[Attention!]
この作品は『ぼっち ・ ざ ・ ろっく!』を題材としたSSです。
あくまで上記原作とは一切無関係な所謂二次創作 (或は三次創作) です。
創作の関係上、大いに独自設定 ・ 捏造 ・ 原作を逸脱した点が存在します。
SSによくある会話形式ではなく、モノローグや背景描写などを多分に含みます。
その関係で文字が多く、読みづらいです。
本作はシリアスな内容を多く含みます。予めご注意ください。
書き溜めありです。と言うより、既に最後まで完成しています。
最後に、執筆者は『ぼざろ』アニメ勢です。原作を先に読むべきであるのは百も承知ですが、自分の中の執筆欲求モンスターには勝てませんでした。
以上の点を了承してくださる方は、どうかお付き合いください。
押入に籠って、いつものように縮こまる。
ケースからギターを取り出して、膝の上に横たえ、ピックを摘む。
指は、自然と動く。押入は、さながら小さな小さなライブハウスだ。
観客は、誰もいない。今日は録音もネット上への公開もしていないから、本当に孤独だ。
でも、それでいい。今は、ただただ、弾くだけだから。
こんなわたしが、たった一つだけ夢中になれるもの。それが、音楽だから。
いわば、このギターの奏でる音が、わたしの全てなのだから。
すなわち。この音こそが、わたしの人生。わたしの、答えだ。
強烈な悪夢を見た。世界中から音楽がなくなってしまう夢だ。
ギターも作詞ノートもすっかり消え去っていたし、"ギターヒーロー" など当然存在しなかった。
学校に行っても、全く楽しくなかった。いつも楽しくはないけど、その比ではないくらい苦痛だった。誰も音楽の話をしないし、鼻歌すらも聞こえない。ファッションや芸能人や恋愛の話は普通に飛び交っているのに ─つまりは普通の高校生の会話なのに─ 、何とも言えない寒気と嫌悪感を憶えた。
喜多ちゃんとも、話せなかった。話せるはずがなかった。彼女とは、音楽で繋がった仲なんだ。それがない世界なら、喜多ちゃんは永遠にわたしとは関わらない人だ。
ちょっとだけ、期待もしていた。でも、お昼休みに彼女と一瞬すれ違ったときに、確信した。喜多ちゃんは、わたしのことを知らないのだと。
そうなれば、虹夏ちゃんともリョウさんとも出会えないだろう。店長さんとも、PAさんとも、お姉さんこと廣井さんとも、1号さんや2号さんみたいなファンの人たちとも、会うことはない。
虚ろな気持ちのまま、わたしは学校帰りのその足で、STARRYがあるはずの場所を訪れていた。藁にも縋る思いとは、きっとこんな様子を形容する言葉なのだろう。
が。やはりというか、そこにライブハウスはなかった。わたしは、ふらふらと来た道を引き返した。虹夏ちゃんや店長さん ─店がないのだから、 “星歌さん” とでも呼ぶ方が適切か─ と偶然鉢合わせるような奇跡すら起こらず、結局帰路につくまで独りぼっちだった。
家に着いて、部屋に戻って、押入に縮こまって、溜息をついた。
もう、この胸の痛みを吐き出すこともできない。その事実が、重く重くのしかかった。
泣いた。ひたすら、泣いた。今までで一番、涙を流した。こんな世界にいたら、わたしは間違いなく壊れてしまう。二度と元に戻らないくらい、滅茶苦茶に。
手持ち無沙汰となった指先が、空想のギターの弦を押さえて、かき鳴らそうと足掻いた。わたしの身体は、わたしの魂は、ありもしない “音” を、こんなにも求めている。渇望している。その事実を、兎に角誰かに伝えたかった。
あれほど、全てが夢であることを必死に願ったことはない。あれほど、本気で死にたいと願ったことはない。感情がぐちゃぐちゃになりながら、声が枯れ果てるほど泣き尽くすしかできなかった。
目が覚めて、傍らに愛用のギターが立て掛けてあるのを見て、わたしは安堵のあまりまた泣いてしまった。わたしの心は、既にぼろぼろだった。
冷静になって、支度を整えて、いつも通りに乗り込んだ電車の中で、わたしは独り俯く。駅で流れる発車メロディーでさえ、救いの音色に聞こえた。
学校の放課後は、喜多ちゃんと一緒にギターの練習をする時間だ。何だかんだ、結構長い間続いている習慣ではある。
「今日もよろしくね、ひとりちゃん!」
喜多ちゃん特有の、屈託のない笑顔。最初のうちはその眩しさで融けちゃいそうになることも多かったが、最近はだいぶ慣れた。これ、地味にちっちゃな成長かもしれない。本当に、ちっちゃいけど。
「あ、は、はいっ。が、頑張りましょう」
未だに、話し始めには困っている。どうしても言い淀みをなくせない。これが直せるだけで、少しは周りからの映り方が変わるのにな。
喜多ちゃんは、慣れた手つきで演奏の準備を始める。このところ、ありとあらゆる場面で喜多ちゃんからギタリストとしての一面を垣間見ている。ギターと6弦ベースを混同していた頃が嘘のようだ。
それを喜多ちゃんに話すと、喜多ちゃんはにっこりと笑みを浮かべて言った。
「ひとりちゃんが教えてくれたからよ」
頼られるのは、とても嬉しい。褒められたいし、認められたい。自分の中で蠢く不純な感情を抑えつつ、わたしもギターを取り出して椅子に座る。
わたしは、人前ではうまく演奏できない。虹夏ちゃんとリョウさんと音を合わせて、初めて気付いた。
一応、最近は少しずつまともに弾けるようにはなってきたのだ。今だって、喜多ちゃんに見られながらでも比較的落ち着いてピックや指を動かしている。
喜多ちゃんは、わたしの演奏をじっと見つめている。何がそんなに面白いのか正直理解に苦しむし、彼女の視線は眩しすぎて目がくらみそうになる。崩壊しそうになる自我を、ギターで保つ。ここまで来るのに、どれだけ時間を要したことか。
「ひとりちゃんってさ」
「ひゃいっ!? な、な、何でしょうか」
突然、喜多ちゃんが話しかけてきた。ついつい声が上ずってしまう。
「こうして聴いてると、本当にギター上手いなって。何というか、いつまでも聴いてたくなるっていうか」
「っ...!」
やめて。そんなに褒めないで。いや、褒めて。もっと褒めて。チクショウ、またわたしの悪いところが出ている。誰かに自分を認めてもらいたい、承認欲求モンスターな一面が。
「あっ、照れてる。ひとりちゃんは表情に出やすいからなぁ」
そう言いながら、にやにやした表情の喜多ちゃん。わ、嗤われている...? 嘲笑われている...? 喜多ちゃんはいい人だからないとは思いたいけど、もしかしたらきもちわるいとか、おかしな人とか、そんな風に思われてたりして... やば、否定する材料が何一つないや... あはは... 所詮わたしはそういう存在なんだ...。
「ひとりちゃん? ひーとーりーちゃん!!」
「うへぁぁ!? す、すみませんっ」
喜多ちゃんの声で、現実に意識が引き戻された。内向き思考は、こういうところが罪深い。これでも、頭ではちゃんとわかっているつもりだ。
「やっぱり、まだ怖い? わたし、ひとりちゃんのことは結構わかってたつもりだったけど、自惚れだったかしら?」
何も悪くない喜多ちゃんに、そんなことを言わせてしまう。とんだ咎人だ、わたしという人間は。
「い、いえ、そんなことないですっ。喜多ちゃんは、ダメダメなわたしのことをいつも気にかけてくれて、嫌わないで傍にいてくれて...」
視界がぐるぐるしてくる。自分でも、何を言っているのかわからなくなりそう。あぁ、失礼なこと口走ってたらどうしよう...。
「ぎ、ギターもどんどん上手くなってるし、歌声すっごく綺麗でかっこいいし、友達いっぱいできらきら眩しいし... あ、あと、お洒落でかわいくて、ほんのりいいにおいがして、それから...」
「ちょ、ストップ! ひとりちゃん、一旦お口チャック」
「ひっ!? しゅ、すみません...」
喜多ちゃんに制止されて、我を取り戻す。勢い余って噛んでしまったが、そんなことはどうでも良い。しまった、暴走が極まり喜多ちゃんを怒らせてしまったかもしれない。
何てお詫びしたら良いものか。と、取り敢えず、謝るときは相手の顔をちゃんと見ないと。怖いけど、喜多ちゃんにこれ以上失礼なことはできないよね。よし、見るぞ。
「... あれ? 喜多ちゃん...?」
視線を向けた、その先。喜多ちゃんが、頬を真っ赤に染めて硬直していた。怒っているのかと早合点しようにも、明らかに口元がにやけていることがどうにも説明できない。はっきり言って、摩訶不思議だ。
「あ、あ、え、えっと... そ、そう! 練習! 練習、続けましょ!!」
珍しく言い淀む喜多ちゃんにちょっと戸惑いながらも、わたしは小さく頷いてギターを構えた。喜多ちゃんでも喋り始めに困ることってあるんだなぁ、といった浅い感想は、弦の振動に文字通りかき消された。
それからは、喜多ちゃんが躓いた箇所を教える以外でまともな会話もなく、ひたすらギターを弾き続けた。コミュニケーションが絶望的に苦手なわたしにとっては気楽なような、比較的ちゃんと話せる相手がすぐ傍にいるのに話さなかったことが気まずいような。
あぁ、もう。気の迷いは、音を狂わせるんだ。一旦忘れよう。今は真っ直ぐ、ギターに集中しろ。考えることは、それだけでいい。
その一心でギターに向かって、そのせいで自分の世界に入りすぎて、混乱している喜多ちゃんに気付くのが遅れて、全力で謝罪しつつ自分の不甲斐なさを恥じた。一番直さなきゃいけないところは、ここなんだろうな。
すっかり陽も落ちて、喜多ちゃんとお別れしたわたしは、寄り道もせず ─今日のSTARRYは機材点検のため休業だと、店長さんから事前に通達を受けていた─ 下北沢駅の改札を通過してホームに立った。
筋金入りの陰キャであるわたしは、例えばSNS映えするスポットを周って街を満喫するような人間ではない。目的が達成されたなら、即帰宅する。そういう発想しか持てない性を背負っているのだ。そもそも、ここから金沢八景の自宅までは片道2時間かかるし。これに関しては、自ら下北沢の高校を選んだわたし自身の責任ではあるが。
下北沢は、音楽の街だ。とても雑多で賑やかなこの街は、人恐怖症のわたしには息苦しい。
ただ、日本全体でも著名な音楽の聖地だからだろうか。すれ違う人の中に、時々自分と似たものを感じる瞬間があった。いや、わたしなんかと一緒だなんて、その方々に対して失礼にも程があるというものではあるが。それはそれとして、兎に角感じるのだ。
普段の生活をいまいち愛しきれなくて、その分音楽は心の底から愛している。そういう視線が、そういう雰囲気が、この下北沢という土地にはひっそりと佇んでいる。
かれらは、一体どこに向かったのだろう。路上ライブだろうか。ライブハウスだろうか。もしかしたら、STARRYに向かった人もいたのかもしれない。目的地がSTARRYの人は、今日はお休みなので残念ながら無駄足ですよ。
音楽という巨大な概念に引き寄せられるように、人々は下北沢を訪れ、行き交う。
そこに、遮るものは何もない。バリバリの陽キャ集団がわいわい喋りながら、その背中に長年丁寧に使われたであろうギターを背負って歩くすぐ後ろで、所謂オタクと一目でわかるような二人組がスマホ片手に語らいながら、これまたギターを背負ってとぼとぼと歩いている姿など、何度目撃したか数え切れない。
こんなに楽器が身近にある環境は、決してありふれたものではない。この街では、性別も人種も、そして性格や趣味嗜好も、全て音楽の前に平等にひれ伏す。ばらばらな人たちを、音楽という一点の要素で括り付けてしまう。
そう。まるで、結束バンドみたいに。
音楽の持つ魅力の真髄は、偏にこういうことなのだろう。ド陰キャで卑屈なわたしですら、そのぬくもりを大いに享受している。
それはわたしにとって、ひとつの幸せの形だ。承認欲求を満たすとか、自己表現の手段になっているとか、そういう不純な意味合いも確かに多分にあるが、実のところ、もっと本質的に。
わたしは、音楽というものに、魅せられているんだ。
それにしても。
「結束バンド、か」
ぼそりと独り言を呟く。それは、最近お気に入りになった言葉でもあった。
結束バンド。わたしたち四人の、バンド名。ギターヒーローではなく生身の後藤ひとりにとっての、家以外での居場所。
明日は、STARRYでのバイトの予定が入っている。結束バンドの皆とも一緒だ。その次の日は、これまたSTARRYにバンドメンバーで集まって演奏練習。最近までまともに使っていなかったカレンダーアプリにも、抜かりなく予定を打ち込んである。
独り黄昏れるわたしに声を掛けてくれた、虹夏ちゃんが好きだ。作詞で不安だったわたしの相談に乗ってくれた、リョウさんが好きだ。学校でもわたしを気遣ってくれる、喜多ちゃんが好きだ。わたしは、そんな皆がいてくれる結束バンドが、大好きだ。
だからこそ、いつも心の奥底で思っている。いつになったら、"わたし" (後藤ひとり) は "わたし" (ギターヒーロー) に追いつけるのだろう... と。
ギターヒーロー。父のギターを借りて始めたこの孤独な活動で、わたしは目に見えないファンを何万人も獲得した。
重度のコミュ障なのに褒められたい欲求が人一倍強いわたしにとって、ウェブサイトというフィルターを通した応援コメントはこれ以上ない励みだった。都合のいい我儘が満たされる条件が、偶然にもそこに揃っていた。
褒められるのが嬉しくて、練習にも際限なく打ち込めた。一日6時間、毎日毎日。そんな日々を送っていたから、ギターの腕前だけは結構自信がある。その、はずだった。
虹夏ちゃんに連れられてSTARRYの敷居を跨ぎ、初めて他の誰かと音を合わせる経験をしたあの日、わたしはショックで打ちひしがれた。演奏が、全くうまくいかない。
信じられなかった。『井の中の蛙大海を知らず』とはよく知られた諺だが、それが自分に当てはまるだなんて思いもしなかった。
どうしてだ? あれ程蓄えた演奏技術は、一体何処に行った? あれ程ギターに費した人生の時間は、一体何処に行った?
疑問符を解消できないまま家に帰り、押入の中でギターを弾くと、打って変わって普段通りの演奏ができた。そこが余計にわからなかった。
結局のところ、自分だけでない環境だと空回りするということが、わたしの弱点らしかった。それは、ギターヒーローには決して気付けない、だが極めて初歩的な弱点だった。少なくとも、グループで活動するバンドメンバーとしては。
人と接する訓練は、ギターの練習とは訳が違う。決して少なくない人が当たり前にこなし、いつの間にか習得できてしまうのに、わたしにはそれができなかった。そして、そういう人にわざわざ再訓練の機会を与えるほど、世間は甘くできていない。
そんな中では、わたしは恵まれた方だ。虹夏ちゃんに声を掛けられた日から、関わった人たちがとっても優しかったから。
駄目なわたしを否定するのではなく、手助けしてくれたり見守ってくれたり、時には手を引っ張ってくれたり。
だから、わたしはそんな皆に、早く恩返しがしたい。
しかし、ふと考える。果たして、わたしは『ステージの上でギターヒーローになりたいのだろうか』。
多分、答えはノーだ。あくまで結束バンドの後藤ひとりとして、最高の演奏をできるようになりたいのだ。
今の自分は、ギターヒーローに何もかも飲まれている。だが、それではいけない。必ず追いつき追い越し、逆に食らい尽くしてやる。猫背のままでも虎になれるのだと、証明してみせるんだ。
「尤も、具体的な術なんて何もないんだけどね...」
溜息混じりにそう小さく呟きながら、力なく笑う。電車の到着を待つ列に並んでいたせいで、運悪く横に並ぶ人にそれを聞かれてしまい、怪訝な視線を向けられた。へ、変なこと言ってごめんなさい...。
─ 後藤さん、なんかどんくさいよね ─
あ、え、えっと、す、すみません...。
─ ほんと、何もできないんだね。何? ふざけてるの? ─
あ、ち、違うんです、わたし、えっと...。
─ もういいよ、あっち行ってて。後藤さんなしでも大丈夫だから ─
わ、わたしも、お役に立ちたいんです...。
─ ... この際だし、はっきり言うわ。お前、目障りなんだよ ─
ひっ!? そ、そんな...。
─ わかったならさっさと失せろよ。邪魔くせぇ ─
し、失礼、します...。
... はぁ...。
もう一度だけでいいから... ギター、弾きたいなぁ...。
「... はっ!? い、今のは...」
普段より2時間も早く、目が覚めてしまった。カーテンの隙間からも、光は見えない。
兎に角、喉が渇いて仕方ない。瞬発的な衝動に身を任せるように、考えるよりも早く台所に向かい、水を何杯も飲んだ。
部屋にのそのそと引き返す。部屋の片隅には、ギター。この場所は、『音楽が存在する世界』のようだ。つまりは、現実。
ふと、無意識のうちにギターに手を伸ばして、ぱっと放した。流石に今弾いたら、両親やふたりを起こしてしまう。その程度の分別は弁えなければ。
行き場に困り、そそくさと押入に潜る。押入の中で考えるのは、先程の夢のこと。
まただ。また、見てしまった。
音楽が存在しない世界。わたしの取り柄が、何もない世界。そんな、憂鬱で真っ暗な世界の夢を。
しかも、クラスメイトを勝手に陰湿にしてしまった。皆がそんな性格じゃないことくらい、大した関わりなどなくても理解しているのに。自分が蔑ろにされていることよりも、こちらの方が精神的につらい。
どうして。最近は、結束バンドでの活動も楽しくなってきて、わたしなりに幸せを感じていた。それにも関わらず、どうしてあんな夢なんか。
胸が苦しい。頭が痛い。耳鳴りが止まらない。外気がいやに寒くて、目眩と吐き気まで追い打ちをかけてくる。やばい。このままだと、確実にやばい。
悶え苦しむ視線の端に、敷かれたままの布団が映る。もう一度眠れば、少しは楽になれるかも。そう思ったが、身体はどうしても動かない。
もしも。先程の夢の続きを、この眠りのせいで見ることになったら。そんな妄想がわたしを支配している。襲いかかってくる全てが、わたしをあの地獄から逃さまいとする悪魔の使者のように感じてしまう。
眠るわけには、いかない。わたしは、音楽のある世界で生きていきたいから。わたしを見守り、支え、時に辛辣で、いつでも傍に居てくれる、音楽のある世界で。
そんな覚悟だけは一丁前でも、現実は極めて情けないものだ。押し寄せ続ける痛みやら不快感やらに散々ボコボコにされた挙げ句、力尽きて気を失っていたところを偶然部屋に入ってきた妹のふたりに発見されたらしい。後でふたりから聞いたことなので自分の記憶には残っていないが、また妹に駄目なところを見せてしまった。
「お姉ちゃん、無理しないでね。お顔真っ青だよ」
割と普段から真っ青なわたしの顔だけど、ふたりの声色はいつになく心配そうに聞こえた。色んな意味で裏表のない彼女にそう言われるのなら、相当酷い様子なのだろう。
つらかった原因がいつの間にか消え去っていたのは良いが、ふたりが起きてくる時間ということはそろそろ家を出ないと時間が厳しいということ。手早く支度を整えて、家族に挨拶をして玄関の扉を開ける。曲がりなりにも2時間早く起きたのに、全然有効活用できなかったなぁ、朝ご飯くらいはゆっくりたべたかったなぁ、などと溜息をつきながら外に出ようとしたとき、左手に柔らかい感触を憶えた。
「ふ、ふたり...? ど、どうしたの...?」
振り返ると、ふたりがわたしの手を引っ張っていた。一体何事だろう。
「お姉ちゃん、これあげる」
ふたりはそう言って、わたしの左手に何かを握らせた。手を開くと、折り紙で作られた小さな桃色の花があった。
「ふたりが折った、お花。お守り代わりに、持ってて」
穏やかに笑顔を見せるふたり。恐らく、わたしが荷物をまとめている間に折ったのだろう。わたしのことを、本気で心配して。
「ありがとう、ふたり。大事に持ってるね。お姉ちゃん、頑張るから」
わたしは、ふたりに感謝の気持ちを伝える。ふたりは大きく頷いて、「行ってらっしゃい」と手を振ってくれた。
家を出て、金沢八景駅に向かう通学路の途中、握ったままの左手を開き、ちょっとだけしわくちゃになった桃色の花を撫でる。そのしわを指で伸ばし、もうしわがつかないように花をバッグのポケットに仕舞った。
「... そっか。それは、つらい夢を見たんだね。ぼっちちゃん、それで今日は寝不足気味だったんだ」
放課後。喜多ちゃんとのギター練習の後、バイトのためにSTARRYを訪れたわたしは、バイト開始の時間になる前に最近の夢のことを結束バンドのメンバーに話した。虹夏ちゃんはうんうんと頷きながら、わたしの話に耳を傾けてくれている。
「は、はい...。音楽のない世界があんなに息苦しいものだったなんて、思いもしませんでした...」
「ぼっちちゃんって、本当にギター... というか、音楽が大好きだもんね。あたしでさえ、ドラムを無理矢理奪われたらショック受けちゃうだろうけど、そんなんじゃ比較にもならなさそう」
ゆっくりとした口調で、虹夏ちゃんが語る。
「ぼっちの気持ち、すごくわかる。わたしも、そんな世界は絶対にごめんだ」
すっとリョウさんが会話に交じる。いつから聞いていたんだろう、わたしの話。
「あはは。リョウもかなりダメージでかいよね。何せリョウは、生粋のベーシストだもん」
「ん、お褒めに預かり光栄」
リョウさんが得意気な顔を浮かべる。虹夏ちゃんの言葉がどこか皮肉のように聞こえたのは、きっと気の所為だ。
「ひとりちゃんのお話の通りなら、STARRYも結束バンドもないんですよね? そんなの、想像もしたくないです...」
続けて喜多ちゃんも、自然な流れで合流する。今更ながら、純然たる陽キャの喜多ちゃんと普通に話ができること自体、究極的にはこの世界に音楽が存在するお陰だ。
喜多ちゃんの発言の直後、虹夏ちゃんとリョウさんの顔がちょっとだけ歪んだ。想像しちゃったのかな。喜多ちゃんの言う、STARRYも結束バンドもない世界を。
対してわたしは、意外にも思ったほど歪みはしなかった。夢で既に見てきたからだろうか。最悪の通信教育だ。
「ふふっ。ぼっちちゃんって、なかなか語彙が面白いよね」
あ、虹夏ちゃんが笑ってくれた。顔を上げると、虹夏ちゃんが猫みたいな目になってこっちを見つめていた。リョウさんと喜多ちゃんはきょとんとしているけど、ちょっとくらいは場が和んだのかな。
「ひとりちゃん、わたしはいつでもひとりちゃんの味方だからねっ!」
「うひゃぁ!? き、喜多ちゃん!?」
考え事に集中しすぎていたわたしの左手を、喜多ちゃんが握る。その瞬間にわたしの意識は引き戻され、それと同時に喜多ちゃんのやさしさを確かに感じた。
「ぼっちちゃんはあたしのヒーローなんだから! いくら喜多ちゃん相手でも、独占は許さないよ!!」
ほっぺたを膨らませた虹夏ちゃんに、空いていた右手を掴まれる。な、なんか、"ヒーロー" って言葉に含みというか、言語化し難い重みを感じます...。
「虹夏がそう言うなら、ぼっちはわたしのものでもあるということだよね。独占は許されないんだから」
いよいよリョウさんまで、わたしの背後に回り込んでわたしを抱きしめてきた。ひぇぇ、何この状況...。
「おーい、ぼっちちゃん困ってるから程々にしとけー」
その時、店長さんの思わぬ助け舟が。そのお陰もあり、三人共いつも通りに戻ってくれた。あっ、店長さん好き!
その店長さんが、すたすたとこちらに歩み寄ってきて耳元で囁く。
「... ところでぼっちちゃん、後でぼっちちゃんのことハグさせてくんない?」
「あっあっはい」
冷静にならなくてもとんでもないお願いなのに、つい反射的に返してしまう。店長さんは、どこか目を輝かせているように見えた。え、店長さん...?
バイトの時間が始まる。憂鬱だけど、自分なりに頑張ろうとこっそり意気込む。それくらいしないと、とてもじゃないがメンタルが保たない。
お客さんの注文を虹夏ちゃんが受けて、わたしが飲み物を紙コップに注いで、虹夏ちゃんに手渡す。最初の頃よりは、だいぶこの作業にも慣れた。それにしても、今日は次から次へと人が入ってくるなぁ。
「ぼっちちゃん、もしかしてさ」
何度か飲み物をお客さんにお届けした頃、虹夏ちゃんが少し暗い顔で話しかけてきた。
「な、なんでしょうか」
わたしは、紙コップにコーラを注ぎながら返事をする。
「... あたしたち結束バンドが、ぼっちちゃんの負担になってたかな?」
「っ...!?」
予想もしていなかった言葉に、動揺する。驚きのあまり、危うくコーラを入れすぎそうになってしまった。
「うわっ!? ご、ごめんねぼっちちゃん! 変なこと訊いちゃって」
慌てて虹夏ちゃんが近づいてくる。わたしは、崩れそうな顔を必死に保ちながら答える。
「ご、ご心配なく。規定量で止めました」
念の為に、中身をチェック。間違いなく、注文通りの分量だけコーラが入っている。内心胸を撫で下ろしながら、わたしはコーラを虹夏ちゃんに渡した。
コップを受け取った虹夏ちゃんは、先程とは打って変わって天真爛漫な表情で、お客さんにそれを手渡している。あんな顔、わたしも簡単にできたらいいのにな。
「ぼっちちゃん、次はオレンジジュースのSサイズと、アイスティーMサイズね!」
「あっ、わかりました」
注文を受けてコップに手を伸ばす。2つ同時ということは、家族かカップルだろうか。後者だったら絶対に視線は合わせないようにしないと。
Sサイズのコップをドリンクサーバーにセットして、虹夏ちゃんの方をちらりと見る。少し手持ち無沙汰な虹夏ちゃんは、先程一瞬だけ見せた暗い表情をこっそり引き摺っている。わたしにばれないように。わたしが、意に介さないように。
そういうところが、虹夏ちゃんのいいところで、悪いところ。わたしは、オレンジジュースのボタンを押しながら、虹夏ちゃんに語りかける。
「あ、あの、に、虹夏ちゃんっ」
「んー、どしたのー?」
虹夏ちゃんの間延びした声。でも、その裏側に潜んだ影をわたしは決して見逃さない。
「さ、さっきの話ですけど... それだけは絶対に、有り得ません」
虹夏ちゃんは、黙ってこちらを見つめている。わたしは、ボタンを押す手をそっと離して、言った。
「だって、わ、わたしは... け、結束バンドが、本当に大好きですから」
虹夏ちゃんが、目を大きく見開く。わたしは、更に言葉を続ける。
「ば、バンド活動、全部が全部楽しいわけではありません。ここだけの話、投げ出したくなっちゃうこともあります。それでも」
虹夏ちゃんの顔を、じっと捉える。目を合わせるのは苦手だけど、今は逃げたくない。
「わたしは、虹夏ちゃんの夢を叶えたいし、わたしの夢も叶えたい。そのためなら、い、いくらでも、努力できるんです」
「ぼ、ぼっちちゃん...」
一瞬だけ、虹夏ちゃんの瞳が潤んだように見えた。刹那、虹夏ちゃんはわたしに背を向けて、ぽつりと呟いた。
「... そういう台詞、あたし以外の子に言っちゃ駄目だよ。勘違い、させちゃうから」
「えっ」
「まぁ、ぼっちちゃんは釘刺しても無意識に言っちゃうだろうけどね。ほんと、悪い女」
「えっえっ」
わたしが慌てている間に、虹夏ちゃんはバイトモードに完全に切り替わった。元通りになった虹夏ちゃんの表情にほっと一息つきながら、オレンジジュースの入ったコップを横にどけて、Mサイズ用のコップをセットしアイスティーを注いだ。
「ありがとう、ぼっちちゃん」
虹夏ちゃんの声が、聞こえた気がした。
「はい、これで今日の分はおしまい! お疲れ様ー」
「お、お疲れ様ですっ」
虹夏ちゃんの号令と共に、どっと疲れが滲み出てその場にしゃがみこんだ。虹夏ちゃんに心配される前に素早く立ち上がり、ステージの方に立ち寄る。
「おっ、ぼっちだ。こっちこっち」
ふとリョウさんに声をかけられ、わたしはてくてくとそちらに歩みを進めた。少し混んでいて、ぶつかりそうになるのを何とか躱して、漸く声の主のもとに辿り着いた。今だけは、ギターを持っていなくて本当に良かったと思う。
「す、すみません... 今日はいつもより人が多いですね」
「そうだね。これは報酬も弾むぞ」
ふひひ、とわざとらしい笑い声を上げるリョウさん。この人もぶれないなぁ。
「... さてと」
リョウさんの声色が、真剣味を帯びる。
「ぼっち。今演奏してる出演者、率直に言ってどう思う?」
「え? 出演者、って...」
わたしは、ステージで今演奏している出演バンドに視線を移す。わたしたちと同じ、高校生のフォーピースバンド。楽器構成も、ギターボーカル、リードギター、ベース、ドラムと、結束バンドとよく似ている。
楽曲に意識を集中させる。有名なロックバンドの代表曲だ。結束バンドは基本的にオリジナルの曲で勝負するけど、インディーズや趣味の世界まで視野を広げるとこっちの路線の方が圧倒的に多いのは、ある意味当然の話だ。
演奏に意識を集中させる。何度かステージをこなしているのだろうか、音にある程度の安定感がある。バンドメンバー全員が、お互いを信頼していなければ出せない音に思えた。総じて、とても丁寧であたたかなカバーだ。
「うん、そうだね。わたしもこの曲のカバーは色々と聴いてきたけど、その中ではピカイチの出来だ」
ざっと感じたことを伝えると、リョウさんは頷いてそうコメントした。
「でも」
刹那、リョウさんの目つきが鋭くなる。
「あの演奏は確かによくできているけど、わたしたちはあれを軽く超えられるようにならなくちゃいけない。わたしたちのゴールは、もっともっと高い場所にあるんだ」
物静かな雰囲気とは裏腹に、その口ぶりには必死さがうかがえた。
「... ぼっち。そのゴールに、君はちゃんと立っているよね?」
不安そうなリョウさんの声。あぁ、この人も結束バンドを大切に思っているんだ。わたしを、その一員として認めてくれているんだ。そして、虹夏ちゃんと同じように、わたしがそれを苦痛に思っていないかと気にしていたんだ。
「... 敢えて、質問を質問で返します。リョウさんは、当然そのゴールに、ちゃんと立っていますよね?」
リョウさんは、にやりと笑って答える。
「当たり前じゃん。わたしも、ぼっちも、勿論虹夏も郁代も、皆で並んで立っているんだ。いや、むしろ皆で曲を演奏してるかな。ぼっちが書いて、わたしが音を乗せた、最高にイカした曲をさ」
「えぇ、違いありませんね」
ステージで演奏していたバンドが出番を終え、深々とお辞儀をする。彼らに対し心からの敬意を込めた拍手を送りながら、そう呟いた。
その後もリョウさんと出演バンドを眺め、ああでもないこうでもないと批評家みたいなことを言い合っているうちに、全バンドの演奏が終わった。これだけ多くの人が集まっているわけだし暫く混み合ったままかと思いきや、意外とお客さんもバンドの人たちもスムーズにお店を出ていった。夜もそれなりに遅いし、早く帰りたかったのかな。
大体の人がSTARRYを後にしたタイミングを見計らい、気分転換に外の空気を吸いに外に出たら、偶然店長さんと鉢合わせた。あれ、中でのお仕事は?
「大丈夫大丈夫、虹夏が代わりにやってくれてると思うから」
店長さんがけろりと言う。あぁ、また虹夏ちゃんの心労が...。
「あっ、そうだ。ぼっちちゃん、ちゃんと憶えてるよね? 忘れたとは言わせないよ」
店長さんの言葉に、わたしは首を傾げる。はて、何のことやら。
「あー... 忘れてるな、これは? ま、でも約束したわけだし、いいよね」
「あ、あの、だから何を仰って... ひぃぃん!?」
状況がわからず狼狽えていたら、突然店長さんが抱きついてきた!? え、え、何これ!?
「はぁぁぁ... ぼっちちゃんあったけぇ...」
「... あ、あの、く、くるしい...」
「うっさい、言質は取ってあるんだ。大人しくしてろ」
「あっあっあっ」
そ、そういえば仕事が始まる前の話の流れで、そんな約束してたかも。でも、正直冗談だと思ってた。店長さん、本気だったんだ...。
バイト先の店長が、バイトの女の子に思いきり抱きついてる。別にわたしは嫌ではないけど、字面だけだと犯罪臭がすごい。
「... ぼっちちゃん。さっき虹夏たちとしてた、夢の話だけどさ」
店長さんはわたしからすっと離れて、いつも飲んでいる林檎ジュースのパックを徐に取り出し、ストローを差した。そのまま中身をすすり、溜息をつく。
「私が思うに、あれってぼっちちゃんの恐怖心なんじゃないかな」
「きょうふ、しん」
「そう、恐怖心。虹夏もそれっぽいこと言ってたけど、バンドマンは音楽がないと生きていけない。その上、ぼっちちゃんはここ最近で孤独じゃない時間を知ってしまった」
「え? で、でも、孤独じゃないことって悪いことじゃないのでは...」
「だからだよ」
店長さんの一言に、わたしは圧倒される。店長さんは、林檎ジュースを飲みながら続ける。
「ぼっちちゃんの夢なんだから、音楽のことを憶えている虹夏たちがいてもおかしくはない。せめて、少なくとも確実に出てきていた喜多だけでも」
「そ、それは...」
「でも、そうじゃなかった。『世界には音楽なんてない』っていうのが絶対的な真理で、ぼっちちゃん以外は誰もが何事もなく、そんなクソみたいな世界で生きている。きっと、私自身も」
夢の中で、STARRYを訪れたことを思い出す。若干記憶が朧気になってはいるが、その場所がただの更地だったことは未だに忘れられないでいる。
「ぼっちちゃんは、取り残されていたんだ。音楽を知っているぼっちちゃんだけが異質な存在で、私たちに頼りたくても、それは叶わない。もしこの世界のぼっちちゃんが、私や虹夏たちと出会っていなかったら、そんな苦しみは味わっていなかったはずだよ」
奇しくもね、と店長さんは吐き捨てる。それは、その通りだ。 最近、結束バンドの皆や店長さんたちの存在が、自分の中でどんどん大きくなっていることを認識しつつある。だからこそ、あの悪夢の世界でもわたしは、皆の影を探していたんだ。
「大好きなものを奪われた世界で、たった独り。そんなの、誰だって嫌になるよ」
それは陽キャの方でもですか、とわたしの問いかけ。当然だ、と店長さんの返答。即答ですかそうですか。それが人間の本質ですか。
「だからさ」
店長さんが、再び力強くわたしを抱きしめる。恥ずかしいけど、何だかあったかい。
「もしこっちの世界で、嫌なこととかあったらさ。例えば私を頼ってくれても、いいんだよ。私、頼りないかもだけど、ぼっちちゃんの味方だからさ」
店長さんは、ちょっぴり... いや、割と普通に怖いけど。わたしのことを嫌わないで、支えてくれている。それが店長さんの優しさなんだと、わたしは理解した。
「... はい!」
外は凍てつく寒さでも、わたしの心はぽかぽか温かい。こんなぬくもりを貰えるのなら、ぼっちじゃない生活も悪くないのかな。
「... それで店長さん、そろそろ離して...」
「駄目だ。私が満足するまで抱き枕になってもらう」
「ひぇぇ...」
前言撤回。流石に暑すぎ。
結局、5分も抱擁され続けていたわたしは、虹夏ちゃんが外に出てきたことで解放された。案の定、店長さんは虹夏ちゃんにおしおきされていた。お労しや、店長さん...。
STARRYに戻ってきたら、そこにはリョウさんと喜多ちゃんしかいなかった。虹夏ちゃんと店長さんは外だし、PAさんは裏方のお仕事が残っているのだそう。
「ひとりちゃん、お疲れ様! 今日のライブも凄かったわよね!」
ウキウキ気分の喜多ちゃんは、出演者の人と撮っちゃった、と言いながら写真を見せてくる。今日の出演バンドの中でも一際陽の者って感じの人たちとの自撮り写真。いかにもSNS映えを狙った構図で撮られたそれを、わたしとリョウさんにぐいぐいと見せつける。
「や、やめてくれ郁代、その写真はわたしたちには眩しすぎる」
「あ、あがががが...」
リョウさんは全力で拒否し、わたしは顔が崩れていく。それにも関わらず、喜多ちゃんは次々ときらきらな写真を見せてくる。喜多ちゃんのこういうところ、鬼畜だと思います。
「ぼ、ぼっちちゃん!? あわわ、またやすりがけしないと...」
遠くで響く、虹夏ちゃんの声。その声よりも前に、喜多ちゃんが完璧な動きでわたしにやすりをかけている。
そんな意味不明なやりとりをしているうちにわたしの顔は修復され、虹夏ちゃんと、遅れて店長さんも入って来たことで、喜多ちゃんが撮った写真の鑑賞会が始まった。最初こそ拒絶反応が出ていたが、だんだんと冷静に見られるようになってきた。
「あっ、このバンド知ってる! この前のライブでも演奏してたよ」
虹夏ちゃんの声。言われてみれば、確かに来ていた。ベースの音が特徴的だった記憶がある。
「おぉ、このバンド。ぼっち、見て見て」
リョウさんの声。あ、さっきリョウさんと一緒に見てた人たちだ。丁寧なカバーで場を盛り上げていた、あの人たち。
「えっ、ひとりちゃんとリョウ先輩、二人きりでそんなことしてたんですか!? ずるいずるいずるーい!!」
喜多ちゃんの声。いや、そこに食いつくんですね。たまに小学生みたいなノリになる、面白い人です。
それにしても。こうして見ていると、写真の中で笑う人たちは、皆ばらばらの方向性を持っているらしい。一括りにバンドマンと言っても、きらきら陽キャ系や清楚な真面目系、ヴィジュアル系にアイドル系。これ程までにまとまりのない趣向を持つ彼らが、『音楽』の名の下に結束して、このライブハウスの階段を下っていく。
彼らにとって、音楽とは何なのだろう。少なくとも他愛もない概念ではないとして、人生の中でどんな位置にあるのだろう。
わたしは、ここ最近酷い夢を見続けている。音楽が存在しない世界に、閉じ込められる夢。
わたしにとってそれは、人生の意味を奪われたも同然だ。音楽を奪われたわたしは、もうわたしの形には戻れない。いつもの発作ではなく、二度と、永遠に。
今日STARRYを訪れた全員が ─あるいは、音楽に関わる全ての人が─ わたしと同じことを絶対に考えるとは、思っていない。それこそ一瞬で燃え尽きる流星のような、眩しく儚い思い出を作ろうとしている人たちもいて良いし、他の仕事をしながら趣味の範疇で粘り強く続けている人たちもいて良い。彼らの生きる世界は、まさに多様性の象徴なのだ。
しかし。わたしは、強く思う。
音楽のない世界なんて、ひどく空虚でつまらない。
これだけは、この一言だけは、確実に全員と共有できる。例えば現代にジミ ・ ヘンドリックスやジョン ・ レノンが生きていたとして、彼らもきっと同じことを言うだろう。
わたしの生きる世界には、音楽がなくちゃいけないんだ。そして、その隣には、音を聴いてくれる人が、あるいは音を一緒に奏でてくれる人が、いてほしいんだ。それは、“ギターヒーロー” も、 “結束バンドの後藤ひとり” でも、そしてただの “後藤ひとり” であってもなお、何ら変わらないんだ。
だから。
「あ、あの。皆さん、ちょっとだけいいでしょうか」
一瞬だけきょとんとした顔を見せた後、そこにいた全員が頷く。
「きょ、今日は、わたしの夢のお話のせいでご心配をおかけしました」
誠心誠意、皆に頭を下げた。すかさず虹夏ちゃんが反応する。
「そんな謝らないで! あたしたちは、ぼっちちゃんが元気になってくれればそれでいいんだよー」
虹夏ちゃんは、そう言っていつもの笑みを見せる。嗚呼、君はどうしてそんなに優しいんだ。
「思い詰めるよりは楽しんだほうがいい。ぼっちの現実には、わたしたちがいる」
「そうよ、わたしたちは家族も同然なんだから!」
リョウさんも喜多ちゃんも、そんなことを言ってくれる。結束バンドの存在がわたしにとってどれだけ救いになっているかを、理解している目だ。
一息ついて、わたしは話を続ける。
「今日一日で色々考えまして、わたし思ったんです。わたしは、本当に音楽が大好きなんだと。結束バンドの一員として音楽活動をするのが、本当に大好きなんだと」
無論、ギターヒーローとしての活動も大事に思っているけど。それは、今は言わなくていい。
「だから、その... こ、これからも、わたしと一緒に、お、音楽を...」
あ、どうしよう。肝心なときに限って、ちゃんと声が出ないよ。本当にダメダメだ、わたし。
「えぇ、喜んで」
俯くわたしの前に、喜多ちゃんが手を差し出す。わたしは、泣きそうになりながらも、その手にそっと触れる。柔らかくて、でも日々のギター練習によって一部が硬くなった手に。
「ぼっちちゃんがいないとあたしたちも寂しいもんね! ぼっちちゃんがいてこその結束バンドでしょ!」
「結束バンドは、色んな個性が集まってできてる。虹夏の言う通り、ぼっちの色もなくちゃ駄目だ」
「私は厳密には部外者だけど、虹夏の姉として、そしてぼっちちゃんの味方として、ぼっちちゃんのことを助けるし、見守ってるよ」
虹夏ちゃんとリョウさんも、更には店長さんまで、次々と手を差し伸べてくれる。どうしたらいいか悩んだ末、皆の手を重ねて円型に陣を組んだ。自分はバンドメンバーじゃないから、と逃げようとする店長さんを虹夏ちゃんと一緒に捕まえて陣に引き戻して、ほっと一息。
まさか、わたし自らの意志で円陣を組む日が来るなんて。少し前まで、絶対に有り得なかった光景だ。これから、そんな体験を幾度も重ねていくのかな。
「こ、これからも、どうぞよろしくお願いしますっ。結束バンド、が、頑張ろー!」
「おーー!!」
慣れないわたしの音頭に合わせて、下北沢の小さな一角に、結束の掛け声が響いた。
... 夢を見た。
目を開けると、そこは学校の教室。わたしは、自分の机に突っ伏して眠っていた。
視界は薄暗く、彩りに欠けている。わたしは、誰にも聞こえないように溜息をつく。
耳を澄ます。クラスメイトの会話に、意識を向ける。次の授業の話、部活の話、恋愛の話、ドラマの話、ペットの話、などなど。多種多様だけど、音楽の話だけは聞こえてこない。
また、深い溜息をつく。また、これか。もう面倒くさいから、今日は寝て過ごそう。わたしは、音楽のある世界を歩んでいくんだ...。
「えぇっとぉ... このクラスに、"後藤ひとり" さんはいますか?」
そのとき、引き戸の向こうから声が聞こえた。この声には、聞き覚えがある。しかし、わたし自身が反応するよりも前に。
「えっ、喜多ちゃん!? どうしたのさ急に、てか今日もかわいいな!」
「ねーねー、今度うちらと遊び行かない?」
「喜多... ちゃん... すき...」
クラスの空気が、どっと盛り上がる。そう、この少女は学年でも屈指の人気者。そして、少なくともこの世界では、わたしと関わるはずのない人。その、はずなのに。
「あー、ごめんね? ちょっと今は用事があるから、後でね?」
熱烈にアピールするクラスの面々を躱して、彼女は室内をすたすたと進む。何が起こっているのか理解できず、わたしは硬直したまま動けない。
「... 後藤さん、だよね? わたし、喜多っていうの。よろしくね」
こんなド陰キャ相手でも、気さくに笑いかけてくれる。本質は変わらないのかな。あと、さりげなく下の名前を隠そうとしているところも。
「... ど、どうも... はじめまして... ご、後藤です...」
もどかしい。喜多ちゃん相手に「はじめまして」を言わなきゃいけないことが。たとえ、相手がわたしのことを知らなくても。
「そ、それで... 何か、わたしにご用でも...?」
怯えながら尋ねると、喜多ちゃん... 喜多さんはふふっと笑って、一旦クラスの外に出ていく。間もなく、彼女は何かを背負って戻ってきた。
「これ、後藤さんのだよね? 何でかはわからないけど、わたしの家に置いてあったのよ」
え、何故喜多さんの家にわたしの持ち物が? などと疑問符を浮かべるより前に、喜多さんはそっと持ってきたものを差し出した。
「こ、これ... これは... で、でも、どうして...」
下に向けて広がっていく、特徴のある形状のバッグ。受け取ると、そこに確かな重みを感じる。そっと中を覗くと、金色のパーツのついた黒い『それ』が収められていた。
無意識のうちに、中身を取り出して肩にかける。お父さんから借りた、黒のレスポールカスタム。この世界にあるはずのない忘れ形見。そして、わたしの大事な宝物。
「わたしには、これが何なのかはわからない。でも、不思議。後藤さんがそうやってるのを見てると、胸が締め付けられそうになるの」
喜多さんが、俯いてそう言う。ちらりと見えた指先は、弾力感こそあれどギタリスト特有の硬さは見受けられない。
この世界の喜多さんは、まだ音楽を知らない。それどころか、この世界がずっと続くなら、彼女は他の全ての人間と同じように、音楽を知らないまま死んでいく。それが、決まりきった運命であるかのように。
でも。そんな未来は、ここで終わる。終わらせてやる。
「ご、後藤さん!? 何、やって...」
ピックを持って、チューニングを確認。音は、ちゃんと鳴った。微調整すれば、問題なく弾ける。
戸惑いの声が、周囲から聞こえる。そんなの、知らない。
すっと息を吸う。やっとわかった。この夢での、わたしの役割が。音楽がない世界に閉じ込められているのなら、わたしが音楽を創ればいいんだ。そうして、この世界を『音楽がある世界』に変えてしまえばいいんだ。
今、わたしは、この最悪な世界と、決別する。あまり理想通りには事は進まないけれど、最高の音楽と大好きな皆が待っている、明日に出会うために。そして、再びこの夢を見てしまったとしても、少なくとも現実と同じくらいに音楽を、楽しめるようにするために。
音楽のない世界なんて、ひどく空虚でつまらないのだから。
学校が終わったら、虹夏ちゃんとリョウさんに会いに行こう。店長さんにも、PAさんにも、お姉さんにも、1号さんと2号さんにも、勿論ふたりや両親にも。この夢から醒める前に、喜多ちゃんが届けてくれたこのギターで、わたしの音を届けに行こう。
そして、今は、喜多ちゃんに。
「き、喜多さん。わたしのこと、見ていてください... いいえ」
喜多ちゃんとギターだけに意識を集中させて、もう一度だけ深呼吸。覚悟は、決まった。
「聴いて、ください」
走り出した虎は、止まらない。
--fin--
[あとがき]
はい、ということで終わりです。かき鳴らせ、雷鳴を!!
私は、冒頭でも述べた通り『ぼっち ・ ざ ・ ろっく!』についてはアニメ勢です。一応、アニメは全話視聴済です。ぼっちちゃんの形態変化 (この時点で何かがおかしい) の多彩すぎる映像表現で大いに笑い、ぼっちちゃんたち結束バンドの成長に胸が熱くなりました。
ライブシーンも本当にかっこいい。登場した楽曲はどれも名曲で、そこに乗せられるサウンドと歌声が更に味を出しています。因みに、私の個人的なお気に入り楽曲は『星座になれたら』です。イントロから魅力的すぎる...。
余談ですが、作者は穏健なぼ虹派です。それにしてはぼっち総受け気味 (しかもぼ喜多多め) だった気もしますが...。あと、廣井さんを出せなかったことは作者の実力不足です。ごめんなさい。
最後になりますが、ここまで読んでくださった方に心から感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。
[これまで書いたSSリスト (順次追加) ]
・ 『あお 「くじら座の変光星の女の子」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3596&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29338408.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17271872
・ 『変な生き物 「遂に誰からも本名で呼ばれなくなった」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3602&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29371224.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17272934
・ 『クレア 「わたしは鍵の管理人」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3607&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29421806.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17274145
・ 『クロ 「この丘から見える星空は」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3619&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29460066.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17278807
・ 『きらら 「ツンツーンください!!!!!!!!」 サンストーン 「いきなりでけぇ声あげんなよ うるせぇよ」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3637&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29571518.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17279756
・ 『みさ「みらがかわいすぎて生きるのがつらい」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3650&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29631528.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17280762
・ 『シャミ子 「杏里ちゃん、一緒に帰ろ?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3668&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29760440.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17285569
・ 『千矢 「風邪を引いた夜のお話」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3681&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29831832.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17286656
・ 『スズラン 「飯奢ってくれ」 ロベリア 「図々しいわね、呪うわよ...」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3702&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29946896.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17289587
・ 『シャロ 「貴方が教えてくれること」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3720&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/30014131.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17291478
・ 『みら 「あおー、ぼくの着替え知らない?」 あお 「!?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3727&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/30053806.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17291693
・ 『舞 「わたしが歩んできた道は」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3742&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/30108512.html
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17293779
・ 『千矢 「山で遊んだお話」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3754&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17318983
・ 『あお 「みらが知らない女性と仲良く話してる」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3764&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17415852
・ 『ランプ 「うつつさんがきらきらしています」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3770&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17474617
・ 『ユウ 「クラスのみんなにおでこぱしーしまくってたら海果がすねた」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3775&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17523413
・ 『桃 「シャミ子、ごめんね...」 シャミ子 「...」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3781&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17572005
・ 『あお 「君の心を覗きたいんだ」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3793&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17654759
・ 『小春 「全然釣れないよー」 ??? 《諦めないで!》 小春 「!?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3801&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17717125
・ 『みら 「このレンズの向こうには」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3809&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17771186
・ 『あお (幼) 「こんにちは」 ニコッ みら 「えっ...?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3824&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17916835
・ 『メディア 「よければ一緒に」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3830&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17952603
・ 『琴音 「もふもふ」 ファー 「琴音、どうしたの?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3842&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18057909
・ 『ココア (2部) 「しゃーろちゃんっ♪」 シャロ 「こ、ココア!?」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3864&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18246741
・ 『悠 「セルリアンブルーの空に」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3888&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18480361
・ 『ランプ 「もし、わたしが貴方のことを好きだと言ったら、どうしますか?」 サンストーン 「いや知らないが」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3919&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18735570
・ 『シュガー 「ソルト、びょーきなの?」 ソルト 「い、いえ。そんなことは」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3935&ukey=0
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18970078
・ 『ひとり 「音楽のない世界なんて、ひどく空虚でつまらない」』: このSS
夢の世界と現実の世界の狭間で反復横跳びを繰り返す姿があまりにも見ていられなかったから喜多ちゃんが助けにきた説
廣井さんが登場したらこの物語の雰囲気が45°くらい変わりそうですね。そう思ったら登場しなくてよかったかも…
創作意欲の赴くままに書く、やはりそれが大切ですよね。そして色々な作品の話を書けるのはすごい!
音楽の存在する現実で『ぼっち』だった後藤ひとりが、結束バンドで繋がった物語の先、音楽の存在しない世界でただ一人音楽を知る、現実よりも絶望的な『ぼっち』になってしまった彼女が、夢の中で現実からの力を受け取って、音楽の存在しない世界で雷鳴を掻き鳴らす物語…
痺れました!結束バンドの繋がりの力がぼっちちゃんを掬い上げていく温かさと、音楽の存在しない世界に挑んでいく力強さに胸が熱くなりました!やっぱり彼女はギターヒーローだった…
素敵な作品を見させていただき、本当にありがとうございました!
>>74
作者です! カレル様、いつもコメントありがとうございます!
作者の想定では現実の喜多ちゃんと夢の世界の喜多さんは別人ですが、もしかしたらぼっちちゃんを想う喜多ちゃんたちの気持ちが、ぼっちちゃんを介して夢の世界に変化をもたらしたのかもしれませんね。喜多ちゃんたちもぼっちちゃんのヒーローなんだ...。
廣井さんについては、予定では頼れるお姉さんとしての一面を強調するつもりでした... が、ちょっとお酒成分が強すぎるかな。結構好きなキャラなんですけどね。
執筆欲求モンスターがね、言ってたの。湧き出てくるパッションに人間は抗えないって...。たまには () 従ってみるものなんだなぁ...。
>>75
作者です! コメント感謝です!
そう言っていただけてとても嬉しいです! 少し複雑な構成になっていましたが、相当お楽しみいただけたようで。
ぼっちちゃんは、結束バンドの活動を通して友人たちとの触れ合いを知りました。音楽に身を捧げてきた少女にとって、今やそれは愛する音楽と同じくらい大切で心強いものとなっています。
彼女たちに自分の悪夢について相談できるようになったこと、言ってしまえばそれ自体がぼっちちゃんにとっての成長で救いです。改めて、本当に素敵な出会いをしたのだと思わずにはいられません。
それを踏まえて、自らの最悪な夢に立ち向かうぼっちちゃん。もしかしたら、ぼっちちゃん自身もまた、"後藤ひとり" という女の子にとってのヒーローなのかもしれません。
拝読しました!!音楽が存在しない世界を通じ、結束バンドとこれまでの仲間の価値を再認識する感じ好きです。実際あり得ないとは言い切れない話...でも、現実世界からの声援を受け取り、そんな後のない世界に光を照らそうとする姿はまさにギターヒーローですな。
内容もですが、文体も流石ですね。普段変顔で溶けてるイメージの強いぼっちの内面が生々しく描かれてるのが....普通にしてれば美少女なのに...
ギターヒーローとしては、光るものがあっても、それを活かせる環境がないと...対人力がないと...というのに気づいたのは特に効いてきますな。
あと、ぼっちのハーレム感好きです、無自覚な人たらし、店長そこ代われ(殴
>>78
作者です! 求道者様、コメントありがとうございます!
独りぼっちだったぼっちちゃんが、仲間との絆に支えられて自らのギターで孤独を切り拓いていく... 自分で言うのはちょっとアレですが、なかなか良いストーリーが作れた気がします。
「普通にしてれば美少女」...? 何を言っているんだ、ぼっちちゃんはかわいいからいいんだよ (伊地知星歌)
横道にたっぷり逸れ、遠回りしながらもちょっとずつ成長するぼっちちゃん... 意外とこの漫画、『まちカドまぞく』並に少年漫画みたいなストーリー構成してますよね。尤も、はまじあき先生のルーツは少女漫画ですが...。
いつか、想像じゃなくて実際に某有名音楽番組に出演して、イノ先輩 (地) みたいな生態してる眼鏡の司会者と対談するぼっちちゃんとか、見てみたいですね!!
ぼっちちゃん総受け概念、いいよね! ぼ虹推しだけど他の子とも仲良くさせたい。次々と関わる人の脳を焼いていく魔性の女ぼっちちゃん...
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