リゼ「お、ここにも短冊が。……エトワリアにも七夕があるんだな、コルク」
コルク「いろんなクリエメイトから同じ言葉を聞いた」
リゼ「だろうな。異世界にも元の世界と同じ文化があるのには驚くよ。それも私たちの世界とほとんど変わらない」
コルク「本当ならちょっとした儀式もする。衣装がなくて今年はやっていないけど」
リゼ「それはちょっと異世界っぽい」
リゼ(エトワリアにだって当然暦の概念はあるんだよな)
リゼ(そして七夕があったということは……)
コルク「ところで、今日は何の用?」
リゼ「……シャロの誕生日プレゼントを選びに来た」
リゼ(7月15日、シャロの誕生日がもうすぐということ)
コルク「なるほど。なら、今はこれがおすすめ」
リゼ「これは……箱だな」
コルク「ただの箱じゃない。この箱に星彩石を入れて蓋を閉める。すると星彩石が、幸せをもたらす道具に変わる」
リゼ「星彩石を使うのか!?」
コルク「星彩石には強いクリエが込められている。そのクリエを利用して道具を生み出す仕組み」
リゼ「過程から結果までファンタジーって感じだな。幸せをもたらす道具って何だよってツッコミを入れたくなる」
コルク「道具については私にもわからない。ただ、使用者に合ったものが出てくると聞いている」
リゼ「コルクは使ったことないのか?」
コルク「この箱は一個につき一回しか使えない上に中々入荷できない。出てきた道具も使用者が満足すれば消えてしまう」
リゼ「試しに使えるようなものじゃないってことか……」
コルク「そう。今回も一個だけしか手に入らなかった」
リゼ「これをプレゼントにするのはちょっと不安だな……」
コルク「でも、この箱からはシャロに幸せをもたらすものが必ず出てくる」
リゼ「いや、本当に出てくるかはわからないじゃないか。コルクも使ったことないんだろ?」
コルク「実際に使った人の話を信頼できる筋から聞いている。効力があるのは間違いない。上手くいかなかったら返金も受け付ける」
リゼ「高いんじゃないか?私に買えるとは思えないが」
コルク「星彩石が貴重だからあまり作られていないだけで箱そのものは安い」
リゼ「……考える時間が欲しい」
コルク「これは一つしか入荷してない上に貴重なもの。買う機会は今しかない」
リゼ「……わかった、買っていくよ。お代はこれで」
コルク「交渉成立」
リゼ(……この箱を買ったは良いものの、もっと良さそうなものを買えてしまった)
リゼ(まさかポルカの店でティーセットを作ってもらえるとは)
リゼ(そういえば明らかに武器じゃなさそうな見た目の武器も作ってたな。食器を作るのもお手の物か)
リゼ「どうせならこの箱は自分で使ってみるか。確か箱に星彩石を入れたら蓋を閉めてから開けると……」
リゼ「お、時計が出てきた。はは、これが私を幸せにしてくれるのか」
リゼ「そういえばこの盾も時計が付いてるし、私に合ってるってことなのかもな」
リゼ「説明もついてるのか。なになに……」
『"時間巻き戻しアイテム 大 " 時間を巻き戻せる腕時計。使い方は簡単!どこまで巻き戻したいかを頭に浮かべて、戻れと念じるだけ!』
リゼ「……は?」
リゼ(ちょっと待て、時間を巻き戻せるだって?明らかにヤバいやつが出てきたぞ)
リゼ(これを使えばシャロの誕生日…… いや、何が起こるかわからない。こんなの使えるか!)
リゼ(別のプレゼントを用意しておいてよかった。シャロに渡してこんな危険な物が出てきたら幸せも何もあったもんじゃない)
リゼ(はぁ……。とんでもないブツを手に入れてしまったな。扱いに困る)
シャロ「あれ、リゼ先輩。どうしたんですか?こんなところでため息ついて」
リゼ「シャロ。私、ため息ついてたか?幸せをもたらすどころか逃げていってるな……」
シャロ「うーん…… だったら、幸せが逃げちゃう前に幸せになっちゃいましょう!私、商店街の福引き券持ってるんです。今から引きに行きませんか?」
リゼ「逃げちゃう前に、か。いいなそれ。よし、そうと決まれば全速力で特攻だ!」
シャロ「私、先輩の全速力には追いつけませんよ!?」
リゼ「ナイトよりアルケミストのほうが速いだろ」
シャロ「それは武器の重さの問題だと思います!」
リゼ「……」
シャロ「……先輩、元気だしてください。ティッシュ、便利じゃないですか。あるクリエメイト曰く、万能な素晴らしい紙です」
リゼ「すまないシャロ。幸せは逃げた後だったみたいだ」
シャロ「大丈夫ですよリゼ先輩!こういうのはハズレがたくさん入ってるんですから、景品なんて早々当たりません。だから幸せが別に逃げたわけじゃ」
ココア「やったぁ!1等だよ!」
千夜「おめでとうココアちゃん!今夜はお祝いね!」
リゼ「……ココアと千夜も引きに来てたのか。幸せそうだな」
シャロ「あれは例外!例外です!……そうだ!このティッシュの広告に書いてある"もふもふふれあい場"ってところに行きましょう!今度こそ良いことがあるはずです!」
リゼ「ああ、わかった……」
リゼ(この腕時計、不幸せをもたらす道具なんじゃないか)
シャロ「……」ブルブル
リゼ「すまないシャロ」
シャロ「良いんです……!先輩は思う存分……」
リゼ「……」
シャロ「……うさぎをもふもふしてきてください!私はここで待ってますから!!!」ガクブル
リゼ「だが既にうさぎに取り囲まれて」
シャロ「こっ、これくらい平気です!あっ、その子リゼ先輩に懐いてるみたいですよ。もふもふしてあげましょう!」
リゼ「……まさかうさぎしかいないなんて。猫とか犬とかクロモンとかはいないのか?」モフモフ
シャロ「まあ良いじゃないですか。これで先輩も幸せをチャージできます!」
リゼ「いや、シャロに災難が降りかかっているんだが。まさか、この時計は呪いのアイテムなのか!?」
シャロ「?」
リゼ(シャロはああ言ってるが明らかに限界そうな顔をしている)モフモフ
リゼ(まったく、この時計が出てきてからろくな事が…… ん?)モフモフ
シャロ「リゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩のためリゼ先輩の」
リゼ(……今が使い時なんじゃないか?)モフモフ
リゼ(福引きを引く前まで時間を戻して食事にでも誘えばいい。そうすれば福引きもうさぎのこともなかったことになる)モフモフ
リゼ(何度も福引きを引き直すなんて使い方ならともかく、これくらいなら大きな影響は出ないだろうし)モフモフ
リゼ(私が満足すればこの時計も消えて万々歳だ。こういう使い方なら悪くない)モフモフ
シャロ「リッ、リゼ先輩!そろそろ限界かもしれないです……!」
リゼ「っ!シャロ、今助けてやる!……いや、全部なかったことにしてやるから」モフモフ
シャロ「へ?」
リゼ(……声に出してしまったがこれでも良いのか?)
シャロ「私、商店街の福引き券持ってるんです。今から引きに行きませんか?」
リゼ(この言葉…… 本当に戻った?時計は……なくなってない!何故だ!?)
シャロ「リゼ先輩?」
リゼ(確かに時間は戻って…… まさか、私が満足できていない?)
シャロ「あのー、リゼ先輩?」
リゼ「ああ、悪い。福引きの話だったな。……けど、福引きってハズレばかり入ってるから、幸せになるのには向かないんじゃないか?」
シャロ「そう、ですね……」
リゼ「だからさ、代わりに食事にでも行かないか?美味しいものを食べれば幸せになれるだろ?私が奢るよ」
シャロ「良いんですか!?ありがとうございます!」
リゼ(……シャロの笑顔が見られたんだ、これで良い。時計はなくならなかったが)
シャロ「ごちそうさまでした!リゼ先輩とお話できて、美味しいものが食べられて、私幸せです!」
リゼ「私もシャロと一緒に食事できて嬉しかったよ。幸せは逃げずに済んだみたいだ」
シャロ「先輩……!」
ココア「あっ、リゼちゃんにシャロちゃんだ……」
千夜「こんなところで奇遇ね……」
リゼ「酷い顔じゃないか!」
シャロ「一体何があったのよ!?」
ココア「商店街の福引きを何回も引いたんだけど全部ハズレで……」
千夜「私達の直後に引いた人が1等を当てたの……」
シャロ「そんなことであんな顔してたの?本気で心配しちゃったじゃない」
リゼ(!?)
リゼ(全部ハズレ?直後に引いた人が1等?)
リゼ(時間を戻す前はココアたちが1等を引いたはずじゃ?)
リゼ(……いや、時間を戻したからだ。戻した後、私達は福引きを引かなかった。だからその後の玉の出方が変わったんだ)
ココア「でも、私達の直後に1等だよ!?」
シャロ「ああいうのは先に引いても後に引いても確率は同じよ。諦めなさい」
千夜「後から引いたほうが他の玉に邪魔されにくいかもしれないわ!」
シャロ「そう思うなら他の人より後ろに並ぶべきだったわね」
リゼ(……私はなんて甘い考えで時間を戻してしまったんだ)
リゼ(3人は私が時間を戻したことを知らないし、戻る前のことは覚えていない)
リゼ(だけど、私のせいで1等を引けなかった事実は変わらない)
リゼ(私が、ココアと千夜の幸せを奪ったんだ)
リゼ(明日はシャロの誕生日。祝う準備はできている)
リゼ(……あの時計を手に入れた時、プレゼントを渡した後に反応を見て時間を戻せば、なんてことも考えた)
リゼ(だが、そんなことは絶対にしない。あれを使っては駄目だ)
リゼ(時間を戻せば関係のない人の人生まで捻じ曲げる。幸せをもたらす?とんでもない!)
リゼ(もう二度と誰かの幸せを奪ったりするもんか。それに何より……)
シャロ「リゼ先輩、私ちょっと出かけてきますね。ハーブを摘みに行ってきます」
リゼ「一人だと危ないだろ。私も行くよ」
シャロ「先輩の手を煩わせるわけには行きません。それに、あそこは魔物も少ないので安全ですよ」
リゼ「そうか。それでも気をつけていくんだぞ」
シャロ「はい!いってきます!」
リゼ(シャロの幸せだけは絶対に奪いたくないんだ)
リゼ(……いくらなんでもシャロの帰りが遅すぎる。いくら魔物が少なくとも夜の山は危険だ)
リゼ(ちょっと様子を見に……)
シャロ「リゼ、先輩……」
リゼ「シャロ!?ボロボロじゃないか!一体何があった!?」
シャロ「魔物の大群に……襲われて……」
リゼ「なんだって!?」
シャロ「群れで……隣の町へ、向かってた……みたいなんです……。私が、見つかって、からは……向き、変わってましたけど」
リゼ「それに鉢合わせたのか……」
シャロ「ごめん、なさい……先輩の、言うことを、聞いていれば……」
リゼ「謝らなくていい!それよりも千夜を……まだ出かけてるのか」
リゼ(あの時、無理矢理にでもついていくべきだった)
リゼ(私はナイトだ!なのにシャロを守れなかった。盾だけあっても友達を守れなきゃ意味がない)
リゼ(いや、ついて行っても私だけじゃ大群には対処できない)
リゼ(結果論だが私にできた最善の行動は、シャロを止めることだったんだ)
リゼ(……わかってる。それを実現する方法が、私にはある)
リゼ(だけど、絶対に実行してはいけない)
リゼ(シャロの話だと、時を戻してシャロを止めれば、隣の町が魔物の大群に襲われる)
リゼ(多くの人の幸せを奪ってしまうんだ)
リゼ(幸い、エトワリアにはシャロの怪我を治す方法はいくらでもある)
リゼ(心の傷は治せないが、時間が癒やしてくれる)
リゼ(だから、私は……)
シャロ「リゼ先輩、私ちょっと出かけてきますね。ハーブを摘みに行ってきます」
リゼ「……いや、私が行ってくる」
シャロ「え?……いやいや、リゼ先輩の手を煩わせるわけには」
リゼ「きららに教えてもらったハーブの群生地だろ?ちょうど用事があるんだよ」
シャロ「そうなんですか?だったら一緒に行きましょう」
リゼ「悪い、それは駄目だ」
シャロ「どうしてですか……?」
リゼ「ちょっと危険なことをするんだよ。シャロが近くにいると巻き込んでしまうんだ」
シャロ「うーん、それじゃお願いします。これ、ハーブの特徴のメモです」
リゼ「任せろ。じゃ、行ってくる」
リゼ(時計はなくなってないな。これくらいで満足するもんか、何度だって使ってやる)
リゼ(隣の町が魔物に襲われる?だったらその魔物を私一人で始末すれば良いだけの話だ)
リゼ(シャロの幸せも、誰かの幸せも、絶対に守ってみせる)
リゼ「さて、ハーブはこれくらいでいいか。それに……」
グルルルルルルルルルルル
リゼ「ちょうど魔物達も来たみたいだしな。それにしても凄い数だな。普段ならとても一人では相手にできないが……」
リゼ「今は、前進あるのみだ!」
グルァア!
リゼ「食らうか!……私を甘く見るなよ!」
グガァ!?
リゼ「悪いな。私の攻撃は複数の敵にまとめて当てられるんだ。今の状況にぴったりだろ?」
ポガー!ヘーイ!
リゼ「ぐぅ!やはり全部避けきるのは難しいか!……でもな」
ポガー!ヘーイ!
リゼ「一度見れば避けられる」スイッ
リゼ「時間を戻す前にこの私の隙をついた褒美だ。奥の手も見せてやる」
リゼ「喰らえ!」ドカン!
ブヘェ!?
リゼ「しかし凄いなこの腕時計は!不幸せをもたらす道具なんて言ったが撤回だ!だけどまだ満足はしない」
リゼ「この時計があれば僧侶のサポートもいらない。一人でいくらでも戦える!」
キョエエエエエ!
リゼ「くっ!今のは効いたな…… だけど今の私にはこれがある」
キョエエエエエ!
リゼ「無駄だ!叩き潰してやる!」
カァアアッカ!
リゼ「この程度なら」
戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ
リゼ「……お前たちで最後だ」
ガルルルルル……
リゼ「もうすぐ日付が変わる。時間がないんだ。決着をつけよう」
ボオオオオオオオオ!!!!
リゼ「炎だと!?だが一度見れば…… いや、ここで避けたら時間が…… このまま突撃する!」
ガルァア!
リゼ「ぐぅぅぅぅ!!!でも、関係ない」ジャキン!
リゼ「すべて終わらせてやる!十二時の鐘が鳴る前に!!」
ズドォォォォォン
リゼ「間に合ったか。当然の結果だな」
リゼ「しかし、最後の攻撃は結構痛かったな。帰ったら千夜に頼むか……」
シャロ「リゼ先輩!」
リゼ「シャロ!?どうしてここに」
シャロ「帰りが遅いから心配に…… ってリゼ先輩、怪我してるじゃないですか!」
リゼ「これくらい平気だよ。心配するな」
シャロ「平気なわけないじゃないですか!」
リゼ「本当に平気さ。シャロには元気な姿しか見せないよ」
リゼ(だって、時間を戻して隠れれば、シャロは忘れてしまうんだから)
リゼ「……シャロ?」
シャロ「リゼ先輩、今何をしようとしようとしたんですか」
リゼ「……なんでもない」
シャロ「騙されませんよ!さっきの先輩の顔、ここ数日みたいな辛そうな顔をしてたじゃないですか!」
リゼ「……」
シャロ「今日、ハーブを摘みに行きたかったのは…… 先輩に元気になってほしくて、ハーブティーを作ろうと思ったからなんです」
シャロ「でも、先輩の辛いことがわからなかったら、元気になんてできないですよね」
シャロ「だからお願いです、リゼ先輩。正直に話してください」
リゼ「……シャロに心配をかけないよう、時間を戻そうとしたんだよ。この姿を見られないために」
シャロ「時間を、戻す?」
リゼ「ああ。この腕時計があれば、それができる」
シャロ「……過去を変えられるってことですか」
リゼ「ああ。最近悩んでたのはこれのことでさ。甘い考えで時間を戻した時、周りの過去まで変えてしまったんだ」
シャロ「そういう、ことだったんですね」
リゼ「もう二度と使わないって思ったよ。けど、気づいたんだ。私が過去を変えることで誰かの幸せを奪ってしまうなら、その事実すらも変えてしまえばいいってさ」
シャロ「……これ、戦闘の跡ですよね。今日、リゼ先輩が代わりに行くって言ったのはまさか」
リゼ「シャロを止めるだけだと、魔物の大群が隣の街まで行ってしまうところだったんだ。それに、時間を戻したことをシャロに知られたら、シャロまで思い悩むかもしれないしな」
シャロ「私のために、魔物の大群を、先輩一人で……」
リゼ「気にするなシャロ。いや、時間を戻してしまえば」
シャロ「させません!」
リゼ「何も心配することはないさ。時間を戻せばシャロはこのことを覚えていない。誰も悲しまなくて済むんだ」
シャロ「それって、リゼ先輩が辛いことを一人で抱え込むってことじゃないですか!」
リゼ「それでも私はさ、シャロの笑顔が見たいんだ。シャロに幸せでいて欲しいんだよ」
シャロ「……リゼ先輩。どれだけ頑張っても、辛いこと、悲しいことって、絶対にあるんですよ」
リゼ「そうだな」
シャロ「生きていたら絶対に避けられなくて。みんな平等に。でも、先輩は、みんなの分まで背負い込もうとしてます」
シャロ「きっと先輩はこれからも時間を戻して、自分だけ苦しもうとするんです。他の人は絶対に傷つけない」
シャロ「先輩だけ、辛くて、悲しくて、苦しくて。でも、私達の笑顔を見て、良かったって思うんですよね」
リゼ「……ああ」
シャロ「ぜんっぜん良くなーい!!!」
リゼ「シャロ!?」
シャロ「一人分だけでもキツいのに!みんなの分までって人間には耐えられませんから!」
シャロ「もし耐えられたとしても、苦しんでるリゼ先輩を見て私達が笑顔になれるわけないです!」
シャロ「さっきも言いましたけど、辛いことはみんな平等です!でも、辛い時は周りに頼れば良いんですよ!」
シャロ「私達の周りには千夜にココアにチノちゃん、きららやランプに他のクリエメイトのみんなもいます!元の世界にだって頼れる人はいっぱい!」
シャロ「みんなといれば辛さなんてどうにでもなるんです!先輩が全員分抱える必要はないんですよ!」
シャロ「例えばですね。今日時間を戻したの、多分私が魔物に襲われて怪我でもしたんですよね?だったら時間を戻すより看病してくれたほうが嬉しかったです!」
シャロ「そして今は先輩が怪我してるので私が看病します!これなら寂しくないし辛くないし悲しくないし苦しくないです多分!」
シャロ「だから、リゼ先輩」
シャロ「私を置いて、過去に行かないでください。楽しいときも、悲しいときも、ずっと一緒にいてください」
リゼ「ぷっ!はは、あははは!」
シャロ「リゼ先輩!?」
リゼ「なあシャロ。辛いことを一人で背負い込んだら、シャロの本気の言葉が聞けたんだ。これが聞けると思うとますます一人で頑張りたくなるじゃないか。あはは!」
シャロ「ちょっと先輩!」
リゼ「ははは!……私の負けだよ、シャロ」
シャロ「へ?」
リゼ「もうこんな物には頼らない。一人で背負い込まない」
シャロ「先輩……!」
リゼ「そうだよな、確かに辛い時は誰かが一緒にいてくれたほうが嬉しいもんな。こんな単純なことに気がつかないなんて。シャロが気づかせてくれたんだ」
ポンッ
リゼ「!」
シャロ「なんの音ですか!?」
リゼ「時計が、なくなった」
ゴーンゴーン
リゼ「……鐘の音って、急に時計が消えたときに便利だな」
シャロ「そんなシチュエーションは滅多にないですけどね」
リゼ「シャロ!」
シャロ「はい!リゼ先輩!」
リゼ「誕生日、おめでとう」
シャロ「え、あ、ありがとうございます!リゼ先輩!」
リゼ「頑張った甲斐があったよ。今日へ厄介事を持ち込まないためにちょっと無茶をしたからな」
シャロ「待ってください。じゃあその大怪我は」
リゼ「あ、しまった」
シャロ「しまったじゃないですよ!そんなことのために」
リゼ「そんなこと、なんてものじゃないさ。何よりも大事だった」
シャロ「……ちょっと嬉しいので見逃します」
リゼ「この日のためにプレゼントも用意してあるんだ。帰ったら盛大に祝うぞ!」
シャロ「盛大に怪我してるんですから帰ったら安静にしてください!」
リゼ「おはようコルク。この前買った箱のことを伝えに来た。今後の参考になるかと思ってさ」
コルク「おはよう。シャロは喜んでくれた?」
リゼ「いや、シャロにはティーセットを贈ったんだ。だからあの箱は自分で使った」
コルク「なるほど。効力はどうだった?」
リゼ「ばっちりだったよ。ちょっと癖があって、扱い方が難しかったけどな」
コルク「扱い方が難しいが効力は本物と。なら、次も自信を持って入荷できる」
リゼ「それは良かったよ。そうだ、出てきた道具はさ」
リゼ「幸せを呼ぶ腕時計だったんだ」
おわり
シャロさんハッピーバースデー
投稿しようと思ってた時刻より盛大に遅刻したのは内緒
素晴らしい作品をありがとうございました!
とてもよかったです!
リゼシャロ、尊かったです!
リゼの、自分のトラブルや悩みを一人で抱え込んでしまうという不器用な性格を、上手く表現されており、凄くよくできた作品と感じました(vitaのごちうさのゲームでもリゼは不器用な点が凄い)
とても良い作品でしたよ〜
シリアスなのにごちうさらしい物語ですごく良かったです!
リゼもシャロもお互いを想い合っていて、だからこそ暴走するリゼ、という構図も良かったです!
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