こんにちは!カレルと申すものです
これで6作目ですね。こちらは「アニマエール!」の二次創作です
本作のタイトルは「鈍痛」
今回は虎徹と紺の通称「こてこん」をテーマにした話を展開します
シリアス方向に大きく舵を切っているので、苦手な方は閲覧をお控えください
最後に「こてこん」をリクエストしてくれた方へ、私の解釈でかいたのでお眼鏡に適うかはわかりませんがお楽しみください。
注意事項
*キャラクターの独自解釈
*独自設定
*原作との乖離
*妄想
*シリアス
等が含まれるので苦手な方は注意してください
【鈍痛】
「虎徹、元気ないけど何かあった?」
「ううん、何でもないの」
「…なんでもないならいいけど、あんま無理しちゃだめだぞ」
「うん。ありがとう宇希ちゃん」
練習が始まる前に言われた一言
宇希ちゃんに、はぐらかしたけど私はいま悩んでいる。
でも今は練習中、雑念は排除しないと。トップのこはねちゃんを落としてけがをさせてしまう。
チアのスタンツは練習を重ねてすべて覚えているつもりになっていても、小さな失敗で崩壊してしまう。
そんなことがおきないように、集中しているつもりだったけど。つい思い出してしまった。
練習が終わって、スタンツの構成を確認していると
「こてっちゃん、どうしたの?」
「虎徹さん、悩みがあるのですか?」
「虎徹、あなたらしくないわよ」
「虎徹先輩?」
みんな口々に心配して声をかけてくれた。
それがとてもうれしいけど、みんなに相談したらきっと迷惑になってしまう。こはねちゃんに言ったら絶対に親身になって考えてくれる。
それが私にはたまらなく嫌なことであることを知らずに。
嘘のことを言っても一緒に悲しんだり怒ったり笑ったりしてくれるんだろうな、本当のことを知らずに。
「あっ!ダイエットに悩んでるの?」
「そ、そうなんだよ!いつも食べすぎちゃって、今日はあんまり食べてないんだよね。ははは…」
「そうなのですか、我慢は体に毒ですよ」
本当のことを言えたらどんなに楽なのかな。
でも本当の悩みを話してしまったら、今まで思っていたこと全部が出てしまう気がする。
大切な仲間にそれを背負わせるなんてことは絶対にさせられないし、勇気もない。
「…虎徹、食べてないなら食べないと。ちょうどドーナツ屋に寄るから一緒にいくか?」
「えっと、私はいいけど、みんなは?」
「私は行くー!!」
「こはね、ちょっと」
宇希ちゃんは、こはねちゃんを連れて部屋を出ていった、けどすぐに戻ってきた。
「え、えっと私は明日提出する課題をまだやっていないから、えっと、無理だよ」
「…ひづめ、私たちも帰りましょうか」
「えっ、ええ」
花和ちゃんもこはねちゃんのバレバレの演技に気を遣って帰る準備を整え始めてしまった。
「私も帰らせていただきます」兎和ちゃんも帰る準備をはじめている
こはねちゃんのバレバレの演技は宇希ちゃんの入れ知恵だと思うけど、私と一対一で話そうとしているみたい。
宇希ちゃんは私の不調の原因がお腹が空きすぎているのではないと、気づいているだろうな。
だから、こはねちゃんを説得して帰るように言ったりしたんだと思う。
花和ちゃんも私の違和感に気づいていたから、気を遣ってひづめちゃんと一緒に帰ったんだね。
別の意図も含まれていそうだけど。
宇希ちゃんの人を思いやる心やまわりを見る力は素直に尊敬できる、こはねちゃんのフォローなんて絶対にできない。
私だったら問題が解決するまで放っておいたり、ただ自分のことで精いっぱい、他人のことまで考える余裕はない。
「虎徹、行くぞー」
「ま、まって」
宇希ちゃんが呼んでる、私は足早に鞄をとって視聴覚室から出た
もう季節は冬、日が落ちるのもだんだんと早くなって肌寒さがきつくなってくるころ、西日を正面に受けて私たちはドーナツ屋に向かっている。
宇希ちゃんはいつもこはねちゃんと一緒にいて、二人っきりになったことがあまりないから、今更だけど少し緊張する。
どんな話をしたらいいのか、正解が分からないのでとりあえず、外れがないチアの話をしよう。
「宇希ちゃん、来週の本番、今からでも緊張しちゃうよね」
「ああ、そうだな でも虎徹も振り付けをかなり覚えているみたいで、精度がかなりあがっているぞ。何度も練習して体に覚え込ませれば、きっとうまくいくって」
いまはこの話題だけで精いっぱい、いつ私の悩みに関する話題を振られても適切にこたえられるように、必死に考えるのに割いている。
…軽くなれたら…
歩いているうちに、いつもの河原に出てきた。
風を遮るものが何もない場所だから、吹きすさぶ強風で体温が奪われる。
「はぁ〜寒い」
「結構寒いな あっ!そうだ良いものがあったぞ、ちょっと待ってくれ」
そう言うと、宇希ちゃんは立ち止まって鞄をガサゴソとあさり始めた。
「はい、虎徹」
そういうと、暖かそうなクリーム色のマフラーを渡してくれた。
「ありがとう、宇希ちゃん」
さっそく、つけてみる
『宇希ちゃんの匂い』
こはねちゃんと抱き合った時に香る、元気を感じるようなさわやかな匂いとは全く違う、安らぎを与えてくれるような匂い。
この匂いを嗅いでいると、昔のことを思い出してしまう。
今は別の“臭い”に変わってしまった、懐かしい香り
「おーい、虎徹大丈夫か〜?」
「あっ、だいじょうぶだよ」
中学での日々をつい思い出してしまった。あの娘と毎日一緒にいた記憶が。
「よしっ、ここでいいかな」
「え?ここ!」
ここは河原の真ん中、目的地までは少し距離があるし話を切り出すタイミングでもないような気もするのに。
「兎和、そこにいるんだろ」
宇希ちゃんは、近くの大きな木に向かって呼びかけると、しばらくして、ガサゴソと音がしてきた。
「見つかってしまいましたか…」
と、木陰の方から兎和ちゃんの声がしたけど、姿が見えない
「おーい、なんでこんなところにいるんだー」
「えっと、宇希先輩と虎徹先輩の珍しい組み合わせだったので、漫画のネタの調達に後をつけたのです」
「それだったら、私たちと一緒に来ればよかったのに、こんな寒い中木に登ることもなかったよな」
「でも言わなかったおかげで、最高のシーンが浮かんできました、ありがとうございます」
「まったく、兎和は」
「あの、失礼ですが先輩方、降りられないので降ろしてもらっていいですか」
「おいおい、今日はこはねがいないのにいるようなきぶんだ。手伝うからおりてこいよ」
私は指示を出している声と、葉っぱと枝が擦れる音を聞きながら、土手に腰掛けて、必死に言い訳を考えていた。
宇希ちゃんを納得させるような言い訳は浮かばないけど、まだ兎和ちゃんが降りてくるまでは時間がかかりそうだから、じっくりと考えられる。大会ももうすぐだし、私ひとりの悩みで大会に水を差したくない。私の悩みは私一人で解決できる。
格闘する二人を見ながら数分が経っていた、兎和ちゃんは数分前と少し変わって脚が少し見えている。
でもまだ降りられないみたい、宇希ちゃんも業を煮やして、私の助けを呼んできた
「おーい!虎徹、兎和を降ろすのを手伝ってくれない、私ひとりじゃひづめみたいに支えられないから」
「あっ、ごめんね宇希ちゃんぼーっとしてて」
いったん考えることを中断して、宇希ちゃんの加勢に向かった。
「ありがとうございます、宇希先輩、虎徹先輩」
「以後こんな無茶したらダメだからな」
「はい、すいません」
「まったく、せっかくここまで来たし一緒に行くか?ドーナツ買ってあげるけど」
こんなやり取りを見ていると、自然に言葉が出てくる
「宇希ちゃん、お母さんみたいだね」
「お、お母さんって、先輩っぽいて言うところだろ」
「宇希先輩がお母さん…」
「!? 新たなネタが浮かんだので帰っていいですか?」
「えっ?いいけど…」
「では失礼します」
そういうと、兎和ちゃんは一目散に河原の土手を駆け上がって、見えなくなってしまった。
「ははっ、いっちゃったね 夢に向かって一直線って感じで眩しいよ」
「うん、そうだな。でも虎徹は『自由人すぎるよ!』とか言いそうなのにな」
「もう、私の口もだんだん堅くなってるんだよ」
「そうだな、私たちと会ってもう二年だもんな、成長もするか」
…もやもやは消えないのに…
「ん?虎徹何か言ったか」
「ううん、何でもない。お腹の虫を消したいねって」
「そうだな、日も落ちて来たし急がないとな」
また私たちは、ドーナツ屋に向けて歩き始めた。
宇希ちゃんとはクラスも一緒で、部活でも一緒、何なら一緒にいる時間が今はあの娘より長いかもしれない。でも宇希ちゃんにはこはねちゃんがいてお互いを思いあっている。
それが今の私には見ていて少し辛くなる、大切な仲間なのにそんな考えが浮かんできちゃうのはどうしようもない。
でも私には今はチア以外何もない。
今はやりたいことがあるけどそれが終わったら、その先はまだ考えていない。
「虎徹、だいじょうぶか?」
「うん!大丈夫だよ」
二度も心配されちゃった。できるだけ表に出さないように心がけると、考えがめぐってしまって反応できなくなっちゃう。でも考えないとうっかり出ていくことにもなっちゃう。
宇希ちゃんにはわるいけどこの時間は苦痛だ。
はやく目的のものを買って帰って、考えを整理しないと。
「間違ってたらごめんだけど、紺のことでなやんでるのか」
「ど、どうしてそれを…」
今まで意図的に考えようとしなかった名前、宇希ちゃんの口からその名前が出てきて私の中に衝撃が走った。
「少し前から、紺に対する態度に違和感をもっていたから、もしかしたらって」
合っている、今私は紺ちゃんのことで悩んでいる。
「うん…そうだよ」
「悩んでいるなら、力になりたいんだ。こはね程じゃないにしても何か私でもできることがあるかもしれないんだ」
「えへへ、ありがとう 実は… あっ!もう店が見えて来たね」
「案外早かったな」
「話の続きは店でしようよ」
「いらっしゃいませ」
店の中は甘い匂いで、お腹が空いてくる。
カラフルなドーナツがショーウィンドウに並べられていて、見た目でも楽しめるようになっている。店内には高校生や部活帰りと思われる中学生など、まばらに人がいる。
「虎徹はなににするんだ」
「えっと、私はオールドファッションにしようかな」
「私はレアチーズマンゴーパイかな、あとココナツ チョコレート。」
私がオールドファッションを選んだのも、シンプルな見た目だから選んだだけで、特にこれが好きというわけではない、なんでもいい
宇希ちゃんが選んだ二つのうち、チョコレートはこはねちゃんのためのものなのかな。
…私にも分け合える相手がいれば…
「虎徹、待ってるぞ」
「あっ!ごめんなさい」
またぼーっとしてしまった。宇希ちゃんは会計を済ませて、席についている。
私も会計を済ませて、席へ向かった。
「お待たせ」
「おつかれー、まずは食べようか」
そう言って、宇希ちゃんはおいしそうにパイを食べている。
私もドーナツを食べるけど、いろんなことがいっぱいであまり味もわからないし、元気も出ない。
…はぁ、なんでなんだろ…
「虎徹?」
「あっ、ごめん さっきの話の続きだよね。話すよ、それは2週間まえ紺ちゃんと遊んだ時の事。もうすぐ冬休みだねって話してたんだけど、紺ちゃんが「冬休み中家族で旅行に行っちゃう」っていってて寂しくなっちゃたんだ。だから今日まで元気がなかったの」
「そうか…」
「あっ、ごめんね大した話じゃなくて」
「いや虎徹、とても大きなことだろ、私だって2週間以上こはねと離れることになったら、同じくらいへこむと思うし、話してくれてうれしいよ」
「宇希ちゃん… なんだか重荷が取れたようだよ」
「もうすぐ暗くなるし、食べ終わったら帰ろうか」
宇希ちゃんはまた美味しそうにパイを食べている。私もそれに倣いオールドファッションを食べ始めた。
「ごちそうさま、おいしかったな」
「うん、そうだね」
「さて、そろそろ帰るか」
私たちは店の外に出た、太陽は地平線に沈んでいって、代わりに白い結晶が降り注いでいる。
「わぁー!雪だぞ、初雪じゃないか」
「ほんとだね、本格的に降ってくるまでに帰らないとね」
「うん、そうだな じゃあまた明日」
「また明日ね」
「宇希ちゃん!」
「ん?なあに」
「宇希ちゃんから借りてたマフラー返してないよ」
「あぁ、良いってまた明日返してくれればいいから」
「わかった、じゃあね」
宇希ちゃんは別れを告げると、走って帰ってしまった
…ごめんね…
私も雪が本降りにならないうちに帰るために、走って家へと急いだ。
「ただいま」
帰っている途中に、雪はやんでしまっていたので制服は汚れていない。
自室に着くと、制服を脱いで、部屋着に着がえてベッドに倒れ込んだ
…宇希ちゃん、ごめんね。すべて嘘なんだよ…
ハンガーにかけたクリーム色のマフラーを見ていると申し訳ない気持ちでいっぱいなっちゃう。
いつからかな、紺ちゃんが変わったのは。
私の幼馴染で一番の仲良しだと思っていたのに、現実は残酷だ。
宇希ちゃんに言ったことはすべて嘘、紺ちゃんについての悩みはあっているけど、そんな生易しいものではない。
それをすべて伝えてしまったら、絆が壊れてしまうような気がする。
私と紺ちゃんの関係みたいに。
だから、何も言い出せないし、変えることもできないと思う。
最初から、紺ちゃんの一番は私じゃなかったのかな、紺ちゃんのあこがれの人には絶対に敵わないよ
紺ちゃんの変化が表面に現れたのは、夏休が終わって新学期が始まったころ…
.............................
[新学期]
虎徹「おはよう 紺ちゃん」バッ
紺「あっ、こっちー久しぶりー」
虎徹「もう、紺ちゃん最近忙しかったとはいえ一週間会ってないだけで久しぶりはひどいよ」シュン
紺「ごめんごめんって」アワアワ
虎徹「紺ちゃん知らない」プクー
紺「ほら、お菓子あげるから機嫌直して」ホイ
虎徹「私はそんな甘くないよ」エヘヘ
虎徹「あっ!そうだ紺ちゃん学期明け早速だけど、一週間後にチアの大会があるんだ、だから応援に来てくれないかな。」ウワメヅカイ
紺「応援するのを応援って、面白いねこっち」ハハッ
虎徹「紺ちゃんが来てくれたら、もっと頑張れるような気がするのだからね」
紺「はいはい、わかってるよ」フラフラ
虎徹「一生懸命、夏休みの間練習したから見ごたえがあると、思うよ」ズイ
紺「よし、こっちの熱意に感化されちゃったよ」ウオー
虎徹「じゃあ」ガタッ
紺「うん、絶対行くよ」ニコッ
虎徹「ありがとう!紺ちゃん」ギュッ
こはね「おっはよー」ガララ
宇希「おはよう」
虎徹「宇希ちゃん、こはねちゃんおはよう」
こはね「二人でなんの話してたの」タタタ
虎徹「えっと…」オドッ
紺「ひ み つ」フフッ
こはね「えー!きになるー」ブンブン
宇希「こはねもその辺で、ホームルームが始まるぞ」
こはね「はーい じゃあね」
.............................
そのあと、一週間後の大会には紺ちゃんの姿は見えなかった。
チアが終わった後に観客席を探し回ってもいなかったし、電話しても繋がらなかった。
大会の結果は予選突破だった。
みんなで最高の演技ができたことは、今でもいい思い出になっている。
紺ちゃんが見ているとたかをくくっていた、だからいつも以上手ごたえを感じて演技を終えることができた。
みんなと喜びあった後に絶望がやってきたんだよね。
来なかった理由をあとで聞いたら
「先生が風邪引いちゃって看病してて行けなかった」と言っていた。
紺ちゃんのいう「先生」は家庭教師の先生だ。
もちろん大切な人の病気ということだから、優先してしまうのもわかる。
わかってるけど、心の底では紺ちゃんに裏切られたという印象がへばりついてしまった。
私は所詮、家庭教師の先生という紺ちゃんの大事な人には逆立ちしたって勝てないんだな、って思い知らされたよ。
むなしくなるよ。紺ちゃんを一番知っているのは私だったはずなのに。
ここからちょっとずつわからなくなっていったんだ
どうせなら嘘をついて、紺ちゃんが病気で行けなかった、って言ってくれたらどんなに良かったのか。
それでもいっぱい悩んで選択した結果なら受け入れることができるかもしれない。
そんな小さな希望にすがることしかできない。
紺ちゃんに見捨てられたら、私には何もないのに。
こはねちゃんのような底抜けの明るさもないし、宇希ちゃんのような面倒見のよさや大人っぽさもない。
花和ちゃんのような一途さもないし、ひづめちゃんのような安定感やすごさもない。
兎和ちゃんのような夢も持ってない。
すべてが中途半端にまとまってしまっている、ピアノはできるけどそれが夢ではない。
本当に私は秀でるものがないな。残っているものはチアしか…
次に絶望を感じたのは、大会が終わった月曜日。
本選で敗退して意気消沈していた時の事
.............................
こはね「うわーっ もっとチアしたかった!」バサッ
虎徹「…ごめんねこはねちゃん」ズーン
こはね「ううん、こてっちゃんが謝ることじゃないよ」スッ
宇希「そう、こはねの言う通り、辛いときは支えあう、チームなんだから一人が責任を感じる必要なんてないんだぞ」ビシッ
虎徹「でも、私が完全に足引っ張ってたし」ネガティブ
こはね「えいえい」ポンポンファサファサ
虎徹「え?何」ポカーン
こはね「いまこてっちゃんから、いやな感情を払ってるの」エイエイ
宇希「まったく、なにやってんだか」アキレ
虎徹「ぷっ、ははは こはねちゃん面白すぎるよ、ははは」ドッ
こはね「よかったーこてっちゃんが笑ってくれた」グッ
宇希「マジか、あんなのでも効果があるもんだな」カンシン
紺「おはよ、こっち、こはね、宇希」
みんな「おはよう、紺(ちゃん)」
紺「昨日のチアすごい良かったよ、結果は見ずに帰っちゃったからわからないけど、いい結果出せたの?」
こはね「えーっと」ズーン
紺「えっと、無神経な質問だったね」オズオズ
虎徹「ううん、いいの見に来てくれただけでもすごい嬉しいから」ニコッ
宇希「まぁ、こはねは放っておいて 私たちも結構頑張ったから次の大会では結果を残せると思うんだ」
こはね「よーし、次に向けて練習頑張ろうね」ピヨッ
虎徹「うん、そうだね」
宇希「そうだな、今まで以上に頑張らないとな」チラッ
こはね「もう、宇希は私を信じてよ」ギュッ
宇希「もう、しょうがないなぁ〜」テレテレ
紺「ちょっと、こっち先週の土曜日はいけなくてごめんね」コソッ
虎徹「うん、いいよ 大事な人だもんね」コソッ
紺「埋め合わせと言ったらなんだけど、今週の日曜日一緒に遊ばない」
虎徹「うん!いいよ 今週始まったばかりだけど待ち遠しいよ」キラキラ
紺「私も気合入れてお弁当作るから期待してて」グッ
.............................
[日曜日]
紺「おーい、こっちー」
虎徹「紺ちゃん、時間ぴったりだね」
紺「さすがに待たせるわけにはいかないからね」
虎徹「じゃあ、いこっ」グイッ
紺「おっ、ちょっとこっちー」ヨロ
〜田舎道〜
虎徹「今日は晴れてよかったね、夏の気配が消えて秋っていうかんじだよね」
紺「私の好きな季節だね、苗字にも「秋」が入ってるし運命かんじちゃうわー」フフフ
虎徹「もう、紺ちゃんったら でも秋っていい季節だよね、暑さも寒さもちょうどいい感じで、花粉症もないし無敵の季節って感じ」ルンルン
紺「それにこっちにとっては食欲の秋でしょ」チラッ
虎徹「紺ちゃん?」ニコニコ
虎徹「どこを見て言っているのかな?」ゴゴゴ
紺「ごめんって、冗談だから」
虎徹「もう、紺ちゃんったら」エヘヘ
虎徹「それに秋と言ったら芸術の秋だよ」
紺「こっちはピアノやってるからね、どう上達した?」
虎徹「かなり練習したから、チア以上に上達しているかもね」
紺「へぇ〜、こっちの演奏もいつかきいてみたいものだねぇ」シミジミ
虎徹「じゃあ、帰るときに紺ちゃんの家で演奏してもいい?久しぶりに演奏したいな」キラキラ
紺「おっ、いいね、帰るときも楽しみが見つかって一石二鳥じゃん」
虎徹「ピアノを披露するのもなんだか久しぶりだよね、いつもはチームのみんなに聞いてもらってるから、紺ちゃんに聞いてもらうのが逆に新鮮だよ」
紺「へぇ〜そうなんだ」ハハッ…
虎徹「そうだよ、紺ちゃん楽しみだね」キラキラ
紺「あっ!そうだ こっちお弁当作ってきたよ 家庭科部部員の威信にかけて制作した自信作だよ」ババーン
虎徹「紺ちゃん大げさすぎ、でもおいしそう」スーッ
紺「おいおい、お昼にはまだ早いよ、だからだからダーメ」パタン
虎徹「もう、ちょっとくらい味見させてよ」プクー
紺「はいはい、行くよ」タタタ
虎徹「ま、まって紺ちゃん」タタタ
紺「ほい、到着」
虎徹「はぁはぁ、紺ちゃんいきなり走り出して、お弁当が崩れたらどうするの」キリッ
紺「ははっ、ぶれないねぇ」
紺「でも着いたよ、ほら見上げてごらん」
虎徹「うわー! きれいな紅葉」パッ
紺「今は団子よりも花、いや違うか、紅葉だね」
虎徹「本当だね、山がすべてカラフルに変わっておいしそう」ジュルリ
紺「うーん、こっちには花より団子だったかぁ〜」ヤレヤレ
紺「でも、あとちょっとだから頑張ろう」
虎徹「うん、紺ちゃんのお弁当を食べるために頑張って登るよ」グッ
紺「がんばれ、って言ってもたいして登らないからそんな構えなくても良いけどね」
虎徹「え?そうなの、はやく言ってよ」フアー
紺「入り口でしゃべってても仕方ないから行くよ」
虎徹「は〜い」トコトコ
〜山の中〜
虎徹「わー、きれいだね」キョロキョロ
紺「ほんと、あとちょっとで本来の目的地に着くね」
虎徹「空気もきれいだしすごくいいね、肌寒いのはちょっとダメだけど」ブルル
紺「夏とかは入った瞬間、涼しさを感じるくらいだからこんなもんよ」サクサク
虎徹「あっ!この先開けてるね」タタタ
紺「ちょっ、こっちまってー」
〜広場〜
虎徹「みてよ、紺ちゃんすごい景色」バッ
紺「はぁはぁ、ホントだね、町があんなに小さく見えるや」
虎徹「こんな特等席でご飯が食べれるなんて夢みたい」
紺「これが夢だったら、私が無駄に疲れてるんだけどね」
虎徹「紺ちゃんごめんね」
紺「まぁ、走ることよりお弁当を完ぺきな状態を維持することに精神を使っただけだけどね」ゼエゼエ
虎徹「ほんと、紺ちゃんには頭が上がらないよ」アリガタヤ
紺「じゃあ、崩れないうちに食べよう」パカッ
虎徹「さっきも見たけどどれもおいしそう、おにぎりに卵焼き、から揚げにかぼちゃの煮物、どれから食べるか迷っちゃうよ」キラキラ
紺「ふっふっふ、どれも自信作だけど煮物の出来が一番いいかな」ハナタカ
虎徹「じゃあそれからたべようかな」
虎徹「いただきまーす!」パクッ
虎徹「うわっ、すごい美味しいんだけど」パクパク
紺「私が食べる分も残しておいてよ、いただきます」パクッ
紺「うん、我ながら文句なしのできばえだね、こっちデザートもあるから期待しといて」
虎徹「デザート!楽しみ」キラキラ
紺「まったく、こっちは甘いもののことになると目の色かえてね」
虎徹「うーん、おいしかったな〜」
紺「おお!重箱が空に、というわけでデザートタイムだね」ガサゴソ
虎徹「まってたー!」
紺「はい、ドーナツだよ 最近はチョコドーナツに作るのにはまってるけど今回はシンプルな方にしてみました」ジャーン
虎徹「紺ちゃん、天才?私が今食べたいものだよ」
紺「それってすごくない? 私天才だった!」キューン
虎徹「じゃあ いただきます」パクッ
虎徹「うん、とってもおいしい」キラーン
紺「わっ、おいしいな」
〜10分後〜
虎徹「いやぁ〜もう満足だよ」ポンポン
紺「えっと…こっち、言おうか迷ってたけど…」オズオズ
虎徹「なあに?紺ちゃん」ニコニコ
紺「いや、体重だいじょうぶなのかな〜って」シラッ
虎徹「えっ?えー−!!」ガーン
紺「いや、結構ドーナツ食べてたから心配になって、出した私も私だけど」
虎徹「紺ちゃん… 麓まで走るよ」バッ
虎徹「運動してカロリー消費しないと、体まで豚野郎になっちゃうんだよ」ハクシン
紺「おう… じゃあ走るか」ゴクリ
虎徹「じゃあ、スタート」バン
〜麓〜
虎徹「ふーっ、辛すぎ」ゼエゼエ
紺「もう、走ったから汗でびちゃびちゃだよ」パタパタ
虎徹「うん、着替えたいね」ゼエゼエ
紺「いったんそれぞれ家に帰って、お風呂入ってから演奏会しない」ハァハァ
虎徹「さっ、賛成〜」ゼエゼエ
紺「じゃあ帰ろっか」
〜自宅周辺〜
虎徹「紺ちゃんまた後でね」バイバイ
紺「おっけー、待ってるね」バイバイ
紺ちゃんと別れた後は、お風呂に入って、着替えをして、1時間後に行ったんだよね。
〜1時間後〜
虎徹「紺ちゃん、きたよー」ピンポーン
虎徹「あれ?反応がない まだお風呂にはいってるのかな」
虎徹「あっ、足音が聞こえる」ダダダ
紺「おっす、こっち待たせてごめんね」バタバタ
紺「でも、こっちメッセージ見てなかったの?」
虎徹「メッセージ?」
紺「そう、うちのピアノが故障してたからできないっていうメッセージ」
虎徹「えっ!スマホ家におきっぱで見てないよ」ワナワナ
紺「もう、うっかりさんだなぁ、こっちは」ギュッ
虎徹「紺ちゃん…」
虎徹 …そういうことなんだね…
紺「ん?何か言った」
虎徹「ううん、何でもないよ」ハハッ…
紺「今からこっちの家で演奏会しようか」
虎徹「ううん…いいよ 私、よく考えたらもうヘトヘトで演奏する力残ってなかったよ」ハハハ…
紺「大丈夫?こっち送っていこうか」
虎徹「だいじょうだよ、ひとりで帰れるよ」ヨロヨロ
紺「いや、ホントに大丈夫?」ピトッ
虎徹「本当にだいじょうぶだってば!!」ゴォ
紺「ご、ごめん」ビクッ
虎徹「ごめんね…」ヨロヨロ
.............................
そのあとは高熱を出して、3日くらい学校を休んだ。その3日間の記憶は全くない。
ただ、紺ちゃんの匂いに混じって別の臭いがしていたのは、昨日のことのように覚えている。
「はぁ…」
私は思いも伝えていないのに、家庭教師に紺ちゃんをとられたみたいに思っている。本当は私が悪いのに「家庭教師の先生」を悪者にしないと、心が耐えきれない。
もうだめなのかな、「こっち」に変えてもらった呼び名も今では完全に重荷だよ。
宇希ちゃんや花和ちゃんが呼んでくれる名前が一番安心するなんて思ってもみなかったし、
思えば、名前を呼ぶのを嫌がったのも紺ちゃんの後ろにいる存在を見ていたからなのかな。
紺ちゃんが変わったと思っていたけど、思い返すと私がただ拒絶し、紺ちゃんは前に進んでいるだけ。
私は昔の頃の紺ちゃんしか見ていなかったんだね。
変化に目をつぶって、紺ちゃんは私のなかでこう、と決めつけてただ押し付けていただけ。
紺ちゃんはちゃんと私のことを思って声をかけていてくれただけなのに。
「はぁ…」
もう外は吹雪になっている、窓から見える景色は何もなく真っ暗。
明日には雪が積もって白銀の世界になるんだろうな。
みんなで雪合戦したり、雪だるまを作ったりしてあそぶんだ。
そして昼ぐらいには雪は解けてなくなってしまう。
私と紺ちゃんの関係も、吹雪の後の晴れ空のようにとけたらなぁ。
「ピロン♪」
近くに放り出したスマホが鳴った
重く緩慢な動きでそれをとると、画面をスワイプして着信の履歴をみた
『こはねちゃんだ』
〜メッセージの内容〜
こ:「こてっちゃん」
「すごい吹雪だよね」
「明日には雪とか積もるのかな」
「雪合戦とかしない?」
『ははっ… こはねちゃんったら…』
〜メッセージの内容〜
虎:「うん いいよ」
「あした楽しみだね」
こ:「わー!」
「楽しみだね」
「またあした」
虎:「うん またあした」
メッセージを入力し終えると、スマホをソファーに放り出した。
…またあしたか…
一筋の雫が頬を伝っていった、虎徹はそのことに気がつくと急いで袖で涙をぬぐった。
時計は7時を指していて、もうすぐ夕食の時間だ。
電気もついていない部屋にスマホの明かりだけが弱弱しくあたりを照らしている。
「はぁ…」
虎徹は三度目のため息をつくと、気怠そうに扉へ歩みを進めた。
心の呪縛を抱えながら、ゆっくりとドアノブに手をかけて静かに扉をあけた。
[完]
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これが私の解釈のこてっちゃんと秋常の関係性です。
どこにも向けようのない感情が渦巻いてベッドでうずくまるという感じをイメージして書きました。
実際こてっちゃんと秋常の関わりが原作ではほとんどない(初登場、家庭科部、運動会、バレンタイン、最終話)ですし、秋常には家庭教師の先生という彼女がいるので、私の中では必然的にあんな展開になったのです。
秋常の「こっち」呼びも、アニメでは「こてつ」と言っており、原作では一度も言っていないので、呼び名を変えた説を採用しました。
最後もなんだか締まらないような、中途半端な感じで終わっています。
回想にしか秋常が出てないですし、何も解決していない。
でも微かな希望がある、これこそが最善と判断しました。
それに、これ以上続けても蛇足と思ったので。
完全に余談ですが、ドーナツ屋のシーンを書いているときに、無性にドーナツが食べたくなって、近くのミスドに凸りました。そこで作中で宇希先輩が食べた、「さわやかレアチーズマンゴーパイ」そして「ココナツ チョコレート」と「ホット・スイーツパイりんご」を買いました。リンゴパイは家族にあげたので食べてないですが
儚い…、そして美しい…。こういう悲恋的な話も大好物です!
二人で遊びに行く微笑ましい場面と、その後の悲しい展開の温度差もまた良いです!
カレルさんのおっしゃる通り、紺はあまり出番が多くなくキャラがはっきりしていない所も多いですが、その上で二人らしい雰囲気のあるこのss、とても素晴らしいです!
この度は書いて頂いてありがとうございました!
次なる作品も楽しみにしています!
拝読しました! 最高に重くて最高に読み応えがありますね...!
個人的に、宇希の気遣いがとても優しくてほっこり。でも、その優しさ故に本当の悩みを打ち明けられない虎徹の気持ちも、とても共感できます。
夏から秋、そして冬へと移り変わる季節の中で、ただただ報われない想いを抱え続けて。
言い出すこともできず、従って曝け出すこともできず、それは鈍い鈍い痛みになって。
純粋に紺を想う感情と、逃れることのできない鈍痛がぐちゃちゃに混ざって、それでも。
紺のことが大切で、彼女のことを尊重したいからこそ、彼女が知らない色を帯びていく様を、ただ見ているしかできない。
そんな虎徹の心情が、痛いほどに伝わってきました。
虎徹にとっての雪融けが、彼女を苦しめる鈍痛を取り除いてくれるような形で ─それは虎徹の想いを叶える形ではないかもしれないけれど─ 訪れてくれることを、ひたすらに願ってやみません。
... ところで、この作品を読んでいたら私もドーナツ食べたくなってきてやばいです。こんなド深夜だけど、コンビニ行ってドーナツ買ってきますね〜♪
ここで我慢できないなんて、私はとんだぶt (※この読者は虎徹様におしおきされました)
>>42
お褒めの言葉ありがとうございます
こてっちゃんが唯一、過去の描写などもないので、二人のキャラを掴むのがとても難しかった印象ですね。
7作目は入れ替わりを予定しています。
>>43
ペンギノンさんコメントありがとうございます
本作を投稿した後にもう一度読み返したのですが、最初が宇希先輩とこてっちゃんのカップリングみたいに読めますね。
新しいアイデアが浮かんだかもしれません
話を戻して、今作は匂いを強調しています、宇希先輩のマフラーの匂い、ドーナツ屋の匂い、紺の匂い、そして…。
匂いはスパイスとなり、物語を彩るものになっていると思います
P.S.
深夜にですか?それは罪深いですねぇ…
でもドーナツは真ん中に穴が開いているので0カロリーですよ(悪魔のささやき)
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