[Attention!]
この作品は『きららファンタジア 第2部 断ち切られし絆』を題材としたSSです。
あくまで本編や聖典原作とは一切無関係な所謂二次創作 (或は三次創作) です。
創作の関係上、大いに独自設定 ・ 捏造 ・ 原作を逸脱した点が存在します。
変な生き物の言動など、違和感を憶えかねない場所も多いと思いますが大目に見てください。
書き溜めありです。と言うより、既に最後まで完成しています。
最後に、当SSは極めて深刻なギャグを含みます...が、書いていたら途中思っていたよりシリアスが混ざりました。ゆるして。
以上の点を了承してくださる方は、どうかお付き合いください。
変な生き物 「だから僕は変な生き物じゃない!!」
ランプ 「それじゃマッチ、もうそろそろ寝よっか」
マッチ 「そうだねランプ、朝はしっかり起きるんだよ」
ランプ 「もぉーマッチはうるさいなぁ。ちゃんと起きるってば」
マッチ 「そう言いながら、今日も昨日もきららに起こされてたじゃないか」
ランプ 「それはそれ、これはこれ! それに今日はきららさんに起こしてほしかったから寝たふりしてたんだもん (ボソリ)」
マッチ 「え、何か言ったかい?」
ランプ 「な、なんでもないっ! 兎に角、明日は早く起きるから」
マッチ 「はぁ、これだからランプは...。うつつを見習いなよ。最近ずっと早起きしてるんだよ」
うつつ 「きゅ、急にこっちに話振らないでよ... 存在感消してたのに」
マッチ 「存在感消してたって何さ」
きらら 「でも確かに最近うつつ早起きだよね。今日なんてわたしより早かったもん」
ランプ 「す、すごいですっ」
うつつ 「べ、別に大したことないから。何か知らないけど早く目が覚めちゃうだけだから」
うつつ (ほんとは気付いてる。わたし、ちゃんと眠れてないんだ。眠るのが怖いんだ。夢の中であのもう一人のわたしに出くわすのが怖いんだ。あの特別化け物みたいなウツカイに襲われるのが、いやむしろ...アレを『産み出す』のが怖いんだ。だから早起きしちゃんだ)
きらら 「うつつ? 思いつめた顔してるけど大丈夫?」グイ
うつつ 「うぇっ!? だ、大丈夫。気にしないで、ていうかめちゃ近い...そんなに寄らないで」
きらら 「あっ、ごめん」
うつつ 「ふぅ... 危うくきららの陽キャパワーに陰キャオーラ諸共飲み込まれて消滅するところだった」
ランプ 「...そうですよ、きららさんは誰とでも距離感近めで接しすぎです」
うつつ 「...ランプ?」
きらら 「あはは。自覚はなかったんだけど、そういうの苦手な人もいるもんね。気をつけるよ」
ランプ 「...ふん」
マッチ 「全く、ランプは成長しないなぁ。それこそ最近のうつつを見習うべきだよ」
うつつ 「だから急に話を振らないでって」
マッチ 「だってそうだろう? さっきだって消滅するーとか言いながらそれを回避したことで安心してたじゃないか。前の君だったら消滅することを望んでいただろうに」
うつつ 「そ、それは...」
マッチ 「僕は単純に君のこと褒めてるんだけどなぁ」
うつつ 「...変な生き物うるさい」
変な生き物 「」ガーン
うつつ 「それじゃ、わたしはもう寝るから。アンタたちも夜更かしは程々にね」
マッチ 「はぁ... 了解。おやすみ」
きらら 「おやすみ、うつつ」
ランプ 「おやすみなさい、うつつさん」
うつつ 「おやすみぃ...zzz」
ランプ 「...寝ちゃいましたね」
マッチ 「僕たちもそろそろ寝ようか」
きらら 「そうだね。おやすみ2人共」
ランプ 「おやすみなさーい」
マッチ 「おやすみ」
マッチ 「...zzz」
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マッチ 「...はっ」
マッチ 「...朝か。あんまり目覚めは良くないな」
マッチ 「ランプは...やっぱり寝てる。陽はもう昇ってるというのに」
マッチ 「いつものことだ。ほっとこ」
マッチ 「他の2人は起きてるみたいだ。一応挨拶でもしておこうかな」
マッチ 「きらら、おはよう」
きらら 「おはよう。変な生き物」
変な生き物 「!?」
きらら 「あれ、どうしたの変な生き物。そんな怪訝そうな顔して」
変な生き物 「だ、だって、その...」
変な生き物 (え、何これ。なんできららに『変な生き物』って呼ばれてるの僕は?)
変な生き物 (まさか、うつつと入れ替わってるとか? おかしな話だけど、ここはエトワリアだ。多少おかしなことが起こっても不思議じゃない)
変な生き物 「あのさ、変なこと訊くかもしれないけど、君はきららで間違いないんだよね? それともうつつ辺りと入れ替わってたり...」
きらら 「もぉー、寝ぼけてるの? わたしは正真正銘わたし、きららだよ。変な生き物もかわいいところあるんだね」
変な生き物 「」
変な生き物 (もう駄目だ。今の反応で確信した。僕は今、間違いなくきららから『変な生き物』呼ばわりされている)
変な生き物 (きららの場合、ドッキリとか演技の可能性もこの時点で排除できる。だって、きららの演技は...その...アレだから)
変な生き物 (え、何? もしかして僕なにかやっちゃった? やらかしちゃった?)
変な生き物 「そ、そろそろ行くね。それじゃ」
きらら 「あ、うん。それじゃ」
変な生き物 「...何が起こっているんだ」
変な生き物 「混乱気味だけど、取り敢えずうつつに挨拶しとくか」
変な生き物 「うつつ、やっぱり起きてたね。おはよう」
うつつ 「お、おはよう。変な生き物」
変な生き物 (デスヨネー)
うつつ 「何? わたしの顔になにかついてる?」
変な生き物 「い、いや。違うんだ。うつつって僕のこと滅多に本名で呼んでくれないよねって思っただけ」
うつつ 「? 変な生き物は変な生き物でしょ? 何よ本名って」
変な生き物 「」
うつつ 「変な変な生き物」クスッ
変な生き物 (いやいやいやいや、そのクスッって笑顔もなかなか珍しいけど! 普段とのギャップがあって正直滅茶苦茶かわいいけどッ! それ以上に何なんだよこの状況ッ!! というかその表現がどこかおかしいことに気付けッ!!)
うつつ 「??」
変な生き物 (首を傾げるなッ! それじゃあまるで僕がおかしいヤツみたいじゃあないかッ! 流石にうつつが僕の名前を忘れてるなんてそんなのないだろ有り得ないだろッ! 『それが有り得るかも』ってか? 喧しいわァーーーッ!!」
うつつ 「ひっ!?」
変な生き物 「えっ? ...あっ、しまった声に出てた」
つつ 「へ、変な生き物? なんか今日の変な生き物ちょっと変だよ。わたしが原因作っちゃったのなら謝るからさ、変な生き物はゆっくり休みなよ」ビクビク
変な生き物 「ご...ごめん。別になんでもない。大丈夫だよ。僕は別に」
変な生き物 (僕から見たらうつつも充分様子がおかしいんだけどなぁ。妙に素直だったりあざとかったり)
うつつ 「そ、そう? わ、わたしは軽く散歩にでも行ってくるから。またね、変な生き物」
変な生き物 「う、うん。またね、うつつ」
変な生き物 「行っちゃった。結局『変な生き物』呼びだったし」
変な生き物 (しかし、うつつのさっきの発言... 気になる)
変な生き物 (うつつは僕のことをあくまで『変な生き物』として認識していた)
変な生き物 (昨日までは僕の本名が『マッチ』であることをきちんと理解した上で敢えてそう呼んでいたのに、今日は僕の本名こそが『変な生き物』だ、といったニュアンスに聞こえた)
変な生き物 (全く、参っちゃうよ。あそこまで澄ました顔で言われるとちょっと自分のこと疑っちゃうじゃないか)
ランプ 「ふぁぁぁ... おはよぉ」
変な生き物 (あ、ランプのやつやっと起きてきたな。今日もきららには感謝だね)
変な生き物 「おはようランプ。昨日の発言、有言不実行だったね」
ランプ 「変な生き物うるさい」
変な生き物 「」 ガーン
変な生き物 (あれ? この流れ、うつつ以外で起きたの初めてかも)
変な生き物 「そ、それより聞いてくれよランプ。きららもうつつも僕のこと『変な生き物』としか呼んでくれないんだよ。うつつは兎も角、きららまでどうしちゃったんだろうね」
ランプ 「? 何言ってるの? 変な生き物は前からずっと変な生き物でしょ?」
変な生き物 「」
ランプ 「もう、変な生き物は時々よくわかんないこと言うんだから」
変な生き物 「」
ランプ 「あれ? 黙りこくっちゃって。どうしたの、変な生きm」
変な生き物 「僕は変な生き物じゃなあぁぁぁぁいッ!!!!」
ランプ 「!?」
変な生き物 「何なんだよみんなして!! 僕が何したってんだよ!! いくらなんでもやり過ぎだろ酷いよこんなの!! いじめなのかい? なぁ君たちは僕をいじめたいっていうのかい!?」
ランプ 「え、あの、ちょっと落ち着いて変な生き物」
変な生き物 「あぁぁぁぁぁッ!! 信じてたのにッ!! ランプだけは、神殿にいた頃からずっと一緒に過ごしてきたランプだけは、僕のことちゃんと正しく呼んでくれると信じてたのにーー!!」
ランプ 「だから落ち着いてって、何言ってるかわかんないよ」
変な生き物 「...限界だ」
ランプ 「え、なんて?」
変な生き物 「我慢の限界だッ!! もう僕は耐えられそうにない! みんなが寄ってたかって僕ひとりをいじめるような人間だったなんて思わなかった! 決別だッ!! ここでお別れだッ!!」
ランプ 「えっちょっと待ってよ変な生き物、どこいくのさ」
変な生き物 「...ここまで言っても君は変わらないんだね。本当に残念だ」 フワフワフワ...
ランプ 「変な生き物? 変な生き物ーー!? た、大変ですきららさんうつつさん、変な生き物がー!!」 ドタドタ
変な生き物 「ふんッ!! ああいうのは頭を冷やさないと分からないんだ」
変な生き物 「しかし、どうしてみんなあんなことしたんだろう」
変な生き物 「まぁいいさ、丁度アルシーヴたちと現時点の情報を共有しておきたかったところだ。神殿に帰ってしまおう。それに、本当に僕が必要とされていないんだったらお互いにとっていい機会だろう。僕も...必要とされていないところに居たって楽しくないよ」
変な生き物 「あれ? おかしいな。こんなに晴れてるのに頬が冷たいよ」 ポロポロ
変な生き物 「やだなぁ、僕なにか悪いことしたのかなぁ。みんなを怒らせるようなことしたのかなぁ。自覚ない自分が嫌になるなぁ」ポロポロ
変な生き物 「ごめんね、ランプ、きらら、うつつ。これは嫌われ者の自分との決別なんだ。だから戻れない。そうだね...頭を冷やさなくちゃいけなかったのは...僕だね」 ポロポロ
変な生き物 「...行こう。神殿に帰るんだ。ここから神殿まではそれなりに遠い。それでも...これが僕の出した答えだ」
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[神殿 ・ 正門前]
変な生き物 「やっとこさ着いたよ、神殿に」
変な生き物 「流石に疲れたな。途中船に体を預けたら見事に船酔いしたし」
変な生き物 「案の定ボロボロの船にしか乗せてもらえなかったけど...まぁ、船頭さんがついてくれただけ感謝しないとね」
変な生き物 「手紙を書いて送っておいたから、誰か待ってくれてると思うんだけど...おや?」
門番 「...」
変な生き物 「何だ? 妙に警備が手厚いな。ちょっと気になる」
変な生き物 「おーい、どうしたんですかぁ」
門番 「おぉこれはこれは、連れの方々は一緒じゃないんですかい?」
変な生き物 「...まぁ、色々、ありましてね」
変な生き物 「ところで、こんなに警備頑丈にして、何かあったんですか? 」
門番 「あぁ、これですかい。実はですね、神殿宛に謎の人物から手紙が届きまして。『情報共有したいから筆頭神官秘書のセサミ様に話を通しておいてくれ』とか書かれてたらしいんですよ」
変な生き物 「成程、それは怪しいね」 (それにしても僕の書いた手紙と内容が随分似ているな。こんな偶然あるんだな)
門番 「不審な内容でしたので、こうして2日ほど前から警戒態勢を強めているんです。未だそれっぽい輩は見つかっていませんが」
変な生き物 「それはご苦労様です。その賊の名前とか分かりませんか? もしかしたら過去の犯罪者記録から割り出せるかも。筆跡鑑定にも回してみましょう」
門番 「それはいいですね、そうしましょう。それで、ソイツの名前ですが、手紙の差出人の欄には...」
門番 「『マッチ』と書かれておりました」
変な生き物 「」
門番 「筆跡鑑定は意外な盲点でした。後で鑑定人に話をつけt...」
変な生き物 「ちょっと待ってくれ」
門番 「どうかしやしたかい、変な生き物さん」
変な生き物 「」
変な生き物 「あの...本当に申し上げにくいんだが...その差出人、僕だ」
門番 「...へ?」
----------
[神殿 ・ 筆頭神官居室]
アルシーヴ 「ふむ、情報共有したいという輩の正体はお前だったのか。久しぶりだな。変な生き物」
変な生き物 (最早何も言うまい)
アルシーヴ 「どうした、変な生き物? 何か悩み事か?」
変な生き物 「えーと...いや、何でもないよ」
変な生き物 (どうしてこの人はこういうとき怖いほどに鋭いんだろう)
アルシーヴ 「そうか、それならいいのだが。さて、話を聞こう」
変な生き物 (僕はアルシーヴと現在の状況について語り合った。新たな真実の手のこと、彼女らにとって行われたオーダーのこと、黒く染まる聖典のこと、新型のウツカイのこと、そして...)
アルシーヴ 「そうか、カルダモンが...。やはりあのとき止めておけば良かった。私ともあろう者が、情けない」
変な生き物 (あのアルシーヴが、拳を握りしめて本気で何かを悔やんでいた。断片的な情報から判断するに、カルダモンが水路の町に向かう前にアルシーヴと会話を交わしていたらしい。そのときアルシーヴは胸騒ぎがしたが、結局カルダモンを止めなかったとのこと。結果は...僕たちの知る通りだ)
変な生き物 (アルシーヴの反応は当然だ。彼女にとって、カルダモンは大切な仲間なのだから。それは僕たちにとっても同じだ。だからこそ、できることを探さなければいけないんだ)
アルシーヴ 「変な生き物の話や以前きららたちから聞いた情報に拠れば、パスを切られ負の感情に飲み込まれたクリエメイトも繋がりを思い出す『きっかけ』を掴めれば元に戻せるらしいな。それに賭けるしか今のところはなさそうだ」
アルシーヴ 「これ以上七賢者を...私の優秀な部下を失うわけにはいかない。必ず取り返してみせるからな、カルダモン」
変な生き物 「そうだね」
変な生き物 (その呼び方だけなんとかしてくれたらなぁ)
コンコン
アルシーヴ 「入れ」
ガチャ
セサミ 「アルシーヴ様...おや、変な生き物も一緒でしたか」
変な生き物 (そうか、行き違いしてたから僕がいること実質知らないのか)
アルシーヴ 「どうした、セサミ」
セサミ 「あぁそうでした。アルシーヴ様、先日取りまとめていただいた予算案についてなのですが、一部で中規模の補正が必要となる見込みになりまして」
アルシーヴ 「何、それは本当か。直ちに確認する。すまない変な生き物、私はここを離れる。一応部屋に鍵をかけていきたいので、他の部屋に移動してくれると助かるのだが」
変な生き物 「わかったよ。話を聞いてくれてありがとう、アルシーヴ」 ヘヤヲデル
アルシーヴ 「何かあったらいつでも相談してくれ。ところで、ランプたちはどうした?」
変な生き物 「...」
アルシーヴ 「...深くは詮索しないことにする。お前たちの間での問題のようだからな」
アルシーヴ 「それでは失礼する」
変な生き物 「...行ったか。思いの外有意義な時間になった。話せて良かった」
変な生き物 「しかし...いよいよ変だ。アルシーヴだけじゃない。セサミも、門番も。それどころか、あの手紙を見たであろう誰もが、僕のことを『変な生き物』と信じて疑っていない」
変な生き物 「一応、神殿の在籍記録を確認してみよう。多分僕のことも載っているはずだ。これでも僕はずっとここで暮らしていたんだ」
[大図書館 ・ 書庫]
変な生き物 「あった。これだ。『神殿在籍記録』」
変な生き物 「えーと、僕の記述は...きっとランプの記述の近くに...」
【変な生き物: 女神候補生ランプの補佐役。〇〇年より在籍...】
変な生き物 「」
変な生き物 「『補佐役』って記述も気に食わないが、これは...。どうやら、公式記録でも僕の名前は『変な生き物』に変わってしまっているようだ」
変な生き物 「現実改変か? 認識阻害か? それとも大規模な洗脳か? それにしてもどうしてこんなつまらないことに労力を...」
変な生き物 「...そうだ。『つまらないこと』だ。僕の名前なんて今みんなが置かれてる危機と比べたらどうってことないんだ。たとえ僕の名前が『変な生き物』だろうと『毛玉』だろうと『炭酸2号』だろうと、むしろ名前なんてなくっても」
変な生き物 「僕はこの困難を身を以て体験してきた証人なんだ。アルシーヴやソラ様よりもリアリストの奴らのことを把握しているんだ。僕がたとえ必要とされていなかったとしても、僕自身に守りたいものがあるから。だから、ここで立ち止まってなんかいられないんだ」
変な生き物 「ランプたちにもう一度会おう。そして、せめて謝ろう。また仲間に入れてください、なんてムシのいいことなんて言わない。ひとりでも、僕は僕の信じるもののために進もう」
変な生き物 「...もう出よう。ここに居たって何も始まらない」
ガチャリ
??? 「あら?」
変な生き物 「!! そ、ソラ様!?」
ソラ 「はーい、ソラでーす」
変な生き物 「相変わらずですね...」
ソラ 「変な生き物こそ変わらないわね」
変な生き物 「そうですねーあはは」 (やべぇ、予想はしてたけど思ってたより堪えるぞこれ)
ソラ 「あぁそうそう。きららちゃんたちが貴方を探してここまで来てるわよ」
変な生き物 「うぇっ!? それは本当ですか!?」
ソラ 「あら、変な生き物ったら私を疑うようになっちゃったのね...悲しいわ」 ヨヨヨ
変な生き物 「い、いえ!! そういうわけではなく」
変な生き物 (有り得ない。皆を半ば切り捨てる形で勝手に飛び出した僕を、探しに来た、だと? でもソラ様がそう仰っている以上、実際にランプもきららもうつつも居るのだろう)
ソラ 「何があったのかは私の知るところではないわ。でもね変な生き物、折角出逢えた友達なんだから...大切にしなきゃ」
変な生き物 「...! そう、ですね。ありがとうございます、ソラ様!! 僕、行ってきます」
ソラ 「彼女たちは応接室にいるわ。早く行ってあげなさい」
変な生き物 「はい!! この御恩は忘れません!!」 フワフワフワ...
ソラ 「...今日もいい天気ねー。絶好のお出かけ日和だわ」
アルシーヴ 「...そうですね、ソラ様...?」 ゴゴゴゴゴゴ
ソラ 「!? あ、あるしーゔ...」
アルシーヴ 「丁度現在確認している補正予算案の件で、ソラ様にお尋ねしたいことがありましてね... 至急ご同行願いますよ」 ズルズルズル
ソラ 「あ、やぁぁん、私はクリエメイトといっぱい遊ぶのー!!」 ジタバタ
アルシーヴ 「駄目です、来てください」 ズルズルズル
ソラ 「やーめーてー!!」 ジタバタ
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[神殿 ・ 応接室]
変な生き物 「...来てしまった」
変な生き物 「ソラ様に発破かけられてここまで来たはいいものの、何て言いながら入ればいいのかな。何て謝れば許してもらえるのかな」
変な生き物 「...許しを得ようとしている時点で浅はかか。どんな結末になろうと甘んじて受け入れよう」 ガチャ
変な生き物 「...や、やぁ、あのときはごm...」
ランプ 「変な生き物ーー!!」ダキッ
変な生き物 「うわっ、ランプ!?」
ランプ 「しんぱいしたんだよぉー! 急にどっか行っちゃうから二度と会えなくなるかと思ったー!!」 ギュゥゥゥ
変な生き物 「ご、ごめんって...く、苦しい」
きらら 「良かった、一時はどうなることかと思ったよ」
うつつ 「わ、わたしは変な生き物なんて居なくても別に寂しくないしっ? 寂しくないけど、なんか収まりが悪くて変な気分だったから...ほ、ほんとそれだけだもんっ」
きらら 「あんなこと言ってるけど、変な生き物が神殿に行ったかもってことに最初に気付いたのはうつつなんだよ」
うつつ 「そ、それはお散歩行った帰り道でそんな感じのぼやきが聞こえただけだから...あれが変な生き物の声だとは最初は気付かなかったけど、ランプの慌てぶりを見てもしかしてって...」
ランプ 「うつつさん、ほんとにありがとうございましたっ」
うつつ 「や、やめてよ。そういうの慣れてない...」
変な生き物 「み、皆...? 怒ってないの...?」
きらら、うつつ 「へ?」
ランプ 「怒るって、どうして?」
変な生き物 「だ、だって...僕、皆に酷いこと言って勝手に行方不明になっちゃったから」
ランプ 「そりゃ、最初はびっくりしたよ? 正直見に覚えのないことで悪く言われた感はあったし、それで悲しくもなったよ」
ランプ 「でも、変な生き物とは長い付き合いだから。逆に、あれくらい受け止められるわたしじゃないと駄目だよねって思ったんだ」
きらら 「わたしも、変な生き物が何かに悩んでること知ってたのに何もできなかった。それで、すっごく後悔した。だから、せめて次会えたらちゃんとお話聞こうと思って、ここまで来たんだよ」
うつつ 「...わたしってコミュ障だからさ、きっと変な生き物の欲しい答えとか絶対出せないとは分かってる。でも、変な生き物がわたしみたいにネガティブになるのは嫌かなって。わたし、自慢じゃないけど最近人の話聞くのちょっとだけうまくなったと自分じゃ思ってるからさ。話してほしいな、変な生き物の悩みを」
変な生き物 「み、みんなぁ...」 ボロボロ
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きらら 「...そう、だったんだ」
ランプ 「『変な生き物』ってわたしが呼んだときのあの反応はそういう意味だったんだね」
うつつ 「わたしは普通に『変な生き物』呼びだったみたいだけど...正直他の呼び方なんて記憶にないわ」
変な生き物 「なんか、話せちゃうとスッキリするね。ありがとう」
ランプ 「こちらこそ、話してくれてありがとう。でも、結局変な生き物の本当の名前って何なの? わたしたち誰も覚えてないけどさ、せめて今からでもその名前で呼んであげたいよ」
変な生き物 「う、うん。僕の本当の名前は『m...」
ランプ 「?」
変な生き物 「...ごめん、忘れちゃった」
ランプ 「えぇー!? 無理しなくていいんだよ?」
変な生き物 「ううん、ホントに覚えてないや。確かに『変な生き物』以外の本名があったはずなんだけど... 仕方ないから本名思い出すまで『変な生き物』でいいよ」
うつつ 「...何か隠してない?」
変な生き物 「ううん、そんなことないよ。うつつもありがとうね」
うつつ 「べ、別にアンタのためなんかじゃないんだからっ! か、勘違いしないでよねっ」
きらら 「それじゃあ、旅の目標に『変な生き物の本名を思い出す』ことを新たに加えよう! それでまた旅ができるよね!!」
ランプ 「そうですねっ! 行きましょう!」
変な生き物 「え、もう出発かい?」
うつつ 「早くしないと置いてくわよー」
変な生き物 「珍しくうつつが行動早い...ってちょっと待ってよー!!」
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変な生き物 「...はッ!?」 ガバッ
変な生き物 「ここは...」 フカフカ
変な生き物 「あれ? 布団だ。もしかして、さっきの全部夢...?」
ランプ 「あーマッチやっと起きたー」
マッチ 「!?」
ランプ 「わたしより遅いなんてねぼすけにも程があるよ。昨日の台詞、そっくりそのまま返しちゃうんだから」
マッチ 「...!!」
きらら 「マッチ、おはよう。気持ちのいい朝だよ」
マッチ 「...」 ブワッ
きらら 「!?」
ランプ 「え、ま、マッチ!? どうしたの? わたし、言い過ぎたかな」 オロオロ
マッチ 「ち、違うんだ。ちょっとつらくなる夢を見てさ。ちゃんと僕起きれたんだなって思って、そしたら勝手に涙が出てきちゃったんだよ」 フキフキ
ランプ 「そ、そっか。無理しないでね?」
きらら 「今日はおやすみする?」
マッチ 「いいや、むしろいっぱい移動しよう。やる気が湧いてきた」
ランプ 「おぉー頼もしい」
きらら 「朝ごはんの準備できてるから一緒に食べよう」
マッチ 「そうだね、行こうか」フワフワ
うつつ 「あ、変な生き物起きてきた。おはよう」
変な生き物 「」
マッチ (ま、これはこれでいっか)
うつつ 「な、何よ変な生き物、そんなににやにやして」
マッチ 「なんでもなーい」
うつつ 「...変な変な生き物」 クスッ
マッチ 「変なとは何だい変なって!」 (あれ? とてつもないデジャヴ感)
うつつ 「だって変なんだもーん」
マッチ 「何をー!!」
ランプ 「うつつさん、最近随分と明るくなりましたよね」
きらら 「本人に言うと全力で否定するけどね」
ランプ 「さぁて、わたしたちもご飯にしますか!」
きらら 「そうだね!」
うつつ 「変な生き物なんてこうしてやるー」 グググ
マッチ 「や、やめろうつつ! 引っ張るなー!!」
--fin--
[あとがき]
はい、ということで終わりです。うつつはかわいいですね (黎明卿)
本当はもっと色々書きたかったのですが、思いの外いい感じにまとまったので話を閉じました。
没になったネタも幾つかありますので、別の機会に使えればいいなって。
自分でこんなしょうもないSS書いておいてアレですが、アルシーヴ先生やセサミさんの声でマッチが「変な生き物」と呼ばれている姿を想像すると変な笑いが出そうです。
あと、このSSを書いていたせいか、同時進行で書いていた別のSSの下書きでマッチの名前を無意識のうちに「変な生き物」にしていました。早めに気付けてよかった...。
最後になりますが、ここまで読んでくださった方に心から感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。
[これまで書いたSSリスト (順次追加) ]
・ 『あお 「くじら座の変光星の女の子」』
https://kirarabbs.com/index.cgi?read=3596&ukey=0
https://kirarafan.com/archives/29338408.html
・ 『変な生き物 「遂に誰からも本名で呼ばれなくなった」』: このSS
中々に面白かった…書き手の名前も変な生き物に刷り変わる呪いをかけるわ
くっくく
>>30
作者です! あばばっ、ありがとうございますぅ! (はっ、名前が勝手に...)
楽しんでいただけたようで、よかったです...!
次回も頑張ります!!
何かシリアス系かと思いきや、まさかのマッチの夢オチですか(リアリストの仕業かと思いました)
私が書いた第17作に当たるきららちゃんの誕生日記念作品においての、きららちゃんの心境を思い浮かべました(無視されたと思って、何とか気づいて貰おうと必死になる状況)
とても良い作品でしたよ〜(感想レスを寄こさない人間で申し訳ないです)
>>32
作者です! コメント誠にありがとうございます!
そうですね、「変な生き物」呼びについてはかなり徹底してやった感があります (そもそもSSタイトルからしてそうですよね...)
その上で、夢から覚めたマッチがランプから「マッチ」と呼ばれたときの「あぁ、僕は現実に戻れたんだ」といった感情を、名前の表記から感じ取れることを演出の一つとして強く意識していました。
そんな裏話でした〜。
>>33
作者です! ピースケ様、コメントありがとうございます!!
当該SS、過去ログから探して拝読させていただきました。
きららさんのいたずらのぶっ飛び具合がすごいですね...。そして登場人物多めなのに各キャラの動かし方が実に巧い。参考になります。
因みに、コメント中でリアリストに言及されていましたが... ここだけの話、リアリストのうちハイプリスとサンストーンを (ギャグ要因として) 出す構想も当初あったりしました。これも上述した没ネタのひとつではありますが、結局投稿した内容で満足したためなかったことになりました。
また、ストーリーを思いついた段階から夢オチは既定路線でした。他の方への返信で述べたマッチ関連の演出と、前日の宣言通りランプがきちんと早起きするというちょっとした成長要素を入れたかったのが主な理由です。オチがつけやすいというのもありますが...。
長々と私事を書いてしまい申し訳ございません。私のSSを読んでくださったことを重ねて御礼申し上げます。
投稿したSSを眺めていたところ誤植と文字化けを見つけたので、お詫びして訂正いたします。
・ >>9 序盤: 『つつ 「へ、変な生き物? (以下省略) 』→ 『うつつ 「へ、変な生き物? (以下省略) 』 に訂正します。
・ >>19 中盤: 『ソラ 「!? あ、あるしーゔ...」』 において、文字化けしている文字は平仮名表記の "ヴ" です。
作者です。「やるデース! 速報」にて、当SSが掲載されました!
https://kirarafan.com/archives/29371224.html
上述した誤植と文字化けも、そちらでは修正されておりました。地味にうれしい。
もぐ管理人様、ありがとうございます!!
このSSを執筆したペンギノン (元 ・ 名無しの作者) です。
先程、Pixivに当作品を投稿いたしました。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17272934
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