2話 先輩に会えたらイイナ!
「エトワリア?」
「はい」
「マイメロおねーちゃん可愛いー」
「シュガー。マイメロおねえさんは話の途中です。」
エトワリアの世界を説明されながらマイメロはシュガーにモフモフされていた。
「人間界とはまた別の世界なのね」
神殿に行き、女神のソラ様と筆頭神官アルシーヴさんに事情を話した。
「自ら落ちてきたのは、前列が無い。帰し方が分かるまでエトワリアで生活してもらう」
「大丈夫。マイメロ、異世界生活は慣れてます」
「エトワリアの平和をよろしくお願いします。そうだ。マイメロ。少しメロディーコンパクトを貸してください」
「はい。」
マイメロはソラにメロディーコンパクトを預けた。
「建築家のカンナにマイメロの住居を注文した」
「ありがとう。それにしても、アルシーヴさんの声ってどこかで聞いたことあるようなないような……」
「家の建築は3日程掛かるが、それまでは神殿で寝泊まりするといい」
「お礼に今日の夕飯はマイメロが作るね。」
「野菜なら学園生活部の畑がある。そこで少しもらって来るといい」
「はーい」
マイメロは神殿を後にした。
学園生活部部室前
「こんにちはー」
「はーい。……あら?」
悠里が扉を開けるが誰もいない。視線を少し下に向けるとピンクの頭巾を被ったうさぎのぬいぐるみが立っていた。
「最近エトワリアに来たマイメロです。挨拶にきました。カレーに使うお野菜を少し分けてほしいの」
「まあ、かわいい。ちょっと待ってね」
「りーさん、今日のご飯の分の収穫?」
庭で遊んでいた由紀が悠里に声を掛ける。
「ちょっと、かわいいお客さんに野菜のお裾分けを」
「え?」
由紀が玄関に回るとぬいぐるみがちょこんと座っていた。
「ピンクのうさちゃんだー!りーさん、この子可愛いね。」
普通のぬいぐるみと思っている由紀はギューッと抱き締める。
「ありがとう。マイメロディ。みんなはマイメロって呼ぶわ」
マイメロが由紀の方を向いてニコッと挨拶をした。
「ええっ!喋る?すごいすごい!可愛い!賢い!」
「マイメロちゃん、今度学園生活部にも遊びに来てね」
「はい、どうぞ。家もカレーにしようかしら」
由紀はマイメロを地面に下ろし、悠里はニンジンとじゃがいもが入った袋を渡した。
「学園生活部のカレーもすっごく美味しいんだよ!」
「もしよければ機会があれば食べに来てね」
由紀と悠里はマイメロに手を振る。
2時間後
「はあ……。疲れた……っていうかお腹空いた……。昨日は野宿したけど、流石に毎日野宿は……」
クロミはとぼとぼと道を歩く。
ラビットハウスから抜け出した後、あちこち夢を持つ人を探したが中々見つからずに途方に暮れていた。
「あー。マイメロちゃん可愛かったなー。他にもマイメロちゃんみたいな子来てないかな?」
「あーあー。つまんねーの!お腹空いたー」
「ん?」
畑の野菜を眺めていた由紀と反対側の畑の前で叫んでいたクロミの目が合った。
由紀は何かを察しタッとクロミの近くに駆け寄る。
「もしかして、喋るぬいぐるみちゃん?」
「え?そ、そうだけど……アンタは……」
グウウウゥ!
クロミから大きなお腹の音が鳴る。
「お腹、空いてるの?」
「べ、別に!たまたま……」
グウウウゥ!
再びお腹の音が鳴る。
「これ、あげるね」
由紀はポテチの袋をクロミに差し出した。
「…………しょーがないね」
クロミは乱暴に受け取りその場でペロリとたいらげた。
「わたしは3年B組、丈槍由紀!クロミちゃんっていうんだ。そうだ!会わせたい人がいるんだ!ちょっと待ってて」
由紀は突然立ち上がり屋内へ走っていった。
「くるみちゃん来て来て、」
「何だよ急に見てほしいものって……っ!」
「由紀、危ない!」
「へ?」
ガキンッ!
胡桃はクロミを見るなり、シャベルで弾き飛ばした。
「ゆき!魔物に近づいちゃダメっていつも言ってるだろ!」
「違うよ!クロミちゃんは喋るぬいぐるみだよ!」
「だからっ!……ん?ぬいぐるみ?」
「きゅう〜」
弾き飛ばされて地面に激突して気絶するクロミにそっと近づく。
「やっつけても消えない……。なんだこれ?」
胡桃は好奇心3割、警戒心7割でクロミを持ち上げる。
「確かに触り心地はぬいぐるみだ……」
「いきなり何すんだよーっ」
「わわっ」
パチッと目を開けるなり飛び起きたクロミは胡桃をポカポカ殴る。
「ったく……。モグモグ……いきなりぶっ飛ばすなんてモグモグ……。ひどいじゃないか!」
机の上でお詫びの乾パンを食べながらプリプリ怒っていた。
「本当にごめん。ちょっと色々あって過敏になりすぎてた」
胡桃はペコペコと謝る。
「さっきのマイメロちゃんと雰囲気が似てるけどお友達かしら?」
「ちっがーう!」
「え?じゃあ姉妹?」
由紀と悠里がクロミの頭を撫でながら質問する。
「もっと違う!ライバルだよライバル!」
「ライバル!かっこよくていい響きだねー」
「予想と全く違う答えが返ってきましたね」
「クロミノート、No.1135……みんなで海に行った日……」
回想
「クロミちゃん、日焼け止め塗ってー」
「いいよー」
「うふふ。くすぐったい」
「今度は背中ね。」
「うん。ありがとう。今度はマイメロが塗るね」
「ありがとう。よろしくね」
「あれー?日焼け止め見つからないなーごめんねクロミちゃん、ちょっと待っててね。」
「うん。ゆっくりいいよー」
マイメロの探し物を待っていると、急に眠気が襲ってきた。
(何だか眠くなってきちゃった……)
《マイメローッ。ボール取ってー。一緒にビーチバレーしようぜー》
「はーい」
眠りにつく直前、ボールが視界の端に飛んできて、フラット(ねずみのぬいぐるみ)の声が聞こえた。
10分後
「あ、寝ちゃってた。あれ?マイメロがいない。塗り終わったんだ。アタイも遊びに参加しよう」
アタイは日焼け止めを1滴も塗らずに夏の砂浜へ駆け出した。
夕方
「何で?身体中がヒリヒリする……。塗ってもらったはずなのに……」
「クロミちゃん、今日は楽しかったね。(ポン)」
「(ビリビリビリッ)ギャーッ!」
「そういえば、マイメロ、フラット君達に呼ばれてそのまま遊びに行ったんだけど、クロミちゃん後から参加したってことは自分で塗れたんだね。よかった」
「はあああああ?」
「と、いうわけで。アタイとアイツは全然仲良くないっ!」
「まあ、痛そう……」
「日焼けは女の子の天敵だよね。」
「しかもNo.が1000番台って……相当なもんだな」
「あの、いくらうたた寝していたからといって、塗ってるか塗ってないか感覚で分かりそうですが……」
4人がバラバラの感想を出す。
「でも、本当にぬいぐるみなのに生きて喋っているなんてすごいです。こっちの魔物でもほとんど言葉が通じないのに」
「よーし。腹もいっぱいになったことだし、ポテチと乾パンのお礼に特別に願いを叶えてやるよ!」
「んー。いきなり夢を叶えると言われても……。」
「夢は魔法じゃなくて自分の力で叶えるものだよ!」
「これ以上の幸せを望むのは……」
「お前ら、意外と現実的だな」
由紀、悠里、美紀が首を振る。
「何でも願いが叶う……」
一方、胡桃は思い詰めた顔でクロミをじっと見る。
後編
神殿
「メロディーコンパクトに私とアルシーヴ、七賢者、きららとランプのカードを追加しました」
ソラはマイメロにメロディーコンパクトを返却した。
「ありがとうございます」
「本当はクリエメイト全員のカードを入れたかったんだけど、写真と許可を取るのに時間が掛かるからってアルシーヴに却下されて……」
ソラがしゅんと肩を落とす。
「まあまあ、紅茶でも飲んで落ち着きましょう。タルトも焼いて来ました」
マイメロはさっきまではなかった大きな風呂敷包みから大量のタルトを取り出した。
「ありがとう。みんなでいただきましょう。ハッカ、人数分のお皿とカップを持ってきて取り分けてくれ」
「御意」
ハッカはこくりと頷き、大部屋を出た。
「さっきの話の続きだが、クロミというマイメロの仲間がラビットハウスで悪事を働いたと?動機は分かるか?」
アルシーヴは少し困った顔でマイメロに聞く。
「はい。そこまで大変な事にはならなくて、ココアちゃん達も無事だったからよかったんだけど、クロミちゃんは黒音符を集めると何でも願いが叶うので、それを目的としているみたいで。私はそれを止めるためにえっと……エトアリワに来ました」
「エトワリア、でございますわ」
フェンネルが冷静に突っ込む。
「あ、そうだった。えっと……。エ・ト・ワ・リ・ア。ホッ……言えた。……あれ?どこまで話したっけ?」
「マイメロがエトワリアに来た理由、だな。」
「と、いうか。この話は午前中にも聞いた気がするけどね」
ジンジャーがフォローをしてフフッとカルダモンが苦笑する。
「あれ?そうだっけ?」
マイメロはコテンと首を傾げる。
『『『…………』』』
(この子、大丈夫か?)
この場にいないハッカを除いた全員の心が1つになった。
「帰還、客も連れてきた」
「アルシーヴ先生、課題のレポートを提出しにきました」
「こんにちは」
ガチャッとドアが開き、皿とカップを持ったハッカに続いてきららとランプも来た。
「途中で会ったので、連れてきた」
「あれ?何ですか、そのぬいぐるみ。アルシーヴ先生のお気に入りですか?」
「違う。私にはこのような可愛らしい小物は似合わない」
「えー。きっと似合うわよー」
「そうですわ!普段クールなアルシーヴ様にキュートな小物はギャップ萌えですわ!」
ソラが緩く、フェンネルは勢いよくフォローする。
「そ、そうか。あ、ありがとう……。」
「茶菓子の準備が整った」
ハッカが素早く隣の食堂にタルトと紅茶をセットした。
「甘いのはあまり好きではないのですが、これならいけます」
「甘〜い。おいし〜い」
「美味」
みんなは手作りタルトに舌鼓を打つ。
「自信作だからみんなどんどん食べてね。あ、そういえばさっき夢の扉が開いたの」
『『『早く言え(言ってください)(言ってよー)!』』』
今度はその場に居た全員が直接突っ込んだ。
30分前
「クロミ、ちょっと……」
「ん?シャベル女じゃないか」
胡桃は廊下に出てクロミを手招きした。周りをキョロキョロして気にしているようだ。
「シャベル女って……。まあいいか。あたしが悪いし。1泊だけだけど今日、泊まっていかないか?」
「へ?いいのかい?よっしゃーっ!寝床ゲット!」
思いがけない提案に、クロミは目を輝かせた。
「で、アンタの願いを言ってごらん?」
「生き……元気な頃の先輩に会いたい」
胡桃はさっきまでの元気な雰囲気とはうって変わって急に顔を赤らめて下を向いた。
「ほほう……。その先輩と言うのはアンタのこれ?」
クロミはニヤニヤしながら小指を立てる。
「違うッ!まだそんなんじゃない!片思いというか……憧れというか……陸上入ったきっかけ?みたいな……」
「分かる!分かるよその気持ち。好きな人とはいつでも一緒にいたいもんさ!」
何かを思い出したのかクロミは急に泣き出した。ピンクのドクロも一緒に泣いている
「同じ恋する乙女同士、協力してやるよ!開け!夢の扉!」
ボンッと胡桃の目の前に煙があがった。
「あれ?どこだ、ここ?」
「せ……んぱ……い?」
煙が消えると陸上部のユニフォームを着た背の高い男性が現れた。
「胡桃、夏のインターハイに向けてちゃんと自主練してるか?」
「あ……は、はい」
胡桃は何が起こっているのか分からずにぼんやりと先輩の話を聞いている。
「ふっふっふー。後は若いお二人に任せて。」
クロミはニヤニヤしながらどこかへ逃げていった。
「ちょ、待って!っていうかお前いくつだよーっ!」
はっと我に返ってクロミの方を向いたが、すでに姿はなかった。
「胡桃?」
「あ、何でもないです……。本当に」
(夢でも、幻でもいい。また、会えたんだ)
ガチャン!
あまりの嬉しさに力が抜けて手に持っていたシャベルを落としてしまった。
「あ、すいま」
「ヒッ!」
「え?」
シャベルが地面にガチャンとぶつかる音がすると先輩は大きく後ろに飛び退いた。
「先輩?」
「あ、いや。何でもない。あー。そこに虫がいたもんで。ハハハ」
「先輩?虫、苦手でしたっけ?」
「いや、な、何でも……。よーし。まずは太ももを伸ばすストレッチだ」
「ひっ……や、やだっ!」
上に先輩が覆い被さった瞬間、『あの瞬間』がフラッシュバックして突き飛ばした。
「わっ!」
「あ、す、すいません!大丈夫ですか?」
「どうしたんだ?ただのストレッチなのに……俺を拒絶するのか」
先輩はショックを受けたのかブルブル震えだした。
「ち、違……」
「胡桃は、おれの事が嫌いなのか?『あの時』もおれをシャベルで突き刺したよな」
ガーーッと先輩は化け物の様な姿に変わり胡桃に向かって突進した。
もう、先輩を攻撃したくない。でも今度こそ自分がやられるかもしれない。
「嫌、嫌……。誰か、助けてーっ!」
「メロディーマーク!くるくるシャッフル!助けてね、カードさん」
振り替えると、クロミと色違いのぬいぐるみがステッキの様な物を振っていた。
「は?クロミ……じゃない?何だ?」
「くるみ!?どうしたの?凄い悲鳴が!」
「くるみ先輩っ!」
「りーさん、美紀っ!来るな!」
せめて2人だけは守ろうと追い返そうとした瞬間、空からピンク色の光が降ってきて中からハッカが現れた。
「この壁、越えさせぬ」
「ハッカちゃん。おねがい」
「御意。幻術には幻術を」
ハッカは木箱を取り出し、先輩の前にかざす。
「うがあああああ!」
箱は一気に先輩を吸い込み、ハッカが蓋を閉めると何事もなかったかの様に静かになった。
「先輩…………。」
胡桃は何が起こっているのか分からず立ち上がることができない。
「胡桃っ!大丈夫?」
「先輩、怪我はありませんか」
悠里と美紀は慌てて駆け寄る。
「うん。やっぱり幻じゃ意味ないよな。先輩の分まで頑張って生きないと」
胡桃からピンク音符が現れ、マイメロのメロディーボックスに入った。
「やった。ファの音符ね」
「えーーっ!大好きな先輩に会えたのに何でピンクなんだよっ!」
畑の中からこっそりと見物していたクロミは怒って胡桃達の前へ来て文句を言った。
「偽りじゃ意味ないんだよ!本当の先輩はもうこの世にいない。あたしたちは大切な人をたくさん亡くした。でも、過去にとらわれてたら前に進めない。過去の自分に打ち勝つことが大切だって『めぐねえ』も言ってた」
「はあ?めぐねえって誰だよ」
突然、クロミは誰かに身体をガシッと掴まれた。
「私達の大切な先生よ」
「え?何、何で笑いながら怒ってんだよ?めちゃ怖……。」
クロミが恐る恐る上を向くと悠里が真っ黒な笑顔で立っていた。
「やっぱり、夢を叶えるなんて甘い言葉に引っ掛かっちゃいけませんね」
「残念ね、かわいいお客さんだと思ってたのに」
「え、え?もしかして、ヤバい?」
胡桃と美紀にも行く手を阻まれて逃げられない状況になっていた。
「先輩が暴走した時は危うく他の人にまで危害が及びそうになったし。ゆきには悪いけど、飛んでけーっ!」
胡桃はクロミをシャベルで打ち飛ばした。
「クソーっ!次は武器持ってないやつに魔法かけてやるーっ!」
「クロミちゃーん。バイバーイ」
飛ばされる瞬間を見ていたマイメロは笑顔で手を振った。
「ただいまー。お菓子買ってきたよー……あれ?みんなどうしたの?ハッカちゃんとマイメロたゃん?」
飛んでいくクロミと入れ替わる様に買い物袋を提げた由紀が帰宅した。
「あー。クロミは飛んでった」
「ふーん」
「なあ、ゆき」
「ん?」
「今、楽しいか?」
胡桃は由紀に問いかける。
「うん!いつものみんなもいるし、他の友達もたくさんいるもん!」
由紀は大きく頷き満面の笑みで答える。
「だな」
2話 完
※注意
これは『おねがいマイメロディ』とのクロスオーバーです。
コラボイベントに出てきたキャラとは若干性格が異なります。
3話 女王になれたらイイナ!前編
「シャミ子、頑張って!後腹筋10回」
「はあ……はあ……。これで勝ったと思うなよ〜」
「シャミ子も大変ねー」
「シャミ子ー。これが終わったら余を温泉に連れて行けー」
エトワリアの河川敷ではいつもの様にシャミ子は桃にしごかれていた。
「お疲れ。はい、特製プロテイン」
「あ、ありがとうございます……」
桃は疲れてしゃがんでいるシャミ子にペットボトルを手渡す。
「出たわね。桃の特製光るドリンク」
「ありがとうございます。ゴクゴク……。」
「毎度毎度よくあれを平然と飲めるわね」
「うむ。我が子孫ながら恐ろしい」
「今日のトレーニング終了。ゆっくり休んで明日に備えよう」
「じゃあねー。シャミ子、リリスさん」
「はーい。桃、ミカンさん。さようなら」
トレーニングが終了してまぞく組と魔法少女は別れた。
ゴミ拾いをしつつ歩いていると、河川敷の奥にぬいぐるみが転がっているのを見つけた。
「これは……」
身体は白く、黒い頭巾を被って耳が菱形になっている。
落とし物のぬいぐるみかと思ったが、スースー寝息が聞こえるので生き物のようだ。
「ん?ふあ〜。よく寝た……ん?」
クロミが目を覚ますと金髪の少女が除き混んでいた。
「お主、角や尻尾が生えている所を見るにまぞくか?いや、人型じゃないから使い魔か?」
「まぞく?アタイはプリティー悪魔ッ子クロミちゃんだよ。ぬいぐるみで角じゃなくて耳だから。」
クロミは尻尾をフリフリと動かしたり耳をリリスに触らせたりしてぬいぐるみであることを証明する。
「ふむ。シャミ子の尻尾を超デフォルメしたような感じだな。あ、ちなみに余も尻尾が生えてるから」
2人はお互いに尻尾を見せ合った。
「ごせんぞー。誰としゃべってるんですか?」
休憩を終えたシャミ子が2人に近づく。
「おー、シャミ子。喜べ!まぞく仲間を見つけた」
「え?な、な何で人間なのに角と尻尾が生えてんだよ!?」
「へ、何ですかこの子?ぬいぐるみが動いてしゃべってるー!」
クロミはシャミ子の頭の上に飛び乗り角を観察した。
「シャミ子はまぞくの先祖返りを起こしていて、人間にも関わらず角と尻尾が生えているのだ」
「へー。シャミ子ってのは本名か?」
「シャドウミストレス優子を縮めてシャミ子です」
「人間じゃないやつに効果はあるか分からないけど、アタイ魔法が使えるんだ。試しにお前の夢を叶えてやるよ!」
「よし、ではこのエトワリアの女王になりたモゴモゴ!どうしたシャミ子!」
リリスはお願いを途中で遮られた事に憤慨する。
「ご先祖!ダメですよ!こういう系は後で大きな代償を支払うのがお約束です!後で法外な値段を請求されたり、最悪魂取られます!」
シャミ子はリリスにしがみついてガタガタ震える。
「だーいじょうぶ!そんな怖いことしないって。魂も取らないし無料で夢を叶えてやるって」
「かわいい子孫を実験台にするわけにはいかんから先に余が魔法にかかってみることにする。余の願いはエトワリアの女王になることだ!」
「はあ……。」
「んじゃ、チャチャッと行くか。開け!夢の扉!」
少し前
「や〜ん!誰か助けてー!」
「ガーーッガーーッ!!」
マイメロは魔物に追いかけられて絶体絶命の大ピンチだった。食卓に飾る花を1人で摘んでいた所を狙われてしまった。
「もう……ダメ……マイメロ、走れない……」
マイメロが魔物を前にしゃがみこんだその時、
「フレッシュピーチハートシャワー」
「サンライズアロー!」
突如現れたピンク色とオレンジ色の光が魔物を攻撃し、跡形もなく消え去った。桃とミカンの必殺技だ。
「大丈夫?……あら?誰もいない」
人間が助けを求めたと思い込んでいるミカンはキョロキョロと辺りを見渡す。
「ミカン、もしかして……」
助けを呼ぶ声の正体に気付いた桃は地面の方を指差した。
「助けてくれてありがとう」
マイメロはニコニコと笑顔でお辞儀をする。
「え?人間じゃない?このウサギのぬいぐるみがしゃべったの?私ずっと人間の女の子だとばかり!」
「ミカン、落ち着いて。ここエトワリアだから何が起きてもおかしくないから。いい加減慣れよう」
ミカンは驚きパニックになったことで呪いが発動し、3人の周りに突風が吹き、ゴミが宙を舞う。
「やんっ!きゅう……」
呪い発動の影響でマイメロの頭に空きビンが直撃し、気絶した。
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