「ココアちゃんの妹」 第1話・私の妹
私は保登心愛!皆から「ココア」って呼ばれてるの。
今私は、木組みの家と石畳の街にある素敵な喫茶店・ラビットハウスで、住み込みでお仕事させて貰ってるんだ!
そんな私には可愛い妹がいるの。その子の名前は香風智乃ちゃん。皆からは「チノちゃん」って呼ばれてるんだ。
でも・・・・
本当は血は繋がっていなくて、私が勝手に妹って呼んでるんだけどね!
チノちゃんはラビットハウスのマスター、タカヒロさんの一人娘で、看板娘さんなんだ!
とっても可愛くて、ついモフモフしたくなっちゃうんだけど、実は普通の子とちょっと違うの。
チノちゃんは、身体がとってもとっても小さいんだ・・・・
多分、ハムスターさんとか、ネズミさんとか、それ位・・・それこそ手の平に乗る位小さいの。
でもね!以前はチノちゃんの身体、普通の大きさだったんだよ!!
あれはそう、今から1週間前の事・・・・
私とチノちゃんはラビットハウスで使う備品を買いに街に出掛けたの。
色々買い物を済ませて、ちょっと公園のベンチに腰掛けて一休みしてたんだ。
そしたら・・・1匹のリスさんが出て来たの!とってもとーーーっても小さくて
凄く可愛かったの!今までウサギとか猫は何回か見たんだけどリスを見たのは初めてだったの。
チチチッてやってみたらこっちに近付いて来て、何と私の手の上に乗って来たんだ!!
モー余りに可愛くてふにゃふにゃになっちゃっの!!そしたらチノちゃんが
「ココアさんはそんなにリスが好きなんですか・・・?」って聞いて来たの。
私は「うん!!リスも好きだけど、この小ささがたまらなーーーーいっっ!!」て言ったんだ。
そしたらチノちゃん、急にむくれだして「小さい事が良いとは限りません!」って叫んで
走って行っちゃったの!
チノちゃん、自分の背が小さい事結構気にしてたんだ。私それ、すっかり忘れてて
チノちゃんを傷付けちゃったみたい・・・
急いでチノちゃんを追いかけて行ったの。
必死になってチノちゃんを探してたら、何処かからチノちゃんの声が!
でも気のせいか、その声はとても小さくか細かった・・・・
「チーーノーーーーちゃーん!!どこーーー!?」
すると・・・・
「ココアさん、こっちです・・・」とチノちゃんの声!
声のする方を見ると・・・・
なななんと!!チノちゃんはさっき見たリスさんくらいの大きさに縮んでいたの!
「チチチチノちゃん!!どうしたのその身体!?」
「分からないです・・・走って走って、その内気のせいか、街並みがどんどん
大きくなっていって、道も遠くになって、気が付いたら、こんな身体に・・・」
「うわぁぁぁぁーーーん!!ごめんごめんねチノちゃん!!私が、私が小さいリスが
可愛いなんて言うからぁぁ!!」
私、何が何だか分からなくなって、大声上げて泣いちゃった・・・
「心配しないで下さい。ココアさんは悪くありません」
「うん・・・ありがと・・・そうだね・・・
一旦ラビットハウスに戻ろ・・・」
ラビットハウスに戻って、小さくなったチノちゃんを見て、タカヒロさんもティッピーも
かなりビックリしてた。
「これは一大事だな・・・」とタカヒロさん。「どうしよう・・・」と私。
「兎に角これでは何も出来無い・・・・そうだ、これから大きな街の病院を
幾つかあたってみよう。もしかしたらチノの身体を元に戻す手段が見付かるかも知れん」
「学校はどうするんですか・・・?お店は?」
「学校には、チノと私で暫く旅行に行くと言っておこう。ラビットハウスは、君と
リゼ君がいるじゃないか。それにティッピーもいる」
「私達だけでやっていけるでしょうか・・・」
「大丈夫だ。ココア君、君はいつも明るい笑顔と前向きな性格で、いつも皆を楽しませて来たじゃないか」
「はい・・・」
「大丈夫!きっとチノは元に戻る。私も、吉報を持ってすぐに帰るよ」
つづく
幕間・解説
どもです。赤坂ブラックコーヒーと申します。
本作のタイトル、及び展開を見てピンと来た方もいるかも知れませんが
本作は内田春菊先生の「南くんの恋人」をごちうさの世界、及びキャラクターに置き換え
かつ、自分なりの解釈、脚色を加えSS化した物です。
「なぜ『南くん』?」と思う方もいるかも知れませんが、実は自分、かつて
「南くん」に大ハマりしたんですよね。そしてその衝撃のラストに涙涙・・・・
それから10数年後、田舎で久し振りに「南くん」を読んで、矢張り大泣きしつつ
「確かに内田さんの絵も味が有るけど、きらら作品風の絵で描いたらもっと良い物に
なるんじゃないかな?」と考え、ごちうさのキャラ、世界観で小説化した訳です。
ここで一寸ご注意をば・・・・
本作は、一応チノが小さくなると言う設定を除いて、ストーリー展開は
オリジナルの物となっていますが、一部エピソードや演出に原作「南くん」への
オマージュ的な物も含まれております事をご容赦願います。
又、話的には全6話位を予定しておりますが、もしかしたらそれより長くなる
or短くなるかも知れません。
兎に角頑張って書ききってみたいと思います!!
「ココアちゃんの妹」 第2話・友達に会いたい
「いいなぁ!チノはタカヒロさんと旅行かぁ!!」 リゼちゃんが明るい声を上げる。
リゼちゃんはここ、ラビットハウスで私やチノちゃんと働いてる女の子で、私の親友。
・・・でも本当はチノちゃん、旅行になんか行って無いんだけどね・・・
チノちゃんはラビットハウスのマスターの一人娘にして看板娘、そして私の(自称)妹!
でも、ある日突然リスさん位の大きさに縮んじゃったんだ・・・
今お父さんのタカヒロさんは、大きな街の病院を探してるの。
大きな病院ならもしかして、チノちゃんを元に戻せるかも知れないんだって!
だから今、ラビットハウスは私とリゼちゃんの2人で切り盛りしてるんだ!
責任重大!!
タカヒロさんが出掛けた後も色々大変だったんだよ!!
小さくなったチノちゃんの為に、お人形の家を改造して、小さくなったチノちゃんの
部屋にしたり、コップも、お皿も、スプーンも、お風呂も食べ物もぜーんぶ
チノちゃんに会う様に小さくしたり!
しかもチノちゃんが小さくなった事は、私とタカヒロさん、そしてティッピー
2人と1匹だけの秘密!だって皆を驚かしちゃうじゃん!
はぁぁ・・・(タメイキ)
タカヒロさんが帰って来るまで、ちゃんと出来るかなぁ・・・・
そして何より、本当にチノちゃん、元に戻れるんだろうか・・・
私はチノ。ある日突然身体が縮んでしまいました。
ココアさんは小さくなった私を、凄く気にかけてくれています。
小さくなってからと言うもの、私は毎日小さな家(今の私の部屋)で
過ごしています。
・・・・・凄く退屈です。
「なんか、ウサギになったおじいちゃんの気持ちが分かった様な気がします・・・」
私の祖父はもう随分前に亡くなっています。でも、私の事を気にしてくれて
飼いウサギのティッピーの姿を借りて私の元に戻って来てくれました。
因みにティッピーも実は既に死んでるんですが・・・
「まぁ儂はお前の事が気掛かりで戻って、今お前とこうしているから良いのじゃが
お前は突然じゃからなぁ・・・」
今はこうしておじいちゃん(ティッピー)と話して時間を潰す事しか出来ません。
退屈です・・・
「こんちゃーーー!!!」
突然、大きな声が聞こえました。
マヤさんです!!
「あれ〜?チノちゃんいないの?」
メグさんの声も聞こえました。
メグさんマヤさんは、私と同じ中学に通う友達で、いつも3人で一緒に行動しています。
「ごめーん!チノちゃん今、タカヒロさんと旅行に行ってるんだ」
ココアさんの、慌てた様な大声が、私の(小さな)部屋まで聞こえて来ます。
「ええーー!!良いないいなぁぁ!!」マヤさんの声も聞こえます。
・・・・・寂しい
・・・・・・凄く、寂しいです
今までいつも一緒、何をするにも一緒だったメグさん、マヤさん。
私が、こんな身体にならなければ、いつもの様に下に行って、会って
話をして・・・
笑い・・・あって・・・
なぜか、涙が、あふれて来ました
会いたい・・・・
メグさん・・・・
マヤさんに・・・・・・
会いたいです ・ ・ ・ ・
「何とかしてやりたいがのぅ・・・・」
ティッピーも凄く悲しそうな顔で呟きます
下からはメグさん、マヤさん、ココアさん、リゼさんの楽しそうな声が聞こえて来ます。
それから程なくして、ドアが開き、閉まる音が聞こえました。
メグさんマヤさんは帰って行った様です・・・
もう日が暮れて来たのか、外は薄暗くなって来ています。
涙が・・・・
止まりません・・・・・
「チノちゃーーん!夕ご飯だよーーー!」
ココアさんが夕食を持って入って来ました。
持って来たのは塩コショウで味付けし、フライパンで炒めたアスパラ
同じくフライパンで炒めた人参、セロリパン、牛乳・・・
野菜ばかりじゃないですかー!
「だっていつかも言ったじゃない!何でも食べないと大きくならないって!」
「それは物理的にであって私の今の状態とは関係ないですー!」
「まぁまぁ!」
・・・・なんか、ココアさんと話してたら寂しい気持ちも吹き飛びました・・・
「・・・ココアさん」
「ん?何?」
「私、メグさんマヤさんに会いたいです・・・
例え話は出来なくても、一目で良いから・・・会いたいです」
「・・・うーーーーーん・・・
よし!!明日会いに行こう!」
「本当ですか!」
「うん!私のポケットに入って、一緒に私の学校いこ!で、帰りにチノちゃんの
中学に行って、メグちゃんマヤちゃんに会いに行こう!」
翌日
私はココアさんのポケットに入り、私の通う中学校までココアさんを案内しました。
ココアさんは物陰から下校する生徒達を見張っています。
私もココアさんのポケットから外の様子を伺っています。
「あ!!来た!」ココアさんは声を上げました。
メグさんマヤさんです!!
・・・凄く、懐かしいです。もう何年も会って無かった様な錯覚にさえ陥ります。
「あ〜あ、良いなぁチノの奴!旅行なんて」
「いつか私達皆で旅行に行きたいね〜」
忘れて、ない・・・・
メグさんもマヤさんも私の事、ちゃんと覚えててくれてました・・・
「当たり前だよ!チノちゃんメグちゃんマヤちゃんは天下無敵のチマメ隊だよ!
小さくなったからって、チマメ隊の絆がそう簡単に切れる訳無いよ!」
ココアさんが明るい声で言います。
メグさん、マヤさんに会って、私も元気を取り戻しました。
今はこんな姿ですが、いつかきっと、絶対、必ず元の大きさに戻ります!
そしたら、メグさんマヤさんと唸る程お喋りして、色んな所に行ってやります!!
つづく
「ココアちゃんの妹」 第3話・ラビットハウス
「チノちゃん、今日は久し振りにお店に行ってみない?」
ココアさんが明るい声で言いました。小さくなってもう・・・1か月位でしょうか・・・
父は都会の病院を当たってみると言って出掛けてから、未だに帰って来ません。
やはり、身体が小さくなる病気何て、見た事も聞いた事も無いのでしょう。
・・・!?
今、ハタと気が付きました。今ココアさん、何て・・・?
お店に行く・・・?ラビットハウスに・・・!? この、小さい身体で!!?
いいい一体ココアさんは何を考えてるんですかー?!!
完全に見世物じゃないですかーーー!!!
「大丈夫だよ!私の服のポケットに入ってればぜーんぜんへ・い・き!」
「平気じゃ無いです怖いですー!」
「大丈夫だって!!お姉ちゃんを信じなさい!!」
その根拠の無い自信はなんなんですかー?!
「ぜっっっっ対大丈夫!!
このココアお姉ちゃんが全力を挙げて守るし、絶対誰にも気付かれません!!」
・・・・むっ
そこまで言われたら、もう信じるしか無いです・・・・
結局、お店に行く事になってしまいました・・・
ココアさんの制服のポケットに隠れて・・・・・
ココアさんは、私に衝撃を与えない様に、ゆっくり階段を降りて行きます。
・ ・ ・ ・久し振りのお店・・・・
珈琲の香り、見慣れた椅子、机、珈琲豆・・・・
何か、凄く久し振りです・・・・
「ほらっやっぱり来て良かったでしょ?」
ココアさんが明るい声で話しかけて来ます。
「ココア、遅かったな。何やってたんだ?」
リゼさんです。リゼさんに会うのも何か、久し振りです・・・
「しっかしチノの奴、今何処を旅してるんだろ。長期旅行何て良いよな!」
・・・すみません、リゼさん、私、旅行に何て言って無いんです・・・
何か凄い嫌悪感に見舞われます・・・
夕方になってリゼさんも帰り、お店も閉店しました。
ココアさんがいつもの様に私の為に夕食を作って持って来ました。
勿論、ココアさんの分も一緒です。
ココアさんと2人だけの夕食、バータイムの無いラビットハウス。
未だ連絡の無い父・・・・
何か又、不安になって来ました・・・
「大丈夫大丈夫!!ぜーーー対元の身体に戻るよ!!」
いつものココアさんの根拠の無い大丈夫・・・
でも・・・
不思議と、そんなココアさんのポジティブ思考に、ちょっとだけ元気を貰いました。
つづく
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