「おー、これは良い眺めだね。」
私は鎌手多季。結構長いこと体育教師をやっている。
今日は誕生日だし、せっかくの休みなんで1人で旅行中。
何でも温泉があって、海や夕日の眺めが良く、飯が上手いってホテルらしいんで結構遠くから車で来た。
普段はあまり外出とかしないけど、たまにはこういうのも良いかなってな。
(中々良い所だし、あいつらにも教えてやるか。)
あいつらとは、私の同僚の鬼頭と佐藤。
元々は面白半分にくっ付けようとしてたけど、本当に2人が籍を入れてそれから結構経つんだから時の流れってのは早いもんだな。
私は相変わらず1人だが、自由気ままに過ごしたいからむしろこの方が良いし、別に孤独な訳じゃない。
中には負け惜しみとか言う奴もいるかも知れないけどな。
まだ夕食まで時間はあるし、近くの夕日が綺麗に見える場所まで行ってみることにした。
そこの道の駅での名物だというソフトクリームを1つ買った。甘いものは最近はあまり食ってなかったが、塩味も効いていてこれは中々美味い。
季節が季節なんで、そうこうしている内にもう夕焼けの時間。
なるほど、聞いた通りこれは良い眺めだな。
(おっと、長居してたら夕食に遅れるな…。)
夕食を終え、温泉で一休みして部屋でくつろいでいたが…。
(そういやまだここの地酒を飲んでなかったな。)
館内には居酒屋もあったので、そこで酒とついでにラーメンも1杯頂いた。
腹も膨れて、もう寝ても良かったが、まだ夜の10時過ぎだからもう1回温泉に入ることにした。
(波の音が良い感じだな。)
そんなことを思いながら露天風呂でまったりしていたら、さっきの地酒のせいか眠くなってきて…。
『鎌手様!』
『んー?君誰?』
『あの!お誕生日おめでとう御座います!鎌手様におビールお注ぎします!』
『おー、ありがとー。』
『私 です!鎌手様が好きでずっとお会いしたかったんです!』
『そうか、君みたいな気が利く子は是非うちのクラスに欲しいねー。(名前よく聞き取れなかったけど、まあいいか。)』
『突然ですみませんが、実は鎌手様にお話が!』
『どうした? まあ大したことは言えないと思うが…。』
『あの…、あの!』
「お客様!お客様!どうしちゃったのかなこの人…。ちょっとお客様!」
「んー…?」
「あの、もう清掃の時間なので…。」
「清掃?」
気づいたらもう深夜0時を過ぎていた。
「あー、すいませんね。もう出ますー。」
いつの間に露天風呂で完全に寝てしまっていたらしい。
部屋に戻って寝直したら、今度は夢も見ないでぐっすりと眠れた。
朝風呂に入り、バイキングで好物を好きなだけ食べて、土産物を買ってチェックアウト。
このままさっさと帰っても良かったが、せっかく遠くまで来たので遊覧船や水族館等、一通り楽しんでから帰ることにした。
高速に入る時には、もう夕暮れになりかけていた。
(まずい、このまま運転してたら確実に事故るな…。)
昨日の夢のせいなのか、眠気に襲われてきたので次のサービスエリアで仮眠を取ることにしたのだが…。
『あの!鎌手様!』
『あー、君は確か…。』
『先程のお話ですが、私はずっと大好きな方々と一緒だったのに、もう皆様には会えなくなってしまったんです!』
『今だってこうして鎌手様とお会いできたのに、きっともうこれっきりで…。』
『私は、どうすればまた皆様にお会いできるのでしょうか…!?』
『…なんて、急にこんなこと聞かれても何のことかって話ですよね…。』
『あの、今のは忘れて頂いて大丈夫です…!』
『まあ確かに、今の話はちょっとしたら忘れるだろうな。』
『そう、ですよね…。あはは…。』
『でも君はその大好きな人達のことをずっと覚えてるだろ?』
『別れってのはどうしても来るけど、その思い出を大事にしてれば孤独な訳じゃないさ。』
『鎌手様…!』
『まあ、大したこと言えなくてごめんな。』
『いえ!鎌手様らしいアドバイスで感動しました!有難う御座いました!』
『またいつか、必ずお会いしましょう!』
…またあの子の夢、しかも気づいたらもう真っ暗。
(まーた寝すぎた、これは早く帰らないとな…。)
そう思いいつもよりスピードを速めで高速を走りだした。
夜の高速道路を走るのは意外と嫌いではない。
(しかしあの子、前に鬼頭が言ってた子に似てる気がするな…。)
「鬼頭、土産だ。旦那と2人で食ってくれ。」
「だ、だ、旦那って…!!」
「何だー?違うのかー?」
「い、いえ、違いませんけど…!」
「それからこれが行ってきたとこの写真な。ここなんか恋人の聖地って言われてるようだし、今度2人で行ったら良いんじゃないか?」
「からかわないで下さい!」
「そういえば、夢で前に鬼頭が言ってたのと似た女の子が出てきてな…。」
「名前は…、何て言ってたかな…。」
「いい加減に人の名前は覚えるようにしないとダメでしょう!あの子は、あの子は…。」
「あの子は?」
「そうよ!私はあの時も名前を思い出せなかった!なのに今も平気で教師を続けて…!」
「やはり私は教師失格だわ…! 今すぐ辞表を…!!」
「あー。また変なスイッチ押しちゃったかー。」
あとがき
今回で3作目のSSになります。
これを書いたのは、今日はきららでも多くのキャラが誕生日に該当しますが、鎌手先生の名前は挙げていない人も多くおり、
「忘れるとはふてえ奴らだ!こうなりゃ自分がSS書いてやる!」と思い立って急遽書いた、という感じです。
その為、勢いで仕上げてあまり見直し等がなく、見ずらい所も多いかも知れません。
鎌手先生は一見マイペースでいい加減だけど、ちゃんと生徒想いな良い先生なのでその感じを上手く書けていたら嬉しい限りです。
エトワリアでの鎌手ちゃん、見たかったなあ…。
作中で「鬼頭先生がある女の子の話をした」というのがありますが、これは次に上げようと思っていたSSの一部分を先に出した形になります。
こちらも年内には完成させたいと思っております。
それから、前回前々回とコメント頂き有難う御座います。
読ませては頂きましたが、コメント返信がいつも遅くなってしまいどうもすみません。
近い内に必ず返信させて頂きたいと思います。
長くなりましたが、お読み頂き有難う御座いました。
拝読しました! この雰囲気、すき... (語彙力)
執筆のきっかけで笑っちゃった。でも、その気持ちわかりますし、とても素敵だと思います。
それから、旅のディティールが細かくて脱帽。誕生日に自分へのご褒美、いいよね。
先生の一人旅を追体験しているような錯覚に陥る、読み応えのある文だと感じました。月並な言葉で恐縮です。
先生の夢に出てきた女の子、もしかしてr... 違うか...
>>15
いつもコメント有難う御座います! 毎回返信が遅すぎてすみませんです!
正直な所、ペンギノンさんに読んで頂きたい為にここでのss投稿を始めたと言っても過言ではなかったりします…!
鎌手先生の一人旅は自分の実体験に基づく内容が多い為、割とスラスラ書くことが出来ました!
夢に出てきた子は誰ですかって? そりゃあr…、あれ私も思い出せません…。歳のせいですかねぇ…?
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