やるデース! > きららBBS > 雲母文芳教授の「きららと日本文学」の講義
雲母文芳教授の「きららと日本文学」の講義
▲▲▲全部▼▼▼戻る
1 名前:東山かもめ[age] 投稿日:2020/03/07 12:16:26 ID:RNOI8vvVjW
みなさまお久しぶりでございます。
待っていたかはわかりませんが遂に雲母教授が帰ってきます!

あれから1年弱が経過し、過去ログへと飛ばされいていた時には時の流れな速さに驚いたものです。
今回は私のスケジュールも大丈夫そうなので過去ログに飛ばされないようまったり更新させて頂きたいと思います。

前回の講義の復習をしたい方はこちらから
http://kirarabbs.com/index.cgi?read=1405&ukey=0&log=past

2 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:16:55 ID:RNOI8vvVjW
では今から私の第2講目の講義を始めます。

今回の講義では、前回に引き続き「けいおん!」を題材として取り上げます。前回が1期を中心に、けいおんそしてきらら作品、さらには日常系萌えマンガと呼ばれる作品に共通する「キャラクターの成長」とういう特徴についてお話ししました。今回はさらにけいおん2期・映画けいおんでは別の見方を使っていこうと思います。

3 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:17:09 ID:RNOI8vvVjW
ではまず最初に、“アニメけいおん”の1期と2期の大きな違いとは何かということからいきましょうか。


それは皆さんご存じの通り、「長さ」です。

1期は1クール12話+2話。それに対し2期は2クール24話+3話+映画と倍以上の時間を使っています。また、1期は唯たちの視点から見て高校1年〜2年の2年間をテンポよく描いているのに対して、2期は高校3年生の1年間をじっくりと描いています。

このように、2期は1期の実質4倍の時間の進みが遅いというわけです。しかし、2期の内容は4倍に希釈されていて薄味ということは全くありません。それはなぜでしょう?

その答えを導くためには山田尚子監督の趣味の話をしなくてはいけません。

4 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:17:27 ID:RNOI8vvVjW
山田監督の趣味はカメラであることは、有名な話ですが、このカメラが彼女の作品の演出に大きく関わっていることは間違いないでしょう。なぜなら、実写でもアニメでも最終的には、映像を「撮る」ことで作られることには変わりないのですから。

山田監督の最新作であるリズと青い鳥(原作:武田綾乃・宝島社刊)では、インタビューで
『近くまで寄ってしまうと彼女たちに気づかれてしまうので、こっそり隠し撮りするような感じでした』
(https://tsutaya.tsite.jp/news/cinema/i/39532050/index)
と発言しています。

5 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:17:50 ID:RNOI8vvVjW
これはけいおんの頃からあまり変化していません。

けいおん1期は軽音楽部の4人もしくは5人、また桜が丘女子高等学校の軽音部室というミクロの世界を描いています。対して、2期では狭かった世界が一気に広がります。唯ととなりこと立花姫子、ツインドリルこと若王子いちごなどのクラスメート、2期から一気に活躍の場を増やした鈴木純・平沢憂・我らがあずにゃんの一年生トリオ、実は1期1話にちらっと出演していたオカルト研、唯のご近所のおばあちゃんこと一文字 とみさん、放送当時は原作すら刊行されていなかったにも関わらず、京アニがユーフォニアムを題材としたアニメを制作することを見事予言したホームレス女子高校生三浦茜・・・は2ch由来の真っ赤なウソの釣りキャラでしたね。

このように、視点の移動があった1期と2期ですが、2期はマクロ的視点を持ちながら、ミクロの視点をつなぎ合わせて箱庭からの脱出を図りました。パズルのピースを1つ1つはめていくように。

6 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:18:07 ID:RNOI8vvVjW
ここで少し脱線ですが、けいおんの数年後にまた同じ制作陣で挑んだ「たまこまーけっと」ではさらに世界が拡大し、一つの商店街というフィールドを通して男女の成長を描いています。映画版の「たまこラブストーリー」ラストシーンでの京都駅の構造把握が完璧だったり、ちゃんと京阪が協力に入っていたり、新幹線ホームから真下にホームを構える近鉄の車両の音が聞こえたり、新幹線ホームで糸電話を投げたりなんかしたら駅員に危険だと言って止められそうだと思ったりと、話が尽きませんが、出町ふたばの豆大福は本当においしいので皆さんも食べてみてください。

7 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:18:20 ID:RNOI8vvVjW
さて、ここで先ほどの2期から加わったけいおんメンバーで忘れている存在がいます。「トンちゃん」です。トンちゃんは軽音部の備品を買い取りに出してできた部費の一部で飼い始めたスッポンモドキという種のカメですが、ここでは便宜上”彼”と呼びましょう。彼は軽音部の仲間であるとともに、同時に軽音部室の定点”カメ”ラでもあるのです。

ただのダジャレではありません。2期になり彼を一番お世話していたあずにゃんの出番が増えていることを見れば、また、軽音部一行の卒業旅行の行き先を決めたのが彼であることを考えれば、そして、監督の趣味を考えれば、彼が演出上の”キータートル”で間違いないでしょう。

長くなりましたが、ここから今日の本題に入っていきましょう。

8 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:18:32 ID:RNOI8vvVjW
今日のテーマは「けいおん!!のメインヒロインはあずにゃんである」

というものです。主人公は唯であることにはあまり異論はないでしょうが、誰をヒロインに置くのかということは異論も多いでしょう。それはわかっていますし、認めます。ただ、けいおん(2期)を紐解いていくにあたり、あずにゃんをメインヒロインに据えますと、いかにして”けいおんが「生きがい」である”と全国の視聴者たちに言わせるほどの作品になったかがわかりやすくなるのです。

9 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:18:48 ID:RNOI8vvVjW
けいおん!!の一話は始業式の日、時計を1時間早く見間違えて早めに来てしまった唯がいつもの部室で珍しく朝練をしているシーンから始まります。

つまり、あくまでもメインとなる視点は依然、唯または上級生4人組であるということの現れでしょう。

その形が崩れるのは5話です。
この回は1話丸々あずにゃん・憂・純の下級生トリオ目線で進行していく最初の回です。

このときはじめて唯達上級生からフォーカスが外れますが、この回こそがけいおん2期が1期との差別化を図る上で重要な回と呼べるでしょう。

とはいえ、唯達上級生が軽音部を引っ張っていく構図は変わりません。13話の夏祭りのシーンです。
唯があずにゃんを引っ張っていきます。バックには打ち上げ花火が写り、あずにゃんが夢ではないかと言う印象的なシーンです。

唯は天然お姉ちゃんとしてここでも姉力を発揮していきます。高校、特に2年生の夏というものは自らの好きなことに人生で最も打ち込むことのできる期間だと私は考えます。本当に夢でも見ているんじゃないかという没入感は何にも代えがたいものです。背景の打ち上げ花火のすぐにでも終わってしまいそうな哀愁と華やかさと相まって見事なシーンです。

10 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:19:05 ID:RNOI8vvVjW
2学期に入り、上級生はロミオとジュリエットの練習のため部活にはあまり出なくなります。あずにゃんは不安がりますが、ここでも上級生があずにゃんの心の支えになっていることを象徴しています。唯達にとってあずにゃんは大切な後輩であり仲間ですが、スクールライフの2/3しか一緒にいないわけです。対してあずにゃんが先輩と一緒にいた時間の割合は100%。この差は非常に大きい。

結果唯達にとって高校最後となるライブはさわちゃんや和をはじめとするみんなの協力により無事大成功する。そしてライブ後5人そろった部室で上級生組が泣くシーン。このシーンは原作と大きく異なることで有名ですが、それはぜひとも皆さんの目で確かめてもらうこととして、来年の話をする5人の中で最初に「次はない」と現実を突きつけるりっちゃんには部長らしさが出ていると同時に、いよいよ5人がそれぞれの未来へと進んでいくために道がバラバラになっていく転換点でもあります。

11 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:19:28 ID:RNOI8vvVjW
受験勉強に邁進する先輩を見て、そこではじめて、自分は先輩たちにU&Iの歌詞と同様に「なにもあげられてない」ことに気付くのです。その結果が”賽銭箱に1000円札”と”バレンタインの手作りお菓子”なのです。

勿論、特に唯に対してはギターを教えるという形でなにかをあげていたことは確かなのですが、4人先輩全員に一度にという点で見ればほとんどなかったのです。また、むぎちゃんは何かを与えるという意味では色々なものを持ってきていたということもありあずにゃん目線では最も与えられていない人物でしょう。ただ、”普通の女子高生の生活”を3年間過ごすことができたという意味でむぎちゃんが最も軽音部からかけがえのないものを貰っていたという話はここでは置いておきましょう。あくまでもあずにゃん目線ですから。

なかなかチョコレートのお菓子をあげられずにいたあずにゃんの背中を押したのは結局むぎちゃんだったという点でも、先ほどのアイデアの筋道が通っています。

12 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:19:39 ID:RNOI8vvVjW
ここまで、あくまで唯達上級生とあずにゃんの関係は先輩・後輩でした。この関係は物語の終盤まで、「天使にふれたよ」のシーンまで変わらない関係性です。

卒業旅行についてきてしまったあずにゃんは「"先輩の”卒業旅行についてきてしまって」と言っています。

ところが、天使にふれたよで”卒業は終わりじゃない。これからも仲間だから”という一節でこの関係性は崩れ、5人が同じ”仲間”という立場になったわけです。そして梓部長の新生桜高軽音部の始まったタイミングでもあります。この続きはHigh School編(わかばガールズ編)で描かれた通りです。この話もやりたいですが、時間の都合上また今度ということで。

13 名前:雲母文芳[age] 投稿日:2020/03/07 12:19:53 ID:RNOI8vvVjW
そして、この瞬間がけいおんが人物に焦点を当てた物語であることを象徴しています。
先にアニメ化されきららアニメの始祖であるひだまりスケッチはひだまり荘がある限り、無限に話が続いていくような構造ですが、かきふらい先生のけいおん(無印)・College
・High School・shuffleでは全てキャラクターを主軸に話が進みます。仮にかきふらい先生が蒼樹うめ先生と同じように場所を主軸に話を描く作家であった場合は新連載は桜高軽音部の過去編か未来編例えばDeath Devil編や5人の子供たち編になっていたかもしれません。


このようにけいおんのキャラクターや演出からこの物語を紐解いていった2回でしたが如何だったでしょうか。日常系マンガは「ストーリーがない」と批判されがちですが、その中にもやはりストーリーがあって、その要素が薄いが故にキャラクターや演出が見えやすいというメリットがあります。
皆さんも今度は唯を主軸にけいおんを見てみたり、カメラワークや音響に主眼を置いてほかのアニメも見てみるというのはいかがでしょうか。

14 名前:東山かもめ[age] 投稿日:2020/03/07 12:27:02 ID:RNOI8vvVjW
いかがだったでしょうか。
教授のキャラが定まっていなかったり、前回言っていたことと違っていたらごめんなさい。

私はこの考察なのか紹介なのかレビューなのかよくわからないものを、皆さんが新たなアニメを見て新たな発見をしてもらいたくて書いています。

僕は私はこう考えた。こういった見方もできるんじゃないかというのも大歓迎です。できるだけインタラクティブで建設的で楽しい議論ができるのを楽しみにしています。

最近は、このきららBBSにも私よりもちゃんとした考察班(ラビットハウスの歴史を考察してみた;http://kirarabbs.com/index.cgi?read=2029&ukey=0)が来てくださっていますので日常系アニメ考察界隈がますます盛り上がることを願っています。

▲▲▲全部▼▼▼戻る
名前 age
コメント
画像ファイル


やるデース! > きららBBS > 雲母文芳教授の「きららと日本文学」の講義

- WEB PATIO -