シャロ「疲れた……」
シャロ(今日のバイトはいつもの十倍大変だった気がする。明日も大変なのよね…… って、うん?)
シャロ(電話?……千夜からね)
シャロ「もしもし?」
千夜《シャロちゃん!今から会えない?》
シャロ「……急にどうしたのよ」
千夜《だって、今宵は月が綺麗だわ♪》
シャロ「それが会いたい理由なの?」
千夜《ええ。月を見ながらお喋りなんて素敵だと思わない?》
シャロ「今日はバイト疲れてるのよ。明日も忙しいから休ませて……」
千夜《わかったわ。じゃあ、よく眠れるように子守唄を歌ってあげる。ぴょんぴょこぴょんぴょこ おころりよ……》
シャロ「……早口言葉かしら。ていうか、ぴょんぴょこぴょんぴょこうるさーい!」
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シャロ(今日もバイト大変だった……。わかってはいたけど)
千夜「おかえりなさい、シャロちゃん」
シャロ「ただいま……」
千夜「ねえ、これから一緒にラビットハウスさんへ遊びに行かない?」
シャロ「今度にして。今日も疲れてるの……」
千夜「あら残念。じゃあ私一人でリゼちゃんに会いに行こうかしら」
シャロ「釣られないわよ。こんな疲れた顔、リゼ先輩には見せられないし」
\パシャッ/
千夜「バッチリ撮れたわ!」
シャロ「……なんで私を撮ってるのよ」
千夜「だって、あのリゼちゃんにも見せないんでしょう?つまりこれはシャロちゃんの激レア星5の表情だわ!そうだ。この写真、みんなに自慢しに行かないと」
シャロ「えっ、はぁ!?」
千夜「シャロちゃんはゆっくり休んでね」
シャロ「あっ、ちょっと!待ちなさい!」
千夜「こんにちは」
チノ「こんにちは。千夜さん、シャロさん」
シャロ「千夜!あんた本気でみんなに」
千夜「もちろん冗談。レアなシャロちゃんをみんなに見せちゃうのは勿体ないもの」
シャロ「何よそれ。ていうかなんで急にこんな、こと……」
ココア「千夜ちゃん、シャロちゃん、今日はおすすめのブレンドがあるんだよ!」
千夜「そうなの?じゃあせっかくだから、シャロちゃんも飲んでみる?……シャロちゃん?」
シャロ(急じゃない、昨日もだわ。……ひょっとして寂しがってる?)
シャロ(そういえば夏休みが終わってからは会う頻度が少し減ったような。それにココアたちと違って、千夜はバイトの時いつも一人だし)
シャロ(……昨日、付き合ってあげればよかったな)
千夜「シャロちゃん、コーヒーを飲んでも大丈夫よ。私が最後まで介抱するわ!」
シャロ「コーヒーを飲むかどうかを考えてたんじゃないわよ」
ココア「何か悩み事でもあるのかな?そんな時は景気よく一杯行ってみよう!」
リゼ「行かなくていいからな?」
千夜「覚悟を決めて飲んだ先に得られるものがあるはずよ!」
チノ「無理して飲んでも美味しくないです」
シャロ「……チノちゃん、おすすめのブレンドを一つお願い」
ココア「えぇ!?」
リゼ「おい!?」
千夜「シャロちゃん!?」
シャロ(昨日付き合えなかった分今日はね。酔ってる時のテンションならきっと……)
シャロ(あの私なら千夜にそっけない態度を取っちゃうこともないだろうし)
チノ「本当に良いんですか?」
シャロ「大丈夫!とびっきり明るくなれるのをお願いするわ!」
チノ「コーヒーにそんな効能はないんですけどね」
チノ「お待たせしました」
シャロ「ありがとう。いただきます」
コ・チ・リ・千「「「「……」」」」
シャロ「……なにこれ!?このコーヒー、す〜〜〜〜〜〜〜〜っごくおいしー!!!」カフェインテンションハイ
ココア「す〜〜〜〜〜〜〜〜っごく明るくなったね!?」
リゼ「真似しなくていい」
シャロ「ち〜や!あのねあのね!?」
千夜「なぁにシャロちゃん?」
シャロ「私、千夜のことが、らぁいすき!」
千夜「!?……もう一回お願い」
シャロ「らぁいすき!」
千夜「もう一回!」
シャロ「らぁ〜〜〜〜いすき!」
千夜「もう一回!」
チノ「千夜さんストップです!我に返った時にシャロさんが羞恥心で死にたくなっちゃいますよ!?」
リゼ「経験者は語る」
千夜「こんなシャロちゃんも良いわね」
シャロ「……千夜ぁ」
千夜「なぁに?」
シャロ「昨日はごめんね……」
千夜「え?」
シャロ「それにさっきだって。疲れてるからってあんな言い方」
千夜「気にしてないわ。シャロちゃんはいつも頑張ってるんだもの」
シャロ「千夜。私、これからはもっともっと千夜のそばにいるんだから!寂しい思いなんてさせないわよ!」
千夜「ありがとうシャロちゃん。その言葉だけで嬉しいわ」
シャロ「言葉だけ…………あれ?」
千夜「シャロちゃん?」
シャロ「さっきまでの、私…… ううん。もっ、もう千夜に、さささっ、寂しい思いなんてさせないかららららら!恥ずかしいけどそれでも……」
千夜「無理しないで!」
ココア「これが幼馴染かぁ。愛に満ち溢れてたね!」
チノ「シャロさんは千夜さんのこと、本当に大切に思ってるんですね」
シャロ「忘れて」
リゼ「友達へ素直に好きって言えるのは良いことだと思うぞ」
シャロ「忘れてください」
千夜「さっきのもう一回お願い!」
シャロ「忘れなさい!!」
ココア「チノちゃん、さっきのブレンド忘れないでね」
シャロ「忘れろー!」
チノ「ごめんなさいシャロさん。今後の参考のために忘れられません」
シャロ「チノちゃん!?」
リゼ「もう一度見られるなら、私たちは忘れても良いんじゃないか?」
シャロ「リゼ先輩!?」
千夜「私は絶対に忘れないわ!」
シャロ「あーーーもう!!」
リゼ「ていうかなんでコーヒー飲んだんだ」
チノ「無理して飲まなくても良かったんですよ?」
シャロ「別に無理して飲んだわけじゃ」
シャロ(千夜に喜んで欲しかった……なんて恥ずかしくて言えない。恥はかいた後だけど)
シャロ(……『言葉だけで嬉しい』、ね)
千夜「シャロちゃん?」
シャロ「え、何?」
千夜「こんな時間だしそろそろお暇しましょ」
シャロ「そ、そうね。もう十分恥もかいたことだし」
ココア「酔ったシャロちゃんかわいいのに。またのご来店をお待ちしてます!」
シャロ「……お待ちしてますの意味が違って聞こえるわね」
シャロ「……ごめん千夜。私用事があるから先に帰ってて。帰ったら甘兎に寄るわ」
千夜「わかったわ。それじゃあまた後でね」
シャロ「ええ」
シャロ「……」
シャロ「……お邪魔します」
リゼ「あれ、忘れ物でもあったか?」
シャロ「そうじゃないんです。実は、みんなにお願いしたいことがあって」
ココア「お願い」
チノ「ですか?」
シャロ「その、ね。今度の───」
ココア「……いいね!じゃあ───」
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千夜(ふぅ、今日もよく働いたわ)
千夜(そうだ、シャロちゃんに……)
千夜(ううん、今日のシャロちゃんは忙しそうだったし…… あら?)
千夜(電話?……シャロちゃんからだわ)
千夜「もしもし?」
シャロ《千夜。今から会えない?》
千夜「え?でも、今日のシャロちゃんは忙しいんじゃ」
シャロ《時間はないわね》
千夜「やっぱり」
シャロ《時間がないから今すぐ会いたいの》
千夜「……急にどうしたの、シャロちゃん?」
シャロ《あんたとお喋りでもしたいのよ、千夜。だって》
シャロ《今宵は月が綺麗でしょ?》
千夜「……ふふっ!それが会いたい理由なの?」
シャロ《こんな理由で良いじゃない。友達なんだから》
千夜「そうね。……ところで、その言葉は私に言ってよかったのかしら?月が綺麗ってつまり」
シャロ《親愛なる友人ってことよ》
千夜「Dear friend? それだと元の文章から離れちゃう。英語0点になっちゃうわ」
シャロ《細かいところに引っかかるなー!そもそも最初に言ったのは千夜でしょ!?》
千夜「私は本当にシャロちゃんのことを愛してるわよ?かけがえのない幼馴染だもの」
シャロ《私もそういう意味で言ったんだけど!》
千夜「もちろんわかってるわ」
シャロ《とにかく!あまり時間がないの。この電話が終わったらウチに来て》
千夜「あら、シャロちゃんがもてなしてくれるの?」
シャロ《もてなしてあげるからさっさと準備しなさい》
千夜「はーい」
千夜「お邪魔します」
シャロ「どーぞ。準備できてるわ」
千夜「さて、どんなお話をするの?」
シャロ「そうね、まずは今日あったことでも───」
千夜「───シャロちゃんといっぱいお話できて嬉しかったわ。また誘ってね?」
シャロ「何度だって誘ってあげるわよ。……もう、『言葉だけで嬉しい』だなんて絶対に言わせないから」
千夜「え?」
シャロ「言葉だけで良いなんて寂しいじゃない。もう二度と、千夜に寂しい思いなんてさせない。酔ってない私が約束するわ!」
千夜「だったら私も、シャロちゃんに寂しい思いをさせない。約束よ」
シャロ「……千夜は私が本当に寂しくなった時、いつもそばにいてくれるじゃない」
千夜「そうなの?」
シャロ「そうなのって……。でも、もうすぐ年に一度の大切な日も来るし、想いを伝えておくわ。千夜、いつもありがと」
千夜「大切な日……?」
シャロ「カレンダーと時計を見なさい。もうすぐよ」
千夜「……あ!」
シャロ「誕生日おめでと、千夜!」
千夜「シャロちゃん…… ありがとう!」
シャロ「……私だけじゃないんだけどね」
千夜「え?」
「「「「「お邪魔しまーす!」」」」」
千夜「!?」
ココア「千夜ちゃん、ハッピーバースデイ!」
チノ「千夜さん、おめでとうございます」
リゼ「おめでとう千夜」
マヤ「おめでとう!バースデイソング歌わなきゃね!」
メグ「ハピハピおめでとう、だよ〜」
千夜「みんなありがとう。とっても嬉しい!でも、どうしてみんながここに?」
シャロ「私が酔った日、用事があるからって後から帰ったでしょ?あの時ラビットハウスに戻って、誕生日パーティーをしようって持ちかけたのよ」
千夜「シャロちゃん……!」
シャロ「……でもその時にココアが───」
ココア『いいね!じゃあ、せっかくだしシャロちゃんの家でやろっか!12時になったらみんなで乗り込むよ!』
シャロ「───って言い出して……。さっきは時間ギリギリだったわ」
千夜「もしかして、時間がないってそういうことだったの?」
シャロ「そういうことだったのよ。もっとゆっくり話したかったのに」
千夜「今からはみんなでお話しましょ」
ココア「そういえばこの部屋、みんながいるとちょっと狭いね〜」
シャロ「ええ、そうね。こんなに狭いわ。で、ウチでやろうって決めたのは誰だったかしら?」
チノ「ココアさんですね」
リゼ「ココアだな」
ココア「……私です」
チノ「そもそもラビットハウスでやれば良かったのでは?」
ココア「せっかくシャロちゃんが主催なんだから、シャロちゃんの家でやるのが一番だよ!」
マヤ「ていうか別に狭くても良いじゃん!動き回るわけじゃないんだからさ」
メグ「チノちゃんが持ってきてくれたこのゲームやろうよ。ボードゲームなら部屋が狭くても関係ないよ〜」つ 暗黒街のうさぎ
ココア「お嬢様ゲームをやるのはどうかな?千夜ちゃんのお嬢様役をもう一度見たいなぁ」
リゼ「あんまり騒ぐなよ。こんな時間なんだから」
マヤ「そう言うリゼもゲーム機用意して盛り上がる準備万端じゃん!」
リゼ「なるべく気をつけろってことだ!」
シャロ「……ねえ千夜、少なくとも今日寂しくなることはなさそうね」
千夜「……」
シャロ「千夜?」
シャロ「どうしたの?窓の外なんて見て」
千夜「お月様を見ているの」
シャロ「お月様?」
千夜「ええ。今日のお月様はどうしても見ておきたくて」
シャロ「そういうことなら私も見ておこうかしら」
千夜「……ねぇ、シャロちゃん」
シャロ「ん、なに?」
千夜「今宵の月はとびっきり綺麗ね!」
〜おわり〜
まとめから
シャロちゃんの心情がとても細かく描かれていて、読んでいるこっちが切ない気持ちになりました!
やきもち風味のカモミールもいいぞ
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