エトワリアを舞台にした、クレアちゃん(きらファン)を主役にしたSSです。
拙い文章で、会話形式だけでなく、心象や独白部分も含みます。
また、少し長めのSSになってしまいました。ゆっくり読んでいただけると幸いです。
*キャラクターについての独自解釈を含みます。
私が家にいてゆったりとパンジーやラベンダーの花のお世話をしていると、
ライネ『クレアちゃーんちょっと来てくれる〜?緊急会合だって!』
ライネさんから連絡が来ました。緊急会合は半年に一回くらい行われる台風とか、魔物への対策会議といったことが多いのですが…今回は何の用事なのでしょうか?
私はそういった会議に参加してもあんまり意見を言えず、普段はただ話している人を見ているしか出来ないので、今回こそは私も役に立つ意見ができるといいなぁと思いながら里の集会場に向かいます。里の集会場には先客として幼なじみのポルカちゃん、コルクちゃん、そしてライネさんと里の男の人たちが集まっていてなんだか賑やかな様子。
ポルカ『おーい!こっちこっち!神殿企画のお祭りだって!いまからそれについての緊急会議だ!』
会議の内容はこうでした。
曰く、今日空から急にビラが降ってきた。
曰く、そのビラには神殿主催で大会を開催すると書かれていたこと。
曰く、大会の内容は魔法なしで空を飛ぶ機械をつくってそれを飛ばし、飛距離を競うこと。
その空から降ってきたビラがこれだそうです。
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さあ、君も大空に名前を残さないか?
第1回鳥人間コンテスト!いまここに開催決定!
ルールは単純!魔法を使わず人の技術力のみを使って空を飛ぶ!
飛行機、UFO、なんでも来たれ!
優勝者には賞品を贈呈!
ロマンあふれるチャレンジャーたちよ!君の目指すロマンは大空にこそある!
神殿企画部・筆頭神官 アルシーブ
開催場所:〇〇湖
日時:ぶどう月4日午前10時より
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ポルカ『この企画、ちょー面白そうじゃないか!?魔法無しで空を飛ぶ鳥人間コンテスト!私たちで飛行機作って飛ばして里の職人技術をしらしめる良い機会じゃないか!ついでに優勝もして栄光も手に入れてきてやろうぜ!』
コルク『・・・ん、ちょっとまった。このビラなんだか怪しい、神殿の配るビラにしてはなんだか書き方や趣向が違うし、神殿企画部なんてもの、神殿に仕事で何度も行く私でも聞いたことない。』
なんだか、詐欺とかに使われる広告みたいです。チラシの色味自体なんだか素人仕事が垣間見えます。ちなみに普段はもう少し格調高いというか、荘厳!…っていう感じです。
ポルカ『ん〜?まあ確かに聞いたことがない組織だな。でも最近出来た奴じゃないか?砕けてるのもその神殿企画部が最初に作ったやつだからかもしれないし、日程もこれくらいなら…作る余裕あるだろ?』
コルク『・・・考えすぎか、まぁそうなら私もこの企画は賛成、イベントがあるということは人が沢山来るし、そこにいい商談もあるかもしれない。』
なんだかみんな賛成の雰囲気のようで、里で有志を募りチームを作って参加することにきまりました。トントン拍子に担当と計画、飛行機作製予定が決まっていきます。作るのは人力のエンジンを載せた個人用飛行機(ふくようき?っていうらしいです)にきまり、ポルカちゃんが現場の総指揮、およびプロペラ、必要な金物部分を担当、コルクちゃんは飛行機のパーツを手に入れる調達担当、カンナさんが他数人を率いて具体的な飛行機の設計および骨組みなどの木造部分、布(シート)張り、操縦席を担当することになりました。
ライネ『じゃあ、飛行機を作る人はこれで決まりね?あと特に決めないといけないのは飛行機に乗るパイロットだけかしら?いなければ私が乗っちゃっても良いわよ?』
ポルカ『あーそうだな、飛行機に乗る人はできるだけ軽くてちっさい人がいいんだが・・・』
クレア『あ、あの・・・!私も参加してみたいな〜なんて・・・』
ポルカ『お!じゃあ、クレアはパイロットお願いできるか?』
クレア『へ?は、はい!よろしくお願いします!』
ポルカ『ライネさんだと・・・その・・・体重が・・・最近あれだもんな』
ライネ『うーん?体重が・・・なんだって?』
ポルカ『あーなんでもない、私はなにもいっていない〜あっそうだエンジンについての文献があったはず・・・それ読みにいかなきゃ、じゃーなー!』
ライネ『まったくもう・・・調子いいんだから』
コルク『じゃあとりあえず決めるべきことは決定した、かな?私は飛行機に必要なリストの洗いだしにいってくる』
カンナ『そうだな、私は飛行機の具体的な設計案を早めに作ってやらないと、家に多分昔のが・・・資料として残ってたはずだ、たぶん』
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ん〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!
その晩私は自室のベッドにダイブして枕を抱えながらゴロゴロと落ち着きなく転がっていました。
空を自分の身一つで自由自在に飛ぶ!
そんなことは夢見がちな子供ならどんな世界の子供達でも一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか?かくいう私もその1人でした。子供の頃の夢の一つとして空を自由に飛んでこの世界の綺麗なお花畑とかを自在に見て回りたいと感じていました。そのチャンスがここにきて急に舞い込んでくるとは思いませんでした。ちなみにこの世界では空を飛ぶ魔法があるにはありますが習得が難しく神殿の中の人くらいしかその術を知らないみたいです。クエストゲートといった便利な転移魔法もあるため知名度も、必要性もあんまりないこともこの世界で空を飛んで移動することが少ない原因かもですね。
「私も参加してみたい」という発言は私なりに勇気を振り絞ったものの、おずおずとしものでした。なのでパイロットという大役にいきなり任命され、最初は驚きました。
とにかく、せっかく私に転がり込んできたチャンスです!今からでも期待にむねが膨らみますね!鳥さんの視点になってみてあそこのお花いっぱいの丘に行ってみたらとっても楽しそうだなぁ。今日からしばらく興奮で寝られるか心配です・・・しばらくの間は空想でいっぱいかもです・・・。
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それからしばらくの間、里は急激に活気づき、若者から、おじいちゃんおばあちゃんまで、飛行機作りに携わり始めました。ある人はスケジュール調整、またある人は文献検索、またある人は野次馬という感じでしたが…。
その間、私にもお仕事が割り振られました。私は飛行訓練と言うことで基礎体力をつけるためのライネさん式トレーニング、これから乗る飛行機の簡単な飛行機の飛び方(航空力学?というひたすら数式とグラフ、難しい図解が書かれた本でした)と操縦方法といった基礎知識の勉強、飛行機にもしもが起きたときの脱出方法の確認などをしていました。そして自主勉強として、航空の本を一日一冊読むことが課されました。具体的な日々はこんな感じ。
ポルカ『じゃぁ今日はこの本をやってもらうからな!』
図解で分かる航空力学(演習問題付き)全261ページ、著ナンカ・ムズカシーノ、言の葉出版
ひー!
カンナ『飛行機の各部位の説明書だ、長くなってしまったがよろしく頼むよ』
書類ドザー!
ぎゃー!
ライネ『運転には基礎体力が必要よ!まずはグラウンド50周から!』
ひぇーーー!!
コルク『外の町から取り寄せてきた舶来本、ちょっと専門的だけど読んでおいて損はない』
コンピュータシュミレーションを用いた数値流体力学とその分析について
全453ページ、著サラニ・メッチャ・ムズカシーノ2世、萬雅出版
うーん…!?
こんなのが毎日続きました。軽々しくパイロットになったことを若干後悔しながら私はこれらをなんとかこなしていきます。花屋をしながら鍵の手入れをしていた頃とは比べものにならない疲労が毎日くるため、ベッドに入ったらすぐに眠ってしまいました。
そういえばライネさん式トレーニングは噂通りとってもきつかったです。横で私の十倍の量を2分の1の時間で平気そうな顔でこなすきららさんにはがくぜんとしました・・・これは伝説と呼ばれますね・・・。
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ぎっこばったぎっこばったぎっこばったぎっこばった…
日にちは飛ぶように過ぎていき、とうとう鳥コンの三日前になりました。
鳥コンの会場に行くために私たちは荷馬車にのりながら旅をしているのです。
がったがったがったがったがったがったっがった…
道はある程度舗装されていますがそれでも小さな石や穴ぼこによって振動が伝わってきます。さらにひどいのが車酔いです。私は少ししたらちょっと慣れましたが最初のほうは赤子の様に丸まって横になりながら過ごしていました。
会場に到着して、まずは一息、新鮮な空気を取り込みます。生き返った…
現在会場は設営の真っただ中、あちこちでテントを建てるための鉄柱や発射台を急ピッチで建てられている様が見受けられたます。こういうお祭りの準備段階って非日常観って感じですこしワクワクしますよね。ほら、台風の前の日にいつもより湿っぽい空気を肌身で感じた子供たちがそわそわしだすあれみたいな。
さて、しばらくぶりの外なので許可をとってからしばらく散策をしようかと思っていると大会実行委員長の腕章をつけて現在進行形でバリバリ働いている感が出ているアルシーブさんと目があいました。私は軽く会釈をして通り過ぎようとしたのですがアルシーブさんはこちらにすっと近づいてきます。
アルシーブ『クレアか、里でチームを結成して参加してくれたと聞いている。参加してくれてありがとう。私たちでいい大会になるようにしよう。』
クレア『アルシーブさんも大変ですね、いつも運営役で…』
アルシーブ『いや、別に構わない、ソラ様の無茶なんていまさらなのだから。ただ今回はいささか…いや、やめよう。そちらは今到着したばかりだろう。荷ほどきなどは手伝わなくて大丈夫なのか?』
クレア『ああ、はい、大丈夫です、こっちは荷ほどきも設営も含めていったん休憩してからなので。』
アルシーブ『なら少し今から話をしても大丈夫か?私も今から少しだけ休憩するところでね。』
クレア『ええ構いませんけど…』(普段話さない人からのお誘いなのでちょっと警戒)
アルシーブ『ありがとう。立ち話もなんだからとりあえずあそこの大会テントに行こうか、お茶と少しの干菓子くらいしかないが』
クレア『ありがとうございます』
アルシーブさんと大会テントへ向かう道中は私の視点からはアルシーブさんの顔が見えないことも相まってなにを話せばいいのかわからなくなっていましたが、アルシーブさんは度々私の方を振り返り、様子を気遣ってくれているようでした。大会テントについた後、アルシーブさんは私のために席を用意してくれて一緒に最近の里の様子やランプちゃんたちとの日常についてしばらく話していました。(小さい頃のランプちゃんが歴史の授業の時に白目をむいて寝ていた時、それを注意したアルシーブ様に「睡眠学習です!」と自信満々に述べて怒られた話とかもお聞きしました。)やっぱり怖い人ではないと再認識し、しばらく話した後、アルシーブ様は少し考えを巡らせる顔になって、眉をよせた後、こう話を切り出しました。
アルシーブ『・・・すまない、ここで出会った縁でちょっとだけ頼まれてくれないか?本当はこんなこと頼むつもりはなかったんだが・・・』
アルシーブさんは少し考えた後、ばつのわるそうな顔をして私に書類を渡しました。その中には参加者とチームのリストがあり、その参加者たちに大会実施のための資料と安全確保のための防水加工済みトランシーバーを渡してほしいとのこと・・・こういうのって参加者にさせたら本当はダメなんですけど、まぁそれどころじゃないくらい今回の実行委員会は忙しいらしいという・・・。よく見たら、アルシーブさん、目にクマができています。さらになんだかふらふらしているような?
フェンネルさんも同行しているそうなのですが他の現場に参加していて忙殺されているとのこと。
そういうわけで私は資料とトランシーバーを配りに各チームが集まっている準備テントに向かいます。突然のお使いクエスト発生ですがついでに周辺の散策もしたかったのでこれもまたよしということにしておきましょう。
はじめに行ったのはエントリーナンバー01『ヒダマリフライトガールズ』
クレア『ここは気球なんですね』
ゆの『そうなんです、私たちが作れる物で空を飛ぶものを考えてみたら気球が良いんじゃないかって決まったんです。』
莉乃『なずなー、そこの緑のペンキ、はけごと取ってきて〜!』
なずな『はーい!』
作業用テントの中では、ひだまり荘のみなさんがテキパキと作業していて、そこらじゅうにおかれた絵の具特有のにおいが充満しています。気球の布も六人全員が乗るだけあって作業用テント(各チームの飛行機がまとめて入る特大防水タープテント)の区画一杯に使うとても大きなサイズでした。
ゆの『せっかくなら絵を気球に描こうって話になって』
クレア『どんな絵になるんですか?』
ゆの『それは私たちにも分からないんだよね、みんなめいめいに書いて行っているから飛ばしたときにしか全体は分からないようになってるの、私は太陽をモチーフに書いてるんだけどね、、クレアちゃんも書いてみない?』
クレア『は、はい!』
私は悪戦苦闘しながら、ゆのさんの書いた太陽の下に、ペンキで花束を書き上げました。
ゆの『おー、上手!』
クレア『えへへ、ありがとうございます』
乃莉『もう少し大きく書いてもよかったのにーなずなもそうだけど…下から見たとき何かいてあるか分からないよ〜』
なずな『あう、私の絵が公開されると考えると恥ずかしくて…』
宮子『宮子、いっきまーす』
宮子さんは・・・からだの背面を真っ黒にして布にダイブしました。
クレア『うわっ!?』
ヒロ『私も完成っと』
宮子『ヒロさんと沙英さんは2人で一つの作品なんだよねー』(真っ黒)
ヒロ『そうよー、宮ちゃんは身体洗っておいで。』
宮子『はーい』(ぽたぽた)
沙英『そうだ、ねえクレア?この作品に題名を付けるとしたらどんな名前にする?』
クレア『うーんと、抽象画ですよね?・・・ここのあたりは船に見えるし、ここは白黒の足跡に見えます・・・可能性とか?』
ヒロ『・・・じゃあそれにしよっか、いいわよね、沙英?』
沙英『うん、じゃあそれで』
クレア『え、それでいいんですか??』
沙英『最初っから最初に見た人の題名にしようかって決めてたんだよ、もちろん2人である程度テーマは決めてたんだけど』
クレア『そうなんですね』
宮子『あ、じゃあ私達も合作にしようよ、ゆのっち』
ゆの『あ、お帰り、え、でもお互いすでに完成させちゃったけど・・・』
宮子『へーキヘーキ』ペタペタ
宮子さんは自身がつくった豪快な黒い人拓にグラデーションをつけ、ゆのさんの書いた太陽にうつった影のように書いていきます
ゆの『おー、みやちゃんそれ影になっているって事?』
宮子『そーだよー、そしてこの作品の名前は・・・そうだみりん干し!』ぐぅぅ・・・
ゆの『ええ!?宮ちゃんおなかすいてる!?』
宮子『なんだか食べたくなりましてなー。それじゃ、みりん干し号で決定!!』
莉乃『あ、気球の名前までそれなんですか!?もっとかっこいい名前がいいですー!』
エントリーナンバー03『巡ヶ丘学院高校学園生活部』
クレア『ここはなにを?』
ここは先ほどの気球の布とは素材も違う、小さめの布と何かの棒を持っていました。なんだか他のチームと比べてもコンパクトです。資料を見ると小型の個人携行飛行機、パイロットは丈槍ゆきさん。
ゆうり『ハンググライダーね、目の細かい布を背中に背負って空気揚力を使って滑空するの』
くるみ『おーい、確かこの棒をここに通せばもう一回展開出来るんだよな?』
みき『あーいや、一回羽を折りたたんでですね、こう・・・カチッと』
ゆき『みんなー!湖回ってきたらここ遊泳場とかつりぼりがあったよ!』
くるみ『ゆーきー・・・ちょこまか動いてないでこっち手伝え、この言い出しっぺ!』ちょっぷ!
ゆき『うふゃぁ!うぅ、ごみん』
ゆうり『今回の大会の出場を提案したのはゆきちゃんなの、ずっと学園にいても息が詰まっちゃうし、最低限の工作技術は元の世界でも使えるかもしれないから』
そういうとゆうりさんはうんっと背伸びをしました。
みき『まぁ私たちが元の世界に戻っても記憶は無いそうですけど、もしかしたら身体が覚えているかもしれませんからね』
ゆき『へっへーんくるみちゃん覚悟―!』べしっ
くるみ『あ、やったな!お返し!』
組み立てないで棒で遊んでますね、二人とも・・・あの、ゆうりさん?
ゆうり『二人とも、ちゃんと、やってね??自由研究のグライダーのレポート、2人だけでやって貰おうかしらね?』ゴゴゴゴゴゴゴゴ
くるみ『・・・ごめんなさい。』
ゆき『ごみんなさい』
ゆうり『はいよろしい』にこっ
これが学園生活部の力関係・・・
エントリーナンバー08『ミスプラムの魔法研究所』
小梅『あんしゃんて!ミスプラムのあんすてぃーてゅへようこそ!』
クレア『ここは・・・箒?』
小梅『そう!エトワリアにある絵本をよんでみたけどここの魔女も箒で空を飛ぶらしいじゃない?ということで私もそれに倣うことにしたわ。そしてゆくゆくは私がそのエトワリアの魔女に成り代わるの!』
クレア『あの、今回は魔法や占力は禁止なんですけど・・・』
小梅『ちゃんと対策済みだからだいじょーぶよ、いでよ千矢!』
千矢『はーい!』
小梅『千矢にカラスを呼んで貰って縄でつり上げて貰います』
クレア『それは・・・確かに違反ではないですね』(それ・・・ルールの穴では?アルシーブさんに報告した方がいいかも)
紺『最初はね、飛行機を私たちで作ろうとしたんだけど・・・何が書いてあるのかさっぱり分からなかったの。よく考えたら私たちの算数の勉強なんて基礎の基礎だけで物理とかさっぱり・・・。占い以外だと、私たちからっきし過ぎる・・・』だうーん
ノノ『紺ちゃんも最初の方の単元の時点で分からなくなったもんね・・・それを見たお姉ちゃんも張り切って解読しようと2日徹夜して結局分からなくて寝込んじゃったし』
臣『そもそも15歳の私達がゼロから飛行機を作ろうという時点で無謀よね』
小梅『というわけで、私達のチームは千矢にカラスを呼んで貰って、つり上げてもらうことにしました。使い魔の力を借りるみたいでなんだかかっこいいじゃない?というわけで一回外に出て練習するわよ!』
作業用テント外
小梅『お願いね!千矢!』
千矢『うん!みんな!おいでー!』
バサバサ!バサバサ!
小梅『ぎゃー!!』
千矢『みんな縄をもってー!』
クレア『あれ襲われてません!?』
千矢『大丈夫大丈夫!持ち上げてー!』
小梅さんを囲む黒い球体(カラスの群れ)が浮き始めました!?
浮き始めると同時に小梅さんの姿が見えるようになりましたが、でもほうきにまたがる小梅さんの体勢が上下が逆になってます!
臣『あ、梅柄』
小梅『ちょっと見てないで助けなさいよーー!!』
(小梅さんをみんなで助けた後、一旦チームのみんなで審議して出場するか決めることになりました)
エントリーナンバー09『チームキルミー』
えっとここはやすなさんたちの・・・あれ?あそこでやすなさんとソーニャさんが言い争ってますね。それにあそこにあるのはでっかい大砲?
やすな『ソーニャちゃん・・・こ、これまさかこれ私がはいって打ち出されるってやつじゃないよね?』
ソーニャ『・・・お前が使えそうなのはコレしか見つからなかった・・・すまん』
やすな『さすがの私でもこれは死んじゃうって!というかソーニャちゃん飛行機くらいすぐ用意出来るっていってたじゃん!』
ソーニャ『あ・・・あれはお前におだてられて・・・というかホントにエントリーするとは思わなかったんだよ』
やすな『それにしても大砲って・・・野蛮すぎでしょ!他のチョイスはなかったの?』
ソーニャ『人を運べるとしたら後は、組織から借りることができるヘリコプターならあるが・・・壊すと弁償だからな、お前使えないだろ?』
やすな『大丈夫!へーキヘーキ!ゲームでやったことあるもん』
ソーニャ『ほう、じゃあこのレプリカの操縦席でやってみろ』
クレア(なんでそんなものが・・・)
やすな『まっかせて!』
ソーニャ『一応いっとくけどその操縦席も借り物だから絶対に壊すなy』
バキっ!!
ソーニャ『おい』
やすな『・・・やっぱこんなおもちゃじゃ駄目だって。本物じゃないと』
ソーニャ『じゃあ後の手段はもう格闘術でお前を天に昇らせるしかないな・・・』(チョークスリーパー)
やすな『ちょ、ギブギブ!呼吸器は反則!反則だから!!ごめんなさい!!!』
ここはお取り込み中だから後に回そう・・・そうして私はそーっと別の場所へ向かおうとすると
あぎり『なにかご用ですかー?』
クレア『ひゅえっ!?』
後ろから気配をけして近づかないでください!
あぎり『ああ、開催委員会ですねー?要項とトランシーバーはたしかにいただいておきますー』
クレア『びっくりした・・・えっと、あれ大丈夫なんですか?大砲で飛ばすのは・・・いくらやすなさんでもホントに死んじゃうかもしれませんよ?』
あぎり『ふーむ、多分死んだりはしないでしょうが…面白そうなので忍術を使ってなんとかしちゃいましょー』
クレア『へ?』
あぎり『ソーニャ、ちょっと技を外してもらえますか?』
そういうとあぎりさんはソーニャさんとやすなさんに近づいていきます。
ソーニャ『あ?あぎりか、このバカにまずは制裁をだな・・・』
あぎり『私の忍術で解決してみましょう』
ソーニャ『ん、なんか策でもあるのか?』(技解除)
やすな『げほっごほっあぎりさんありがとう・・・』
あぎり『要は大砲で撃ち出されても死なないようにやすなさんのからだをかためちゃえば良いんですよー?じゃあ、忍法硬化の術ー・・・ニンっ』手刀とすっ
やすな『あがっ!?なにするのあぎりさん!あれ?口以外身体が動かないんだけど!これが堅くなったってことなの!?』
あぎり『忍びの秘術です〜筋肉を刺激で堅くしたんですよ、痛みも感じなくなって、物理防御も大アップですー』
やすな『えっ?じゃあ動かせないし物理的にも堅くなったのかな?これならいけるよ!弾の代わりにどかーんといってみよう!』
あぎり『試作中の忍術ですがよろこんでもらえてなによりですー』
クレア、ソーニャ(あれってただの金縛りなんじゃ・・・)
エントリーナンバー27『トリ宇宙人』
ここも記録によると個人用装着型飛行装置と書かれていますが、私の前には鶏の着ぐるみをきたはるみさんしか見えません。もうこの流れを見せられた時点で嫌な予感はしますよね…。
クレア『あのーはるみさん・・・この大会、出場されるんですよね』
はるみ『そう、だからこのコスチュームで来た』
クレア『なにをするかって・・・知ってます?』
はるみ『人間が鳥にいかに近づけるかを競うお祭りでしょ?』
クレア『いや、合ってはいます、合ってはいますよ?』
はるみ『そのためにちゃんと「練習」してきた。聞いてみて』
はるみ『んっ・・・うん、コッコーッポッポー、コッコーッポッポー、コッコーッポッポー』
はるみ『田舎の朝によく聞く、キジみたいな鳩みたいな奴のまね』
クレア『・・・』(うつむきつつ額を片手で押さえる)
はるみ『クジャクみたいに目立つように尻尾がLEDみたいに光る感じにもしてみた』(ペカッ、ペカッ)
クレア『あの、この大会は飛行部門だけなんですけど・・・』
はるみ『なんだ、それも大丈夫』
そういうと、はるみさんは鳥の着ぐるみを着たまま無音で垂直に上昇していきました。
次第に上昇していくはるみさんを見ながら私は絶句するほかありませんでした。
その後も私はいくつかのチームをまわり、さっきのを含むいくつかの問題をアルシーブさんに話しました。(具体的にはさっきの以外にも、魔法少女の桃色魔法筋肉ぢからで、魔族像(魂入り)の砲丸投げショーをする予定のチームがいること、出場者に自力で飛べる2匹のコウモリがいること…ect,ect…アルシーブさん頭抱えてましたよ。)
これ以上は私達の仕事だからとアルシーブさんからの帰宅許可とお手伝いのお礼としていただいた神殿発行の売店値引きチケットをもらい、自分たちのテントに戻ることにします。最初の休憩の予定よりもちょっと遅くなっちゃったのですぐに向かってお詫びしないといけませんね。
急ぐ道中にて、きららさんとばったりエンカウントしました。
クレア『きららさん!』
きらら『クレア!』
クレア『きららさんもいらっしゃったんですね』
マッチ『ぼくもいるんだけどね』(きららの頭の上に乗ってる)
クレア『きららさんも大会参加者に?』
きらら『いや、大会の警備要員として急にアルシーブさんにお願いされちゃって』
クレア『今回アルシーブさん大変そうだよね・・・さっきお会いしたんだけどいきなり大会のお手伝いしてきちゃった・・・』
マッチ『今回の大会はなんだかアルシーブらしくないんだよね、普段は先手先手で仕事を終わらせていく人なんだけど・・・なんだか、変だね』
きらら『まあ、最近リアリストの件が一端終わった後すぐにサマーフェスとか学園祭もあったからね、こんなに沢山季節っぽいイベント事が続いてるのはちょっと珍しい感じするよね』
マッチ『あ、変で思い出したけど最近ランプ見てないかい?最近何にもいわずにこっそり出て行くことが増えたんだけど、何か企んでる気がするんだよね』
クレア『いや、最近はみてないです・・・』
きらら『私最近あったけどそんな変な感じはなかったんだけど・・・私には会えてマッチは避けてる・・・あ、マッチ最近ランプとけんかしたとか?』
マッチ『いや、最近はそんなに・・・あ、もしかして一月前冷蔵庫のプリンタルトを勝手に食べたからから怒ってるのかな、それにしては怒るの長い間気がするけど』
きらら『マッチってランプの保護者役って自分でいってるけど結構な頻度でそういうことしてるよね・・・』
マッチ『・・・まあたまにはそんなこともあるんだよ』(目をそらす)
マッチ『とりあえず次ランプをみたら「変なこと企んでるならすぐ戻ってこい」っていっておいて』
クレア『了解です』
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???『だからってどうすんだよ!せっかく作ってきたのにこれで終わりなんて許されるわけねぇだろ!』
私たちのチームの飛行機調整、組み立て区画に到着すると聞きなじんだ幼なじみの、普段は聞けない緊迫感がある声が聞こえてきました。
はじかれたように私は声の聞こえた部屋に突入しました。
コルク『でも滑走路のサイズが足りないのは致命的』
クレア『えっと・・・どうしたの?』
コルク『お帰り、クレア。緊急事態。ここの滑走路のサイズがもう少し長いと思ってたんだけど、この会場の計画書を見直してみたら思ったよりも短かった、これじゃあ発射に必要な最初の速度までいけない。』
私達のチームは最初の初速を人力で飛行機ごと走って押し出す予定でした。しかし、計画書に記載された滑走路の長さが当初の想定よりも短くなっており、人力で押し出だそうにも十分な速さを得られないことが分かったそうです。
ポルカ『分かってるよ!でも・・・走らせたくねぇのか!?』
コルク『っつ、走らせたいに決まってる!でもこれは長さが足りなさすぎる・・・これだけの長さの滑走路で飛ばすには・・・ほぼ一瞬で速度を出さなくちゃならない』
会議はかなり煮詰まっていたようで重苦しい空気がテント内に流れています。私も何か良い案が出てきた…ら・・・?
『・・・?』
そこで私に、ひとつの考えが思いつきます。私はその考えを、ポンと重苦しい空気を押し出すようにちいさな声でつぶやきます。ちなみに私はこのとっさの思い付きによって地獄を見るのですがこのお話はまた後で。
今なら言えますが、これは完全に部外者の素人考えでした。
クレア『ドカンと大砲みたいに後ろから火薬みたいなので飛行機を発射する・・・とか?』
『・・・・・・………』
突然の静けさが場を支配しました。
クレア『・・・え?なんですか?』
ポルカ『それだ・・・』
クレア『へ?』
ポルカ『それだーーーーー!!』
ポルカ『よくやったクレア、そうだ、最悪火力がでる大砲みたいな機構さえあればいいんだよ!』
そういってポルカは私の頭を、がしがしと撫で回します。えへへ、嬉しいけど力の強いポルカちゃんのなでなでは脳が揺れる・・・。ちょっと加減して・・・。
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ポルカ『これから作戦を発表する!』
そうしてポルカちゃんはどこからとってきたのかホワイトボードを使って説明を始めます。
かいつまんでポルカちゃんの案を説明するとこう。飛行機が飛ぶために必要な初速が足りない現状を解決するために怪力無双、伝説の召喚士である、きららさんの全力の打撃を飛行機の後方にたたき込む。その力で急激な加速を得て、必要な初速を確保しながらそのままの勢いで飛んでいこうというあまりに力任せな作戦。
ざわざわ・・・ざわざわ・・・
テントに集まっていた人々が、怪訝な顔で議論し合っています。
私としても素人目でも無茶苦茶な作戦だし、さすが課題点が多すぎるのではないかと思います。私がいっちゃったことですけど。
議論をしていた人々の中から権威がありそうな初老の男性が進み出てポルカちゃんに質問し始めます。
男性『君の案は面白いと思うが・・・その・・・本当に出来るものか?』
ポルカ『出来る!』
里の男性『そもそもよお、飛行機ってぶったたいていいもんなのか?プロペラも後ろについてるんだぜ?』
ポルカ『いや、普通は駄目だが、きららが叩く部分に多重の防御魔法をかけて壊れないように力を飛行機に伝える。耐久性もまあ、翼以外なら余裕はあるはず』
男性『魔法は禁止ではないのかね?』
ポルカ『確かに飛行するための魔法や全体の機体強度をいじる魔法は禁止だが、安全対策用の局所的な魔法といいはればOKなはずだ!!だよなコルク』
コルク『・・・確かに計画書には乗組員および周辺への安全管理のための局所的な魔法は許可するとは書いてある、あるけど・・・結構無理があるな。言い訳が通るかどうか・・・』
男性『そもそもきららさんにチーム参加資格は与えられるのか?』
ポルカ『きららは一応チームメンバーとして今からでも登録できるはず。まだ必要書類とか一部書いてないからな!』(白紙の書類ぺらっ)
コルク『それはすぐに書いて』
こうなった時のポルカちゃんは向こう見ずに走り出すことは里のみんなも知っているので問題点を重ねて本当に出来るのかをみんなで一緒に考えていきます。エンジンがポルカちゃんで、みんなで制御役。その後も質問は続き、
女性『いくらきららさんでも飛行機を飛ばせるくらいの威力はでるのかしら??』
ポルカ『いや、あいつなら出来るだろうな、なんたっていつぞやのバレンタインの時アルシーブと、ジンジャーをチョコレートを使って打撃で2人まとめてぶっ飛ばしたこともあるからな。いや私も正直何を言ってるかよく分からなくなってくるんだが・・・』
『・・・・・・』
ここでいったん質問は出なくなったようです。なんとか飛行機を飛ばすことが出来るようになりました。なんだか疑念や不安が半分、希望や期待半分といったそわそわした空気が場を満たします。
ポルカ(手を叩く)『よし!とりあえず質問は出尽くしたみたいだな、ま、どっちにてもこの方法しかねえんだ!とりあえずぶっつけ本番でやってみようぜ!』
なんだか、このままノリで飛ばす感じですね。ノリでみんなをなし崩し的にまとめるのはポルカちゃんのお得意パターンです。このまま出場の流れになり、みんなははじかれたように飛行機を飛ばすために機体の調整を始めます。無事に一件落着…なのかな?
私は、しばらく皆さんの作業を見守っていたのですが、私にやれることがないことがわかってお邪魔にならないようにこっそりと外に抜け出しました。その時目があったライネさんから「早く帰ってくるのよ」とのジェスチュアをにっこりとした笑顔でされました。 はーい了解です。
皆さんが作業しているテントを抜けると外はお祭り状態、スピーカーが軽快な音楽を鳴らし、出店や特設ステージまで出来ています。
私はその中に見知った顔がいるのを見つけ、そのお店に向かいます。
苺香『いらっしゃいませー、ただいまドSマフィン、ツンデレソーダ、お姉さん特製カフェラテ、発売中ですよー!』
クレア『お疲れ様ですー』
苺香『あ、クレアさんこんにちは!スティーレも露店スタイルですよ!見ていきませんか?』
クレア『いいですねー』
私が苺香さんの招きに応じて、出店のテントの入り口を通ると真冬さんがすぐにお出迎えしてくれました。
真冬『いらっしゃーい、あ、クレアおねーちゃんだ!こっちの席にご案内しまーす!』
お仕事モードの時の真冬さんはかわいいですねぇ。もちろん普段の真冬さんのクールさも見習いたい所ですが、私にもこういう感じの妹がほしかったです。いつもは私が皆さんの妹みたいな扱いになりがち(ポルカちゃんもコルクちゃんも私を子供扱いしすぎです!)なので妹と一緒にお花摘みとか「おねぇちゃんに任せなさーい!」とか、いつかやってみたいですね、えへへ。
真冬『メニューはこちらになってまーす!今の真冬のおすすめはマフィンとオムライス、イチゴ入りソーダだよー!』
私は期間限定と書かれたメニューを一瞥して、気になったものをあげていきます。大会特別飲食物(お持ち帰り可)・・・お姉さん特製カフェラテ、ツンデレソーダ、アイドルポップコーン、ハチミツワッフル、ドSマフィン・・・え、ドSマフィン?
クレア『あ、あの、このドSマフィンっていうのは・・・』
真冬『これはトマト味のマフィンだよー!真冬も食べてみたけどおいしさ満点の甘酸っぱいマフィンだったよー!』
真冬(大人モード)『・・・まぁここにはお店をしらない新規のお客様もたくさんいらっしゃるわけだからさすがに本家のドSパフェとかドSかき氷みたいなことはやらないわよ・・・あれも事故の産物だし』コソッ
クレア『なるほど・・・じゃあ、持ち帰りでドSマフィンを15個、あとここで飲むためのイチゴ入りソーダ水でお願いします。』
真冬『はーい!ちょっと待っててねー!』
私が商品を待っている間にもお客さんは増えていき席がどんどん埋まっていきます。私が入ってきた時間はラッキーなことにまだ少なかったようです。
私はぽんやりと正面にある入り口の方をみていると、ランプちゃんと、サングラスとマスクをかけたいかにも怪しい風体の人物が店の中に入ってきました。ランプちゃんはこちらへ気づくとこちらへ手を振ってくれたのでこちらもふりかえします。美雨さんがランプちゃんを対応して、こちらへ連れてきました。
美雨『すいません、ただいま満席となっておりまして、相席をお願いしてもよろしいでしょうか?』
クレア『はい、大丈夫ですよ』
ランプ『よろしくお願いしますー』
ランプちゃんは向かいの席にすわり、サングラスの人はランプちゃんの隣に座りました。
ランプ『クレアさんもこの大会に来てるんですね?』
クレア『はい、実は飛行機に乗る役目なんです!』
ランプ『え!?クレアさんがパイロット役ってことですか?』
クレア『そうなんです』
ランプ『それは・・・ちょっと以外ですね、クレアさんってこういうのに主体的にやるタイプじゃないと思ってたので』
クレア『その通りなんですけど、今回はついやってみたくなって・・・とりあえず、そこにいらっしゃるのは・・・ソラ様、ですよね?』
ソラ『あら?ばれちゃった、やっぱりサングラスとマスクだけじゃオーラとかやっぱり隠せないわね?やっぱり女神の威厳とかカリスマ性が漏れ出ちゃってるのかしら』(変装外し)
クレア『オーラ関係なく多分バレバレだと・・・ソラさまもいらっしゃったんですね、最近ランプちゃん達がこなかったから久しぶりにあった気がしますね、神殿もこのイベントで忙しかったんですか?』
ソラ『いやー、私もランプもこの鳥コンの準備やら計画で忙しかったのよ、(しみじみ)最近は私たちの仕事のほとんどはこのイベント計画がらみだし?裏から手を引くのも大変だったわ・・・黒幕ポジションも案外大変なものなのね』
クレア『え?ソラ様達も主催なんですか?アルシーブ様かと思ってたんですが』
私は大会委員長の腕章を付けたアルシーブさんを思い出します。
ランプ『ああー!いや、違います、私たちは今回た・ま・た・ま・お呼ばれされて、この大会の実況兼来賓としてきてるんです!ですよねソラ様!私はちゃんと授業受けてましたし、さぼったりしてないですから!』
ソラ『え、え、あ、そうね、そうだったわ!私も仕事をさぼってクリエメイトと戯れたりしてないわよ!』
なんだか、怪しい言動をしていませんかね?
私がいぶかしんで
クレア『あの、このイベントでなにか企んでたりします?』
と聞くと、
ソラ『・・・いやー、別に何も企んでないわよ?ホントに、ホントよ?』
そう言いながらもなんだか目が泳いでいます。怪しさポイントプラス100。
ランプ『そ、そういえば、この後神ノ木高校チアリーディング部と由比浜学園よさこい部とおちこぼれフルーツタルトさんがステージでコラボステージするんですよ!私たちも見に行くって話してたじゃないですか?ソラ様?』
ソラ『そうだったわ!私たちはこれで!ここの料金は神殿の名前をだしてくれたらツケにしてあげるから!』
ランプ『ここで私たちが話したことは何があっても秘密ですよ、クレアさん!』ドタバタ
露骨に話題をそらされた・・・まあ何か企んでいたとしても私たちにとってそんなに大事にはならないと思いますが・・・。私は、テイクアウトでドSマフィンを15個買った後(帰ってからみんなに分ける用です。好評でした。)、イチゴ入りのソーダ水をテント内で飲んでからお店を退出しました。
ツケの件は丁重にお断りしました。
その後戻った私は普段通りに用意された夕ご飯をしっかり食べ、早めに床に入るようにいわれ、すぐに就寝しました。みんな私が緊張しないように気を使ってくれているようでした。私も明日みんなの期待に応えられますように…。
〜当日〜
パチッ
チュンチュンというスズメの鳴き声が聞こえてきて、私は目を覚まします。
私が居住用テントからもぞもぞと這い出すと外では早起きしたみんながめいめいに朝ご飯を食べたり機体のメンテナンスに明け暮れたりしていました。しばらく身支度をしているとポルカちゃんの呼び出しがかかり、全員が集合しました。
ポルカ『よし、じゃあ改めて作戦を説明する!』
パチパチパチ
その説明は基本昨日と同じ、その後各班から機体の最終チェック結果を聞いてそれぞれに調整を指示していました。私はその時寝ぼけ眼でしたが・・・
私たちのチームの報告会が終わって、飛行機を指定の準備する場所に運び込んで待機し始めたときには、すでに飛行競技が始まっていて、ソラ様とランプちゃんのノリの良い司会の声や、それに加えてお祭り特有の盛り上がりの声が聞こえてくるようになっていました。あ、ちなみに私達のチームはエントリーナンバー10番で、順番はあと少しです。
ソラ『エントリーナンバー07番:チーム棒々鶏人間〜with唯ちゃんと縁、時々ゆずことどきどき頼子おかーさん〜このチームは・・・どうやって飛ぶのかしら、後ろに何か透明なモノが沢山ついているのはみえるけれど』
ランプ『私の事前リサーチによると、あれはペットボトルロケットといって容器に空気と少量の水、圧力を加えて、圧縮された空気が元に戻る力をつかって空を飛ぶらしいです!さらに伺うと元々は唯様の小学校の自由研究を元に作ったモノがあの機体!私もお邪魔させていただいたのですがその・・・空気抵抗を少しでも減らすために唯様のお胸にさらしをつけさせようと、ゆずこ様、縁様が提案する時にちょうどお邪魔させていただきまして・・・うへへ』
ソラ『まさか、あなたも・・・』
ランプ『はい、恥ずかしがる唯様のお胸!しかと堪能させていただきましたとも!』
ソラ『え!?ずるい、私もその現場に居合わせたかった!!』
神殿、というか女神様と女神候補生が本当にあれで大丈夫なんですかね・・・?
ソラ『エントリーナンバー9番『チームキルミー』ですが、こちらの機体は・・・おお、大砲!やすなさんの頑丈さを生かしたキャノンです!こ、これは・・・ルール的にギリギリですがセーフですね!ルールの穴をついたグレイトでデンジャラスなチームです!パイロット、というか弾役はやすなさん、射手はソーニャさんです!』
やすな『いっえーい!優勝は私たちのモノだよ!私天才!賢い!』
ソーニャ『もう私はしらんからな』
ランプ『ああっと、導火線に早くも火がつけられてしまいました!』
しゅぅぅぅぅぅぅ・・・
どかーん!!
ソラ『おおーっとやすな選手すごい勢いで吹っ飛んでいきました。やすな選手は無事なのか!?』
じゃぼーん!ゴボゴボ…
ランプ『あ、親指が水面からあげられましたね!!やすな選手の親指です!無事生存していたようです!さすがクリエメイト随一のタフネスのやすな様です!』
パチパチパチパチ
やすな『ソーニャちゃんーー!全然身体硬化のつぼ効いてなかったよ!とっても痛いんだけど!?』
ソーニャ『ノリノリで打ち上げられた奴がなにいってんだ!』
もう次ですか、やはり緊張はしますが・・・。やすなさんみたいになったり・・・なったりはしませんよね・・・?
そこで私はふと思い出します。
・・・あれ?そういえば私、やすなさんの機構とほとんど同じような発射装置で飛ぶんでしたよね??あのとっさのインスピレーションはやすなさんとソーニャさんの機体から思いついてしまったものでした。きららさんが大砲でやすなさん役が飛行機に乗った私とおきかえたら・・・私の命も危ないですね?大砲よりも下手をするとやばそうなんですが・・・命はともかく怪我は避けられないですよね?一般市民ですし、なんの勇者訓練も受けていないんですよ!?私の脳天気!あのとき質問をする機会ならいくらでもあったのに、なーに他人事みたいにのほほんと座ってるんですか!?
過去を振り返って自己嫌悪していると私はスタッフの人に見つかり連行されます。
クレア『ちょ、ちょっと待ってください!?』
『よーし、いくぞ!』
係員『次の挑戦者のかたーエントリーNO.10:「きらら大砲クラブ」の皆様〜』
ああああ、このままじゃ手遅れに!!
あれよあれよという間に操縦席に乗せられます。こうなったら申し訳ないですがパイロットの命に関わるので中止をお願いするしか・・・
クレア『あの・・・!ちょっといいですか?』
私はなけなしの勇気とありったけの危機感に推されて絞るような声を出します。
途端にこっちを向く皆さんの期待が込められた、顔、顔、顔、顔、顔・・・さらにナレーションがすでに私たちの機体を発表し、私達のチームを煽ります。
ランプ『では、ここでパイロットのクレアさんから意気込みをいただいているので紹介します!「この日のために皆さんが沢山の準備をしてくれました!それに答えられる様に一生懸命がんばります!」だそうです!』
ポルカ『どうかしたか?機体はバッチリだぞ!風も最良!運も味方してくれたな!』(ナイスな笑顔で親指を立てる)
断れ私!断れ私!断れ私!
クレア『・・・アー・・・イエ・・・ナンデモナイデス』
駄目でした。心で精一杯思ったことを身体が受け付けてくれませんでした。このみんなから託された期待をたった1人、私の気持ち一つで中止にしてへし折る判断を一瞬でくだすことは、あの場所の私にはどうしてもできませんでした。私やっぱりあのときちょっとおかしくなってしまったのかもしれませんね。当時の私の心境は感情の大波でしたが、結局は神頼みと現実逃避くらいしかまともに思考出来てなかったはずです。どんどん周囲のみんなによって装着されていくシートベルトとヘルメットに思いを寄せながら祈っていたのでしょう。
きらら『いきますよ〜!!』
ああもうだめです、いつの間にか現れたきららさんの目が見たことないくらいキラキラしています!
腰がひけている私は、必死に何事かを伝えて、今からでもなんとかしようと(なんとかとは?)回らない頭を使ってあたふたしますが、人間パニックになっているときはやはりなにも思いつかないものです。
きらら『じゃあ、クレア、準備はいいね!全力でいくからね!こぉぉぉぉぉぉぉぉ!!・・・』
きゅいいいいいいいいん!
どっから出てるんですか!!その音!?あとその波紋みたいな奴も!
クレア『あ、ちょっとまってこころの準備が・・・』
命の危機!!
きらら『せーの!!!』
ちょっと…!
ポルカ『口閉じとけ!舌かむぞ!!』
ひい!?慌てて口を閉じます。
ごっっっ!!!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
断絶。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
???『・・・あ、・・・じょ・・・ぶ!?こた・・・て!』
トランシーバー『クレア、クレア!応答せよ』
あ・・・うぅ・・・はっ、いけません!なんだか一瞬記憶ごとお空よりも高いところに飛ばされていた気がします。
えっと・・・あ、思い出しました!飛行機の後部をたたく鈍い音がしてきららさんに機体ごとふっとばされて、それからいろいろと記憶も飛んじゃって・・・?
ぶつけたおでこがずきずき痛みます…。い、生きてる…。ありがとうヘルメットとシートベルト・・・。
トランシーバー『そちらの状況を教えて!』
あ、うーー、そうですえーっと、訓練を思い出して・・・
クレア『異常なし、壊れた部分もありません!身体も大丈夫です!』
よかった・・・その声ととともに安堵した感情が向こうに流れたことが船体に取り付けられたトランシーバー越しにこっちにも伝わってきます。
ポルカ『ザザッ・・・ポルカだ!尾翼と後部プロペラ部分はどうだ?きららはそこを叩いたんだがこっちでは部品が落ちたとかは見えなかった!改めて確認してくれ!』
クレア『わかりました!』
後ろを振り向くと尾翼、プロペラはどこにも損傷は見つけられませんでした。それよりも素晴らしいのは後ろの景色。どんどん遠ざかる陸地、喧噪は聞こえなくなっていますが、それでも色とりどりのテントが騒がしく乱立しています。テントのある崖の下は小さく波立った湖が広がっていて、近くでみた水の色よりも碧みがかった景色が一面を覆っていました。
ポルカ『どうだ!?』
クレア『大丈夫そうです!今からプロペラをこぎます!』
私は前を向き、ペダルに足をかけます。
前を向くと今度は人工物のない湖の碧と空の蒼の色彩に分けられた水平線が。
音は風切り音、機体がキィキィと軋む音、時折聞こえるトランシーバーからの声、それからさっきからドキドキしている私の心臓の音、ただそれだけが聞こえます。下なんか見てしまったら私はすくみ上がっていたでしょう。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い………。
でも。
それでも私はその思いが表に出ないよう務めて平静に、きゅっと前を見据え、呼吸を浅くはいて、今度は思い切り深く吸って。
『…よし』
集中完了。
頭はまだちょっと混乱していますが、余計な感情を閉め出します。
みんなの作ってくれたこの機体と想いを乗せて、飛ぶ。飛んでみせる。
私はペダルに足をかけ、感触を確かめます。
そして私がペダルを踏む足に力を入れると複雑に組み上げられた複数の歯車が噛み合い、何倍もの力に膨れ上がりながら、ゆっくりと、ぎ…き…という音を立てながら後方に取り付けられたプロペラが回り始めました。プロペラがするすると回ることにより、空気をかき混ぜ、新たな推力を得ていきます。後ろからさらに押される感覚。
私はうかつに姿勢を崩さない様にようにただひたすら前を見ながらペダルをこぎ、じょじょに熱中していきます。室内はビニールで覆われていてどんどん私の熱で熱くなっていきますがそれすらもう気にはなりません。さっきぶつけた頭の痛みももう忘れました。
練習よりも、ペダルが軽くまわります。
前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、前へ、ひたすら前へ
徐々に私は飛行機と一体化して前を目指す感覚を覚えました。
ただひたすら前の一点を目指して自分自身が鋭くなっていく感覚。私の呼吸と飛行機が連動して飛翔する感覚。それは私にとっても心地よいものでした。
集中、集中、集中。
私はこの時ゾーン、または忘我の境地というものに入っていたようです。
ただ、機体を飛ばし続けるという単一の目標に向かってひたすら身体を動かし、それ以外を忘れる1つの機構となります。景色は頭の中で優先度の低いものとして処理され、トランシーバーからの声援も聞こえてきますが頭の中で意味をなす前に通り抜けています。身体の内側から来る特大の熱だけはじっとりと私の身体に蓄積され、時折私は無意識的に汗を拭います。
ここから先は、ひたすらこぎ続ける私自身との体力勝負。私が漕げば漕ぐほど飛行機は飛距離を伸ばします。逆に体力が切れてしまえば機体はだんだん下がっていき、ドボンです。
私は脚の続く限り、夢中でペダルを踏みこみます。
ふぅっ、きこきこきこきこきこきこ・・・きこきこきこきこ・・・
きこきこきこきこきこきこきこきこ、きこきこきこきこ・・・
どれくらいたったのでしょう。しばらくすると私の中に入っていて、後ろから私を押してくれた無我の集中はちょっとずつ剥がれていき、私に理性が戻ってきます。
クレア『んぐっ、はぁ、はぁ…ふぅーー!』
私は、あまりに大きくなっていた自身の呼吸音と心音に気づかされます。
順調だった私の脚も疲労がたまり、気づくとペダルはどんどん重くなっていきます。
このあたりから冷静になった私の頭にもトランシーバーの声が再び聞こえ始めました。最初の発射の成功の喜びの声が混じった声からじょじょにトーンダウンして、冷静に私を心配して応援し、少しでも飛距離を伸ばすための指示を出す真剣な声にいつの間にか変わっています。
コルクちゃんの落ち着いた、それでいて的確な判断力を感じるはっきりとした声。ポルカちゃんの普段は見せない真面目な職人としての声。ライネさんの普段通りの声色ながらも勇気の出るような声。カンナさんのダウナーながらも人を落ち着かせる魅力のある声。他にも里のいろんな人の声援や、これまで聞いたこともないような量の人のざわめきがこの小さなトランシーバーを通して伝わってきました。
クレア『すっ、はぁ!ま、まだ…ま…だっあ!』
私は呼吸を整え、自分のものとは思えないほどのビッグな心音を感じながら、体中を汗と、なぜか目から流れてきた涙と、その他汁に顔中まみれながら、ペダルを思いっきり踏みつけます。
だんだんと飛行機もその速度を落としているのでしょう。最初は初速で飛んでいたのですが、だんだんペースダウンしている感覚がなんとなく感じ取れます。
最初の高揚感もだんだん薄れてきてだんだん辛い、苦しいという感情が泉の湧くように出てきます。今は飛び始めてから何分?5分?10分?それとももしかしてまだ1分くらいなのでしょうか?でも、まだまだもうちょっと、自分自身との我慢比べをするだけの気力は残っていました。
ここまでみんなが知恵と力を出し合って進めてきたこのプロジェクトのバトンの終着点としてこの空に私がいて。
そうして、トランシーバー越しだけれども、今も私を応援してくれている。なら私はそれに対してどれだけのものをかえすことが出来るだろうか。
まだまだぁ!
長く飛行し、水面すれすれに近づいた機体をもう一度浮上させることは、このプロペラ機ではあまり現実的ではありません。
飛行機をすれすれでとばし、水面と機体の間に出来る上昇気流(水面効果っていうらしいです。ホバークラフトとかにも使われます)が最後に味方してくれます。
私は最後の一息まで脚に力をこめ、限界すれすれまでこぎ続けました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
着水するときは事前に教えて貰った安全な頭を守る体勢に移行して大きく息を吸って着水しました。機体は前のめりに水面に突っ込み、凄い衝撃とともに、柔らかい飴細工のように崩れてしまいました。私は浸水する飛行機から無我夢中で脱出した後、水面に顔を出し、荒くなっていた息を整えます。
クレア『はっ!はっ!・・・すぅー、っっはぁー!!けほっげほっ』
元々あまり泳げない上に疲れた身体は思うように動かず、危うくおぼれかけましたが、すぐにボートが駆けつけて私を拾い上げ、係の人がタオルと水筒を投げよこしてくれます。
係員『お疲れ様!大分飛んでたよ!すごいね君!』
私はそれに答える余力もなくぐったりとボートに腰を下ろし、顔をぬぐいます。
体力どころか気力も全てを出し切った気分。
うつろな私の目の前にはさっきまで飛行機だったものがぐちゃぐちゃに散乱していて、さらなる脱力感を私に与えました。
私が少し意識を取り戻した頃、結果が発表されました。当初の想定目標を超え、飛行距離5783メートル、滞空時間は14分27秒という記録で機械エンジンをつかわない飛行機の中では現在トップの飛距離。特に最後に落ちそうになってからの粘りはすごかったようで、最後の500メートルを映した救命船上のカメラ映像は、何度もスタジオのおおきなスクリーンで、リプレイされていました。しかし実感がわかない私はその映像を、ボートの上で半分ぼうぜんと聞いていたのでした。
船が陸に戻る頃には、私の意識は大分回復してきました。そして私たちのチームに合流するともうもみくちゃ、私がまだすこしぬれているのも構わずみんながよくやった、よくやったとみんなが褒めてくれました。
ポルカちゃんは私の背中を勢いよくバシバシたたきますし、コルクちゃんは私を持ち上げ、前から抱きしめます。カンナさんは後ろのイスに腰掛けながらこっちにだけ見える様にそっと親指を立ててくれました。最後にライネさんの音頭でなぜか私は胴上げされ、5回ほどされるがままに宙をまいました。高いところから周囲のチームの様子が見える分、すっごい恥ずかしかったです・・・
その後も他のチームの飛行は続きましたが着替えなどが終わった後の私はテントの中で燃え尽きたように余韻に浸り、ぼーっとしたり、飛行結果をアナウンスから聞いたりしていました。
私は極限の疲労状態から回復した後、閉会式に参加しました。結果は7位、人力飛行では最上位、これより上の順位はすべて機械エンジンの飛行機や気球という結果でした。
私は小さな入賞盾を手にしながらステージに立ちました。何かをしゃべる機会もなかったのですが、(実際に話す機会があったとしても私は何も話せなかったでしょう)本当に本当に多くの人がステージの上の私に注目してくれて、なんだかこそばゆく感じました。
その勢いのまま、誰が音頭をとったのか他のチームや大会の開催側も巻き込んでの大きな宴会になりました。
わたしはお酒に匂いに当てられて、みんなと楽しくお話した後、眠くなってしまった(あまり覚えていません)ようで、次に目が覚めたときには、すでに次の日の朝になっていました。田舎の朝特有の、すっきりした、湿っぽいすがすがしい空気の中で、ちょっとだけ疲労感が残る身体を起こし、景色をみるため外につながる布を剥がすと、もう帰りの馬車の中でした。周りを見渡してみると他のメンバー達は、みんな馬車の中で静かにぐっすりと眠っています。私はうんと背伸びをして、それから馬車から顔を出します。「喧噪」から「平穏」に。ちょっとたくましくなった私と私たちの日常が、また帰ってくるのです。
Fin.
読んでいただき、本当にありがとうございました。実際にSSとしてBBSに投稿してみると、思ったより読みにくく、一つの作品を作ることは難しいなと改めて思いますね・・・
この作品の構想自体はきららファンタジアサービス終了が運営から通達される以前からあり、少しずつ機をみて書いていました。しかし、サ終がきまり、しばらく萎えて、でもまた作ろうと思い立ち、でもやっぱり納得がいかず挫折して・・・という形で、自分の力量を確実に超えた作品に悪戦苦闘しながら作って、とうとうサービスが終了してしまいました。一度はお蔵入りも考えたのですが、他にも二次創作を続けていらっしゃる作者の存在や自分もまだ、この作品を出してしっかりけじめをつけたいという思いから完成に至りました。
不格好な作品であったかもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
一応きらファン本家のイベントストーリーよろしく、後日談というものもつくりましたので、できればそちらも読んでいただけると幸いです。明日かあさってに投稿します。
ちなみに、この作品には元ネタがありまして、田中ロミオ様の「人類は衰退しました」を読んだときにふと思いついた作品だったりします。タイトルの「クレアちゃんの、スカイハイ」はまんまそれですね。
お疲れ様です
あの世界ならありそうな話で良かったです
小ネタからもきらら愛が感じられました
一作書けてしまうと次からは気楽に書けるようになる…こともあります
コメントありがとうございます。
きらら愛・・・そう言っていただけるだけで感無量です。
今回の作品は今の自分の全力で書けるものはどこまでなのか、それがどんなものなのかを確認するものだったのでかなり背伸びした作品だったなと思います。
もしも、もしも次があるのなら今度はもう少しさらっと書けるのかもしれませんね。
さて、以前話した後日談をを投稿します。
こっちはほぼ会話形式、さらっとしたノリなので読みやすいかと思います。
後日談:―大会終わりの大宴会をこっそり抜け出すソラ、ランプサイドー
ランプ『ソラ様〜本当にこの作戦、大丈夫なんですよね〜?アルシーブ様、過労で倒れてしまいましたけど、コレばれたらホントにエライことですよ』
ソラ『大丈夫よ、だってこの鳥コン企画は私たちがやったことじゃなくてあくまでアルシーブや神殿企画部の人達が自分でやったことだもの、私たちが表だってしたことは公的に鳥コン開催に許可をだして、当日の司会をしたことだけ。』
ソラ『でも実は鳥コンを主催した神殿企画部なんてものは名前だけで存在してないし、私たちは裏では神殿企画部をでっち上げて鳥コンのチラシを勝手に印刷して配布、中止出来ないように鳥コン開催が規定の事実であるように拡散、こっそり仕事の中に組み込んで実務をそれとなくアルシーブ達にやってもらうように調整しておく政治工作みたいなのもしたけど。それだけだもん。責任の所在は、実行したアルシーブか、名前だけの神殿企画部だから私たちに足はつかないわ。正直アルシーブが倒れちゃうのは計算外だったんだけど・・・ホントに悪いことしたと思ってるわ。万が一足がついたらもう一回封印モンの怒りかもしれないわね・・・』
ソラ『ランプちゃんも広告の作成と、鳥コンイベントの吹聴、アルシーブのスケジュール手帳に細工、ありがとね、助かったわ』
ランプ?『なるほど、やはりそんなところでしたか』
ランプ?『言質は取れましたよ。今です!ジンジャー!』
ボン!(変身魔法解除)
ソルト『ふう』
ソラ『ん?へ?』
カルダモン『すいませんね、ソラ様、ちょっと手錠させてもらいますね』がちゃん
ソラ『おろ?あれ?ん?』
ジンジャー『よっし、これで被告人2名無事確保だな?』
ランプ『すいませんソラ様ー!』(事前に荒縄+拘束用の符で拘束済み)
シュガー『こら!ランプじっとしてて!』
ソラ『え・・・どういうこと?』
セサミ『はい、もう大会開催前に下手人含めて全部ばれていたということですよ』
アルシ−ブ側の事の次第はこうである。
ある日アルシーブの手帳や、その他神殿関係者のための共有スケジュール欄に見慣れない「鳥コン」なるイベントの準備期間、to doリストが設けられていた
それを不審に思ったアルシーブがセサミに相談。
何者かがスケジュール欄等に謎の予定表を書き加えた痕跡が見つかる。
すわ神殿への敵襲かと思われていたが、手帳の筆跡に見覚えがある。
筆跡からランプの仕業だと分かるがもうすでに鳥コンはチラシによって神殿内部、各地の里に広く知られることとなっていたことが判明。
このまま鳥コンの直前期に即中止宣言をしてしまうと神殿及び里に「神殿からの偽の情報が発生した」または、「女神と次期女神候補生が結託して信用ならない情報を神殿からばらまいた」という不審、混乱が発生することが想定される
リアリスト事件も解決して、これから平和になる思われていた情勢を再び混乱に戻すわけにはいかない!
アルシーブはスケジュールの無理を承知で、でっち上げられた時間不足、構想不足のイベントを無理矢理強行する(正直ランプ、ソラ様を直接呼び出してお灸を据える暇はなかったが、その代わり最低限の監視だけは付けさせ、逆に大会の実況役などに利用していたりもした。)
アルシ−ブ過労で倒れる←(今ココ!)
セサミ『神殿のスケジュールは誰が管理やら記入をしてると思ってるんですか、もちろんアルシーブ様もある程度ご自分で手帳を付けていらっしゃいますが、だいたいは秘書の私がメインで調節しておりますよ』
ジンジャー『アルシーブは当然途中で誰かが裏で糸引いてることは気づいてたぞ?犯人も分かりきってるし、場を混乱させないためにあえて中止にしたり、いったりしなかっただけで』
ハッカ『今回アルシーブ様より時間の合間を縫ってタブレットの録画でソラ様へのメッセージが届いています。心してお聞きください』
タブレット:ザッ『はぁ・・・ソラ様、今回はあまりにもおいたが過ぎましたね、今回ばかりは私の堪忍袋の緒はもう切れています。今回の貴方の行い、神殿はおろか一般市民をも大混乱させかねない行いでした。確かに私もソラ様にリアリストの件の後始末の仕事など沢山振ったことは申し訳なく思っております。がしかしこのイベント期間中の警備やらが手薄になった時期にまたリアリストのような奴らが現れたらどうするつもりだったんですか?そもそもあなたは女神としての…(略、この後20分くらい説教が続く)ランプもランプだ、どうして女神候補生としてソラ様のおそばにつきながら・・・(略、この後30分くらい略)・・・言いたいことは正直まだまだあるのですがどうせ普段の話のように今回も馬耳東風なのでしょうね、ならおいおいお話はしますが今は一つだけ。(しばらく言葉を考える)・・・はぁ、すいません、次の言葉だけは主従関係を抜きにして私個人として気持ちに素直に話をさせていただきます。ソラ様どうかお許しください。どうしても言いたいことです。・・・・・・スッ『それ相応の報いは必ずうけさせてやる。覚悟しろ。』(ガチオーラ)』 ブチっ(電源切れる)
ソラ、ランプ:『ひっ!』ゾゾッ
カルダモン:にやにや『いやー、本当に怒らせちゃったね、「相応の報いを受けさせる」なんてもう本当に敵認定した人にしかいうことないよ多分、あのお方』
ジンジャー『はっはっは!いやー久しぶりに面白いモンみたわw私とあいつは付き合い長いが、あんな怒り方したのは見たことないくらいだぞ!素のあいつがあれだけブチ切れてんのはこれまで見たことねぇぜ』(震)
セサミ『私も秘書として比較的長くおそばにいますがあんな怒り方は見たことないですね。まあ私が同じことをやられたとしても当然怒りますが。』
ジンジャー『そういえば、改めてお前らの処分な、まあ本人からは派手にとっちめとけといわれてるから手加減なしだぞ』
ランプ『へ?それはアルシーブ先生からの直接処分、その間謹慎とかではないんですか?』
ジンジャー『ん?まあ普段は直接アルシーブから処分を貰うのが普通なんだがぶっ倒れちまったからなぁ、代わりに緊急時は七賢者が代理として緊急で指揮とか命令とか出す権利が回ってくる時がときたまあるんだよ。』
シュガー『そんなことも知らなかったの?シュガーも出したことあるよ!』
ランプ『ええい、シュガーは黙ってて!』
ジンジャー『じゃあそうだな、おめぇらの処分はあれだな、会場の片付けってことで』
・・・・・・
ソラ『…へ?片付け、それでいいの?』きょとん
ランプ『ありがとうございます!やっぱり、寛大なる七賢者ジンジャー様!分かってくれてますか!』
ジンジャー『ん?なに勘違いしてんだ?「会場全体の片付けを2人で」だぞ?』
ソラ、ランプ『へ?』
セサミ『ふむ、会場全体ということは用意した本部テント、準備テント等のかたづけ、お借りした救命ボートの掃除と持ち主への返却、会場のゴミ拾い、スピーカーとトランシーバーは神殿のモノですから備品として砂などを払って整理して神殿倉庫に戻しておくこと、あとできるだけ飛行機の残骸は回収しましたがまだいくつかの大きな部品が湖にあるので生態系に悪影響を及ぼしかねないそれらの回収及び廃棄、事後書類もたんまりですね・・・あとは・・・』
ハッカ『それと崖上に設置された大きな飛行機発射場も元はなかったもの、解体して資材にする』
セサミ『ああ、そうですね』
ランプ『ひえ・・・あのでかいのをですか?』
ソラ『で、でも、みんなは助けてくれるのよね?』
ソルト『私たちはこれから普段の仕事に加えて倒れてしまわれたアルシーブ様とフェンネルの分のお仕事、鳥コンによってたまっていた普段のの仕事をしなくてはいけないので手伝いません。』
ランプ『つ、つまり完全に私たちふたりでこの会場全体を?』
ジンジャー『まあ、自分達で企画したもんなんだろ?じゃあ自分達で片付けしときな!あ、あとアルシーブが起きたらまた個別で罰が言い渡されると思うからそのつもりでいろよ?私の処分よりよっぽどえげつねぇので来るかもしれんぞ?』
ソラ、ランプ『ひええええええ・・・・・・!』
その後ソラ様とランプは会場全体の後片付けを七賢者達の監視下の元、本当に2人でやらされるのでした。
ほんとのほんとに おしまい
だいぶ今更ですが、拝読しました! ポルカァ!! 今何キロ!?
航空工学がいつの間にか根付いていたエトワリア。やはり何でもありな土地柄は強い。
例によってノリと勢いで生きているソラ様発の企画でしたが、正直ソラ様って企画力なかなか高いですよね。クリエメイトを多数巻き込んだ大規模な企画を幾つも思いつくイメージがあります。
そして、このクリエメイトの自由度の高さよ。さらっと砲丸投げを目論むモッモとか、読んでて思わず吹きました。最高です。
ぼっちちゃん並に断れない女と化したクレアちゃんの心理描写と、それに伴う激アツ展開、そして最後のオチに至るまで、わくわくしながら一気に読むことができました! こういう作品を書けること、本当にすごいと思います...!
(ぶどう月って何だ...?)
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