すつもりですけど、ココアの花がどんな花なのかは今日知ったばかりで……」
ランプ「それに見てください、この聖典!……ってああ!? このチノ様とフユ様のお姿! 素晴らしすぎます!!!」※1
チノ「あ、これ聞いてない……この私が着てる服、こっちの世界のココアさんの服と似てますね。なんか猫耳生えてますけど」
ランプ「そうなんですよ! 元々、普段ココア様の着ている服とそっくりな服を着ているココア様の絵がありまして、そっちのココア様には猫耳があるんですよ!」
ランプ「この服は皆様の世界の童話の格好なんですよね? このチノ様の服は長靴をはいた猫。フユ様が白雪姫。白雪姫は千夜様が着ている絵がありましてさらにさらに」
チノ「ストップですランプさん。話が脱線する予感がします」
ランプ「そうでした。とにかく、この服はまさに、チノ様からココア様への愛の現れ! それに、この話ではチノ様がココア様に憧れて頑張ったりと……ああ、尊すぎて辛い!」
チノ「改めて思ったんですけど、自分の人生が載ってる書物とか恥ずかしすぎませんかこれ」
ランプ「ココア様とチノ様の姉妹愛はお二人の聖典の醍醐味ですからね。ああ、尊さのあまり成仏しそう!」
チノ「ランプさんまだ生きてますよ」
ランプ「というわけでですね! お二人の尊すぎる愛、これを伝えるのにココアの花はまさに適役だということです!」ランプゥゥゥ
チノ「ランプさんにも似合うと思いますよ、ココアの花。その勢いなら」ジトー
参考文献
※1 https://twitter.com/mangatimekirara/status/1658835045665079297
チノ「でもまさか、どこのお店も売り切れだなんて」
ランプ「それがですね、雨がどうとかで、採りに行けなかったらしいです。ココアの花って栽培するのには向かないんですよ」
チノ「なるほど……」
ランプ「そうだ、ココアの花は比較的里に近いところに自生していますから、採りに行くのはどうでしょう? 地図だと……このあたりです」
チノ「なら、ランプさんも一緒にどうですか?」
ランプ「お誘いは嬉しいのですが、私は入荷を待つことにします。これ以上抜け出しているとアルシーヴ先生に怒られるので……マッチにも色々言われますし」
チノ「ランプさん、おサボりさんは駄目で……」
グスッ
チノ「え? 今のランプさんですか?」
ランプ「泣くほど嫌なわけじゃないですよ!?」
チノ「ですよね。子供の泣き声でしたし」
ランプ「あっ、チノ様、その子ですその子。すぐ隣の」
チノ「へ?」
女の子「ぐすっ……ひっく……ぷえぇ……」
チノ(歳は小学生くらい、かな。明るい色の髪で、肩につかないくらいの長さ……どことなくココアさん似た雰囲気の女の子)
チノ(今日はココアさんっぽいものに縁がある日なのかもしれない)
ランプ「マジ泣きですよ!? ど、どうしましょう?」
チノ「え、私に振ります!? えーっと……」
チノ(……落ち着け私。どうすれば良いかは分かってる。ずっと、あの人を見てきたんだから)
チノ(それに、今の私には、私にできるやり方がある)
チノ「……『そんなに泣いちゃったら、キュートな顔が台無し!』」ティッピィィィ
女の子「ふえ?」
ランプ「こ、これは……!」
チノ「『あたいくらいキュートなんだから、笑った顔のほうが似合〜う』」
チノ「"あたいくらい"のとこいります?」
チノ「『何よりも可愛いって意味だもーん』」ドヤァ
チノ「なんて自信満々」
女の子「わぁ……!」
ランプ(チノ様の生腹話術!?)
チノ「『あたい、お腹が空いてきたーご飯頂戴♪』」
チノ「また突然ですね……一応にんじんがありますよ」
チノ「『わーい!』」
チノ「そうだ、あなたにも。にんじんではなくお菓子ですが、どうぞ」
女の子「良いの!? ありがとー!」
チノ「『やっぱり、笑顔がいっちば〜ん! でしょ?』」
女の子「うん!」
チノ「良かったです……むぇっ」ガクンッ
女の子「大丈夫!?」
チノ「ち、ちょっと酸欠なだけです。前よりは、長持ちしましたし……」ゼーハー
ランプ「……」オイノリー
チノ「……ランプさん、何故私に向かってお祈りしてるんです。回復魔法とかですか?」
ランプ「ココア様のような暖かさを見せるチノ様……しかもチノ様の生腹話術……尊い……」バタンッ
チノ「何で私じゃなくてランプさんが倒れるんですか」
チノ「それで、どうして泣いてたんですか?」
女の子「……ココアの花が、売り切れで」ショボーン
ランプ「あー、なるほど」
女の子「妹にプレゼントしようと思ってたけど、どこにも売ってないの」
ランプ「うーん、チノ様、この子をココアの花の採取に連れて行ってもらえませんか?」
女の子「お姉ちゃんと?」
チノ「お姉ちゃん!? でも、この子を連れて行ったら危なくないですか?」
ランプ「大丈夫だと思いますよ? ココアの花の周りは魔法に弱い魔物しか出ないんです。なので、あの花を採るときは必ず魔法を使える人を連れて行くんですけど……」
チノ「私がまほうつかいだから、その条件はクリアしてるってことですか?」
ランプ「そういうことです! 魔物の数もそれほどですし、チノ様と一緒なら安全ですよ」
チノ「なるほど。うーん……」
チノ(それなら大丈夫かな? でも何か引っかかるような……)
???(やめましょうよ。何が起きるかわかりませんよ?)
チノ(えっ、誰)
悪魔チノ(私はあなたの中の悪魔。腹話術の練習の副産物です)
チノ(え、そんな副産物いらない)
天使チノ(私はあなたの中の天使。ここは連れて行ってあげましょう。この子がかわいそうです)
チノ(うわ天使も出た)
悪魔チノ(冷静になってください。安全な場所で採れるはずなのに、急に在庫切れ。何かイレギュラーが起きているかもしれませんよ。やめておいたほうが良いです)
天使チノ(……確かに)
チノ(天使さん納得しちゃった。でも、言われてみれば、さっきはそこに引っかかってたんだ。ここはやっぱり一人で……)
女の子「駄目、かな……?」ウルウル
悪魔チノ(かわいそうなので連れて行ってあげましょう!)
天使チノ(ですよね!)
チノ(あれ!?)
チノ「……一緒に行きましょうか」
女の子「良いの? ほんとに!?」
チノ「本当ですよ。私もプレゼントしたい相手がいるんです。一緒に頑張りましょう」
女の子「うん! ありがとー、チノお姉ちゃん!」
チノ(チノお姉ちゃん……悪くないかもしれない)
ランプ「すみませんチノ様。無理を言ってしまって……」
チノ「これくらい問題ないです。それに、急なことに振り回されるのには慣れていますから」
ランプ「そうでした、振り回され隊ですもんね!」
チノ「です。それに……」
ランプ「それに?」
チノ「私もココアさんのような、さっきランプさんの言ってた、スマイルメーカーになってみたいな、と」
ランプ「……」
チノ「流石にリアクションが予想できますねこれ」
ランプ「女神候補生として、この尊さを世に語り継がなければ……」オガミー
チノ「やめてくださいね」
ランプ「そうだ、さっきの地図を差し上げますね! 頑張ってください!」
チノ「ありがとうございます」
チノ(流石にこの子と二人だけなのは心許ないし、まずは誰か手伝ってくれる人を探さなきゃ。それに親御さんにも……)
女の子「行こ! チノお姉ちゃん!」グイッ
チノ「えっ? ち、ちょっと待って、待ってくださいっ!」ズサー
チノ(……リゼさん、シャロさん。私、気づきました。振り回され隊は3人だからこそ部隊になれるのだと。つまり……)
女の子「お花♪ お花♪」グイー
チノ「ああぁぁぁぁ……」ズサー
チノ(一人だと、ただ振り回されている哀れな子兎です!)
〜どこかの草原〜
チノ(もらった地図によると、あと少しでココアの花の咲く場所なんだけど……)
女の子「お、お姉ちゃん! まもの、まものだよ!」
チノ(あれはドーダイって魔物だったっけ。相変わらずレンガみたいな見た目だ。そして魔法に弱い。つまり……)
チノ「任せてください。……この技なら! スター・シュート!」バシュン
魔物「><」バタンッ
女の子「わぁ、今のが魔法!? すごーい!」
チノ「ほんと、魔法って凄いですよね」
チノ(……エトワリアの私ならなんとか出来るということ。ランプさんの話は本当だったみたい。数も少なそうで、この調子なら何事もなく終わりそう)
女の子「チノお姉ちゃん、もっとすごいの見せてー!」
チノ「無茶振り!?」
女の子「見せて見せて!」キラキラ
チノ(もっと凄いのって何!? それは私になんとか出来ることですか!?)
チノ「あの、私、何でも出来るわけじゃ」
女の子「おねがい、チノお姉ちゃん!」
ココア『お願い、チノちゃん!』
チノ「……しょうがないですね。特別ですよ?」
チノ(どうやら私は、この子のお願いを断れないらしい)
女の子「わくわく」
チノ(頼みを断れないなんて、まるでどこかのクリエメイトみたい)
チノ(とりあえず私には、なんとか出来そうな姿が3つ残ってる。昨日のツインテ魔法少女に水着、ココアさんとお揃いのマジシャンだ)
チノ(3つもあればどこかで満足してくれるに違いない。さて、今度は他のクリエメイトの方に倣って変身です)
チノ「まほうつかいチノ 陽属性フォーム!」パッ
女の子「すごいすごい! 頭のモフモフさんが帽子になっちゃった!」
チノ「『帽子になってもあたいはキュート☆』」
女の子「わぁ!」
チノ(この姿になったは良いものの、もう魔物はいないし……そうだ、空に向かって……)
チノ「えいっ……どーん!」ドォン
チノ(まだまだ空は明るいけど、なんちゃって花火。これで満足してくれたら……)
女の子「わぁ、きれい……! お姉ちゃん、次は次は!?」
チノ(駄目でした。だったら、今度は魔法少女じゃなくてマジシャンだ。せんしチノ マジシャンフォー……)
『やめてぇぇぇぇぇぇっっ!!』
チノ(──)ズキッ
チノ(ム……あれ?)シーン
女の子「お姉ちゃん?」
チノ「マジシャンフォーム。マジシャン戦士。マジシャンフォーム! マジャッマジシャンフォーム!」シーン
チノ(変わらない……? なんで!? ……落ち着こう私。私にはまだ水着の姿が残って)
チノ(水着姿でどうしろと?)
チノ(そもそもここは草原だ。一体何に使えと……あっ)
チノ(意外とありかも? ものは試しだ)
チノ「服のことはツッコまないでくださいね……ナイトチノ サマーフォーム!」パッ
女の子「水着? なんで今?」
チノ「ツッコまないでって言ったのに! ええい、これでどうですか!」シャキン
チノ(私の持つシールドの力で、唐突に出てくる大きな氷の塊と大きなコーヒー豆。この二つが合体すると……)
チノ「はいっ、ラビットハウス特製、コーヒーかき氷です。どうぞ、食べてみてください」
チノ(何故か出来上がるかき氷。まるで魔法だ)
女の子「かき氷!? おいしそう! いっただきまーす!」
チノ(味の評価は如何ほどか……)
女の子「おいし〜! お姉ちゃんも一緒に食べよー!」モグモグ
チノ(どうやら好評みたい)
チノ「それじゃあ私もいただきます。これを食べ終わったら、ココアの花を見つけましょう」モグモグ
女の子「うん! チノお姉ちゃん、今日はありがとう!」
チノ「お礼を言われるには早いですよ。まだココアの花は」
女の子「そうじゃなくてね。一緒に来てくれて、いろんな魔法を見せてくれて、とっても楽しいから! だからありがとう!」
チノ「……ふふっ、どういたしまして」
チノ「ココアの花、たくさん採れると良いですね」
女の子「だね! そういえば、お姉ちゃんはだれにあげるの?」
チノ「私ですか? 私は……あ、姉にあげようと思ってます」
女の子「チノお姉ちゃんのお姉ちゃん!? どんな人なの!?」
チノ「そこ食いつきますか!? えっと、そそっかしいですけどちょっとだけ頼りになる……そ、それよりも! あなたはどうして妹さんにココアの花を?」
女の子「えっと、わたしはね、あの子のとびっきりの笑顔が見たいの! 最近は暗い話も多かったから、ココアの花で、明るいサプラーイズ!」
チノ「暗い話?」
女の子「お姉ちゃんも知ってるでしょ? あちこちでテロ?とか、世界がおしまい!?とか。わたしの聖典も急に真っ黒になってびっくりしたよー」
チノ「っ! そう、でしたね」
女の子「だからわたしね……あの子に、大好きって言いたいの!」
チノ「大好き、ですか?」
女の子「うん。わたし、大好きって言われたら、こころがぽかぽかする! だから、わたしも大好きって言って、妹のこころをぽかぽかにするんだよ! お姉ちゃんだからね!」
チノ「……スマイルメーカー、ですね」
女の子「スマイルメーカー?」
チノ「えっと、みんなの心に愛を届け、笑顔にする。それがスマイルメーカー、だそうです」
女の子「わぁ……! わたし、スマイルメーカーになりたい!」
チノ「きっとなれますよ。だって」
女の子「だって?」
ココア『お姉ちゃんにまかせなさ〜い!』テテーン
女の子『お姉ちゃんだからね!』
チノ「……そこから先は秘密です」
女の子「えー!?」
チノ「さて、いつもの姿に戻りましょう」パッ
女の子「戻ったー!」
チノ「また魔物が出るかもしれませんからね。いつでも追い払えるようにです」
女の子「お姉ちゃんの魔法があればバッチリだね!」
チノ「魔物は危ないんですから油断したら駄目ですよ。余程のことがない限りは大丈夫だと思いますが」
女の子「よほどが無ければだいじょーぶ!」
魔物「(#゚Д゚) ゴルァ!!」
チノ「……」
女の子「……」
魔物「(##゚Д゚) ゴルァ!!」
チノ(目の前に、なにやら強そうな魔物が……)
女の子「……」
チノ「……」
魔物「(#゚Д゚)……」
女の子「これひょっとしてよほどのこと?」
チノ「ひょっとしたら余程のことですね」
魔物「(#゚Д゚) ゴルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
チノ「逃げましょう!」ダッ
女の子「逃げよう!」タッ
魔物「(#゚Д゚) マテゴルァ!」
チノ「こっち来ないでください! とりあえず魔法で追い払います。とっておきの特製ラテアート、できましたっ!」ズドーン
魔物「(#゚Д゚) イタクネェ」
チノ「効いてない……MDFが高め系のボスですかこれ!?」
女の子「よほどのことだぁ!」
チノ「余程のことです!」
チノ「なんとか、距離を離せました」ゼーハー
女の子「大丈夫、お姉ちゃん?」
チノ「私は平気です。でも……」
「Д゚) マ…ゴルァ……ァ……!」
チノ「止まっていたらそのうち追いつかれますね。困りました。ココアの花はもうすぐなのに……」
女の子「どうしよう……」
チノ(きっと、あの魔物がココアの花が入荷しなくなった原因だ。でも、何でこんなところに)
チノ(どうすれば追い払えるだろう。せめて物理攻撃ができれば良いのだけど、何故かせんしにはなれないし……)
女の子「……」
チノ(……ここで引き返した方がいい。私一人でも無謀なのに、今はこの子だっているんだ)
女の子「おねえ、ちゃん」
チノ(きっとこの子をがっかりさせてしまうけど、それでも……)
女の子「チノお姉ちゃん……もう、帰ろっか……」
チノ「え?」
女の子「ココアの花は仕方ないよ。わたし、お店で買えるようになるまで待つから」
チノ「良いんですか?」
チノ(この子、本当に良い子だ。よかった、これならこのまま帰れる──)
女の子「チノお姉ちゃんが、痛いことされるのを見るのは、嫌だから」
チノ「っ……ぁ……」
女の子「わたし、ガマンする……! だって、だってわたし、お姉ちゃんだもん……! スマイルメーカーに、なるんだもん……!」
チノ(……)
チノ(……引き返して、入荷を待つ。それが正解なのは間違いない。どんな良い子だってそうするはず)
チノ(まったく勝算が無いわけじゃない。だけど無謀だ)
チノ(このまま無理をしたら、キャンプの時みたいにココアさんを心配させるかもしれない)
チノ(そもそもこの子を危険な目に合わせるかもしれないわけで……)
チノ(ここで諦めないのは悪い子だ)
チノ(だけど、私は、諦めたくない。この子の笑顔を、諦めたくない)
チノ(私は良い子と悪い子、どっちになればいい)
チノ(どうすれば、良いと……思いますか?)
悪魔チノ(私はあなたの中の悪魔。悪い子になっちゃいましょう。この子の笑顔もココアさんの笑顔もココアの花も、全部いただきです)
チノ(出ましたね。天使さんはどうですか?)
天使チノ(私はあなたの中の天使。悪い子になっちゃいましょう。ココアの花を手に入れて、みんなを笑顔にするんです)
チノ(天使も悪魔も言ってることが全く変わらない! せめて戦ってくださいよ!)
悪魔チノ(この子、私のために諦めようとしてるんですよ? そんなの私が耐えられないです)
天使チノ(右に同じです)
チノ(天使と悪魔が出てくる意味無いですねこれ!)
チノ「……お姉ちゃんだからって、我慢しなきゃいけないとは限りませんよ。うちの姉なんて強欲ですから」
女の子「え?」
チノ「どこか良さそうなところに隠れていてください。あの魔物は私がなんとかします」
女の子「そんなの危ないよ!」
チノ「大丈夫です、作戦がありますから。お姉ちゃんに任せてください!」テテーン
女の子「チノお姉ちゃん……」
チノ「あなたのことは、私が守りますよ。絶対に」
女の子「……うん!」
チノ「それじゃあ、まほうつかいチノ 陽属性フォーム! からの……」パッ
チノ「ラビットダッシュです!」ビュン
女の子「はやっ!」
チノ(この姿はクリエメイトの中で一番速いんです!)
魔物「(#゚Д゚) オイツイタゾゴルァ!!」
チノ「先制攻撃はもらいます! ふんっ!」バシュン
魔物「(#゚Д゚) イタクネェ」
チノ「属性を変えても駄目……なら、仕方ありません。クリティカルな攻撃を受けてもらいます! 異世界コーヒー、まほうつかい風味です!」ズドンッ
チノ「どうですか!?」
魔物「……(#゚Д゚) チクットシタ」
悪魔チノ(私はあなたの中の悪魔。あの魔物の顔、昨日のポカーンとしたココアさんにちょっとだけ似てません? ウーパールーパーみたいな感じでしょうか?)
チノ(悪魔さん邪魔しないで)
チノ(やっぱり魔法は通じない。物理攻撃が必要になるらしい)
チノ「とりあえずダメ元で……せんしチノ マジシャンフォーム!」シーン
魔物「(#゚Д゚) ナニヤッテンダ」
チノ「やっぱり駄目。どうして!?」
天使チノ(私はあなたの中の天使。あの姿になって、この状況を打破するべきです)
チノ(そうですよね。でも何故かなれなくて……)
悪魔チノ(私はあなたの中の悪魔。あの姿にはなりたくないです)
チノ(何故!?)
天使チノ(悪魔さん、私も気になります。どうして戦士に姿にならないんですか?)
悪魔チノ(テロに巻き込まれたらしい時の服を着るの普通に嫌だなって)
天使チノ(えぇぇ……)
悪魔チノ(それにあの時、ココアさんがすごく酷いことされたらしいじゃないですか。そう思うと苦しくなります)
天使チノ(でもあの服はココアさんとお揃いですよ?)
悪魔チノ(今ここにココアさんいないじゃないですか。意味無いです)
天使チノ(確かに……じゃあしょうがないですね)
チノ「天使さん納得しないで!?」
魔物「( #゚Д゚)ゴラァ」
女の子「お姉ちゃん! うしろ!」
チノ「っ!」
魔物「(#゚Д゚) ナグルゾゴラァ」ガッ
女の子「チノお姉ちゃん!」
魔物「(#゚Д゚) アタッタゾゴラァ」
チノ「……そんな攻撃、私には効きませんよ」バリアァ
魔物「( ゚д゚)!?」
チノ「さっき、特製コーヒーかき氷を食べておきましたからね!」ドヤァ
女の子「か、かき氷?」
チノ「というわけで、今度はナイトチノ サマーフォームです。これで私も物理攻撃ができます!」パッ
チノ(あの時かき氷を作ったスキルは、みんなにバリアを張るスキルだ。どんな攻撃も1回だけならダメージはゼロ)
チノ(あの子もかき氷を食べているから、何かが起きても守り切れる……はず)
チノ「今度はこっちからです! はぁっ!」ガッ
魔物「(#゚Д゚) チョットイテェ」
チノ「からの、とっておきです! ティッピー、お願いします!」
チノ「『えーい! ど〜お? 立派な砂の城壁でしょ!』」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
\珈琲旋風/ \珈琲旋風/ \珈琲旋風/
チノ「これでバリア貼り直しです! 城壁がどうやったらバリアになるのかは未だにわかりませんが!」バリアァ
チノ(攻撃しながらバリアを張り続ける……これが私の作戦。勝機は十分にあるはず。問題は……)
チノ「えいっ! はぁっ! ふんっ! とぉっ! ティッピー!」
チノ「えいっ! はぁっ! ふんっ! とぉっ! ティッピー!」
魔物「( ゚∀゚)♪ アンマリイタクネェ」
チノ(HPを削り切るまで恐ろしく時間がかかること! これいつ終わるの?)
チノ「えいっ! はぁっ! ふんっ! とぉっ! ティッピー!」
チノ(これで何回目だろう。でも、この調子ならいつかは。さて、次はバリアを……)
チノ「えいっ!……あっ」ガッ
チノ(間違えた、これじゃ、ただの攻撃で)
魔物「(#゚Д゚) ナグルゾゴラァ」ガッ
チノ「いたっ!」グラッ
チノ(一発が、重たい……)
魔物「( #゚Д゚)ゴラァ」ガッ
チノ「うぅ……」
チノ(ああ、凄く痛い。やっぱり無謀だったのかな。このまま倒れちゃうのかな。あの子を、泣かせちゃうのかな)
チノ(意識が、飛びそうに……せめて、あの子だけなら逃げてくれたらそれで……)
女の子「チノお姉ちゃん!!!」ウルウル
チノ(……)
チノ「……ティッピー、お願い、します」
ティッピー「ぷぅぃぃ?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
\珈琲旋風/ \珈琲旋風/ \珈琲旋風/
チノ「……たくない」
女の子「チノお姉ちゃん……?」
チノ「…めたくない」
チノ「諦めたくない」
チノ「諦めたくない!諦めたくない!諦めたくない!……諦めたく、ない!!!」
チノ「この子は私のために我慢しようとしたんだ」
チノ「この子は私のために泣きそうになったんだ」
チノ「この子は私のために叫んだんだ」
チノ「いやだ、この子が泣いちゃうなんて。そんなの嫌! いやだ!」
チノ「この子は妹さんの笑顔のために、ココアの花を探して、ここまで来たんだ」
チノ「この子はきっと、妹さんの心に愛を届けて、笑顔にするんだ」
チノ「この子の笑顔が、笑顔を届けるんだ」
チノ「諦めたくない! 諦めたくないよ!」
チノ「私は、この子の笑顔を諦めたくない!」
チノ「私は、諦めない! 私だって、ココアさんのように、この子のように……スマイルメーカーになるんです!」
女の子「チノお姉ちゃん……」
魔物「( ゚д゚)」
チノ「攻撃再開です。えいっ!」ガッ
魔物「(#゚Д゚) チョットイテェ」
チノ「もう暗い話はいらないです! 私は、私は……!」
女の子「チノお姉ちゃん大好きー!」
チノ「へ?」
女の子「チノお姉ちゃんといると楽しい! 嬉しい! だから大好き!」
女の子『大好きって言われたら、こころがぽかぽかする!』
チノ「ぁ……」
女の子「強いまものの前で、怖い、怖いけど、それでも、チノお姉ちゃんがいるから平気! 大好きなチノお姉ちゃんがいるから!」
チノ(本当に)
女の子「大好きだよ! チノお姉ちゃん!!」
チノ(こころがぽかぽかして)
女の子「チノお姉ちゃん、好き! 大好き!」
チノ「ありがとうございます。私も、あなたのことが大好きですよ」
女の子「チノお姉ちゃん……!」
チノ(怖いけど、私がいるから平気……)
チノ(そうだ、大好きなことだけ考えればいい。辛いこともへっちゃらになるくらい)
チノ(大好きなこと……うん、私はあの子のことが大好きになった。今もそばにいてくれて、とても心強い)
チノ(みんなといる時間が、私は大好き。楽しすぎて、幸せな時間が、大好きだ)
チノ(ココアさんといる時間も、大好き。思わぬオチに振り回されることもあるけど、そんな時間も、全部好きだ)
チノ(ココアさんの笑顔が、私は大好き。いつも私に元気をくれる)
チノ(そんなココアさんの笑顔が見たくて、私は……)
チノ(……そうだ、私には、大好きなものがたくさんあって。だから)
チノ「大好きな、大切な、みんながいるから……今日も私は頑張れます! せんしチノ! 華麗に爆誕です!」パッ
女の子「わぁ……!」
チノ「やった、変わりました! \ピョコッ/……ぴょこ?」
女の子「猫耳だー!」
チノ(ね、猫耳? あ、首元に鈴がついてる。あとポーチにうさぎのぬいぐるみが。帽子は羽根付き帽子みたい。まるでこっちの普段のココアさんのような)
チノ(そうか。これ、さっきランプさんに見せてもらった絵の服だ。これで無事に立派なせんしになれまs
チノ「違う、そっちの服じゃない!」
女の子「どうしたのお姉ちゃん!? その服じゃ駄目なの!?」
チノ「だ、大丈夫です。多分!」
チノ(せんしの服なことに変わりはないし、剣もあるし、猫耳も……いや、猫耳はいらない)
チノ「今まで苦戦していましたが、せんしのスキルなら! ふんぬーっ!」ブンッ
魔物「( ゚д゚) イテェゾゴラァ」
チノ「効いてる! なら、2つめのスキルも受けてください!」ズバン
魔物「( ゚д゚) イテェ」
チノ「バッチリです!」
女の子「やったー!」
魔物「(#゚Д゚) グヌヌ」
チノ「これでもう、攻撃手段の心配はいらないです。エキスパート・ブリッツ!」ポンッ
チノ「からの、とっておきで……とっておき……」
女の子「……お姉ちゃん?」
チノ「とっておきを使う度にココアさんと頭突きしたり、砂の城が出来たり、記憶が飛んだり。次は何が起きるのかと思うと……」
女の子「何があってもわたしがついてるよ!」
チノ「そうでしたね。それじゃあ、これが特訓の成果、とっておきです!」バンッ
チノ(もう何が起きても驚かないですよ。さあ、一体なn)
フユ「……あれ、チノ? ……ここどこ? 夢の中?」
チノ「…( ゚д゚)」
フユ「…( ゚д゚)」
女の子「( ゚д゚)」
魔物「…( ゚д゚)」
チノ「えっ、フユさん!? 白雪姫みたいな服着てますね!?」
フユ「よかった、本当にチノだ。普段とぜんぜん違う服だから、人違いかもしれないと不安になった」
女の子「誰!? チノお姉ちゃんの知り合い?」
チノ「私の友達のフユさんです。ところでフユさん、どうしてここに!?」
フユ「私が聞きたい……ほんとここどこ……?」
チノ「えっと、ここはエトワリアって言って、私たちとは違う世界で……」
フユ「異世界ってこと? だからチノはコスプレみたいな格好してるの?」
チノ「フユさんも白雪姫のコスプレですからね……白雪姫?」
フユ「チノ?」
チノ「あの絵だ……私とフユさんのツーショットでしたもんねあれ……巻き込みました。ごめんなさいフユさん……」
フユ「良くわからないけど許します? それで、私はどうすればいい?」
チノ「あの魔物を一緒に倒しましょう!」
魔物「(#゚Д゚) ゴルァ」
フユ「……あれを?」
チノ「はい」
フユ「……」
魔物「(#゚Д゚) ゴルァ」
フユ「……異世界初心者の私がどうやって?」
チノ「……どうやるんでしょう?」
フユ「私が聞きたい」
チノ(言われてみれば。うーん……確か私の格好がココアさんと同じで、フユさんの格好は千夜さんと同じだったはず)
チノ(私がせんしなら、フユさんは……千夜さんと同じそうりょ? なら……)
チノ「私があの魔物を倒すので、フユさんは私を応援してください」
フユ「それだけでいいの?」
チノ「それだけで百人力です」
女の子「わたしも応援するね! 二百人力だよ!」
チノ「そして私を合わせて三百人力です」
フユ「わかった。頑張る」
チノ「それでは、行きますよ!」
チノ(あねぢからちゃーじ……!)キュッ
フユ「チノ、ファイト!」
女の子「お姉ちゃん、がんばれー!」
チノ(みんなからもらった大好きを、力に変えて、この一撃に)
チノ「すぅぅ……」
チノ「『レッツゴー☆』」
チノ「チェックメイトです!」ズドンッ
魔物「( ゚д゚) ゴル…ァ」バタン
チノ「やりました……! なんともドタバタなとっておきでしたね」
フユ「お疲れさま、チノ。私はもう帰るね」スゥ…
チノ「えっ、早くないですか!? ってそうか、とっておきが終わったから……フユさん、ありがとうございました!」
女の子「凄いよお姉ちゃん!」
チノ「みんなのおかげですよ。もちろんあなたもです」
女の子「えへへ……」
チノ「さて、これでようやくココアの花を取りに行けますね。余程のことがない限りは」
女の子「よほどが無ければだいじょーぶ!」
チノ「……念のため警戒はしましょう」
女の子「……そうだね」
魔物「(#゚Д゚) ゴルァ」
女の子「!?」
チノ「言ったそばから……! まだ動けたんですか!?」
チノ(この子を守らなきゃ……! でも、私は後どこまでやれるんだろう……?)
チノ「……ココアさん」ボソッ
「……ノちゃ……!」
チノ「っ! 今の声って……」
「チノちゃ〜ん!」
チノ「ココアさん!? 来てくれたんで、す?」
ココア「今こそ、お姉ちゃんの実力を見せる時!」ビュオオオオオオオオ
チノ(……空を滑空し、風を纏い、剣をこちらに向け、まっすぐに突っ込んでくるココアさん。あれはマジシャンココアさんのとっておk
ココア「助けに来たよおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」ビューン
チノ「こっち来ないでえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」ガシャーン
女の子「チノお姉ちゃーん!?」
魔物「( ゚д゚)グェ 」バタン
チノ「いたた……だから何で突っ込んでくるんですかそれ……」
ココア「ごめんごめん……あれ、あの魔物は?」
チノ「たった今ココアさんが倒しましたよ。それにしても、ココアさんはどうしてここが?」
ココア「あー、それはね、ランプちゃんが血相を変えてラビットハウスに来たんだ。『チノ様がココアの花を採りに行ってる』って」
ココア「ランプちゃんは後から知ったらしいんだけど、大雨でこのあたりに危険な魔物が移動してきたせいで、ココアの花の入荷が止まってたんだってー」
チノ「なるほど、それであんな魔物が……」
ココア「それを聞いたらいても立ってもいられなくなって。すぐに外に出て、さっきのとっておきを使ったの」
チノ「は?」
ココア「ほら、私のとっておきって絶対にチノちゃんの方に飛んでいくでしょ? ちゃんとここまでひとっ飛び出来たよ! そのまま魔物も倒せたし!」
チノ「そんなゲームのバグみたいな」
ココア「だからね、助けに来たよ。チノちゃんを守るって、約束したから」
チノ「……ち、遅刻ですよ、ココアさん」
ココア「遅刻!? あ、チノちゃん怪我して……本当に大遅刻だぁ! すぐに治すからね!」
チノ「コ、ココアさん大げさです」
ココア「大げさじゃないよ! ほら、ココアサンタからの癒やしのプレゼント! お姉ちゃんがバッチリ治しちゃうよ!」パッ
チノ「あ、ありがとうございます」
女の子「この人が、チノお姉ちゃんのお姉ちゃん?」
ココア「その通り! 私がチノちゃんのお姉ちゃんだよ! ……ここにも、かわいい妹が! もふもふしたーい!」ココアァ
チノ「ちょっとココアさん!?」
ココア「レッツもふも\ガキン/いたっ!?」
女の子「?」バリアァ
チノ「あ。そういえば、この子にかけたバリアが残ったままでした」
ココア「私、魔物扱い!?」
数分後
女の子「わぁ……!」
ココア「お花がいっぱいだー!」
チノ(辺り一面に広がる、ピンク色の花……)
チノ「これが、ココアの花」
女の子「チノお姉ちゃん! はやくはやく!」
チノ「はい、今行きますよ」
ココア「チノちゃんがお姉ちゃんしてる」
チノ「誰かさんがお手本になってくれたので」
ココア「誰かさん?」
チノ「何でもありません。それよりココアさん、いつまでサンタの格好して……」
『あ、チノちゃん怪我して……本当に大遅刻だぁ!』
チノ(……)
ココア「そうだった。それじゃあいつもの服で……チノちゃんとお揃い! 今日はダブルお姉ちゃんだね!」パッ
チノ「……」パッ
ココア「あれ、着替えちゃった!? せっかくのおそろいがぁ……チノちゃんまでいつもの服に戻らなくて良いんだよ!?」
チノ「……ごめん、なさい」
ココア「え?」
チノ「無茶をして、心配かけて、ごめんなさい」
ココア「チノちゃん」
チノ「キャンプの時に、私が大事って言ってもらったのに……ごめんなさ
ココア「チノちゃん!」
チノ「はい!」
ココア「どうして謝るの?」
チノ「え? だって……」
ココア「チノちゃん、私を見て?」ニコッ
チノ「……?」
ココア「あの子も見てみて」
女の子「ココアの花、たっくさん! ありがとー、チノお姉ちゃん!」ニコー
チノ「……」
ココア「私も、あの子も、みんな笑顔だよ?」
チノ「ぁ……」
チノ(私、守れたんだ。あの子を、笑顔にできたんだ)
ココア「頑張ったね、チノちゃん。お姉ちゃん、すっごく嬉しい!」ナデナデ
チノ「……そういうとこずるいです」
ココア「?」
女の子「あー! あのチノお姉ちゃんがこんなにかわいらしく! 本当に妹なんだ。かわいいー!」
ココア「でっしょー! チノちゃんは、私の可愛い妹だからね!」
チノ「ココアさん離れてくださいこの子の前で恥ずかしいです早く離れて」
〜里〜
女の子「チノお姉ちゃん、ココアお姉ちゃん! 今日はありがとう!」
チノ「こちらこそ、ありがとうございます。とっても楽しかったですよ」ニコッ
ココア「今度はラビットハウスに遊びに来てね。コーヒーとパンでおもてなしするよ!」
女の子「うん! ぜったい行く! 私のかわいい妹も一緒に!」
チノ「楽しみに待ってますね」
女の子「それじゃあ、またね!」タッ
ココア「ばいばーい!」
チノ「また会いましょう」
ココア「……それじゃ、私たちも帰ろっか。今日は楽しかったな〜。ココアの花もゲットできたし!」
チノ(そうだ、ココアの花……どうしよう。採ってきたは良いものの、ココアさんも持ってるわけで)
チノ(もうこのまま持って帰って──)
女の子『大好きって言われたら、こころがぽかぽかする!』
女の子『チノお姉ちゃん大好きー!』
チノ(あったかかったな……)
天使チノ(私はあなたの中の天使)
悪魔チノ(私はあなたの中の悪魔)
チノ(どうせ答えは同じでしょ! えぇい!)
チノ「ココアさん、大好きですよ」
ココア「チノちゃん、大好きだよ!」
チノ・ココア「「え?」」
ココア「チチチチチチチノちゃんが、私のこと好きって、大好きって!」
チノ「あ、あくまでも家族としてですからね!」
ココア「それはもう姉として好きってことでしょ!?」
チノ「今そこ大事ですか!?」
ココア「一番大事だよ!」
チノ「もうそれでいいです。ていうか、ココアの花を私にあげて良いんですか? あれだけ欲しがってたのに……ってまさか」
ココア「え? だって、ココアの花が欲しかったのはチノちゃんに渡すためだもん」
チノ「やっぱり! ああぁぁぁ、何のために探し回ったんだろう私……私に渡すものを私が探してどうしろと……」
ココア「チノちゃん、私のために探してくれたの!?」
チノ「里中探し回りましたよ……でも、何で私に?」
ココア「チノちゃんの笑顔が見たくって!」
チノ「私の、笑顔?」
ココア「こっちの世界だと最近は暗い話も多かったし、元の世界でも悩みが全くないってわけじゃないでしょ?」
チノ「そう、かもです」
ココア「だから、この花で心に愛を届けようって。チノちゃんに大好きって言って、そうしたらきっと……」
チノ「こころがぽかぽかになる?」
ココア「え、何で分かったの!?」
チノ「……そんなところまで、似ているんですね」ニコッ
ココア「え?え?」
チノ「ほんと、スマイルメーカーさん達には敵いません」
ココア「何の話!?」
チノ「あの子の方も上手く行ったに違いないって話です。ほら、もう帰りますよ」
ココア「えー!? 話がぜんぜんわかんないよ!?」
〜1日後、ラビットハウスにて〜
ココア「この花がねー」
千夜「うんうん」
シャロ「綺麗な花ね」
リゼ「ココア、仕事しろ」
ワイワイガヤガヤ
チノ「ココアの花は……ここで良いかな」トンッ
チノ(みんな、笑顔だ。この花のおかげかな)
リゼ「そのココアの花、店に飾るのか?」
チノ「はい。昨日採った花がまだ余ってたので、しばらく店に置いておこうかと」
チノ(こんな時間が続く場所。そんな場所に、できたら良いな)
リゼ「なるほど。にしてもまさか、チノがココアの花を探し回ってたなんて。ココアがさっきから大はしゃぎだぞ?」
ココア「それでね! チノちゃんが里中探し回ってくれて、里になかったからって今度は里の外まで」
千夜「良かったわね、ココアちゃん♪」
シャロ「ココア。今日もうそれ10回は聞いたわよ!」
ランプ「ココア様! その話、詳しく聞かせてください!」
シャロ「ランプ、一体どこから出てきたのよ!?」
チノ「……元気そうで何よりです」
リゼ「チノのおかげだな」
チノ「そう、だと……嬉しいです」
ココア「チノちゃん、あの子だよ!」
チノ「今行きます!」トテテ
女の子「チノお姉ちゃん! ココアお姉ちゃん! 遊びに来たよ!」
妹「こ、こんにちは」
チノ(大切な人たちが、大好きな人達が笑顔でいられるように。だから、私も、この花のように、あの人のように)
ここまで読んでくれてありがとう
どうでもいいんですけどシャロ→ランプって呼び捨てなんですね
原作やきらファンのネタが多くて面白かったです
チノ→ココアって結構重いですよね(だがそこがいい)
>>40
きらファンのとっておきは演出が滅茶苦茶なのばかりなので応用性が高そうだなって思います
>>41
ココアが来てから世界変わりすぎて依存度がヤバい(それこそ7月号も)
でもそこが良いですよね
拝読しました! なんかずっとブチギレてる魔物さん、ちょっとかわいい。
私も以前にココチノの衣装ネタで一本書いたことがありますが、衣装の種類で能力が変化するエトワリアのシステムってやっぱりシュールだなって。
それにしても、女の子を泣き止ませようとするチノちゃんの姿が、本当にたくましくて...。
突然のフユさんに驚きながらも、終盤にかけての激エモ展開に胸が熱くなりました。
スマイルメーカー。まさにココアさんを象徴するような言葉ですが、実のところチノちゃんにもしっかり当てはまっているような、そんな感じがしました。
>>43
スマイルメーカーほんとココアさんって感じでほんと良い曲ですです
スマイルメーカーしてるチノはあした元気になぁれ!とかがまさにそうだし、原作の方もどんどんスマイルメーカーしてるのでチノ最高ですね(てか原作やキャラソンで見れるんだからこんなへたっぴなSS書く意味ないじゃん(ないじゃん))
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