[SS]御影依子「いってきます 司さん」 飾磨司「・・・」[きもすき]
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1 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:47:57 ID:Pl60CpWQKH
こんにちは、カレルと申すものです。
これで2作目ですね。今回は少し長め(当社比)のお話となっています 「朝」「昼、夕方」「オウマガトキ」「それぞれの夜」と章が分かれていて主人公が変わるので、注意してください。
プロローグの「朝」から始まります
こちらは、まんがタイムきらら(無印)で連載中の「きもちわるいから君がすき」を元に書いた二次創作です
注意事項
*キャラクターの独自解釈
*独自設定
*原作との乖離
*投稿時点で「それぞれの夜」の下書きに入った段階なので完結までラグがあります
等が含まれるので苦手な方は注意してください
「きもちわるいから君がすき」はとても面白い作品です
きららベース 「きもちわるいから君がすき」
https://seiga.nicovideo.jp/comic/58241

2 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:48:45 ID:Pl60CpWQKH
プロローグ
「朝」

「・・・う ・りこ」

朝から誰かの声がする まどろみの中で今聞こえた声を思い出す 

「お・・う、よりこ」

3 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:49:31 ID:Pl60CpWQKH
意識がだんだんと覚醒しだすなかで、誰かの声ははっきりと、意味を持っていく。

「おはよう 依子」
 
「おはようございます 司さん」

好きな人のモーニングコールにより依子は、ご機嫌な様子で起床した。

4 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:50:19 ID:Pl60CpWQKH
見える景色
 空が澄み 陽ざしが屋根を彩り 一日の訪れを喜んでいるようだ

 「いい目覚めです 今日もなんだかいい日になる気がします」

そうつぶやくと、依子は鼻歌を歌うような足取りでダイニングへと向かっていった 

「今日の朝ご飯は(司と買い物に行ったときに、彼女におすすめされたものである)グラノ
ーラです」 

5 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:51:27 ID:Pl60CpWQKH
「司さん いただきます」 

「いただきます 依子」

ただそれだけの会話で、彼女は満たされていた。

「聞いてください司さん、今日は私の苦手な体育があるのです がんばります」 

「・・・」 返答は帰ってこない

「司さん?がんばります!」

「がんばりなさい 依子」

「そうですよね、がんばります」

「がんばりなさい 依子」

6 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/08 18:54:10 ID:Pl60CpWQKH
ふたりのたわいない時間、それに水を差すように、時計の針が8時を示した

「そろそろ学校に行く時間のようです・・・」

そうつぶやくと身支度を整え、玄関へと向かっていった。

「いってきます 司さん」

「・・・」司の返事を確認することもなく、学校へと出かけていく 

2人がいたとおぼしき部屋、最初からひとりしかいなかったように、静まりかえり 後に残るはシンクの滴りだけだった

プロローグ 完

7 名前:ペンギノン (あおちゃんSSの人) [age] 投稿日:2022/06/09 20:55:26 ID:fNdR5eG1qy
拝読しました! なんかすごそう (語彙力) な作品が始まっててどきどき...
反応が遅れてしまいすみません、まずはプロローグの投稿お疲れ様ですっ!
今回は序盤のお話だけということではありましたが、所々に散りばめられた不穏さと倒錯した関係性に内心びびってます。
ここからどんな展開を見せるのか... 引き続き、楽しみに待たせていただきますね。

8 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/09 23:50:03 ID:KDDzfFfRsQ
>>7
応援ありがとうございます
私も原作の魅力を1割でも伝えられたらな、という気持ちで精一杯書かせていただきます

9 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/17 18:44:23 ID:X7kYq85gGI
[昼] 『司「きもちわるい・・・」 依子「えっ・・・」』

10 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:45:30 ID:X7kYq85gGI
冬の寒さが和らぐ初春の頃。
これまでの寒さが嘘であったかのような陽気に包まれた昼下がり しかし、遠くの山には白い名残がそこここに見られ、冬の様子を残している

「今日の体育はきつかったわね」 

「そそそうですね」

「ほんと 特にいきなり球技になったから、体がついていかなかったわよ」

 「でっ、でも 司さんすごく活躍していましたよね」

「まぁ 私の得意なやつだったからね」

「ほ、ホントに尊敬します」

11 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:45:59 ID:X7kYq85gGI
「大げさよ 依子もパスで活躍していたじゃない。私が欲しいところに正確に投げてくれて、よかったわよ」

12 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:46:25 ID:X7kYq85gGI
『・・・私、飾磨司は御影依子が好きだ 依子と会った頃は少し気になる程度の認識だったけど、彼女と話すうちに仲良くしたい、助けたい、支えたい、守ってあげたい、養ってあげたい…etc.』

13 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:47:09 ID:X7kYq85gGI
(はあはあ、今日も依子はかわいいわね) (今日 盛大にシュートを外した時には、慰めるために抱きしめそうになったし 抑えないと...)

「・・さん?聞いていますか?」

「ああ、ごめん 今日お弁当を作ってきて、どこで食べようか考えていただけだから」 

「そうですか」

「そうよ、しかも今日のお弁当はかなりの自信作だから、今度は美味しいって言ってもらうわよ」

「わわわ、わたしのために作ってもらえるだけで、お腹いっぱいです」

「まだ お弁当の中身も見ていないのに気が早すぎるわよ」

14 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:47:56 ID:X7kYq85gGI
天を彩る青は冬の寒さを忘れのんびりとしている。
そう、こんな日は不健康を捨てよ!屋外へ出ようとしきりに誘っているようね
せっかくだし、前に見つけた落ち着きスポットに行ってお弁当をたべようかしら
そう思い

「そうだ! せっかく気持ちいいくらい晴れているから少し場所が遠いけど外で食べましょう」

「い、いいですね 賛成です」 

「じゃあ行きましょうか」

「屋上ですか? で、でも先生に屋上のカギを無断で持ち出したことがバレて行けないはずです」

「甘いわね!依子」

「!?」

15 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:48:29 ID:X7kYq85gGI
「私を甘く見ないほうがいいわよ、私についてきなさい」

壁に掛かっている時計は12時10分を指している。さぁ、昼はまだ始まったばかりだ

16 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:49:09 ID:X7kYq85gGI
校舎を出て、校庭から森へ入った。
目的地はすべて山の中である。とまではいかないが鬱蒼と茂った森を5分程度歩いた。途中小川に掛かっている橋を渡ったり、山道にあるような天然の階段を上ったりとちょっとした探検隊になった気分だ。「普段歩かない山道、少し楽しい♪」自然に囲まれながら自然と気分が上がっていく

17 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:49:44 ID:X7kYq85gGI
「あわわわ!」

「依子⁉」

「もう 足元に気を付けて!」

依子が橋でつまずいたり、足を滑らせそうなのをフォローしながら目的地へ向かった

「よし やっと着いた」

額の汗をぬぐいながら言った。そして、依子が後ろにいるのを確認し振り返った

18 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:50:25 ID:X7kYq85gGI
「ここよ」と指で目的地を示した

司が示した場所は公園を彷彿させるほどきれいに整備された芝生のある小さな広場だった。
広場の中央には桜の木が一本立派に立っており、春の訪れをじっと待っている。木の周りのところどころにはベンチが設置されており、広場の奥には部室と思しきプレハブ小屋が立っている

「屋上が使えなくなったから代わりの場所をと探したら、ちょうどいい場所を見つけたのよ」

「た、たしかに周りが木、に囲まれていますし、穴場スポットですね」

「そうでしょ」(依子に喜んでもらえて良かった)

19 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:50:58 ID:X7kYq85gGI
「それにしても立派な木ね」
中央の木の周りをまわりながら感嘆の声を上げた

「あら? この木、幹の近くの枝に包帯が巻いてあるわ」

「そ、それは接ぎ木というものですね」依子がスマホで検索した「木に別の木の枝を接いで増やす方法です」そう言うと依子の調子が少し暗くなった

「なんだか私みたいですよね、司さんに迷惑をかけたり、いらぬことにつき合わせたり」

20 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:51:54 ID:X7kYq85gGI
悲しく言うそれは自嘲的というより、自虐的である
依子の一面に少し困惑したが、依子なりのギャグの一つだろうと無理やり納得し、気の利いた返しを考えるために知恵を巡らせた

「そんなの全く問題ないわ 昨日なんて急に飛んできた氷塊をかき氷にしたなんて・・・」
「ふふっ 司さんなんの話ですか」依子からは先ほどの陰鬱さが消え、元の様子に戻っていた

「そうね!元気を分けてあげるみたいでとても素晴らしいとおもうわ!」

空中にういた話を強引にでも着地点に持っていく
「慣れないことはするものでない」と司の心のノートに記した

「迷惑だなんて思っていないし、手がかかるくらいが一番かわいいって言うし
“ありのまま”が一番いいのよ」

21 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:52:27 ID:X7kYq85gGI
「司さん、それは私を子ども扱いしすぎですよ」依子は照れ隠しか後ろを向いた

(依子 かわいいわ、テレた顔も見たいけどまたの機会ね)

広場を一通り散策して、一息ついた

「さあ お弁当を食べましょう」

22 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:53:08 ID:X7kYq85gGI
二人は木陰のベンチに腰掛けた 遠くで小鳥のさえずりと小川のせせらぎが聞こえる  心地よい風が木の葉を揺らし、日の光も柔らかく彼女たちを包んでいる

「気持ちいいところですね、こ、こんなところがあったなんて」

「そうでしょう、先生に鍵を拝借したのがバレたから、屋上も使えないし 逆によかった」

「ほ、ほんとうにいいところですね」

カバンから、弁当を取り出し、膝上に乗せた

23 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:53:45 ID:X7kYq85gGI
依子が急に「司さん ちょっとトイレに行ってきます」と何かを思い出したかのように言った
「わかったわ」

依子は何故かプレハブ小屋に一目散に向かっていった

(はぁ お腹がすいてきたから依子にあげるお弁当だけど、できばえを確認しようかしら

そう思うと、弁当のふたを開け卵焼きを一つ口に入れた

(うっ なんだか衝撃的な味だわ、依子は美味しくないと言っていたけどまさかここまでとは、自分が恐ろしい。もはや兵器と言っても過言ではないかもしれない)

司が一人で弁当をつまみ食いし盛り上がっていると、いつのまにか依子が帰ってきていた

24 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:56:35 ID:X7kYq85gGI
「司さん ただいま戻りました」

「よ、依子お帰り」(依子に感づかれないように平常心...)

「どうしました 顔色が悪いみたいですけど」

「な、なんでもないわ、さあ食べましょ」

「では、司さんお弁当を」

「ま、まって」

「きょうは、依子のお弁当をた、たべない?」

「それに、お弁当忘れちゃつたし」(もう限界かも...)

「司さん?何を言っているのです?」

「お弁当なら膝の上にありますよね」

「!?」(あまりのまずさで、忘れてた)

「そうよね・・・」

「依子!」(もう言っちゃいましょう!)

「はい?」

25 名前:カレル[age] 投稿日:2022/06/17 18:56:56 ID:X7kYq85gGI
「きもちわるい・・・」

「えっ・・・」

26 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:57:30 ID:X7kYq85gGI
一瞬、空間そのものが口をつぐんだかのように静かになった
止まった世界の中で、浅い呼吸音と鼓動の音だけが時を刻んでいた

「依子」

「・・・」

「私が作った卵焼き、あまりにもまず過ぎて、気持ち悪い」

「…ふふっ 」

沈黙の禁を破った静かな笑い声を起点にし、森が再び活気を取り戻した

27 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:58:09 ID:X7kYq85gGI
「何、笑ってんのよ…」

「すみません、でも司さん、あんな真剣な表情で”きもちわるい”というもので」

「もう、トイレ行ってくる。あのプレハブ小屋にトイレあるみたいだし」

「いいえ、あの小屋にはトイレはないので、遠いですが校舎に戻りましょう」

「あれ、依子はプレハブまで行って?」
依子の行動に少し違和感を覚えた

「そうでしたか?見間違えじゃないでしょうか」

「もう、どうでもいいから、早くもどるわよ」
が、そんな疑問も大事によって、意識の外へ押し出された

28 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/06/17 18:58:59 ID:X7kYq85gGI
「せっかく5分くらいかけて来たのに 私のバカ」

「い、いいじゃないですか、“また“来れば」

依子の肩を借りながら、「依子に情けない姿を見せてしまった」と考えながら校舎へ戻った
戻るのに存外時間をかけてしまい、教室に戻ったのは昼休みが終わる5分前だった。
「卵焼き騒動」で昼食を食べることもなく昼が終わり、二人は渋々次の授業に向かうのであった。

[昼] ―完−

29 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/15 19:26:02 ID:jif1e5vbzO
[夕方] ふたりの距離

「〜だから...」

先生の声だけが響く夕方、なんともけだるい時間が流れている。古文の先生は魔法を使えるらしく、教室の半分の人間が夢の世界や、辺境に導かれている。その中で先生の魔法にかからずに抗っている人間は珍しい部類だろう。司も例外ではなく、ぼんやりとした眠気と妄想を相手にしながら、窓を見ていた。昼の高い陽光はどこへやら、すっかり勢いを失いこの教室と運命を共にしそうだ。

窓を見ながら時間がただ過ぎていくのを感じるのはあまりいいことではないけど『しかし 眠いわ』だが寝るわけにはいかない。寝てしまったら、後ろの席にいる依子に笑われてしまう。 それだけで、意識はぎりぎり現世に残っていた。

30 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:26:58 ID:jif1e5vbzO
「キーンコーンカーンコーン」

「これで授業を終わります」

「起立」クラス委員のその声にも覇気はない 「礼」、「ありがとうございました」
皆が瀕死の声であいさつをしている。その様子がよほどひどかったのだろう、先生は苦笑していた。

6時間目終了のチャイムが鳴り、各々が帰りの準備を始めた。時計の針は3時40分を指している

「授業やっと終わったわね、短縮授業って何故か体感時間長いわよね」大きな伸びとあくびをしながら言った

....6時間目が古文だったことも災いしているのか教室が不思議な雰囲気ね、解放感と気怠さが混じったようななんともいえないけど、こんな空間に居続けたら今日の行動を阻まれそうだわ。今日はどこか依子と出かけたいから誘ってみよう....

「そ、そうですね」

「あ、そうだ お昼まともに食べられなくて、購買のパンしか食べてないし、帰りに寄り道しない?」

「い、いいですね」

「帰り道にいいお店があるからいきましょう そのついでにショッピングセンターにも寄りましょうか」

「はい」

31 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:27:32 ID:jif1e5vbzO
「あなたが行きたいところはあるかしら、候補としては蕎麦屋、ラーメン屋、カツ丼屋あとハンバーグなんかもあるけど」

「ううむ そうですね 私はお店のそばを食べたことがないので、そばがいいです」

「さすが依子、なかなかお目が高いわね。候補のそばが一番のおすすめよ」

「やったー! でいいんですよね?」

「まぁ クイズではないけど、ご褒美は考えておくわ」

話がひと段落したタイミングで先生が教室へ入ってきた「では、帰りのHRを始めます」いつもと変わらない話をする先生を横目に私は、今日の帰り道をシュミレーションした

(今日は何の話をしようかしら。 依子は何蕎麦がすきかしら 今日の日中は暖かかったけど日が落ちてきて肌寒いから、『不審者の〜』手でもつなぎたいわ、あわよくば恋人つなぎなんかも、そしてデパートでおそろいの物を買ったりなんて)などと妄想を膨らませながら聞いていた

〜では気を付けて帰ってください さようなら」

「さようなら!」

32 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:28:01 ID:jif1e5vbzO
教室にはいろいろなタイプの人がいる、すぐ帰るもの、集まっておしゃべりをしているもの、勉強をしているもの、友達を待っているもの、席に突っ伏しているもの…、様々な様子だ

私はこの中で一番幸せな者だろう。と確信していた。

「じゃあ、行きましょうか」

「はい 楽しみです」

「そういえば 家族に連絡してなかったわね」

ケータイを取り出し、家族へ連絡をした。するとすぐに返信が来た

『三女「司ねーちゃんずるい、外で食べてくるとか」

次女「お土産期待してるで」

母「遅くならないようにね」

父「楽しんできなさい」』

33 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:28:27 ID:jif1e5vbzO
「ふふ、司さん とても楽しそうですね」

「そうかしら?」

「そうです 少しうらやましいです」

「あの子たちも 少しなまいきだけど、そこがかわいいのよね」

「やっぱり 司さんは立派なひとです。私にお姉さんがいたなら司さんのようなひとがいいです」

「まったく 褒めても何もでないわよ」///
....不思議と体温の上昇を感じる

「そういえば、最近面白い曲を見つけたのよ」トウトツ

「どんな曲ですか?」キョトン

「えっと」ケータイを取り出して依子にみせた「MAGMAのKobaiaって曲ね」

「それは何ですか?」

「昔のフランスのバンドらしいけど、軽快なリズムと最初の癖になるボーカル、中盤の謎のシャウト、最後のよくわからない怪電波、なかなか良いわよ」

「あと、CaravanのGolf girlかしら、のどかな雰囲気が醸しだされる…」
依子がぽかんとしているのに気付いた(いけない つい熱くなって、だめね)
「ごめん依子、つい熱くなって」

「いいですよ、司さんのことをもっと知るチャンスですから」

そうこう話しているうちに目的地のハンバーグ屋に着いた

「ここよ」

「ここですか」

34 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:29:02 ID:jif1e5vbzO
........................................................

「そう ここの蕎麦がとてもおいしいの」

「け、結構人が並んでますね」オズオズ

(そうだ、依子は人混みが苦手だったわね、この時間なら空いていると思ったけど甘かったわ 今回は諦めて別のところにいこうかしら)

「よ、依子ごめん、あなたがよければほかの場所に行きましょう」

「だ、だいじょうぶです せっかく来ましたし 味もとても気になるので…」

「わかったわ依子、でもあなたに負担はかけたくないから外で待ってて頂戴。 私が整理券を取ってくるから」

はぁ〜 中は人でいっぱいね、外にもちらほら人がいたけど、中は満員。この調子だと席に着けるのは下手したら1時間後とかになりそう。お預け一時間以上くらって待ってるとか、とてつもなくきつい
でも泣き言してても始まらないからさっさと整理券を取ろう。

―40分かぁ 待てなくはないけど、話題が尽きないか心配だわー
「おまたせ 依子」タタタ

「あっ、司さんおつかれさまです どうでしたか?」

「待ち時間は40分よ」

「40分ですか、長いのか短いのかわからないですね」

「でも、時間がかかりそうだから近くのコンビニで時間をつぶしましょう」

「わかりました」

「でもコンビニってあまり利用したことないのよね」

「そうですね、私もデパートにはよく行くのですがコンビニは数えるほどしか行ったことないですね」

「それに、ご飯を食べる前だから、お菓子類は買わないしジュースくらい でも今はジュースを飲みたくなる季節でもないしどうしようかしら」

35 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:29:30 ID:jif1e5vbzO
「えぇー 司さん せ、せっかくコンビニに行くのですし、何か買いましょう た、例えばプリンとかヨーグルトなどのデザートを買ったり」

「うーん さっぱりしたものを食べた後だから、濃厚なプリンとか良いんじゃないかしら」

「そうですね 早速買いましょう」サッ

「ま、まって!」

…「司さんいろいろな種類のスイーツがありますね」キョロキョロ

「そうね、スーパーでは見たことないくらいのいろどりだわ」

「あっ スイーツにはこのコンビニのロゴがありますし、コンビニのオリジナル商品なのでしょう」

「へぇー コンビニは品物が割高なだけのイメージしかなかったから、オリジナルのスイーツがあるなら、コンビニに行く意味がでてきたじゃない」カンシン

「まだ時間はたっぷりありますし、じっくりと選びましょう 敵を知り己を知ればなんとやらですし」

「熱いわね依子 私も負けていられないわ 最高の食後のデザートを追い求めてね」

「いざ、スタートです」パン

36 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:29:59 ID:jif1e5vbzO
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20分後

「最高のデザート、ついに決まったわ じゃーん、なめらかプリン」ババーン

「お、美味しそうです」

「そお言う依子は何を選んだのチョコプリンケーキですね」ドン

「!? チョコプリンケーキ! 依子そんな罪深いものを選ぶとはあなたもなかなかやるわね これは強敵ね」オズ

「あの、司さんこの場合チョコプリンケーキは禁止級の手札でしたか?」///

「いいえ 私のなめらかプリンもあなたのケーキとポテンシャルはたいして変わらないはず つまり」

「つまり?」

「比べることは、すごく野暮なことだわ」フラッ

「つまり勝負を引き分けということですね」

「あ!そうね そうなるわね」

「ふふっ でもそのおかげでこんなおいしそうなスイーツを求めることができて満足です まさに知足」ウン

「そうね、熱くなって忘れてたけど食後のデザートを買う&時間つぶしでここにきたものね」

「じゃあ会計を」

37 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:30:33 ID:jif1e5vbzO
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「ふんふん♪ 我ながらなかなかいいものを買った自信があるわ」

「えっと、司さん待ち時間は40分ですよね」

「そうね、コンビニで20分潰せたから、あと残り時間15分ね、残り5分になったら移動するから10分ね」

「外に出ましたが寒いですね、コンビニに戻りたい気分です」ウウッ

「だめよ、用もないのに居座っていたら後の人の迷惑になってしまうわ」キッパリ

「さすがです 司さん、後を考える余裕私も見習いたいです」フンフン

「そんな褒められることではないわよ 当たり前のことじゃない。 そうだ習うで思い出したけど、あなた今回のテストあんまり良くなかったでしょ」

「はい、結構ギリギリでしたね」

「そう、それを回避するために今度勉強会をしましょう」パッ

「そうですか、私なんかのために勉強会を開いてくださるなんて感無量です」

「そうね、今週の土曜日とかどうかしら 空いている?」

「あ、空いていますよ! 司さんのためだったらいつでもウェルカムです」

「あはは、毎日はちょっと無理ね」///

「そそ、そうですよね、すいません…」シュン

「でも未来、受験シーズンになったら否応にも勉強はしなくちゃいけないのよね。今から憂鬱だわ」ガックシ

「まぁ でもその時は一緒に勉強しましょう」

「はっ、はい!」

「私も楽しみです」

「それってどっち?」ドウヨウ

「ふふっ もちろん、土曜日のことですよ」

「それもそうね あっ、時間だわ」アンシン

「さあ、行きましょう」

38 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:31:37 ID:jif1e5vbzO
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「長い間待った甲斐があったわね」

「もうお腹ペコペコですよ」グー

「そうね、注文は何にする メニューは蕎麦しかないけど、サイドで色々トッピングできるわよ」

「ううん、そうですね 野菜の天ぷらとかおいしそうですよね。 あと暖かいものが食べたいので天ぷら蕎麦にします」

「決まったわね 私はざるそばでトッピングに天ぷら盛り合わせにしようかしら」

「すいませーん」

........................................

「依子、ここは蕎麦もおいしいけど天ぷらもおいしいから期待しておいてちょうだい」

「司さん、外がこんなに寒いのにざるそばでよいのですか?」

「まぁ、寒いわ寒いけど 私はざるが一番おいしいと思っているから、その食べ方を変えるつもりはないわ」

「わ〜 司さんとてもかかっこいいです」

「依子も自分流の最高においしい食べ方を見つけてみなさい もしかしたら、天ぷらそばが一番おいしいかもしれない、別の物がそうかもしれない」

「まぁ 私は人のスタイルに口をはさむほど野暮ではないから、食事を楽しみましょう」

「出されたお茶、なんか味が変ですね」

「それは、そば茶ね そば茶を飲みながら頼まないのにトッピングを見たり、蕎麦のうんちくを見たりと、待ちを色々とたのしめるわ」

「蕎麦は見た目が少し地味なイメージがありますけど、奥深い奥深いですね」

「そうなのよっ…と来たわね」

「うわー いい匂いです」

「よしっ たべるわよ」

(まずは天ぷらね、前に天つゆじゃなくて塩単体で食べたらとてもおいしかったから今回も塩ね)

「うん とてもおいしいわ」サクッ

「このお蕎麦味が濃くて、おつゆとの相性が抜群です それに、天ぷらもいい感じに柔らかく味もしみ込んでいておいしいです」

「依子、なかなかお気に入りじゃない」

「えへへ そうですね」

(私も麵を食べよう、まずは蕎麦本来の味を)

「ん〜」 (そばの香りが鼻をぬけるわ)

(次はそばつゆを付けて)

「うん!おいしいわ」

39 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:31:58 ID:jif1e5vbzO
........................................

「は〜 おいしかった」

「ほんとに美味しかったわ」

「ふふっ 司さん、途中夢中で食べてましたもんね」

「わさびも擦りたての生わさびだし、最後までおいしくいただけたわ」

「じゃあ最後に蕎麦湯をいただこうかしら」

「すいません 蕎麦湯をください」

「司さん、蕎麦湯とは何ですか?」

「依子は知らないのね、いいわ、説明するわね」

「蕎麦湯とは、蕎麦をゆでた後のゆで汁のことを指す言葉ね。その蕎麦湯を食べ終わったそばつゆを割って飲んだり、そのまま飲んだりと好みで楽しめるものね」

「まぁ、ゆで汁に抵抗があったら飲まなくてもいいものだし、調味料みたいなものかしらね」

「なるほど、つまり私の天ぷらそばがもう一段階変身することができるのですね」バーン

「…多分そうだと思うわ、暖かいそばを頼んだことないからわからないけど」シセンソラシ

「あっ 来たわね」

「いただきましょう」

「…ふぅ おいしいわ」

「おつゆが薄まって飲みやすいです」

「私もそばつゆを割ろうかしら」

「うん そばつゆの風味と柔らかい口当たり、こっちもおいしいわ」

「はぁ ごちそうさまでした」

「ごちそうさま、じゃあ会計ね」

40 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:32:29 ID:jif1e5vbzO
........................................

「ふー 外は寒いわね」「日も傾いてきましたし」

「更に冷え込みそうです」

「そ、そうだ 依子」///

「手を繋ぎましょう、そうすれば寒さも緩和されるとおもうわ」///

「な、ないすあいであです」

依子は私の手を包むように握りしめた

「暖かいです」

「そうね、人肌の温度で安心感があって....」

「って、依子は守られてないじゃない! 依子一回手を放して」///

依子は不思議そうな顔をしていたが、特に気にすることもない

依子の手を一度解き、今度は指同士を絡ませ握った(やったわ!)

「この握り方少し恥ずかしいです」///

「だ、大丈夫よ! 暖かいしこの辺はめったに出歩いている人もいないし」ハアハア

(この手と手の間にあるものは、心か)・・・北風が吹きすさび、さらに寒さが増していく

41 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:33:15 ID:jif1e5vbzO
........................................

「うぅ 寒いです」

「いっそ、マフラーを共有しましょう」(私何言って いま一番恥ずかしい)

「い、いいですよ...」消え入りそうな声だがそう聞こえた

「私のマフラーを使ってください」

 「・・・いくわよ」

依子からのマフラーが司と依子を包み、二人だけの空間が完成した(依子のいい香りが一面に、私の体温2℃ぐらい上がってるわよね)

「司さん…息荒いですよ、もしかして、わ、私の体温高すぎました」

「大丈夫よ、いい感じの暖かさよ」ハアハア

(こんな幸せ永遠に続けばいいのに)・・・

(私の心も依子にもっと近づけたらいいのになぁ〜)

―私と依子、出会ってまだ日も浅いけどこのまま将来も一緒にいるのかしら。依子はあまり自分のことを話したがらないから100%の自信はないけれど大人になった後も、他愛もない話をしながら笑いあっているのかしら。もっと依子のことを深く知りたい、けど自分からあれこれ聞くのは無粋な気もするし、気長に待っていよう。¬―

........................................

「つきましたね」依子はマフラーを解き鞄にしまった(はあ、さよなら天国)

「ずいぶん早かったわね」

「そ、そうですか、10分以上歩いたきが、します」

「そうなのね♪」

私はご機嫌な調子でショッピングセンターの中に入った

「さて まずは明日の朝ごはんを買おうかしら」

「つ、司さん この前買ったグラノーラがき、切れてしまったので買いたいです」

「依子あれ、もう切れたの 消費がはやいわね」

「すすすいません おおおおいしくてつい」

「まったく 謝らなくていいわよ」

(おやつとしてもたべてるのかしら?かわいすぎる‼)

特に波乱もなく買い終えたわ

「司さんかなり多くかわれていましたよね」

「そうね 妹へのお土産も買うことになったせいで、出費がかさんだけれど」

「さ、流石司さん おねえさんです」

「さあ 次、雑貨店行くわよ」///

「待ってください」

42 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:33:49 ID:jif1e5vbzO
........................................

「角にあるから、探すのに苦労したわ」

「この雑貨店を探すのに10分程度は、無意味にうろついた苦い過去はさよならよ」ウゥ

「みつけられてよかったです」アンシン

「自由に見て回りましょうか」

〜(うーん なかなか依子に会いそうな物はないわね・・・ 依子は何見てるのかしら)
依子は雪だるまのマスコットとにらめっこをしながら悩んでいた

「よーりこ」スッ「ひゃあ‼」ズリッ

後ろから声をかけられた依子は驚き体制を崩してしまった「危ない‼」間一髪のところで依
子の肩を掴み体制を戻した

「ごめんなさい依子驚かせるつもりはなかったのよ」

「いいですよ 司さん、いつものことなので大丈夫です」

「大丈夫、じゃないわよ もしも依子がケガなんてしたら」ウルウル

「・・・っ」ナデナデ

「すすすすいません 突然頭をなでてしまいました」

「…」

「ふふふっ あはは!」

「ありがとう 落ち着いたわ」フッ

「ざわざわ」

「・・・依子行くわよ」

「はっ はい〜」そそくさと店を後にする・・・

「ここまで来ればいいでしょう」ハアハア

43 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:34:19 ID:jif1e5vbzO
「すいません 司さん」

「依子があやまることじゃないわ」

「⁉ 司さん 買い忘れたものを思い出しました」ハクシン

「そうなの? 私も買い忘れに気づいたから別行動しない?」(私も胸の昂ぶりを抑えたいから好都合)

「わ、わかりました」

「じゃあ 30分後に入口に集合ね」

「30分後ですね」依子別れた私は足早に、先の雑貨屋に向かった

(依子が見ていたぬいぐるみ、プレゼントしたら喜ぶかしら、でも妹用のお土産を買ったか
ら手持ちが少ないし でもあげたら喜びそうだし うう〜ん)

(悩んでても仕方ないし清水の舞台から飛び降りる気持ちで買いましょう 依子の笑顔も見たいし)
「こちら2点で800円です」(買ってしまった しかし、後悔はないわ)

あとの時間、依子に鉢合わせると顔に出ちゃいそうだし、ペットショップとか行って静めようかしら
........................................

えっ!依子、なんであなたがここに!?
迂闊だった、まさか依子が来なさそうなところを選んだというのに。幸い私には気づいていないようだし、コッソリとこの場を離れましょうか。

…この後私は、行く先々で依子の姿を目撃し、時間までトイレに籠ることにした…

44 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:34:44 ID:jif1e5vbzO
・・・30分後

「ちょうど30分後ね」

「司さ〜ん」(ちゃんと間に合ったわね)

「どてん」

「依子⁉」

「転んでしまいました」

「依子大丈夫?盛大に荷物をぶちまけているけど」

「って、いろいろなものを買ってるわね」(どおりで行く先々で会うわけね)

依子のカバンからスコップ、猫の餌、鉄の箱、ドライバー、ネジなどバラエティー豊かなものが散乱している

「手伝うわよ」

「あああ、りががとうございます」

「それにしても 工作にでも目覚めたの?」

「そ、そうなんですよ 最近はでいーあいわいというものが流行っていまして」

「知ってるわよ 朝のテレビでやっているから」

「それにあこがれて」

「憧れるのは良いけど あなた不器用だから怪我しないか心配だわ」

「し、信用されてないのですね」シュン

「いいえ ただ心配なだけよ」

「依子、もう遅い時間だし、帰りましょうか」

「はい」シュン

45 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:35:55 ID:jif1e5vbzO
........................................

「ふー さらに冷え込んできましたね」

「あっ!」

「えっ? 何」

「今思い出しました、コンビニのスイーツまだ食べていないと」

「!! すっかり忘れていたわ」

「近くに公園があるしそこで食べましょう」

「わかりました」

「公園のベンチは冷たいですね」ヒエヒエ

「こんなの座ってしまえばこっちのものよ」ドスン

「!? ツメタイ」

「司さんだ、だいじょうぶですか?」

「ダ、ダイジョウブヨ」ブルブル

「震えてるじゃないですか、私のマフラーを下にひいてください」

(…忘れてたけど私もマフラー持っているから、私のマフラーをしいて依子にくっついてもらえば最強じゃないかしら)

「いいえ 私のマフラーを敷くから、依子も一緒に座りましょう」

「で、でもいいのですか」

「いいのよ、依子を寒いまま放置するのは私の心が痛むもの」

「…お言葉に甘えて」

「…寒いわね」

「えっと、私のマフラー使いますか」

「ええ、使うわ」

「依子、あなたも一緒よ 一緒に温まりましょう」ギュ

「...大好きよ」ボソッ

「!?」///

「!! 依子違うの!私はプリンが大好きだから、はやく食べたい思いが先行して」ドッドッ
(何言ってんの私、思わず本音が漏れちゃったじゃない)

「そうですか、では食べましょう」

「おいしいわ、依子…」

46 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/15 19:36:17 ID:jif1e5vbzO
........................................

「依子と私の家はここから真逆だからここでお別れね」

「デザートのごみは私が処分しておきます」

「ありがとう依子、じゃあまた明日」

「さささようなら つつ司さん またあした…」

「ええ、 依子背中が丸まってるわよ かわいいは背中から、でしょ」

「はい」

「じゃあ また明日ね」・・

47 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/15 19:36:45 ID:jif1e5vbzO
茜色に染まる依子を眺め、今日の出来事を噛みしめた。今日は良い日だった、明日もきっといい日になるわ。私は夕日を後ろに浴びながら依子のことや妹達のことを考えながら歩きいていた、「月が出ているわね 満月かしら」地平線から出たばかりの月はやたらと大きく妖しげな雰囲気を纏っている「月が紅いわ」紅い月に私は不吉な気配を感じたが、今日の出来事を思い出し、ウキウキで帰路に着いた

[夕方] ふたりの距離 ―完―

48 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/29 23:04:48 ID:BheErAFD19
[オウマガトキ] はじまりの夜

「はぁ 今日も疲れた」誰もいない教室でそうつぶやく人影があった。 「ああ、もうこんな時間かぁ」 日が傾き薄暗い教室、時計の針が6時30分を指している。三宮透は孤高のソリストに合いそうな日和だ。と言いたげな、余裕な表情で地平線に沈みゆく太陽をみている。だがこの余裕な表情も日が落ちる如くどんどん曇っていく。
普段は暗くなる前に帰宅しているはずだが何故?と自問しながら今日のことを思い出す・・「だめだ、思い出せない」人と関わることを避けた代償とでもいうのだろうか、透の記憶は薄く引き伸ばされた絵の具のように掠れている
そういえば、今日の体育は球技だったっけ? まぁ僕は孤高だからあんな無意味にボールなんか追いかけないし、相手から奪うなんてこともしないし、味方からもお荷物を渡されることもないし・・そう思っていると急になんとも言われぬ空虚感が押し寄せてきた
何考えているんだ、たかが学校の体育、将来スポーツなんてやらないから「これでいいんだ・・」消え入るような声で発した音は、教室の木目に吸い込まれていった「はぁ 咳をしてもひとり・・か」帰ろう 空の蒼が深い青に染まる黄昏時、町に明かりが灯り一日の終わりといった感じだ。

49 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/29 23:05:15 ID:BheErAFD19
これ以上暗くなる前に帰らないとやばい
椅子から立ち上がった透は、寂しさを少しでも紛らわせるために誰かいないかと校庭へ目をやった。校庭には部活動が終わったのか明かりもついておらず寂しさを余計に増大させる「・・?」しかし、校庭に見覚えのあるシルエットを捉えた「依子さん?」こんな時間に何をしているのだろうと、思ったのもつかの間、依子は林の奥へと消えていった。林に入っていったけど何しているんだろう 透はそんなことを考えながら大急ぎで階段を下って行った 夜の闇など気にしないで一目散に依子の消えた林を目指した。 決して覗きに行くなどという浅い考えで行動したわけではないぞ
依子さんが、迷子になるのが心配だから行くだけだ と心の中の自分に精一杯の言い訳をした彼女の目は輝いていた。

50 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/29 23:05:57 ID:BheErAFD19
林に入った透は、先の好奇心を若干ではあるが…いや後悔をしていた、木の葉が周りの光を吸収し、真の闇があたりを包んでいることに気づいた。意気揚々と走り出した手前情けなく敗走は、プライドが許さないのかおずおずと進んでいく。歩き始めて20分、急に開けたところへ出た。暗闇をさ迷ったことが幸いしたのだろうか、闇に目が慣れており、月の光も彼女の味方をし全貌はすぐに認識できた。
芝生のある小さな広場だった。そのところどころにはベンチが設置されており、広場の奥には部室と思しきプレハブ小屋が立っている。
月の光が突き刺すように広場を照らし、ベンチは神々しく錆色に光っている。闇の世界から抜け出した透は、冷たくも幻想的な光景にしばし心を奪われていた。
「学校の裏側にこんな素敵な場所があったなんて」
違和感に気づいた あれ?プレハブ小屋から光が。
きっとあそこに依子さんはいるはず。そう得心して恐る恐るプレハブ小屋に近づいた。小屋の窓から中の様子を探ろうとしたが、窓がスモークガラスであるため不可能であったため、聞き耳を立てた。

51 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/29 23:06:26 ID:BheErAFD19
部屋の中からは何か作業をするような物音が聞こえる「・・・・」「・・・・す」依子さんの声とあと一つ音がする。中には依子と思しき声とは別に音が聞こえる。
透は不気味に思いながらも、好奇心には抗えず、壁に張り付き聞き耳を立てた。中からは猫のような声と、金属をこすり合わせたような音が聞こえてきた。「もっとですね」聞いていくうちに鳴き声は大きくなっていき、一つ鋭い音がした後
あたりは静寂に包まれた 依子さん何をやっているんだ、もしかして? 色々と悪い妄想を巡らせた。
 『と、とにかく逃げないと』 
聞き耳の体制から戻る際、うっかり小石を踏んでしまった。
「ふぇっ」我ながら間抜けな声を出してと罵りながら、つまずいた小石を睨んだ。
「何か物音がしますね」
ヤバい見つかる、逃げないと と足に力を込めたが、どうやら先ほどの石につまずいたせいで、足をひねったようだ。
逃げられないと悟った透は、覚悟を決めた、という瞳で、プレハブのドアを睨みつけた
 「誰かいるのですか?」
ゆっくりとドアが開いた刹那、銀色に光るものを認識し、透は血の気が一気に引くのを自覚した。
そうか、見られたから僕は始末されるんだ、もうちょっと長くいきたかった

52 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/29 23:07:02 ID:BheErAFD19
扉が完全に開き、依子は透を認識した
「三宮透さん?」
「はへ・・・」
透の顔は涙や鼻水で濡れており、間の抜けた、消え入りそうな声で返事をした。
そんな透を見て依子は「ごめんなさい びっくりさせちゃいましたね」と言いながら土の付いたスコップをしまった。
「脅かしてしまって申し訳ありません。おっと 立ち話もあれなので、入ってください」
依子に促されるまま、プレハブ小屋に入った
「お茶でもどうぞ」そう言った依子の近くには鋤が立てかけており、足元には野良猫だと思われる猫が我が物顔でくつろいでいた
「ね、ねこ・・かってるんだ」
「飼ってませんよ、この子は野良でこの部屋に住み着いていますよ」
とりあえず安全だと思った透は落ち着いて周囲を見渡すことができるくらいには回復した。落ち着いている間に、お茶を作り終わったようで、紙コップの中にお茶が湯気を立てて入っている。 

53 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/29 23:07:36 ID:BheErAFD19
「ついでに、あなたの足も応急処置をしましょうか 透さん足を出してください」
透は依子に言われるがまま、靴を脱ぎ、腫れた足を差し出した。
「ふむ、少し腫れている程度なので、テーピングをすれば問題ないですね」
「あ、ありがとう」
「いいですよ 私が驚かせて、こうなってしまったみたいですし」
「よし、これでいいですね」
依子による応急処置はきれいではないが不慣れなせいか見た目は少し悪いが、丁寧に固定されている。
「これで一応歩けるはずです」
 依子の厚意には感謝しているが、これまでの疑念が完全に払しょくされていないので本人に聞いてみることにした。
「な、なにしてた、のここで」
「ああ この子の寝床を作っていました」
そばで大きなあくびをしている猫を指しながら言った
それを聞いた透は、今すぐ膝を付けて謝りたい衝動にかられたと同時に思慕の萌芽が透自身感じられた
「まだ完成していませんが遅くなったので帰りましょうかね」
透はチャンスだと思った。
依子さんと一緒に帰れば暗い夜道も怖くない
「依子さん」
「良いですよ ふふふっ 夜道は怖いですからね」
「なっ・・・」依子に心を見透かされたことに驚き、頬を赤らめた
「透さん 置いていきますよ」
「ま、待って」…
透はご機嫌な調子で帰路に着いた。 
(高鳴る鼓動を抑えるのも孤高か)月を眺めながらそう考えていた・・
空虚に空いた宙に月だけが紅く輝くそんな夜が始まる

54 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/30 23:24:02 ID:Db8mXUoD5M
それぞれの夜

「・・・ザクザク」紅い月に照らされた人影が一つ、ナニカをしている。その人影の表情は影に隠れていてうかがい知ることができない 喜びの表情なのか、悲しみの表情なのか
それとも無か 只、わかることはその人影が行っている行為は、およそ常人には理解ができないものであることだけだ。人影は一仕事終えたのか満足そうなしぐさをし、闇の中へ消えていった。

55 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:24:41 ID:Db8mXUoD5M
「ただいま」返事は返ってこない 廊下の奥の部屋からどたどたと何か足音が聞こえ、こちらを歓迎するような声とともに、扉が開いた
「おかえりー 司ねーちゃん」と言いながらとびかかってきた
「おかえり―帰ってくるの楽しみにしとったよ」もう一人の妹は司のそばに寄り添いお土産をくれ、と暗に伝えている
「もう あんたは現金ねぇ」
「司、おかえり」母が奥から顔を出した
「ただいま お母さんこの子達止めておいてよ、玄関から一歩もうごけないんだけど」
妹たちは司に絡みついて、お土産を今か今かと待っている。
司は鯉に餌をやる人はこんな視点なのね、と苦笑した
「はいはい ここにあるから私の部屋に行かせて」
「こら あなたたち、おねーちゃんを困らせないの」母親の援護が飛んできた
「はーい」妹たちは母の号令に従って、リビングに戻っていった。
やっと解放された、早くきがえたいわ
自室に着いた司は一息ついきながら壁に掛かっている時計を見た 時計の針は6時30分を指している

56 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:25:09 ID:Db8mXUoD5M
「あの子たちには困ったものね、そこもかわいいのだけど」服を脱ぎながらそう思っていると、ふと頭が痺れるほどの衝撃に襲われた
そうだ、依子とあんなに近くにいたから残り香がまだ服に・・・手も繋いだ・・・手はお風呂に入るまで洗わなくてもいいわよね 
司の顔は上気し、夕方の興奮を思い出していた
「依子!! いいえ 気をしっかり保て私!!そんな姿依子に見られたら失望されてしまう依子はそんな私を望んでいない!」
そう決心し、部屋着に着替え、誘惑を払うようにリビングへと向かった
 「あなたたち お待たせ」
妹たちはもはや辛抱堪らないという様子を、母が抑えている。司はもったいぶると妹たちが暴れだすのを知っているので、席に着いたらすぐさま袋からブツを取り出す。
「ずんだ餅よ 和菓子屋さんにあった最後の一つ、あとお母さんとお父さんにはみたらし団子よ」ずんだ餅は二つのおもちにずんだ餡がかかって、仲良く分けられるようになっており、奪い合いとは無縁だと判断して購入したものである。
「うわー! おいしそー」最後のひとつという特別感も合わさって、いつも以上にテンションが上がっている。

57 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:25:30 ID:Db8mXUoD5M
「ありがとう、司」
「じゃあ 食べましょう」
「いただきまーす‼」
妹たちの元気な声が合図だ

58 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:26:03 ID:Db8mXUoD5M
「ただいま!」上機嫌に扉を開けた
「おかえり透、遅かったわね ばかに機嫌がいいけど良いことあったの?」
母が聞いてきた
「まさか 友達ができたとか?」
母は自分のことのように、嬉しそうにしている
「まぁ そんなところかな それはそうとお腹すいたよ」
「はいはい 今日は透の好物のカレーよ」
「ほんとありがとう 母さん!」
今日は依子さんと一緒に帰れたし、夕飯はカレーだし良いことだらけだったな・・・て、僕は何、腑抜けているんだ。食事を終え、冷静になってきたのか、急に我に返った 
今日の出会いはたまたまだし、依子さんはいつもリボンのひと。飾磨司さんだったっけ?
と行動しているから話さないし、司?さんは苦手だし明日から何か変わるわけでもないし。
そう言っている透だが、依子のことを考えるたびに頬が緩むことに気づいていないようだ。
そもそも僕はソリスト、孤高の人だ。他人と安易に交わったり、なれ合ったりしないものなのだ。 
でも依子さんは例外かな〜真に僕を理解してくれている。そんな人となら関わる価値があるなどと、天秤の秤にプライドと寂しさを乗せた勝負を繰り広げたが、結果は決まり切っていたようだ。
もう一度名前を呼んでほしいなと思いながら、月を眺めた
「おまえはいつもそこにあるけど寂しくないのか、今日は月も紅いし何か良いことでもあったのかな ふっ、僕と同じだな」
などとつぶやきながら、お風呂に入るために、部屋を出た
「明日もいい日になるのかな?」

59 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:26:37 ID:Db8mXUoD5M
 「私、御影依子は飾磨司さんが好きだ。」司さんとは中学からの付き合いですが、好きという気持ちが溢れて仕方ないです。今日も体育の時間に司さんの靴下を盗んでしまいました。でも仕方ないですよね。すきなのですから
「どうかして私のようなものでも、司さんと結ばれたい」
司から盗んだ靴下の匂いを嗅いだり、手にはめたり、味わったりと全身で司を感じ取ろうとしている。
「はぁ 司さん… 司さん何故こうも私を惹きつけるのか、こうしているともっとあなたのことを理解できるようなきがします」私はおかしいのでしょうか?それともそんな欲求は、皆さんが持っているものなのでしょうか?
今度は、体育で使っていた靴下が欲しいな
あわよくば、上履きや外靴、体操服などもほしいですね。唾液なども欲しいですね、スプーンでの摂取程度ではもう我慢できないです
そうだ、今度司さんに泊まりに来てもらって寝ている隙に採取しましょうか。髪の毛も手に入って一石二鳥ですしやりましょうか、いや待ってください、私が司さんの家にお泊りをしに行けば、司さんのプライベートなあれこれがたくさん拝めるじゃないですか・・・

60 名前:カレル[sage] 投稿日:2022/07/30 23:27:08 ID:Db8mXUoD5M
「にゃー」
あっ、猫さんがいるのをすっかり忘れていました。家で飼ってあげられないのは残念ですが仕方ないですね。今日もいろいろなことがありましたね、司さんが私のためにせっかく作ってくれたお弁当は食べられませんでしたが、事故でしたが望んでいた言葉をかけてもらったり、司さんと恋人繋ぎで歩けましたし。こんな私と付き合ってくれる本当に司さんは人のできた方です
私の本性を知ったらどんな反応をしてくれるのでしょうか?できればこの関係は崩したくないですが時間の問題でしょう。いずれ私が私でいられなくなるかもしれないのです。人間は誰でも猛獣使いであるそうで、私の猛獣はこの抑えきれない愛情です。しかし、この愛情が温もりを感じられなくなるのが堪らなく怖いのです。そう頭では理解していても体が司さんを求めてしまう、体が裂けるほどの二面性に苦しむこと、いつからでしょうか。月日が経つにつれて私の欲望が悪魔のように醜く、艶やかに育っていくのがありありと感じ取れるようになってきました。ある時は獣のように激しく、花のように静かに、そうしてその気持ちを自覚し、嫌悪感にひたるのです「依子・・・」と司さんの穢れのない瞳を輝かせ、私の名前を呼んでくれるたび、私の汚れた欲望がわくわくするのです。
本当に猫さんはいいですよね、本能のままに生きていても、誰にも文句を言われないどころか、可愛がられる。なんて考えましたが
人間でないと司さんを愛すことができないですから。これは「純愛」ですよね。誰にも文句は言わせません。
あ、そうだ忘れるところでした、ええと ―取り出したのは司の髪の毛で作った人形だーマフラーに着いた司さんの髪の毛を足してと、これまでの努力の結晶ですね。ウットリとしちゃいます。
「ふぅ そろそろ帰りましょうか」
暗いですね、月も雲に隠れて街灯だけが頼りです
司さん、貴女を愛する心に一片の曇りもないのにまた一日が終わる
また明日もいい日になりそうです

「ただいま帰りました 司さん」
「おかえりなさい 依子」

[完]

61 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/30 23:28:05 ID:Db8mXUoD5M
ここまで読んでいただきありがとうございます。
約二か月完結するのにかかりました。実際は3作目を投稿した段階ですべて書き終わっていましたが、なんとなく先送りにして結果かなり時間がかかりましたね。
内容の話ですが、やはり一番最初がピークのような気がしますね。
原作の読み込みの甘さと、未熟感が否めない。ですが個人的には透の心情を考えて書くのはとても面白かったですし、一番速くかけました。
まぁ、へこんでいても仕方ないので、ここでの失敗や反省を生かしてより良い作品作りに努めていく所存です。
次回作の話ですが。今書いているのが一つあります。ただ書いているうちにどんどん伸びてしまい、中盤なのに余裕で2作目の文章量を超えてしまいました。なので、いつ完成するかわからないので、短編でも書こうかな。
というわけで次回お会いしましょう

62 名前:ペンギノン (あおちゃんSSの人) [age] 投稿日:2022/07/30 23:57:23 ID:.lv3TM1kpy
拝読いたしました! カレル様、完結お疲れ様です&おめでとうございます!!
プロローグの投稿後に感想を書き込んで以降も、書き込みこそしませんでしたがずっと追いかけておりました。
依子、司、透。三人の絶妙な関係性が作り出す、尊さとアブノーマルさと、少し (?) の不穏さに、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
誰もかれもわりかしやべぇこと言ってる気がしますが、彼女たちにとってそれはきっと、紛れもなく『純愛』。
本質的には、『明日もいい日になる』ことを願っている。そんな、些細なねがいごとが、彼女たちの物語を紡ぐ縫い糸となっているのでしょうか。
とても素敵な作品でした! 月並な感想で恐縮ですが、次回作も楽しみにしておりますっ!!


P.S. 最近カレル様の作品を読んでいると、この曲がずっと頭の中で流れます。何故かはわからないけど共有しなければという使命感に駆られたので、共有します (謎)

『明日はきっといい日になる』 (by 高橋優)
https://www.youtube.com/watch?v=cpIa89_rZoA

63 名前:カレル[age] 投稿日:2022/07/31 20:06:15 ID:TL5f62wlZg
コメントありがとうございます。
「あしたもいい日になる」私の好きな言葉です
と、おふざけはおいておいて

今日の幸せと、明日への希望に満ちているようで、一番いい言葉だと思っています。
もっと面白い作品を書くことができるように精進しないと、ですね。

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