私はトイレ入り便座に腰かけた。用を足すためではない。一人になるためだ。私は今、とても大きな問題を抱えている
「きららファンタジア水着キャラ予想……。どうすれば」
ここで一度おさらいすると、「きらファン水着キャラ予想」とはtwitterで「#きらファン水着キャラ予想」のハッシュタグで盛り上がったり、予想をアンケート形式で回答することでアイテムが貰える企画である
そう、水着キャラの話をしても許されるのである
アンケートに欲しい水着キャラを書いても、まぁ許されるのである
許されるどころか、人に読んでもらえるのである
「水着アルシーヴ様を実装して欲しい」
そう、私の願いはそれだ。それだけだ。
私の願いはそれだけだ。それだけだ。
???「違うでしょ」
フェンネル「お前は!!!」
こいつは、私の中の闇
アルシーヴ様を慕うあまり生まれてしまった闇
見ないため思い出さないため、最初から存在しないかのように私から切り離した闇
「闇フェンネル」とでも呼ぶべきもの
私の唯一つの願いを邪魔する闇
もしも本編で私がリアライフをかけられた暁には、こいつがシナリオに登場し中山幸先生によってイラストが書き下ろされるだろう
闇フェンネル「違うでしょ。あなたの願いはそんな生易しいものじゃない。
貴方の願いは『サンオイルになってアルシーヴ様に塗られたい』
違う?」
魅力的
あまりにも魅力的な提案
「アルシーヴ様を守りたい」
「アルシーヴ様に触れたい」
「アルシーヴ様を穢したい」
私の中の屈折した欲望は「水着キャラ予想」を触媒に
「サンオイルになってアルシーヴ様を全身をベトベトにしつつ、日光からその素肌を守りたい」というあまりにも愚かな、しかしあまりにも魅力的な願いとなって生まれてしまった
なんと愚かな願い。許されるはずもない。人の目に晒していいわけもない。
そして、なんと蠱惑的で背徳的な願いだろう。地獄におちてもいい。サンオイルになりたい。声を大にして叫びたい。「私はあなたのサンオイルになりたい」と
???「もっと建設的な願いをしませんこと?」
フェンネル「お前は!!!」
こいつは、私の中の闇
同人即売会でアルシーヴ様の同人誌を読んで生まれた闇
存在しないかのように私から切り離した闇
「闇ンネルB」とでも呼ぶべきもの
(今まで闇フェンネルと呼んでいた個体は、以降「闇ンネルA」とする)
もしも本編で私が強めにリアライフをかけられた暁にはこいつもシナリオに登場し、闇を糧にして新たなるフェンネルへと生まれ変わるだろう
闇ンネルB「そもそも今回は水着キャラ募集であって、サンオイルキャラ募集ではないのですよ
私達が出来ることは水着キャラの提案、これだけですわ」
この闇ンネルは闇ンネルにしては随分まともな提案をしてくる
フェンネル「となると、やはりアルシーヴ様の水着を布教するのが安牌ですわね」
闇ンネルB「いえ。フェンネル。あなたよ。あなたが水着になるのよ」
私が?水着に?
フェンネル「その提案には問題が2つあります。
1、私が何もうれしくない
2、アルシーヴ様がまだ水着になられてない。私だけなるなんてありえませんわ。」
闇ンネルB「そうね、貴方だけ水着になるなんてありえないわね。アルシーヴ様もそう思い、先に水着が実装されたあなたに『嫉妬』するかもしれないわね」
アルシーヴ様が……私に……嫉妬……?私に嫉妬を……?
闇ンネルB「アルシーヴ様はお優しいですし、立場もありますし、本当に『ほとんど』心の底からあなたを祝福してくださるでしょう。ほんのわずかな嫉妬の心を、あなたが私にしたように、見なかったことにして」
闇ンネルB「アルシーヴ様はお優しいですし、貴方が頼めばサンオイルも塗ってくださるかもしれませんわ。もちろん水着の下まで。でもどんな気持ちで塗ってくださるんでしょうね。もしかしたら嫉妬してくださるかもしれないし、欲情してくださるかもしれないわ」
闇ンネルB「アルシーヴ様はお優しいですし、嫉妬や欲情なんて普段ならあなたに微塵もしないでしょう。でも、水着を着たらどうなるかしらね」
嫉妬……欲情……
あのアルシーヴ様が私に嫉妬や欲情を
つまりは執着を
……私は頭を振る
フェンネル「いえ、アルシーヴ様は普段から美しいクリエメイトの水着や自分の体を見てらっしゃいますし、今更私程度の水着を見ても」
闇ンネルB「変なとこで自己評価低いのね。なら筋トレでも何でもして魅惑のボディを手に入れればいいじゃない」
そこは割とまともなこと言いますのね……
フェンネル「アルシーヴ様の隣に立つものとして、体系や身だしなみには気を使っています。
『盾』が美しくあることは、盾の務めの一環であると私は考えていますわ。
しかし、それでもアルシーヴ様にはかないませんし、
その、アルシーヴ様がセサミのような、その……、『実り』ある方にあのような衣装を着せている事実から想定されるアルシーヴ様の嗜好や
実り豊かな物の多いのクリエメイトと比べられると、私は……」
引け目を感じなくはない
闇ンネルB「でも、欲しくないんですの?アルシーヴ様のホテルの部屋の鍵」
……部屋の鍵?
闇ンネルB「いい、今までの話は目的でもあるけど『仕込み』でもあるの
あなた、アルシーヴ様に来年以降もずっと水着が実装されない。何てこと、あると思う?」
フェンネル「それはあり得ないでしょう」
2018年夏に実装されてないのがむしろおかしいんですわ
闇ンネルB「そのころだとまだ本編完結してないでしょう。
ええ、アルシーヴ様もいずれ水着が実装されるでしょう。ではその時、先に水着が実装されたあなたのアドバンテージとは?」
……経験の差?
闇ンネルB「正解。水着キャラという面において、あなたはアルシーヴ様を先導することができますわ。
わかるわね。これまでの話は仕込み。本番はアルシーヴ様の水着が実装されたときよ」
闇ンネルB「あなたは今まで見せつけた水着でアルシーヴ様を先導するの。
あなたは今まで盾として前に立つことはあったわよね。先導することがあったかしら?
でもイベントだからアルシーヴ様の見せ場のためにあなたはピンチに陥るかもしれないわ。
普段は守る立場のあなたが守られるの
水着イベントというハレの日の高揚感と開放感。
守り守られという連帯感。
あなたの見せる、普段とは違う一面。
あなたに見せる、普段とは違う一面。
あなたとアルシーヴ様はより深い絆で結ばれ、2人は今まで話し足りなかったことに気が付くの
そして今まで溜めに溜めた、自分でも気が付かないあなたへの嫉妬と劣情も燃料となりアルシーヴ様は言う
『フェンネル、2人だけでもう少し話さないか?』
そしてあなたの手に、自分の止まっているホテルの部屋の鍵を滑り込ませるの」
闇ンネルB「意味、分かりますわよね?」
きららの蹴りがクリティカルに入ったかのような衝撃を受ける
なんて、なんてとんでもないことを言い出すんだこの闇ンネルは
そんな、クリエメイトの色川琉姫が描いたような展開、許されていいのだろうか??
フェンネル「私はアルシーヴ様の盾。私はアルシーヴ様の盾。私はアルシーヴ様の盾。」
動悸を落ち着ける
シュガー「ねーねー、なんか聞こえるよ」
ソルト「シュガー、放っておいてあげるのです。人と人生にはいろいろあるのです」
???「明日もう一度ここに来てください。本物の水着シーヴ様というものをお見せしますよ」
フェンネル「お前は!!!」
こいつは修羅場で8徹目のアルシーヴ様が2Lのコーラをペットボトルからラッパ飲みするのに失敗し、思い切り鼻と口から噴き出した瞬間に立ち会ってしまった際に生まれた闇
「闇ンネルC」とでも呼ぶべきもの
もしも本編でメチャクチャにリアライフをかけられた暁にはこいつもシナリオに登場し、きららとアルシーヴ様に助けられるだろう。情けない。そしてうらやましい
闇ンネルC「貴方の願いは『サンオイルになってアルシーヴ様に塗られたい』違う?」
こいつ闇ンネルAと同じこと言ってるぞ。何のために出てきたんだ
闇ンネルD「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃなウボァ」
???「考え直すのです」
フェンネル「あなたは!!!」
彼女は私の「光の部分」の象徴。光ンネル
アルシーヴ様との出会いによって生まれた私の良心。
私のなかの、キラキラと輝くもの
光ンネル、この不埒な闇どもをやってしまいなさい!!
闇ンネルA「サンオイルサンオイルサンオイル」
光ンネル「そこまでよ!」
闇ンネルB「キングサイズのベッド」
光ンネル「話を聞いて!」
闇ンネルC「でもそうは言いつつ気にならないわけではないのでしょう?」
光ンネル「それは……」
闇ンネルD「あなたが自分の気持ちに嘘をつき続ける限り、あなたはあなたを救えないんですよ?」
光ンネル「……」
いきなり形勢不利ですわ!
闇ンネルB「大体サンオイルになったら誰がアルシーヴ様にサンオイルを塗るというの」
闇ンネルA「そこはあらかじめほかの七賢者を買収しておきなさいな」
闇ンネルD「買収!!!」
闇ンネルC「シュガーはどうかしら。買収も比較的容易そうだし、あの無邪気さでトラブルの一つや二つ起こしてくれるかもしれないわ」
光ンネル「なるほど。お色気展開。勉強になります」
闇ンネルB「しかし、サンオイルになるとサンオイルを塗るという一大イベントを網膜に焼き付けれないのは、なかなかに口惜しいですわね」
闇ンネルA「そこはあらかじめ分身でも習得してなさいな」
闇ンネルD「分身!!!」
闇ンネルC「ソルトに習うのがいいんじゃないかしら。業務のためとか言えばきっと教えてくださいますし、実際に業務に使えば何も嘘じゃありませんわ」
光ンネル「あのスキル実際使えたら便利すぎますよね」
あなた達……
闇ンネルB「そもそも人がサンオイルになるというのは人体と物理法則の限界を超えてましてよ」
闇ンネルA「あなたは夢が小さすぎるのよ」
闇ンネルB「アルシーヴ様への思いは無限大ですので比較不能でしてよ」
闇ンネルD「あなたいいこと言いますわね」
あなた達…
闇ンネルB「あの武器と同じ薔薇で彩られたベットでアルシーヴ様と溺れたい」
闇ンネルE「そこでサンオイルも塗ればみんな幸せ」
闇ンネルA「でもやはりあなたは現実的すぎますわ。きららファンタジアはファンタジーRPGですのよ」
光ンネル「ファンタジーというかシュルレアリスムに片足突っ込んでません?」
お前ら
闇ンネルC「あなたのそのTL夢女イベもストアの制限にひっかかかったらどうするのよ」
闇ンネルB「生やしたり朝チュンしたりおちフルしてもストアに引っかからないことはすでに確認済みですわ」
光ンネル「TLはティーンの読むものだし大丈夫なんじゃないすかね」
闇ンネルC「三歳児はティーンではなくてよ」
闇ンネルD「アル様しか勝たん」
闇ンネルA「私としてはアルシーフちゃんの方が……」
フェンネル「うるさい。うるさい。うるさい。あぁ、うるさい!!!!
何がサンオイルだ何が嫉妬だ何がセサミだ何が劣情だ!
何が闇だ!何が光だ!
お前らの話のどこにアルシーヴ様がいる!
お前らの話のどこにアルシーヴ様への忠誠がある!
お前らの話のどこにアルシーヴ様への敬意がある!
お前らの話にアルシーヴ様などいない!
不真面目も大概にしろ!不誠実も大概にしろ!
消え失せろ!!!!!!!!!」
トイレに声響く。
気が付くと闇ンネルも光ンネルもいなくなっていた
闇だとか光だとか、結局魔が差しただけ
自分の心の弱さが迷いを呼び込んだだけ
私の進むべき道は、闇ンネルでも光ンネルでもない、唯の私が決めるべき
私は私の成すべき事を成すだけ
心は決まった。執務室に戻ってアンケートに答えねば。
トイレの個室からでる。セサミと目が合う。
フェンネル「……」
セサミ「ひぇっ……?」
まるで恐ろしい何かに遭遇してしまったんじゃないかと思えるぐらい、とても青ざめていた
体調が悪いのかもしれない。最近忙しいのかしら。
確かにアルシーヴ様の次ぐらいに働きづめですものね。
進言しておくべきかもしれない
フェンネル「大丈夫、あなたのことはアルシーヴ様に言っておくわ」
セサミ「ひぇっ……?」
私はアルシーヴ様の元へと戻った
アルシーヴ「おお、フェンネル。今年の水着キャラ一人目はこはる日和のこはるらしいな」
アルシーヴ様は公務のtwitter監視を行われていたようです。
あまり知られていませんが、神殿はtwitterを通じたきららファンタジア関係者の監視やユーザーの動向調査を任されています
アルシーヴ「何か悩んでいたようだが、解決したようだな」
フェンネル「……お気付きになられてたのですか。ご心配おかけして申し訳ありません」
アルシーヴ「大丈夫ならいいんだ」
大丈夫です。もう迷いはありません。私の進むべき道を思い出せましたから
フェンネル「ところで例の水着予想、アルシーヴ様はもう送られましたか?」
アルシーヴ「あぁ、ああいったアンケートや企画に答えるのは大事だからな」
『ソーシャルゲームへの貢献方法は課金やSNSでの布教活動だけではない。
アンケートには運営の何らかの目的があり、それに協力することは間違いなく貢献活動である』
アルシーヴ様が以前そういってたのを思い出す
アルシーヴ様はその、いったい誰を……
アルシーヴ「いや、……フェンネル。ちょっと待て」
アルシーヴ様が少し真面目な顔になる。お美しい
フェンネル「え、はい。もう送られたかな、と」
途端にアルシーヴ様の表情が曇る
な、何か私まずいことを……?
「フェンネル……。
その、大変言いづらいのだが……
その……だな。
さっき終わったんだ。水着予想の回答期間は」
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