〜二月のある日〜
──この部屋にはお前らしいものが足りんのぅ
リゼ(お前らしいもの、そう言われたんだっけ)
リゼ「……私らしさってなんだろうな」
リゼ(あの時はみんなにコレクションを見せたけど、銃だけが私らしさってわけではない気がする)
リゼ(もっと他に、こう、うーん……)
リゼ「少なくとも、自分のキャラじゃない、ガラじゃない物はわかるけどな」
リゼ(例えばこの前千夜にお願いしてイメチェンしたのとか。ココアたちには最初気づいてもらえなかったな)
リゼ(そこの鏡に映っている自分を見ればわかる。ああいうのは私には…… ん?)
『……』チラッ
リゼ(これ、鏡だよな?映ってるの、私のはずだよな?……何だこれ)
『……?』
リゼ(……状況を簡潔にまとめると。鏡の中の私が、フリフリの服を持って)
『……!』
リゼ(おそるおそると、こっちを覗いていた)
リゼ「ななな何だ!何なんだこれは!?」
『……!……!?』
リゼ「多分同じリアクションをしてるな。さすがは鏡の中の私。だがその服は何だ」
リゼ(きっと、私にとってガラじゃない服ってのはこういう服のこと)
リゼ(けど、この服を持って鏡を覗いてるってことは、鏡の中の私はこれを着たいんだよな?)
リゼ(しかし、さっきの様子だと着る自信がないように見える。だったら)
リゼ「その服が着たいと思うなら戸惑う必要なんてないはずだ!もっと自分に自信を持て!」ズビシィ!
リゼ(こうストレートに言うのが、私らしいんじゃないか)
『……!?』サッ
リゼ「あ、なぜ隠れる!?」
リゼ(しまった、こっちの声は聞こえてないかもしれない。なら、今の私は怒っているようにしか見えないな。……そうだ。えーっと)ガサゴソ
リゼ「ノートとペンで、鏡を見ながら…… 意外と難しいなこれ……。できた!」
『……?』チャキッ
リゼ(銃を構えて出てきた!?見事に警戒されている。……でも)
<おどかしてすまない。さっきのは怒ったわけじゃないんだ。>
リゼ(こうやって鏡文字を書けばやり取りできるんじゃないか?)
『……』カキカキ
リゼ「お、返事を書いてくれるみたいだな。一体どんな返事が……」
《宣戦布告されたのかと思った。穏便な対話ができそうで何よりだ。》
リゼ「どうしてそう思った!って聞こえないんだった」カキカキ
<鏡に向かって宣戦布告する奴はいないだろ!>
『……っ!』クスッ
リゼ「あ、今笑ったな!?鏡越しでもわかるぞ!」
《じゃあさっきのはなんて言ってたんだ?》
リゼ「そうだった。それは伝えておかないとな」カキカキ
<その服が着たいと思うなら戸惑う必要なんてない。自信を持て。>
『……』カキカキ
《こんなのガラじゃなくないか?》
リゼ(それは私もわかってるんだよぉぉ!)
リゼ(ていうか性格は私と似てるんだよな。鏡だけに、まさに自分を映してるってことか。……だとしても)カキカキ
<そうだとしても、自分の気持ちに嘘をついてどうする。私が可愛い服を着たって良いじゃないか。>
『……!』
<ココアだって、イメチェンした私も素敵って言ってくれたぞ。>
『……』カキカキ
《じゃあそっちの私もこれと同じ服を着てくれ》
リゼ「……は?」
《私なんだから、この服も持ってるだろう?》
リゼ「そりゃ持ってるけど、そういう問題じゃない!」
《私なんだから、当然着てみたいと思ってるだろう?》
リゼ「うぐぐ」
《自分の気持ちに嘘をついてどうする》
『……』ニヤリ
リゼ「あーもう、わかった!」カキカキ
<私も着るからそれ以上言うのはやめろ!>
リゼ(……着てみた。着てみたさ。そもそも私は言い出しっぺだしな)
リゼ(そしてこの格好でラビットハウスまで来た私。見られたらなんて言われるかな)ガチャ
リゼ「おはよう、チノ」
チノ「おはようございます。……リゼさんがそんな服を着てるなんて珍しいですね」
リゼ「まあな」
リゼ(ココアはまだいないのか。寝てるな?)
チノ「でも、すごく似合ってます。素敵です」b
リゼ「そ、そうか。似合ってるか」
リゼ(素敵とまで言ってくれるとは。この服、失敗じゃなかったかもしれない)
リゼ「さて、ねぼすけココアがやってくる前に着替えてしまって\ガチャ/……ガチャ?」
ココア「おっはよー!チノちゃん、リゼちゃん!……ってリゼちゃんどうしたのその服!?すごく可愛い!」
リゼ「なんで今日に限って早起きなんだよぉ!」
ココア「予感がしたんだよね。今日はいいことがあるって!」ドヤァッ
リゼ「へえ、こんな格好をした私がいいことか。それはどういう意味だ?面白いってことか?」
ココア「違うよ!?可愛いリゼちゃんが可愛い服を着てるのが良いってこと♪」
リゼ「これ、変じゃないか?」
ココア「そんなことないない。ロゼちゃんの時も思ったけど、リゼちゃんはどんな服も似合うよ。ね、チノちゃん?」
チノ「そうですよ。ロゼさんのは3回とも、あまりにも似合い過ぎていて気づけませんでした」
リゼ「この前も思ったがなんて記憶力、よく覚えてるな。でも、こんな服着てたらまた別人と間違われるんじゃ」
チノ「もう間違えませんっ!」
ココア「リゼちゃんはリゼちゃんだよ!」
リゼ「……そうか、そうだな」
チノ「そもそも最初、リゼさんがロゼさんって誤魔化したんじゃないですか。聞き間違えましたって」
ココア「そうだそうだー!」
リゼ「ほんとよく覚えてるな」
リゼ「ただいま」
リゼ(こうして家に帰ってきたわけだが、鏡の中の私は上手くやれたのか?それだけが気がかりだ)
リゼ(そもそも会えるのかも怪しいな。一応鏡には私が映っているが。ま、とりあえず)カキカキ
<どうだった?>
《どうだった?》
リゼ「全く同じタイミング……。まさか、今映っているのはただの私か!?」
『……!?』
リゼ(いやいや待て待て、こうすれば)カキカキ
『……』カキカキ
<私は宣戦布告をした私だ>
《私は宣戦布告された私だ》
リゼ「……随分物騒な文言だな」
リゼ(まだ鏡には鏡の中の私が映っているみたいだ。ならさっさと聞くか)カキカキ
<それでどうだったんだ?>
『……』カキカキ
《想定と違って好評だった》
リゼ「……!これで一安心だな」カキカキ
<上手くいったようで何よりだ。こっちも好評だったよ。>
『……!』カキカキ
《背中を押してくれてありがとう。勇気が出たよ》
リゼ「!」カキカキ
<こちらこそありがとう。思い切ってみてよかったよ>
『……』カキカキ
《ほんのちょっとの勇気で、世界が変わったって気がする》
リゼ「世界が変わった、か。なるほど、確かに。もしくは」カキカキ
<私が知らなかっただけかもしれない>
『……』カキカキ
《まだまだいるんだろうな。私の知らない私が。次はいつ見つかるんだか》
リゼ(次がいつなのか。それは見当がついている)カキカキ
<朗報だ。おそらく次はすぐに来る>
《チョコ作りのことだろ?チマメを応援するための。必ず合格できるくらい美味しいチョコを作らないとな》
リゼ(そう、今度四人でバレンタインチョコを作る。一人じゃなくてみんなでだ。きっとまた、何かが変わる)カキカキ
<ああ、口の中で桜が咲くくらいのチョコを作ってやる>
リゼ(……バレンタインは2月14日。私にとっては別の日でもある。でもそれは)
『……』カキカキ
《チマメの受験もそうだが、この時期はみんな忙しい。だから、誕生日のことは絶対に触れられないようにしないとな》
リゼ(という訳だ。こんな時期に気を使わせてはいられない)カキカキ
<当然だな。私事は持ち込まない、そして任務を遂行する>
《この任務、必ず成功させよう。健闘を祈る》
<そっちもな。生きて帰ろう>
リゼ(──と、お互い気合を入れたは良いものの)
リゼ(至極当然のことながら、みんなに誤魔化しきれるはずもなく)
「お前ら全員一列に並べー!」
\\イエッサー//
>▽<
「にやけるなー!」
リゼ(バレンタイン当日は盛大なサプライズを食らったのだった)
リゼ「……」カキカキ
<任務は?>
『……』カキカキ
《チョコ"は"上手くいった》
<やはりそっちもバレたか>
《見事にな。してやられたよ。》
<思わず腰を抜かしてしまった>
リゼ「……でも、祝ってもらえて、嬉しかったんだ」
リゼ「みんな忙しいから、そう思っていたのに。楽しかったんだ」
リゼ「知らなかったな、こんなこと。ぷっ、あは、あははは!」カキカキ
『っ……!』カキカキ
<誕生日おめでとう、私>
《誕生日おめでとう、私》
リゼ「そうだった、誕生日ってお祝いするものだよな」
リゼ「上手くそらすつもりが、結局祝われることになるなんて!あははっ!」
リゼ(つまり、私の考えていたことなんて、みんなからはお見通しだったわけだ)カキカキ
<なんとなく、わかってきたかもしれない。らしさってのがさ。>
『……』カキカキ
《私もだよ
ザザッ
『……!?』
リゼ「鏡の中が、乱れてる!?まさかもう会えないのか!?」
リゼ「……なんてな。分かってる。話せなくなっても、私は私なんだ。二人どっちも。……よしっ」カキカキ
『……』カキカキ
ありがとう、出会えてよかった。私の知らない私。
リゼ「おはよう」
チノ「おはようございます、リゼさん」
リゼ「今日のココアはねぼすけココアなのか?」
ガチャ
ココア「ふっふっふっ、起きてるよ!おはよう、チノちゃん!リゼちゃん!」
チノ「おはようございます」
リゼ「おはよう、ココア」
リゼ(鏡の中の私と出会って、思ったんだ)
ココア「……今日のリゼちゃんはいつもの服なんだ」
リゼ「残念だったな」
ココア「毎日早起きすれば可愛い服のリゼちゃんが」
リゼ「明日以降のくだらないことよりも今日の仕事のことを考えろ」
チノ「リゼさんの言う通りです」
ココア「はーい。でも、今日のリゼちゃんも可愛いよぉ」
リゼ「何だそれ」
リゼ(こうしてみんなと何気ない日常を過ごす中での、私らしさっていうのはきっと──)
リゼ「二人とも、今日もよろしくな!」
ココア「うん、よろしくね!」
チノ「よろしくお願いします」
リゼ(今日の私は、どんな私なんだろうな)
おわり
というわけでリゼさんハッピーバースデイ
鏡合わせのアンビバレットとDear Meの両方が入っているキャラクターソングシリーズ02 リゼをすこれ
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