〜ラビットハウス〜
マヤ「ありがとうございました! ……ふう、一段落したぁ」
ナツメ「マヤとメグって接客慣れてるよね」
マヤ「なに急に」
エル「メグさんもマヤさんもバイトを始めて1年経ってないよね? どうしてそんなに上手なの?」
メグ「やっぱり、チノちゃんたちの仕事を見てきたからかな?」
マヤ「お手本があると覚えやすいよなー」
チノ「ココアさんのような悪いお手本もありますが」
ココア「チノちゃん!?」
ナツメ「じゃあ私はメグをお手本にしようかな」
マヤ「なんでメグだけ!?」
ナツメ「マヤはちょっと頼りない」
マヤ「なんだとー! 私のことも素直に褒めてくれたって良いじゃん!」
ナツメ「褒めようとしたら『なに急に』って返してきたんじゃん! そっちこそ素直じゃない!」
エル「いつもの喧嘩だよ、メグさん」
メグ「演技の手本にしようね、エルちゃん」
マヤ・ナツ「「するなー!」」
ナツメ「──それじゃあまたね」
チノ「また来てくださいね」
マヤ「素直じゃない、かぁ」
メグ「マヤちゃん?」
マヤ「……あのさ、二人に相談したいことがあるんだけど」
チノ「相談ですか? どこかに飛び出さずに?」
メグ「珍しいよね。いつもならどこかに飛んでいっちゃうのに」
マヤ「私ロケットじゃないんだけど!」
メグ「えへへ、ごめんごめん。それで、相談って?」
マヤ「えっと、その、ナツメに、すっ……」
チノ「すっ?」
マヤ「すっ……」
メグ「すっ?」
マヤ「すっ、すっ、すっすっすっすっすっすっすっ」
チノ「……こんな感じですか?」
(・△・ 三 ・△・)スッスッ
メグ「こうかな?」
\(0ω0 \)三(/ 0ω0)/ スッスッ
マヤ「動きの擬音じゃなくて!」
チノ「この動きじゃなかったですか?」
マヤ「だから動きの擬音じゃないってば!」
メグ「すっの謎、深まるばかりだね」
マヤ「待ってこれ私ツッコミ役?」
チノ「果たしてすっにどんな謎が隠されているのか」
マヤ「何も隠されてねーよ! てか二人のどっちかツッコミに回って!」
メグ「チノちゃん、これは刑事課の二匹兎の出番だよ! 謎を解き明かそう!」
マヤ「解き明かさなくて良いって! ちゃんと言うから!」
チノ「え、刑事ですか? それはちょっと」
マヤ「チノ、その調子でツッコミお願い!」
チノ「ここは探偵の方が良いと思います。チマメ探偵団です」
マヤ「ボケ役に戻らないで」
メグ「良いね〜。でも、マヤちゃんは謎を解かれる側だよ?」
マヤ「ツッコミどころはそこじゃないって! ていうかもう良いでしょ!」
チノ「すみません。マヤさんの反応が面白くって、つい」
メグ「本当は分かってるよ。『ナツメちゃんに素直になりたい』の『すっ』だよね?」
マヤ「〜〜〜〜〜っ! 分かってるなら最初からそう言ってよ!」
メグ「でも、どうして急に?」
マヤ「それは、ナツメと」
チノ「ナツメさんと?」
マヤ「もっと、仲良くなりたくて」
チノ「……か」
マヤ「か?」
メグ「……か」
マヤ「だから、か、の続きは!?」
チノ・メグ「「……かわいい!」」
マヤ「なんでだよ!」
メグ「今のマヤちゃんすっごくかわいい! ね、チノちゃん!」
チノ「はい、なんて可愛らしい理由と仕草! ……というか、お二人は今も十分に仲良しだと思いますが」
メグ「だね〜。ツンデレVSツンデレの喧嘩はいつ見てもほほえまだよ」
マヤ「ちょっと、私はツンデレなんかじゃないって!」
チノ「ツンデレじゃなかったら素直になりたいなんてワード出てきませんよ」
マヤ「ぐうの音も出ない正論やめて」
ココア「経験者は語る、だね!」
チノ「入ってこないで」
マヤ「ツンデレかどうかは置いといて、確かに私とナツメは会うたびに喧嘩してる」
チノ「さっきもそうでしたね」
メグ「いつもの光景だよ」
マヤ「で、そもそも喧嘩の原因って私にあるんじゃないかなって」
メグ「どういうこと?」
マヤ「ナツメって、私以外には素直じゃん?」
チノ「そうですね。猫を被ってる時こそあったり」
メグ「一歩引いてるところはあるけど、素直で良い子だよね」
マヤ「それに対して私は、普段から素直じゃない悪い子じゃん? 二人からは内緒が多いとか恥ずかしがり屋とか言われてるしー」
マヤ「だからきっと私が原因で向こうも……」
チノ「待ってください! 素直じゃない = 悪い子ってわけじゃないですよ!?」
メグ「マヤちゃんの良いとこたくさん言わなきゃ……!」
チノ「マヤさんはいつも私たちのことを気遣ってくれて……」
メグ「マヤちゃんはマヤちゃんのままが良くって……」
マヤ「ストップストップ! 冗談! 冗談だから!」
マヤ「とにかく! 私が素直になれば、向こうも素直になって、喧嘩の原因もなくなり万事解決ってこと!」
チノ「でも、その素直になる方法がわからないと」
マヤ「……うん」
メグ「私は今のままでも良いと思うよ」
チノ「いつも楽しそうに見えます」
マヤ「でも、せっかくナツメがもう遠慮しないって言……じゃなくて! 私も褒めてほし……でもなくて!」
メグ「マヤちゃん、今こそ素直になるときだよ!」
マヤ「ちょー素直だし! たまには素直なナツメを見てみたい、ただそれだけ!」
チノ「仲良くなるのが目的だったんじゃ?」
メグ「動揺してるマヤちゃんもかわいいね〜」
マヤ「ぐぬぬ」
ナツメ「私がなにって?」
マヤ「いやだからナツメの……( ゚д゚)!?」
ナツメ「なにその顔」
マヤ「なんでいるー!?」
ナツメ「忘れ物取りに来ただけなんだけど!」
マヤ「急に出てこないでよ! びっくりしたじゃん」
ナツメ「マヤがビビりなだけでしょ!」
マヤ「ビビってないし! びっくりしただけ!」
ナツメ「それ同じじゃん! それより、さっき何話してたの? 私の名前が聞こえたんだけど」
マヤ「そっそれは、えっと」
メグ(マヤちゃん!)
チノ(チャンスですよ!)
マヤ「すっ」
ナツメ「すっ?」
マヤ「マラソンの時の、スッキリ前髪が面白かったって話!!!」
ナツメ「それマヤも同じだったじゃん!!!」
チノ・メグ「「、ハ,,、ヽ(・△・ヽ(0ω0 )/ズコー」」
メグ「──ナツメちゃん帰っちゃったね」
チノ「やっぱり難しいですか?」
マヤ「難度高すぎ! ゲームで一番上の難易度選んだ時より難しい!」
メグ「でもやっぱり、ナツメちゃんともっと仲良くなりたいんだよね?」
マヤ「そりゃまあ……」
メグ「じゃあ頑張らないとね」
マヤ「だよなー。でも、どうすれば素直になれるんだよ!」
チノ「では、こういうのはどうでしょう。いっそ素直な自分を演じる、とか」
メグ「どういうこと?」
チノ「えっとつまり、例えばナツメさんを褒めたいときは、褒める演技をする、と思い込むんです」
チノ「最初から素直になるより、演技から入ったほうが恥ずかしがらずに言葉にできるかな、と」
マヤ「なるほど……演技で慣れて、だんだん素直になれば良いってことかぁ」
メグ「……」
チノ「メグさん?」
メグ「……千夜さんに仕込まれたツッコミの血が言うの。『オチが見える』って」
チノ「否定はできないですね」
マヤ「ちょっとそれどういう意味!?」
〜翌日の学校〜
マヤ(チノの作戦、試してみよっと)
マヤ「ナツメ! きっ今日も可愛いな!」
ナツメ「え、なんで口説いてるの!?」
マヤ「口説いてねーし!!!」
ナツメ「口説いてるじゃん!!!」
メグ「こういう意味だね」
エル「どういう意味?」
メグ「実は……」ゴニョゴニョ
エル「なるほど?」
メグ「でも、突然マヤちゃんの態度がこんなに変わったら……」
エル「当然ナツメちゃんはこうなるよね」
メグ「そして当然マヤちゃんもこうなるね」
マヤ・ナツ「「そこ納得しないで!」」
メグ・エル「「いつもの光景で落ち着く〜」」
マヤ・ナツ「「勝手に落ち着くな!!!」」
〜休み時間〜
マヤ「ナツメ、その、髪、綺麗だよね」
ナツメ「ほんと今日どうしたの!?」
マヤ「〜〜〜っ!!!」ダッ
ナツメ「ちょっとどこ行くの!?」
ナツメ「あっ、マヤ。さっきはどうしたの?」
マヤ「なっなんでもない! なんでもないから!」
ナツメ「そう? なら良いけど。体調が悪いとかじゃないんだよね?」
マヤ「うん、平気平気。あっありが……やっぱ無理〜〜〜〜〜〜!」ダッ
ナツメ「なんで!?」
ナツメ「マヤー!」
マヤ「っ!」ダッ
ナツメ「今度はノータイム!?」
〜放課後〜
マヤ「どうしようエル。全然うまくいかない」
エル「頑張ってマヤさん! 演技なら私たちにだってできるし、きっとマヤさんもできるよ!」
マヤ「演技よりも恥ずかしいを克服することのほうが……」
エル「あっ、二人が来たよ! ナツメちゃん、メグさ〜ん!」
メグ「エルちゃん、マヤちゃん!」
マヤ「ナツメ! えっと、その」
ナツメ「……マヤ、私のこと嫌いになった?」
エル「ナツメちゃん!?」
マヤ「へ? そんなわけないでしょ」
ナツメ「でも、今日のマヤ変だよ」
マヤ「そこは何も言い返せない」
ナツメ「私、マヤにいつも喧嘩腰だし、嫌われて当然じゃん」
メグ「待ってナツメちゃん、それは誤解で」
ナツメ「ごめんっ」ダッ
マヤ「ナツメ!?」
メグ「ナツメちゃん、誤解したまま行っちゃった!」
エル「どどどどどうしよう!? 早く誤解を解かないと」
ナツメ「──はぁ、はぁ……な、んで」
マヤ「、て……ぁ」
ナツメ「なん、で……はぁ……はぁ……」
マヤ「ま、て……」
ナツメ「なんで……」
マヤ「待ぁてぇゴラァァァァアアアア!!!」
ナツメ「なんでそんなテンションで追いかけてくるの!?」
マヤ「気合で追いつく、作戦!」
ナツメ「それ作戦って言わない!」
マヤ「知ったこっちゃ……痛っ!」コテン
ナツメ「マヤ!?」トテテ
マヤ「いったた……」
ナツメ「大丈夫!? 怪我はない?」
マヤ「……そうだね。確かに、作戦ってのは\ガシッ/こういうことを言うんだっけ」
ナツメ「!?」
マヤ「もう逃さないよ」ニヤッ
ナツメ「っ! また騙したなー!」
マヤ「前と似たような手に引っかかるナツメが悪い」
マヤ「やっぱりナツメは優しすぎるよ。私なんて放っておけば良かったのに」
ナツメ「そんなことできるわけない」
マヤ「ん、そっか」
ナツメ「……なんで追いかけてきたの。それこそ、私なんて放っておけば良かったじゃん」
マヤ「それこそできるわけないでしょ」
ナツメ「私のこと嫌いになったくせに」
マヤ「嫌いになんてなるわけない!」
ナツメ「だったらなんで!」
マヤ「それは!」
ナツメ「それは?」
マヤ「ただ、ナツメに、すっ……」
ナツメ「すっ?」
マヤ「すっ、すっ、すっすっすっすっすっすっすっ」
ナツメ「……こう?」
(ΦωΦ ^)三(^ ΦωΦ) スッスッ
マヤ「それは昨日やってるから!」
ナツメ「で、結局すっの続きはなんなの?」
マヤ「それは……っだあああああ! やっぱり私には無理無理無理無理無理!!!」
ナツメ「マヤ!?」
マヤ「こうなったらもう、私は私のままでぶつかるしかない!」
ナツメ「何の話!?」
マヤ「私に素直なんて無理って話!」
ナツメ「え、じゃあさっきのすっは素直のす?」
マヤ「ちっ違うから! 私はナツメのことが好き!のすっ! ただそれだけ!」
マヤ「は?」
ナツメ「『は?』はこっちの台詞なんだけど!?」
マヤ「まあ素直のすじゃなければ何でも良いや」
ナツメ「待って本当にそれで良いの考え直して」
マヤ「これで誤解も解けるから万事おーけー!」
ナツメ「解く前に勢いで吹っ飛ばされてる気がする!」
マヤ「とりあえずナツメの暗い顔なんてわざわざ見たくないし笑ってよ」
ナツメ「今度は恥ずかしさで笑顔が作れないんだけど!」
ナツメ「……いや、何で? 何で私口説かれてるの」
マヤ「素直になるのが恥ずかしくて」
ナツメ「さっきのは恥ずかしくなかったの?」
マヤ「恥ずかしかった」
ナツメ「意味ないじゃん!」
マヤ「あはは! 結局、私たちが喧嘩せず素直に……なんて無理っぽいなー」
ナツメ「ひょっとして、それで挙動不審だったの?」
マヤ「挙動不審じゃなくて戦略的撤退!」
ナツメ「それはそれでおかしな挙動でしょ」
マヤ「まあそもそもナツメが素直になってもこっちが落ち着かないし? ナマイキって感じが私にとってのナツメだし? いつも通りが一番だね!」
ナツメ「ちょっと,それはこっちの台詞! 素直なマヤとかあり得ない!」
マヤ「だったらさ、ナツメ」
ナツメ「何?」
マヤ「素直じゃない私のこと、好きになってくれる?」
ナツメ「……ナマイキ」
マヤ「やっぱり素直にならねー!」
ナツメ「冷静さを欠いて好きって言っちゃうマヤとは違うんですー」
マヤ「友達に好きって言うくらい冷静にできるし! ナツメはできないの?」
ナツメ「私だってできるから!」
マヤ「じゃあちょっとやってみ」
ナツメ「今やる訳ないじゃん!」
メグ「あ、いつものマヤちゃんとナツメちゃんだ〜」
エル「二人とも仲直りできたんだ!」
マヤ「なんかオーディエンスがいる!」
チノ「私たちのことは気にせず続けてください」
ナツメ「なんかチノが増えてる!」
マヤ「とりあえず、逃げるか」ダッ
ナツメ「逃げよう」ダッ
メグ「なんで逃げるの〜?」
エル「お手本見せて〜」
マヤ「見せるわけじゃん。なにせっ」
ここまで読んでくれてありがとう
今月号読んでたら急にマヤナツが書きたくなった
素直になりたくてが言えないのに好きだと告白してしまうところがよかったです。次のssも楽しみにしています。
拝読しました! 喧嘩するほど仲が良い...ってコト!?
本筋ではないですが、さらっとボケ役に回れるチノちゃんに成長を感じました。そうか、もう高校生か...。
それはさておき。本当はナツメちゃんと仲良くしたいマヤちゃんが兎に角かわいい。こっそり友達に相談してるところも、頑張った結果空回りしちゃうところも、なんだかんだでナツメちゃんと相性良さそうなところも、全部かわいいです。
喧嘩の内訳がこんな感じなら、ある意味特別な関係ってことで万事解決! と言っても過言では... あるか...
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